「人気商品が79%オフの限定特価」にはウラがある…クレカ情報を吸い取る"ニセ公式サイト"の巧妙な手口
プレジデントオンライン / 2023年6月15日 14時15分
■クレカ情報をだまし取られてしまう被害も
消費者庁は4月、人気インテリア家具や雑貨等の公式通販販売サイトを装った偽サイトについての注意喚起を行った。ビーズソファの「Yogibo(ヨギボー)」、インテリア家具の「Francfranc(フランフラン)」、会員制量販店の「COSTCO(コストコ)」、暖房器具の「Aladdin(アラジン)」が例として挙げられている。
偽サイトへ誘導する手口は、InstagramやFacebookなどのSNS上の安売り広告や、検索エンジンで上位に表示された広告だ。ブランドロゴや商品写真を転用しているため、一見しただけでは偽物とは気づきづらいのが特徴だ。
国民生活センターによると、注文時にクレジット決済を求められてクレジットカード番号などの重要情報を入力してしまい、不正利用されたというケースも報告されている。
■「目当ての商品が届かない」以外は本物そっくり
こうしたSNS上での偽サイトの手口は巧妙化している。サイトの閲覧中に「只今●●県からの○○は弊社の商品をご購入」とポップアップメッセージを表示して多くの人が利用しているように見せる。注文後には「発送の準備をしています」と返信メールを送ってきたり、配送状況を追跡できるURLを送ってきたりする。注文しても商品は届かないとか、商品は届いたけれど偽物だったとか以外は本物そっくりのため、だまされてしまうのだ。
偽サイト関連の全国の消費生活センターへの相談は急増。2021年度の5941件から、2022年度には1万1019件と約2倍となっている。
2022年1月~23年3月には、冒頭の4ブランドの偽サイトに関連した相談だけでも1462件寄せられ、このうち246件で合計316万円の被害が確認された。判明した個別の被害額は、最も多い事例で6万3200円に上った。
■「インスタの投稿は全部本当のはずなのに…」
実際、偽サイトにだまされそうになったという50代の女性に、Instagram内に表示された偽ヨギボー広告を見せてもらった。スマホで閲覧していたので、スクリーンショットを撮って保存しておいたそうだ。「前からほしかったけれど高くて諦めていた。でもこの値段ならと思って買いそうになった」
![スマホでInstagramを見ている人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/8/1200wm/img_08d92fdbf5da8416338cae8cb048093d114093.jpg)
広告に掲載されているヨギボーのロゴと写真は正規のものと同じで、不審な点は一切見つからない。一点、目を引くのは、「期間限定で特別価格」として、全身で寝転べるサイズの大型ビーズクッションのセール価格が税込み7950円(送料無料)となっていること。公式サイトの定価は税込みで3万8280円なので、実に79%オフという驚くべき値引き率だ。
「(サイトを)見に行ったけれど、場所を取りすぎるかと思って購入をやめたら、(ヨギボーの偽サイトが)ニュースになっていて驚いた。Instagramがおすすめしているから、疑いもしなかった。インスタで見ている投稿は全部本当のはずなのに、なぜあれだけ嘘だったのかわからない」
■インスタでは詐欺につながる投稿も表示される
Instagramには、今回のような詐欺サイトへ誘導する投稿もあれば、副業詐欺や投資詐欺に誘い込む投稿、明らかなデマ投稿もある。しかし女性は、Instagramで見かける投稿はすべて真実と思い込み疑っていなかったようなのだ。
Instagramでは、自分がフォローしたアカウントによる投稿以外に、閲覧履歴に合わせた投稿がおすすめとして頻繁に表示される。広告も同じ欄にほぼ同じ見た目で表示される。見分けるポイントは、アカウント名の下に「広告」と書いてあるかどうかだ。女性は日常的に、そのようなおすすめ投稿を見て新たにアカウントをフォローしたり、広告から商品を買ったりしていたという。
また、検索マークをタップすると「発見タブ」が表示される。「おすすめ」とも呼ばれ、ユーザーの興味関心に合わせて気に入りそうな投稿をレコメンドしてくれる機能だ。ユーザーは、Instagramなら探しに行かなくても自分好みの投稿が見られると学んでいるのだ。
■インスタは広告の信頼性を担保していない
SNS利用率が高い若者の中にも、広告をそれと認識せずに利用している人がいる。広告を検索結果の一つ、自分向けにおすすめされた投稿の一つとして見ているのだ。そのような若者にとって、広告は楽しむコンテンツの一つであり、警戒心を持つべき対象と考えにくい。
