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「K-POPアイドルになりたい」と新大久保に殺到する…日本で「Z世代の韓国化」が止まらない"これだけの理由"

プレジデントオンライン / 2023年6月10日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NeoPhoto

若者がイメージする「韓国」が大きく変化している。Z世代のトレンドに詳しい芝浦工業大学の原田曜平教授は「SNSの動向を分析すると、Z世代は『韓国発のトレンド』にとても敏感に反応している。性格診断は瞬時に広がり、韓国のコスメやファッションは飛ぶように売れる。日本のZ世代の間で『韓国化』がはじまっているようだ」という――。

■韓国発のトレンドに瞬時に食いつく日本のZ世代

僕は、芝浦工大の学生たちと一緒に、「Z世代」と呼ばれる10代から20代前半までの若者のトレンドを、毎月調査しています。最近の調査結果に僕は衝撃を受けました。日本のZ世代のトレンドが韓国一色だったのです。

日本のZ世代は今、急速に「韓国化」しています。今の“韓流ブーム”の特徴は「全網羅」と「リアルタイム」と言えます。若者たちの間で具体的にどんなことが起きているのか、以下の4つのテーマに分けて、順に見ていきましょう。

① 性格診断……アルコールBTI診断、ラベルシールテスト、恋愛キャラクターテスト
② 韓国コスメ……Wonjungyo、&nd by rom&nd(ローソン)、coou(ダイソー)
③ 韓流スポット……K-POPアイドル変身スタジオ、MUSINSA×NewJeansポップアップストア
④ TikTokと韓国アイドル……ウォニョンの#GoPlumpChallenge

■SNSでは「韓国発の性格診断」が大流行

①性格診断は、近年の韓国で非常に人気なコンテンツです。特に爆発的に流行しているのが「アルコールBTI診断(酒癖テスト)」。インフルエンサーやブロガーが取り上げたことで日本のZ世代の間で一気に広がりました。

「アルコールBTI診断(酒癖テスト)」は、「お酒の席で他の友達も呼びたいと友人に聞かれた。どうする?」といったお酒に関する2択の質問(全12問)に答えると、普段の性格のほか、酒癖、酔いがさめて後悔しないためのアドバイスを教えてくれます。

診断結果をSNSに投稿する人たちが続出しました。日本の若者は確かにお酒離れしていますが、最近はコロナも落ち着いてきて、飲み会が復活しています。アルコールBTI診断がお酒の席に誘う・誘われるきっかけになることも、流行の背景にあると考えられます。

「ラベルシールテスト」も韓国発の性格診断です。質問は全12問あり、例えば「友達と遊んでいたらもう夜10時!」という状況にどう思うか。「今夜は燃え尽きる! 誰も帰らせない」「もうそろそろ帰りたくてタイミングを計っている」の2択から回答を選択します。結果は16通りあり、自分の性格をかわいらしいデザインステッカーで表現してくれます。

ラベルシールテストの結果
ラベルシールテストの結果

■昭和世代の人気コンテンツは「占い」だったが…

最近では「恋愛キャラクターテスト」が注目されています。男性編・女性編に分かれ、こちらも全12問・2択の質問に答えると、「ブルドーザー彼女タイプ」「多情多感の彼氏タイプ」のように、自分の性格が16タイプの中から示されます。診断結果は、自身の性格や恋愛の傾向がキャラクターとともに描かれます。

恋愛キャラクターテストの結果

なぜこのような性格診断が流行するのか。「若い人たちは自分をカテゴライズするのが好き」という理由もありますが、SNSでシェアをすることで、友達に自分のことを知ってもらい、コミュニケーションのきっかけとして利用しているのだと思います。

僕のような昭和世代にとって、若い女性に人気のコンテンツと言えば「占い」でした。今は「韓国発の性格診断」にすっかり置き換えられてしまったようです。

■「韓国コスメ」は売り切れ続出

②「韓国コスメ」の勢いはとどまるところを知りません。トレンドになるコスメのほとんどが韓国発のブランドになっています。

例えば「Wonjungyo(ウォンジョンヨ)」は、大人気ガールズグループTWICEのメイク担当であるウォン・ジョンヨが監修する新コスメブランドで、2022年秋に誕生しました。TWICEのようなメイクが簡単に再現できると話題を集めています。

