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「だから世襲政治家はダメなんだ」の大合唱…自分の息子すら制御できない「岸田親バカ政権」の正念場

プレジデントオンライン / 2023年6月9日 13時15分

首相官邸を後にする岸田文雄首相(手前)。左奥は岸田翔太郎首相秘書官=2023年4月20日、東京・永田町 - 写真=時事通信フォト

■就任当初から「親バカが過ぎる」と批判

岸田文雄首相と長男・翔太郎氏は父子鷹ならぬ親子バカである。

岸田首相は政権が発足1年を迎えた昨年10月、長男の翔太郎氏を政務担当の首相秘書官に据えた。

首相は、翔太郎氏の職務について、「休日、深夜を問わず発生する危機管理の迅速かつきめ細かい報告」「党との緊密な連携」「SNS発信への対応」などをあげ、「諸要素を勘案し、秘書官チームの即応力の観点から、総合的に判断した」と説明した。

たしかに身内を首相秘書官に充てる例は過去にもあった。2007年には福田康夫元首相が息子の達夫氏を政務の首相秘書官に起用した。康夫氏も父・福田赳夫氏の首相秘書官を務めたし、岸信介元首相は娘婿の安倍晋太郎氏を首相秘書官にしている。安倍晋三元首相も父が外務大臣だった時に外務大臣秘書官になっている。

だが、内閣支持率が続落する中での身内の登用に対しては、野党だけではなく自民党内からも「タイミングが悪い」「親バカが過ぎる」という批判が噴出した。

■「親バカ人事」をゴリ押しした首相の思惑

なぜ、岸田首相は批判覚悟で親バカ人事をゴリ押ししたのか。私は、岸田首相は自分の首相としての任期がそう長くはないと思い、早く息子を後継者だと認知させておきたかったのではないかと考えている。

そうでも考えなければ、首相就任わずか1年半の間に、敵基地攻撃能力の保有、防衛費倍増計画、憲法9条改正、原発新増設など、矢継ぎ早に国民の声を無視して国の形を歪めようとする“異様”なやり方をするわけはない。できなくて元々。もし、できれば俺は安倍元首相を超えられる。そういう“妄想”に取り憑かれているのではないだろうか。

元経産官僚の古賀茂明氏は『分断と凋落の日本』(日刊現代)の中で、「安倍氏は“妖怪(岸信介=筆者注)の孫”である。そして“妖怪の孫”亡き後もなお、得体のしれない安倍的なものが政界に漂っている。まさに妖怪は滅びずいまもなお自民党を支配しているのだ」と書いている。

たしかに安倍氏の霊が岸田首相に憑依し、安倍氏が果たせなかった憲法改正、戦争のできる“普通”の国づくりへと邁進させていると考えると、妙に納得できるものがある。

岸田首相にとって安倍氏の遺志を継ぐこと以外はどうでもいいことなのだ。「金融所得課税の強化」「異次元の少子化対策」「旧統一教会と自民党議員とのなれ合いを断つ」などの発言は、その場その場の口から出まかせにすぎない。

■マイナ問題は「トラブル隠し」で批判から逃げている

マイナンバーカード普及も同じようなものだったに違いない。だが、これを自分の手柄にしたい河野太郎デジタル相が、マイナを義務化し、2024年には紙の保険証を廃止するといってしまったため、引くに引けなくなったのではないか。

そのため、マイナ保険証システム(オンライン資格確認システム)が万全ではないのに強引に進めた結果、別人の医療情報が紐づけられるという重大な事態が多発してしまっている。

政府は、誤登録は約7300件と公表しているが、これは氷山の一角に過ぎないはずである。

河野デジタル相は、「間違ったデータをもとに医療が行われ、健康に被害が及べば深刻なトラブルだ」とまるで他人事のような物いいである。

読売新聞オンライン(06/06 11:53)によれば、岸田首相は6月6日に開いたデジタル社会推進会議で、2026年中を視野に、券面の記載事項を見直した新しいマイナンバーカードの導入を目指す方針を示した。

読売は、マイナカードをめぐってはミスやトラブルが相次いでおり、導入には疑問の声も上がりそうだとしているが、早くも今のシステムを諦め、新しいシステムを導入することで「トラブル隠し」をし、批判から逃げようというのである。岸田首相の本気度が疑われても致し方ない。

■「国民との丁寧な対話」はどこへ行ったのか

岸田首相に聞きたい。あなたが首相に就いたときの会見(2021年10月4日)で何といったか覚えているだろうか?

