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これは他人事ではない…右の道と左の道の先に同量の干し草が見えるのに、なぜロバは動かずに餓死したのか

プレジデントオンライン / 2023年6月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

人生は決断の連続である。どのように選択すればいいのだろうか。キャリアカウンセラーの戸田智弘さんは「寓話は先人が残してくれた人類の貴重な遺産であり、そこにはよく生きるための“教え”が凝縮されており、“人生の道しるべ”になる」という――。

※本稿は、戸田智弘『人生の道しるべになる 座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■◆成功の秘訣

レポーターが銀行の頭取に尋ねた。

「あなたの成功の秘訣(ひけつ)はなんですか?」
「二語(Two words)だ!」
「それはどのようなことですか?」
「正しい決断(Right decisions)!」
「どうやって正しい決断を下すんですか?」
「経験だ!」
「どうやって経験を積むんですか?」
「二語(Two words)だ!」
「なんでしょう?」
「間違った決断(Wrong decisions)!」

■正しい決断と間違った決断

「できるだけ正しい決断をしたい」と願うのは普通の感情だ。しかし、いきなり正しい決断を下すのはたいへん難しいことである。「間違った決断を下す」という経験を積んだ上で、ようやく「正しい決断を下す」レベルに至ることができる。別の言い方をすると、失敗という経験を積んだ上でなければ成功に至ることはできないということになる。

ここから得られるのは、失敗を恐れるなという「ありふれた教訓」である。失敗は自己を改善していくためには避けられないステップである。スポーツで上達しようと思えば失敗は欠かせない。積極的なプレーをする人(自分の殻を破ろうとする人)が失敗する人であり、逆に積極的なプレーをしない人(自分の殻を破ろうとしない人)は失敗をしない人である。どちらが上達するかは明らかだ。

不成功に終わった試みや努力を称えよう。スポーツに限らず、仕事も同じである。高度で複雑なスキルは、失敗を通じた試行錯誤を経てやっと身につけられるものなのだ。

■◆大嫌いなサンドイッチ

ここは中西部のある建設現場。昼食の時間を告げる笛が鳴ると、労働者たちが一斉に弁当を食べ始めた。

サムは弁当の入った袋を開けるといつものように愚痴をこぼしだした。

「ちくしょう! またピーナッツバターとジャムのサンドイッチかよ。俺はピーナッツバターとジャムが大嫌いなんだ!」

サムは来る日も来る日も、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチに不平をこぼしていた。

何週間か過ぎた頃、さすがの同僚たちもサムのいつもの愚痴に我慢ができなくなった。とうとう、一人の同僚がこう言った。

「いい加減にしろよ、サム。そんなにピーナッツバターとジャムが嫌いなら、奥さんに言って別のものを作ってもらえばいいだろうが」

「奥さんだと?」。サムは答えた。「俺は独り者だぜ。弁当は自分で作ってらあ」

イチゴジャムとピーナッツバターのトースト
写真=iStock.com/Eivaisla
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Eivaisla

■「どう行動するか」を選ぶのは自分

私たちも知らず知らずのうちに、自分の嫌いな材料でサンドイッチを作り、不平不満や愚痴をこぼしながらそれを食べ続けるようなことをしていないだろうか。自分の現実は自分で作っている――もちろんすべてではないが――のであり、自分が望むような現実を自分は作れる可能性を常に持っていることを忘れてはいけない。

この寓話(ぐうわ)は私たちに自分の人生を改善していくためのヒントを与えてくれる。もしも、今の自分の人生に不平不満をこぼしているのなら、他にどういう生き方や働き方があるのかを知ること、それぞれの生き方や働き方を実現するのに必要なルートを調べること、自分にもっとも適したルートを選ぶこと、億劫がらずに勇気を持って一歩踏み出すことである。

■◆決断しない損

ロバは、左の道の先と右の道の先に干し草を見つけた。

ほぼ同じ距離、ほぼ同じ量の干し草が置かれている。どちらの干し草も美味しそうだ。

「どちらの干し草を食べるのがいいだろうか?」

ロバは迷った。左に二、三歩行くと、右のほうが良さそうに思えてくる。右に二、三歩行くと、左のほうが良さそうに思えてくる。

そんなことを続けているうちに、ロバはとうとう餓死してしまった。

分かれ道で迷う人
写真=iStock.com/SIphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SIphotography

■選択できずにその場を動かない危険性

フランス中世の哲学者であるジャン・ビュリダンが作った話とされている。ただし、出典は明らかではない。さて、この寓話をどう読むか。二つの読み方がありそうだ。

一つ目の読み方。ロバには二つの選択肢があった。第一は左側の道を進んで干し草を食べること、第二は右側の道を進んで干し草を食べることであった。ロバはどちらか一つを選べず、その場に立ち尽くして餓死した。

二つ目の読み方。ロバには三つの選択肢があった。第一と第二は先に述べたとおり、第三はその場にステイすることであった。ロバは第三の選択肢を選び、餓死してしまった。

どちらの読み方をするにせよ、客観的にみれば「その場を動かないという選択」をするのはどう考えても不利である。その場に居続けたのではお腹を満たすことができない。どうしてロバはその場を動かなかったのだろうか。

それはロバの前に「選択の壁」が立ち塞(ふさ)がったからだ。では、ロバはその壁をなぜ突き破れなかったか。二つの理由が考えられる。

戸田智弘『人生の道しるべになる座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
戸田智弘『人生の道しるべになる 座右の寓話』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

一つ目は左右どちらかを選ぶための明確な理由が見つからなかったことだ。干し草までの距離も、その量と美味しさも同じように見えたのだろう。

二つ目は「選択を誤ってしまうかもしれない」という恐れが生じてきたことである。どちらか一方を選んで行動に移してみたものの、「こっちよりもあっちのほうが良かったのでは?」という後悔の念が沸き起こることを恐れたのだ。

「選択の壁」を前にしたロバは動くことができず、その場に立ち尽くすしかなかった。未来を予見する神の視点――話を最後まで読んだ読者の視点――からすれば、その場を動かずに餓死するくらいなら、どちらかの道を選んで干し草を食べたほうが良かったと思うだろう。しかし、ロバだって空腹の果てに餓死するとまでは思っていなかった。

この寓話は、何かを選択することの難しさと同時に、何も選択できずにその場で立ち尽くしてしまう危険性を教えてくれる。人は人生の節目節目で大きな選択を迫られる。そういう場合、その場を動かないほうが良いというケースはあまり多くはない。

出典
「ビュリダンのロバ」:『100の神話で身につく一般教養』(エリック・コバスト著、小倉孝誠、岩下綾訳、白水社)、『人生の価値 それとも無価値』(ひろさちや著、講談社)を参考に著者がアレンジ。
「成功の秘訣」:『英語で「ちょっといい話」』(アーサー・F・レネハン編、足立恵子訳、講談社インターナショナル)
「大嫌いなサンドイッチ」:『癒しの旅』(ダン・ミルマン著、上野圭一訳、徳間書店)

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戸田 智弘(とだ・ともひろ)
キャリアカウンセラー
1960年愛知県生まれ。北海道大学工学部、法政大学社会学部卒業。著書に『働く理由』『続・働く理由』『学び続ける理由』『ものの見方が変わる 座右の寓話』(以上、ディスカヴァー)など。

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(キャリアカウンセラー 戸田 智弘)

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