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腸が健康だと姿勢が良くなる…「いつも元気そう」と思われる人の体の中で起こっていること

プレジデントオンライン / 2023年6月15日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xijian

人に与える印象を良くするにはどうすればいいのか。消化器内科医の江田証氏は「見た目の健やかさには、腸内環境が大きく影響している。腸で活発にセロトニンがつくられている人は、姿勢が良くなり表情も明るくなる」という――。

※本稿は、江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「見た目」の影響力は想像以上に高い

人の第一印象の55パーセントは「見た目」で決まる――有名なメラビアンの法則だ。

ビジネスの世界では、「成功している人は見た目がよい」「見た目がよい人ほど年収が高い」などとよく言われる。「収入が高ければ質の良いものを身につけることができるからではないか」という見方もあるが、本質をついていない。

これは、その人の内面からにじみ出る見た目の健やかさが、仕事の評価や成功にも大きなプラスの影響を与えているという意味なのだ。

健康的で生気にあふれ、活力がみなぎっている人は、それだけで「仕事ができそう」「頑張ってくれそう」という印象になる。実際はそれほどでなくても、そうした評価や信頼が人を育てることも少なくない。逆に、いつ会っても顔色が悪かったり元気がなかったりでは、実はすごく優秀であっても「大丈夫かな」「任せられるかな」といったネガティブな印象を持たれがちになる。

もちろん「人間は見た目がすべてではない」し、「外見だけではわからない」ことも多い。人の真価は、誠実さや心の美しさなどの人間的美徳、内面に秘めた情熱や志にあると私も信じている。しかし一方で、外見という“情報”によって周囲に与える印象やもたらす感情が左右され、判断や評価などが大きく変わってしまうのも悲しいかな、「現実」なのである。

■若々しく健康そうな外見は「第4の資産」となる

近年、健康的な見た目や若々しく見える外見は「第4の資産」といわれている。

ちなみに第1の資産は、現金や貯金、有価証券、不動産などの固定資産といった「経済的資産」。第2は、その人が獲得してきた学歴や知識などを指す「個人的(教養的)資産」。第3は人生のなかで築いてきた人脈やネットワークなどの「社会的(人的)資産」を指す。見た目のよさや外見的魅力というファクターは、これらに次ぐ4番目の資産と考えられているのだ。

「見た目」にはファッションやメイク、アクセサリーや持ち物などを身につけることで得られる「装飾的な見た目」と、人柄や性格、心身の状態が外見に投影される「本質的な見た目」の2つがある。

■腸内環境の悪化はときとして外見に顕著に現れる

もちろん装飾的な見た目も軽視できないが、人生における“資産”としてより重きを置くべきは後者の「本質的な見た目」である。なぜならそこには、その人の「健康状態」が如実に反映されるからだ。

見た目がいいのは、心身ともに健康であることの証し。つまり「第4の資産=見た目」には、豊かな人生に不可欠な「健康」という資産も含まれているのである。

実際、1972年から1973年に生まれた1037人のニュージーランド人を45歳までずっと観察した研究が2021年に発表された。この論文によると、ヒトの老化のスピードはみなが同じわけではなく、生物学的に1年に2.44年も歳をとる人がいるのに対し、1年に0.4年しか歳をとらない人がいることがわかった。これを「生物学的老化速度(PoA:Pace of Aging:ペース オブ エイジング)」と呼ぶ。

そして、このPoA、つまり、老化速度を速める要素のひとつに「見た目が老けて見えること」が挙げられている。つまり、見た目は寿命まで影響を与えることが明らかになったのだ(※)

※出典:Elliott, Maxwell L., et al. “Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy.” Nature aging 1.3 (2021): 295-308.

そして、その見た目もまた「腸内環境」によって大きく左右される。腸の不調が外見にも現れてくるのだ。IBS(過敏性腸症候群)やSIBO(シーボ/小腸内細菌異常増殖症)は内視鏡検査などでは「見た目」に異常が認められない機能性疾患だが、腸内は異常なしでも、外見にそれらしき兆候が出てくることがある。

腸内環境の悪化や腸の不調というのは、ときに腸そのもの以上に、体の外側である「見た目」のほうに大きな影響を与えるもの。人生を豊かにしてくれる「第4の資産=健やかな見た目」を形成するためにも、腸の乱れを整える意識と取り組みが大切なのである。