「若者も、また高齢者も、障害のある方も、また女性も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される、こうした社会を目指してまいります。これらを実現するためには、一人一人の国民の皆さんの声に寄り添い、そして多様な声を真摯に受け止め、形にする、こうした信頼と共感が得られる政治が必要であります。そのため、国民の皆さんとの丁寧な対話を大切にしてまいります」

しかし、岸田首相がやってきたのは真反対のことばかりだった。

国民の中に反対の声も多かった「安倍元首相の国葬」を独断で決めてしまった。福島第一原子力発電所事故を機に定められた原発依存度低減の方針を破棄し、原発事故後に「最長60年」と定めた運転期間ルールを見直して最大限の原子力活用にかじを切ったが、十分な審議が行われたとは到底思えない。

異次元の少子化対策とは名ばかりで、財源をどうするのかさえ先送りしてしまった。財源がないといいながら、異次元というより狂気の沙汰としか思えない防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度(年間11兆円)に増額すると突然いい出したが、国民のどの声を聞いたというのか。

■「悪いことをしなさそうだという安心感」こそ危ない

中国と対話を重ねることで緊張関係を改善すべきなのに、逆に緊張を煽(あお)るような防衛費のけた外れな増額は一体何のためなのか。国民の誰一人として丁寧な説明を受けたことはないはずである。

多様性が尊重される社会を作るといいながら、同性婚の法制化をめぐる答弁の中で「極めて慎重に検討すべき課題」「家族観や価値観、社会が変わってしまう」と発言した。

当時の荒井勝喜首相秘書官は記者団の取材にオフレコで、「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」といった。あなたたちは多様性を尊重してなどいないではないか。

思わずトーンが上がってしまったが、岸田首相は悪相ではない。その辺にいる人のいいオッちゃん風の風貌に騙(だま)されてしまうのだ。世論調査でも岸田内閣を支持する理由の大多数が、「ほかにいい人がいないから」というものである。

彼の政策やビジョンが素晴らしいわけでも何でもない。悪いことをしなさそうだという安心感なのだが、こういう手合いが実は一番始末が悪いのだ。

話を息子の翔太郎氏に戻そう。彼が政務秘書になって最初のメディアの洗礼はFACTAオンライン(12月22日 12:00)だった。

マイクインタビュービジネスマン、政治家とジャーナリスト
写真=iStock.com/Semen Salivanchuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Semen Salivanchuk

■極秘情報の流出、外遊先で観光三昧…

「『翔太郎氏の秘書官就任直後から、官邸内の極秘情報が外部に漏れている。疑われている流出先はフジテレビの総理番の女性記者。実に困惑している』(官邸周辺者)。

大手紙の政治部記者が解説する。

『政務秘書官だった山本高義氏が古巣の岸田事務所に戻り、代わって翔太郎氏が秘書官に就任したのは10月4日のことでした。その20日後の24日、旧統一教会の韓鶴子総裁との親密写真の存在が発覚して、去就が注目されていた山際大志郎経済再生相の辞任をフジがいち早くスクープしました。岸田首相が頑なに野党の辞任要求を阻んでいましたから、フジの速報に各社とも泡を食ったんです』。

山際氏の辞任は、その後の相次ぐ閣僚辞任ドミノの始まりとなった」

翔太郎氏が親しい女性記者に情報を漏らしていたというのであるが、真偽のほどは分からないままだ。

次は週刊新潮(2月2日号)。今年1月に欧米5カ国を訪問する父親に同行したが、首相を補佐するどころか、大使館の車を乗り回して名所観光やグルメ・買い物三昧だったと報じたのである。