Wonjungyo(ウォンジョンヨ)オフィシャルサイトより
Wonjungyo(ウォンジョンヨ)オフィシャルサイトより

3月1日に発売された「メタルシャワーペンシル」(全3色、1650円)は、塗るだけでふっくらした涙袋がつくれると売り切れが続出。マスカラやファンデーションの新商品が発売されるたび、美容系のインフルエンサーがTikTokやYouTubeで取り上げるため「SNSで見ない日がない」と言われるほどです。

注目コスメの二つ目は、「&nd by rom&nd(アンド バイ ロムアンド )」です。これは、日本のローソンが韓国の人気コスメブランド「rom&nd(ロムアンド)」と共同開発したプチプラコスメです。リップ、マスカラ、アイシャドウ、アイブロウ、ファンデーション、ネイルが550~1580円の手ごろな価格で手に入ります。

3月末から全国のローソン店舗で販売を開始すると、発売3日間で売り上げは30万個を突破し、2カ月分が3日で売れました。「rom&nd(ロムアンド)」はZ世代にはよく知られたブランドです。さらに従来のコンビニコスメよりクオリティーが高いと評判になり、今でも供給不足が続いているようです。

■派手ではないけれどきちんと盛れる

三つ目は、100円ショップのダイソーの新シリーズ「coou(コーウ)」です。

これは、言うなれば「そっくり韓国コスメ」です。このシリーズは「韓国」を謳っているわけではありませんが、ダイソーが思いっきり「韓国コスメ」の発色やパッケージデザインをまねしたのは間違いありません。これがZ世代にウケています。価格は100~200円(税別)。人気の「韓国コスメ」に似た高いクオリティーの商品を安い価格で手に入れることができると、Z世代の間で大反響を呼んでいます。

なぜZ世代は「韓国コスメ」に熱中するのでしょうか。リーズナブルな価格で「派手ではないけれどきちんと盛れる」のがポイントです。ひと塗りであか抜けた印象、シャレた印象を出せる穏やかな発色。入手したくなるパッケージのかわいらしさも人気の秘訣(ひけつ)でしょう。

SNSでは韓国アイドルやメイクアップ動画が数多く流れています。こうした情報に、日常的に触れている影響は大きいです。アイドルに憧れ、自分も彼女たちに近づきたい、まねしたいと思う――。こうした感情が「韓国コスメ」人気を支えていると感じます。

■K-POPアイドルになれる写真スタジオは大人気

③韓流スポットは、日本国内で韓国にいるかのような体験ができる場所です。Z世代が「韓国化」している象徴的なトレンドになっています。

例えば、今年2月に新大久保にオープンした韓国アイドルになれる写真スタジオ「stage A」です。K-POPアイドルのような衣装(140着ある)をレンタルし、韓国メイクをしてもらい写真撮影をすることができます。韓国では同種のスタジオがありましたが、日本に上陸したのは同店が初めてということで、TikTokやInstagramで多くのインフルエンサーが紹介し、SNSで一気にトレンドになりました。

衣装レンタル・スタジオ撮影のレギュラープランが8350円(2人料金)、韓国風ヘアセット・メイクアップを含むパーフェクトプランは2万7950円(同)と、決して安くはありません。しかし「韓国アイドルのような格好をしてみたい」という若い世代が集まり、写真をSNSに投稿するのがトレンドになっています。「ナムドル」(男性アイドル)用の衣装も取り扱っているそうです。

■なぜZ世代は韓国発のトレンドに憧れるのか

Z世代はSNSの中にとどまらず、リアルな韓国を体験しようと積極的です。

4月に東京・原宿で、韓国の女性アイドルグループ「NewJeans(ニュージーンズ)」と人気ファッションECサイト「MUSINSA(ムシンサ)」がコラボした10日間の期間限定店舗がオープンしました。

イベント開催前からNewJeansのポスターが設置され、写真スポットになった
イベント開催前からポスターが設置され、写真スポットになった。(MUSINSA JAPAN のプレスリリースより)

会場には、イベント開催前からNewJeansのポスターが設置され、写真スポットになったほど。店舗では、韓国の最新ファッションブランドが並んだだけでなく、現地で人気のドーナツ専門店や、ソウルの有名レコードバーのDJブースも登場しました。