■姿勢を維持する力とセロトニンの意外な関係

腸と脳とのつながり(脳腸相関)には、「セロトニン」が関係している。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、ドーパミン、ノルアドレナリンを制御し、イライラや「キレやすさ」を抑え、精神を安定させる働きをする。このセロトニンの9割が腸(小腸粘膜にあるクロム親和細胞〈EC細胞〉)でつくられている。

さらにこのセロトニンは、私たちの体にある「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」とも深くかかわっていることもわかっている。

抗重力筋とは、読んで字の如く「地球の重力に抗う筋肉」のこと。顔や首、腹部や背中、足など全身に張り巡らされ、伸縮しながら体の歪みを強制して姿勢を維持するための筋肉だ。まぶたが自然に落ちてこないのも、首が垂れてこないのも、目をパッチリ見開けるのも、口角を上げて笑えるのも、そもそもまっすぐ立っていられること自体、抗重力筋の働きがあればこそということになる。

そしてセロトニンには、この抗重力筋を刺激して働きを活性化する作用があるのだ。逆にいえば、セロトニンが足りないと抗重力筋が充分に機能しないということになる。

■顔の抗重力筋が緩むと暗くて眠そうな表情になる

セロトニンのメイン生産工場である腸の状態が悪化すると、セロトニンの生成にも支障が出て十分に分泌されなくなる。その結果、セロトニンの抗重力筋への作用が少なくなって機能が低下し、体の歪みを修正できなくなる。

首や背中、腰の抗重力筋(体幹の背側筋などの姿勢保持筋)が緩むと、背中が丸まって猫背になる。顔の抗重力筋(頬筋、眼瞼挙筋、咬筋)が緩むと、顔面の筋緊張が低下し、まぶたが落ちてきて眠そうな表情になったり、口角が下がって陰うつな表情になったり、口元が弛緩(しかん)してだらしない印象になったりする。

また、腸の具合が悪いと無意識におなかを守るような姿勢をとるため、つい猫背になる。脳腸相関とセロトニン(幸せホルモン)不足によって腸の不調や自律神経に悪影響を及ぼし、メンタル面の安定を欠いて表情がより暗く、陰うつになる――。こうしたケースもある。

いずれにせよ腸内環境が乱れると、さまざまな要因によって姿勢にも表情にも、“締まり”がなくなり、見た目の印象が大きくネガティブに傾いてしまうのだ。

腸内細菌が産生するセロトニンは血液脳関門を通過しないため、脳内に直接作用しないが、脳内のセロトニンの量を調節することで全身状態に影響を与えることがわかっているのだ。

■便秘が続くと肌荒れが起きるメカニズム

見た目の印象を左右する重要なポイントのひとつが「肌」だ。

肌、つまり皮膚は、もともと身体の調子が反映されやすい器官なのだが、とくに腸には敏感で「肌は腸の調子を映す鏡」などといわれることも多い。

腸内環境が乱れると腸の粘膜でしっかり栄養分の吸収が行われず、全身に十分な栄養が行き渡らない。皮膚も“栄養不足”になってトラブルに見舞われやすくなる。

皮膚の細胞に栄養が足りないとターンオーバー(皮膚が古い細胞から新しい細胞に入れ替わる代謝のこと)に支障が出て代謝が滞り、やはり肌の状態を悪化させてしまう。

また、腸内細菌のなかでも善玉菌の代表格として知られる「乳酸菌」には、皮膚の角層に作用して水分保持をコントロールし、適度な潤いを保つ保湿機能があることがわかっている。きめ細やかな瑞々しい美肌は、良好な腸内環境によってもたらされているのだ。

皮膚
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

だが逆に、腸内の“治安の悪さ”もまた、すぐに皮膚の状態に反映されてしまう。腸内フローラのバランスが崩れてたくさんの悪玉菌がのさばる状態に陥ると、腸内の消化物を腐敗させて「フェノール類」と呼ばれる有害物質をつくりだす細菌が増えてくる。

このフェノール類は皮膚にとって実にやっかいな成分だ。フェノール類は腸粘膜から吸収され、血液に乗って全身をめぐるのだが、その多くは尿として体外に排出される。

しかし排出されなかった一部が皮膚まで到達し、そこで蓄積されると、表皮細胞に悪影響を与えて、皮膚のくすみや乾燥、肌荒れなどのトラブルを引き起こすのだ。

便秘になると肌荒れがひどくなる――この定番ともいえる肌の悩みは「便が大腸内に長時間とまどっている(便秘)と、便の腐敗が進んでフェノール類が生まれる」というメカニズムにその一因があるといえる。