「この旅程の間、翔太郎さんにはリエゾンと呼ばれる、現地での調整・連絡係の大使館員が常に付いていました。ですから、こうしたスタッフも“ご観光”に同行させられることになったんです。また、観光地巡りの度に大使館の公用車を出す必要があったため、それにも手間がかかる。各国の大使館員にとって大きな負担となっていました」(政府関係者)

■息子に足を引っ張られる岸田首相

自民党関係者もこういっている。

「翔太郎さんは首相秘書官になる前から、複数回、総理の外遊に同行し、政府専用機にも乗せてもらっていました。将来に向けて経験を積ませるためでしょうが、政府専用機とは文字通り、政府のスタッフが乗るためのもの。息子とはいえ、立場としては衆議院議員の事務所スタッフに過ぎない翔太郎さんが乗っていたのには、違和感を禁じ得ません」

岸田事務所の会報のタイトルは「翔」というそうだが、息子の名前からとったことは一目瞭然である。

この新潮の報道に対して、岸田首相は答えず、木原官房副長官は「公務以外の不適切な行動は確認されなかった。問題ない」という認識を示した。

しかし、こうした翔太郎氏の行動を逐一知り得るのは外務省関係者ではないかとみられ、岸田外交に常々不満を持っていた外務省関係者の関与が疑われたが、これまた真偽は藪の中である。

ウクライナのゼレンスキー大統領のためのG7広島サミットが終わり、支持率の上がったタイミングで解散・総選挙を仕掛け、憲法改正に本腰を入れようと考えていた岸田首相の企みを“頓挫”させたのも翔太郎氏であった。

■“親戚の家に遊びに来た”ノリで公邸で大宴会

昨年末、翔太郎氏が首相公邸に親戚連中を招き入れ、大宴会をしていたことを週刊文春(6月1日号)が多くの写真付きで報じたのである。

現在、岸田首相は公邸で長男と2人で暮らしているのだが、昨年12月30日、親戚たちをその公邸に招いて、首相の立ち位置であるセンターで笑みを浮かべていたのが翔太郎氏本人だというのである。

だが、首相公邸は宴会場ではない。

「二一年、野党議員の質問主意書に対して政府が公表した答弁によれば、公邸は『内閣総理大臣の職務の能率的な遂行を確保し』『国の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的とする施設』とされています。もちろん首相の私的な居住スペースもありますが、迎賓や執務機能も備え、オンラインでの首脳会談が行われることも。万全の警備体制が敷かれ、年間の維持費は約一億六千万円とされています」(官邸担当記者)

文春で翔太郎氏の知人が語っている。

「この日は、岸田家の親戚あわせて10人以上が首相公邸に集まり、忘年会が開かれたそうです。現在、岸田首相は公邸で、翔太郎氏と2人で暮らしている。ご一行にとっては“親戚の家に遊びに来た”というノリだったのでしょう」

親戚の気安さゆえか、赤じゅうたんの敷かれた階段に寝そべっている写真や、新閣僚がズラリとひな壇に並ぶ様子を模した写真もあり、やりたい放題の様子が見て取れる。

■「常識的には考えられません」

「寝そべっている男性は、岸田首相の甥で翔太郎氏の従兄弟にあたるA氏です。A氏の父親は岸田首相の3歳下の実弟で、外国人の国内労働を支援する『フィールジャパンwith K』代表取締役の武雄氏。母親はスナック菓子で知られる『湖池屋』創業者の長女と、“華麗なる一族”の家系です。本人は20代半ばで、関西の大学を卒業後、現在は愛知の商社に勤務しています」(翔太郎氏の知人)