まだ日本に進出していないリアルな韓国を体験しようと多くのZ世代が集まり、SNSには関連する無数の投稿がアップされました。これまで日本で流行していた“韓国風”トレンドとは違い、リアルな韓国カルチャーに触れられることが、Z世代の心を掴んだと言えるでしょう。

■「最先端」「オシャレ」だからまねしたい

④韓国アイドル・芸能人の人気は、日本のZ世代で進む「韓国化」の下地になっています。TikTokを見ると、韓国アイドルのダンスやポーズをまねた投稿で溢(あふ)れています。

例えば「#GoPlumpChallenge」と呼ばれる一連の投稿動画があります。これは、すっぴん姿からメイク姿に変わる変身動画として韓国で流行し、日本でもまねた動画が数多く投稿されています。

発端は韓国発のコスメブランド「innisfree(イニスフリー)」が韓国で展開した美容液のTikTok広告です。日本のZ世代でも人気の高い韓国の6人組ガールズグループ「IVE(アイヴ)」のウォニョンが起用され、その振り付けをまねた動画がTikTokで大流行。ウォニョン風メイクも広まりました。ミュージックビデオだけでなく、広告動画すらまねてしまうから驚きです。

Z世代が韓国アイドル・芸能人をまねる理由は何でしょうか。自分の好きなアイドルを応援したい「推し活」の一種だと思いますが、若い世代は韓国発のトレンドに「最先端」「オシャレ」というポジティブな印象を抱いているのだと感じます。これは韓国アイドル・芸能人がもたらした影響が非常に大きいと思います。

■J-POPブームは昔話になった

1990年代の日本やアジアは、安室奈美恵さんに象徴される空前のJ-POPブームでした。彼女のファッションをまねた、茶髪、細眉にミニスカート、厚底ブーツの「アムラー」が各地で現れました。そんなJ-POPブームはすっかり過去のことになりました。

日本のアイドルは、SMAPや嵐ほどの人気グループでも、北京・上海・ソウル・台北といった都市でしか公演を行っていませんでしたが、K-POPアイドルは、2000年代初期の頃から、東南アジアを中心にツアーを展開し、グローバル展開の地足を着実に固めていきました。

日本でも東方神起やKARA、少女時代がブレークし、彼らのルックスや洗練されたパフォーマンスが広く認識されるようになると、強力な味方が現れます。SNSです。K-POPアイドルたちの音楽やダンス、あるいは彼らを起用したCMが拡散されるようになりました。彼らの影響力とともに、韓国が若者トレンドの発信地になったように思います。

今でも「ZEROBASEONE(ゼロベースワン)」や「Girls Planet 999」発のグループなどが生まれるたびにSNSで大きな話題になりますが、日本のアイドル・芸能人が韓国で話題になることはまれです。

もはやZ世代にとって「カワイイ」は日本にはなく、お隣の韓国にある。「カワイイ」を求める日本のZ世代が「韓国化」するのは当然でしょう。若者は政治離れ・ニュース離れが加速していることもあり、政治情勢に関係なく「韓国化」が進んできたと言えます。

夜の明洞
写真=iStock.com/fotoVoyager
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotoVoyager

■リアルタイムで何でも網羅的なトレンド

日本の韓流ブームは、これまで5回起きていると言われます。

第1次韓流ブームは、2000年代初頭の「冬ソナ」ブーム。2010年代前半になると、東方神起やKARAなどのK-POP人気が第2次ブームを起こしました。第3次は、SNSの台頭を追い風に2010年代後半に起きた、K-POPアイドル風「オルチャンメイク」や韓国グルメのブーム。コロナ禍と前後した第4次ブームでは、『パラサイト 半地下の家族』「イカゲーム」「愛の不時着」などの韓国映画・ドラマが大ヒット、BTSやBLACKPINKを筆頭とするK-POPアイドルも、日本と世界を席巻しました。

そして現在起きているのが、“第5次韓流ブーム”と言われています。第1次~第4次の韓流ブームは、K-POP・コスメ・ファッション・ドラマ・グルメという5つの主要なジャンルのコンテンツが、少数のインフルエンサーたちのフィルターを通したうえで、時間差をおいて日本に伝わる流れが基本でした。

しかし、最新のトレンドは、SNSの浸透で誰もが発信することが可能になった今、何でもアリの全網羅型になっていると感じます。ジャンルの幅が広がって、性格診断や広告まで流行してしまうのです。