実際、「SHIBUYA109 lab.調べ」によると、15~24歳の男性の49.5%、女性の32.5%がSNSでの広告やPR投稿から商品を購入した経験があると答えたそうだ。SNS広告をきっかけにした買い物へのハードルが低い様子が見て取れる。
SNSの広告を使った誘導は典型的な詐欺の手口の一つだ。しかし、Googleで検索した時に広告で一番上に表示されたから、SNSで表示されたから、そのような理由で広告を信じてしまう若者は確かにいる。
また、若者の中には基本的にSNSしか見ないとか、なんでもSNSで検索するという人がいる。そのような若者は、詐欺サイトが混じっているなど考えもしないかもしれないが、実際は公式サイト以外でも広告を出すことはできるため、偽サイトによる被害が起きているのだ。
一般ユーザーにとっては、広告も表示される投稿もあまり違いはないものかもしれない。しかし広告はあくまで企業から出稿されたものであり、Instagramが内容の信頼性を担保しているわけではないのだ。
■偽サイトの特徴は「極端な割引、怪しいURL」
見た目だけではわからないなら、どのように偽サイトを見分ければいいのか。偽サイトには、いくつかの特徴がある。
一番わかりやすいポイントは、公式価格からの極端な値引きだ。「90%引き」「80%引き」などのあまりに極端な割引は、偽物である可能性を疑うべきだ。
サイトのURLも、企業名やブランド名などではなく、まったくの無関係なもの。また、一般的な公式サイトは末尾が「.com」「.jp」「.co.jp」などとなっていることが多いが、偽サイトはそれ以外のものが多いのも特徴だ。たとえば、ヨギボーの公式サイトのURL末尾は「.jp」だが、偽サイトは「.xyz/」や「.live/」などだった。
パソコンではURLがページ上部に表示されているので確認しやすい。スマホでも、ブラウザによって異なるが、サイトの上部や下部にURLが表示されている。少しでも違和感を持ったら、URLをチェックする習慣をつけることが大切だ。
■「支払いはクレカ決済限定」も疑うべき
消費者庁が確認した偽サイトの会社概要欄には公式サイトと同じ運営会社の社名、または似た社名などが表示されていたが、いずれも電話番号の記載はなかった。通常の公式サイトならば、「0120」「0570」などの問い合わせ用の電話番号があるものだ。所在地に関しても記載がない、またはでたらめとなっている。
支払い方法も「クレジット決済のみ」「銀行振込のみ」と限定しているものが多いようだ。通常は利便性を高めるため、複数の支払い方法を用意していることがほとんどだ。また、振込先は通常法人名となっているものだが、個人名となっていることが多いという。
そのほか、サイト内のリンクに不備が多いとか、「送料無料三日か五日届きます。」など、サイト内や返信メールの日本語が不自然などという特徴もある。
■ニュースを見れば被害リスクを下げられる
偽サイトによる被害は過去にも繰り返し起きている。そのどれもが前述したような点がおかしかったり不自然であったり、絶対に見分けられないというわけではない。今後もきっとまた違うブランドの偽サイトが現れるはずだ。
ぱっと見では分かりづらくても、URLや会社概要欄といったチェックポイントさえ必ず確認するようにすれば、だまされずにすむ可能性は高くなる。初めての通信販売サイトで購入する際には、必ずそのサイトが本物なのか、信頼できるのかを確認して利用すべきなのだ。
残念ながら、最近の若者はあまりニュースを見ていない。新聞やニュースのアプリを利用する若者は少数派であり、ネットニュースでは自分の興味関心のあるニュースしか目に飛び込んでこない。
しかし、類似のニュースを見かけたことがあれば、このような偽サイト被害が多発していることを把握して、確認することで被害が防げたかもしれない。ニュースを見ることでも、このような詐欺被害に遭うリスクを下げられるのだ。周囲の若者にも、このような被害が起きていることをぜひ伝えてあげてほしい。
また、商品の購入で困ったり、不安に感じたりした際には、消費者ホットライン「188」に相談するようにしてほしい。
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成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)
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