翔太郎氏はひな壇写真で首相の位置に立っており、今回の騒動でも中心人物なのは明らかだという。

政治アナリストの伊藤惇夫はこう憤る。

「首相が公邸に客を呼ぶことはありますが、あくまで職務に関わる話をするため。公邸で宴会なんて聞いたことがない。撮影された写真は“公邸見学”の域を大幅に超えており、常識的には考えられません」

これが報じられると、岸田首相の責任を問う、公邸で宴会などもってのほかという声のほかにも、政府の情報管理が甘すぎる、世襲政治家にはロクなのがいないなど大騒ぎになった。

当初、岸田首相は事の重大性を認識できず、5月26日の参院予算委員会で野党から追及されると、呆れたことに「忘年会」に自らも出席して挨拶したことまで認めた。だが、息子の更迭については明確に否定したのである。

議会と曇り空。撮影場所:首都圏
写真=iStock.com/kanzilyou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

しかし、文春報道直後に行われた日本経済新聞とテレビ東京の世論調査で支持率が急落すると、あわてて翔太郎氏を更迭すると発表したのだから笑止千万というしかない。

■フライデーも岸田首相「ご満悦参加写真」と続く

各新聞社の「社説」には週刊文春の名が溢(あふ)れた。読売新聞は5月31日付でこう書いている。

「対応が遅きに失したのは、首相の気が緩んでいるからとしか思えない。首相に諫言(かんげん)する側近も、いなかったのだろうか。

広島でのG7(先進7か国)首脳会議は一応、成功した形だが、国際情勢は緊迫し続けている。再び円安傾向が顕著となり、経済の先行きは見通せない。

難題が山積する中、首相がたるんでいたら、政権の基盤が揺らぎかねない。首相は足元を固め直して、緊張感を持って政策遂行にあたる必要がある」

だが、フライデー(6/16・23日号)が二の矢を放った。「【独占入手】岸田首相が『息子大ハシャギ公邸忘年会』に寝間着&裸足で『ご満悦参加写真』」がそれである。

「長男で首相秘書官の翔太郎氏(32)ら首相の親族が、公邸内の階段で寝そべるなど大ハシャギの宴会を繰り広げたことが『週刊文春』で報じられるや、世間は大ブーイング。

だが首相は翔太郎氏に『厳重に注意した』と述べるにとどめた。野党はおろか、国内外のメディアから『身内に甘い』と叩かれても、首相は動かない。それどころか、5月26日の参院予算委員会で『私も私的な居住スペースにおける食事の場に顔出しをし、あいさつもした』と、息子をかばう素振りさえ見せた。

その『違和感』の正体が、本誌が入手した集合写真である」

■なぜ安倍夫人は許され、翔太郎氏は許されなかったのか

「『あいさつ』どころか、裕子夫人(58)や翔太郎氏らとともに、首相本人もご満悦の表情で『記念写真』に収まっていたのである」(フライデー)

岸田首相はスウェットにダウンベスト、裸足というくだけた格好で、魂の抜けたような笑みを浮かべている。

これまでも安倍首相(当時)の妻の昭恵さんが官邸に友人を呼んだり、公邸を私用で使ったりすることはあったが、今回ほど問題にはならなかった。かえって奔放な妻に振り回される安倍氏に同情の声さえあった。

今回はなぜここまで大きな問題になったのか。公私混同は安倍昭恵さんのケースと同じだが、身内だけで行われた宴会の写真が流出したことで、公邸を含めた政府の情報・危機管理の甘さが露呈してしまった。さらには、ゆくゆくは父親の跡を継いで政界入りするであろう翔太郎氏の政治家としての資質や能力についての疑問が、「だから世襲政治家はダメなんだ」という批判となって広がっていったことにあると思う。

自分の息子の身勝手な振る舞いさえ御せない人間が、この国を統べることなどできないこと、今さらいうまでもない。

岸田首相が一か八かの賭けに出て解散総選挙をする可能性はゼロではない。だが、東京選挙区をめぐって公明党との関係がぎくしゃくしているようだから、踏み切るには相当の覚悟がいるはずだ。

岸田親バカ政権は正念場を迎えている。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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