■ブームではなくスタンダードになっている

僕が仰天したのは、カルディが発売した「韓国レトロ皿セット」が飛ぶように売れたこと。これは、1980~90年代に韓国の軽食屋や屋台で使用されていたものを再現したメラミン食器3点と、プルコギのタレのセット(1300円)です。今年の2月に数量限定で販売され、瞬く間に完売となりました。

マーブル模様の入ったヨモギ色の食器はどちらかといえば渋いテイストだと思うのですが……売り切れで買えなかったと嘆く大学生は「今の日本の女子はみんな韓流ファン。これぐらいズラさないと“ガチ韓国好き”をアピールできなくなっている」と話していました。“にわかファン”と差別化を図るために、韓国のレトログッズまで売れる現象が起きているのです。

韓国でのトレンドがタイムラグなく日本へ紹介されることも当たり前。さらには、韓国のレトロまでもが人気になるのは、これまでになかった現象です。

僕は「韓流は一過性のブーム」とは考えていません。韓流ブームは第2次から裾野を広げながら継続して今に至っていると考えています。日本の若者にとって、韓国はもはやブームやトレンドではなく「スタンダード」なのです。それが日本のZ世代の「韓国化」という現象になって現れているのだと思います。

■若者の「日本離れ」と表裏一体

今回は「なぜ日本のZ世代は『韓国化』しているのか」を、韓国発のトレンドから見ていきました。別の見方をすれば、日本から若者トレンドが生まれなくなったと言えるでしょう。

日本は、バブル崩壊以降、経済が低迷し続けています。2023年の今も、お金を持っているのは中高年。よって、日本企業にとっての顧客ターゲットは中高年であって、若者ではありません。これでは、日本発の若者トレンドは生まれようもありません。

韓国は違います。僕はつい先日、韓国に1週間、調査に行ってきました。ソウルには、2021年にオープンした大型商業施設「ザ・現代ソウル(THE HYUNDAI SEOUL)」や、江南(カンナム)エリアなど、「MZ世代(ミレニアル世代とZ世代を合わせた20~30代の若者)」がターゲットのおしゃれスポットがたくさんあります。

韓国も少子高齢化社会で、若い人が少ないのは日本と同じです。しかし、韓国は、経済が上向きで、若い世代のほうが所得もエネルギーもある。だから、企業は多少のリスクを背負ってでも、若者向けの攻めた投資ができるわけです。

■韓国=トレンドの最先端、日本=レトロという新しい構図に

一方で、韓国のZ世代も日本の影響を受けていることは事実です。先日、釜山で10~20代の韓国人にインタビューをしてきました。そこで感じたのは、韓国の若者はみんな日本のアニメと漫画が大好き。日本への旅行も大定番だということです。今や日韓のZ世代は、同じカルチャーとトレンドを共有しています。その意味では“日韓融合”と言えるかもしれません。

しかし、韓国のZ世代が「日本化」しているかといえば、それは少し違います。

彼らは日本を「レトロな国」を見なし、懐かしさや親しみを感じています。例えば、大都会の東京に残る古い街並み。ご飯がおいしく、人も優しい、懐の深さ。異常な受験戦争もなく、熾烈(しれつ)な就職戦争もなく、激しい貧富の差のない日本――。韓国の若者にとって日本は心のオアシスであり、「最先端トレンド」とはかけ離れた「レトロな国」なのです。

日本が世界に誇れる若者向けコンテンツは、アニメと漫画です。若者トレンドという分野では、日本は韓国に完敗しているのが現状です。

「NiziU(ニジュー)」や「IVE」といった韓国アイドルユニットには日本人メンバーが加入しています。韓国のフォーマットで、もちろん歌、ダンスもすべて韓国式です。本音を言えば、これが「日本の敗北」を端的に示していると感じます。もちろん若者トレンドの分野に限ったお話です。

僕のような昭和世代は複雑な気持ちになるかもしれませんが、「Z世代の韓国化」は今も進行中です。日本からもう一度、自分の国の若者をときめかせるコンテンツ、グッズが生まれてほしい。韓国や中国、世界中の若者をときめかせてほしい――。僕はそう願っています。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。

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(マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授 原田 曜平 構成=奥地維也)

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