■「赤ら顔」の裏には小腸の細菌の増加がある可能性

さらに、本来細菌の数が少ないはずの小腸のなかで細菌が爆発的に増えすぎてしまうSIBOに罹患(りかん)している人には「酒(しゅ)さ(ロザケア)」が多い傾向がある。酒さとは、顔のほおや鼻、おでこや眉間といった部分に、紅斑(赤み)やほてりなどが生じる、いわゆる「赤ら顔」と呼ばれる皮膚疾患のこと。ダイアナ元イギリス皇太子妃やクリントン元アメリカ大統領なども酒さに悩んでいたことで知られている。

そして酒さによる顔の赤みの症状が見られる人は、そうでない人と比べてSIBOになっている確率が10倍近く高いという結果が得られている。また、酒さに悩む人の45~65パーセントはSIBOを併発しているというデータもある。

■健康な腸なくして美肌はない

皮膚から盛り上がった赤い発疹に銀白色の鱗屑(りんせつ)(うろこ状の垢)が付着し、それがはがれ落ちる「乾癬(かんせん)」という皮膚疾患があるが、乾癬患者の21パーセントにもSIBOの併発が認められている。しかもその患者にSIBOの治療を施したところ、明らかに乾癬の症状に改善が見られたという。

ほかにも、中国の研究では、「脂漏性皮膚炎(小鼻周辺や頭皮など皮脂の分泌が多い皮膚に発生する炎症)」の患者にかなり高い割合で、SIBOをはじめとする腸内フローラの不調があったことも報告されている。

先の「便秘と肌荒れ」しかり「SIBOと皮膚疾患」しかり、腸の好調不調は皮膚(肌)の健康状態に大きな影響を与えている。これを、「腸皮膚相関」という。

腸皮膚相関が報告されている疾患は、前述した乾癬以外にも、ニキビ(尋常性ざ瘡)、アトピー性皮膚炎、じんましんなど多数ある。

健康な腸ないところに美肌なし。肌と腸には深いつながりがあることを覚えておいてほしい。

■栄養が十分に吸収されないとパサパサ髪になる

外見に関する悩みで女性に多いのが「肌」なら、男性なら「髪の毛」――。かつて、髪の毛の悩みは男性の“専売特許”に近いイメージがあったように思う。

江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)
江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)

だが今や、髪の悩みに男女の区別などなくなってきている。薄毛や抜け毛だけではなく、コシや張りのない髪、ツヤのないパサパサな髪など、現代人の髪の毛の悩みは尽きない。

そして男女を問わず起こり得る「髪の毛にまつわるエトセトラな問題」の一因もまた、「腸内環境、腸内細菌」にあると考えられているのだ。

そこで指摘される原因は、肌のトラブルと同じメカニズム、つまり腸内環境の乱れによる栄養素の吸収機能の低下だ。

腸から体内に取り込まれた栄養素は全身に運ばれる。栄養素が十分に足りていれば、隅々まで行き渡るのだが、吸収が不十分で量に限りがある場合、当然ながら生命の維持に直接かかわる臓器・器官が優先されることになる。

髪や頭皮も大事な器官ではあるが、命にかかわるという観点では残念ながら優先度はさほど高くない。もし腸の不調で栄養吸収に支障が出れば“後回し”になるか、配分量が少なくなってしまう。そのため髪に十分な栄養が届かず、抜けたり、ツヤがなくなったり、パサついたりといったトラブルが起きてしまうのだ。

便秘や下痢の症状があると「爪」が変色したり、割れやすくなったりするのも同じ理屈だ。

病気を防ぎ健康を維持し健康長寿を達成するためにも、きりっとした姿勢や輝く笑顔を作り、肌や髪をイキイキとさせ、「見た目」という「第4の資産」を形成するためにも、腸内環境を整えることがいかに大切か、おわかりいただけたのではないだろうか。

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江田 証(えだ・あかし)
医学博士、江田クリニック院長
自治医科大学大学院卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバー。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などテレビやラジオ、雑誌などに多数出演。著書に『新しい腸の教科書』(池田書店)、『腸のトリセツ』(学研プラス)、『小腸を強くすれば病気にならない 今、日本人に忍び寄る「SIBO」(小腸内細菌増殖症)から身を守れ!』(インプレス)など多数。著書累計は90万部を突破し、そのうち5冊が中国や台湾、韓国など海外で翻訳されている。

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(医学博士、江田クリニック院長 江田 証)

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