MBAホルダーの創造性は幼稚園児よりはるかに低い…スタンフォード人気教授が教えるビジネスの現実
プレジデントオンライン / 2023年6月14日 14時15分
■世界的な不動産が直面した「4階」問題
2014年に、100以上のショッピングセンターと数百億ドル相当の運用資産をもつ、ある世界的な不動産会社が、小さいながらも深刻な問題に直面した。主要都市にある高級モールの4階で、しばらくのあいだ賃貸料が急落していたのだ。
大勢のオフィス労働者が買い物や食事をしにこの新しいモールに訪れるのを見込んで、会社は出費を惜しまなかった。とりわけ、モザイク張りで天井がドーム状のこの4階は最高傑作といえた。エレベーターに乗って上がってくれば、街全体を見渡すことができたのだから。
しかし残念なことに、4階まで上がってくる人はごく少数だった。4階はゴーストタウンのようで、この階に入っていたテナントは、苦労したあげくに次々と出ていった。会社が何を試みようと、4階に十分な客足をもたらしてそれらの店舗を存続させることはできなかった。この問題に取り組むために、経営陣はブレインストーミング・セッションを設けた。
セッションが始まって約10分が経ったところで、その後の議論をすべて誘導することになる強烈なアンカー(最初に提示された影響力のある情報)を誰かが提案した。
■事業にとって重要なのは、有用性の問題
「ビアガーデンをつくろう」
なんてすばらしいアイデアだ! 冷えたラガービールほど、美しい眺めにふさわしいものがほかにあるだろうか? 長い一日の仕事を終えた地元の会社員が、ギリシャの神々がオリンポスの山頂でアンブロシア(訳注/ギリシャ神話における神々の飲食物)を口にするように、街並みを見下ろしながらオーガニックの地ビールを味わえるのだ。
ブレインストーミングは続いたが、ビアガーデンというアンカーの引力は、抗しがたいものだった。それからあとに出てきた提案にはすべて、その影響が見てとれた。
「ビアガーデンのことはいったん忘れよう。……ワインガーデンはどうだろう?」
ビアガーデンの思いつきが会議室ではいくら魅力的に思えても、「有用性」を確認しないことには、会社は失敗するかもしれない試みにこれ以上お金をつぎこむ気はなかった。そもそも買い物客たちは、モールの4階でビールを飲みたいと思うのだろうか? ビアガーデンは、お客をエレベーターに乗ろうという気にさせるだろうか? そして、さらに重要なことだが、4階にいるあいだに、何か買い物をするだろうか?
事業にとって、有用性の問題は実現可能性よりも重要だ。望む人が誰もいなかったら、製品やサービスを提供できたところで意味がない。だが、まだ存在していないものの有用性を確かめるには、どうすればいいのだろうか?
■85%が「ビアガーデンに行ってみたい」と答えた
この会社は、ビアガーデンのアイデアについてどう考えるか、顧客の意見を聞くことから始めた。本部長が率いるチームが、クリップボードをフードコートにもちこんだ。そして、食事客に次々と同じ質問をしてまわった。「もし4階にビアガーデンができたら、行ってみたいと思いますか?」。
すると約1000人の顧客のうち、85パーセントが「イエス」と答えた。会議室にいた経営幹部とまさしく同じように、フードコートにいた食事客たちは、街を一望できるビアガーデンがいかにすばらしいかを、難なく想像することができたのだ。
明らかに過半数の顧客がその計画を支持したので、会社は数十万ドルを投資してビアガーデンをつくった。この新しいビアガーデンは、プレミアム・ドラフト・ビールと、数々のグルメ料理と、高級感の漂う座席を売りにしていた。
下の階に掲げた看板と、ソーシャルメディアで展開したキャンペーンで、新しくできたビアガーデンを楽しむよう買い物客に誘いかけた。あとは、客が当然のごとく殺到するのを待つだけでよかった。4階は救われたも同然だ。
![ビールで乾杯](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/1200wm/img_6c8226b160ccde32cde1e30e9c2e7bee395572.jpg)
■「するといっていること」と「実際にすること」は違う
1カ月後、進捗報告書に目を通した本部長は、客がまだ殺到していないことを知った。実際にビアガーデンにやってきた客は、一晩にわずか10人ほどだった。そんなばかな! 800人以上の買い物客が来ると約束したではないか! まさか、全員がうそをついていたというのだろうか?
いずれにしても、これは多くの企業で起こりうる話だ。幸いなことに、この本部長とその同僚たちは、この問題に取り組む前に私たち(編集注:スタンフォードで人気講義をもつ著者ら)に接触してきた。彼らは、私たちが提唱する実験技術を活用して、フードコートの顧客が4階のビアガーデンに積極的な関心を示したときには、完全に準備を整えていた。この会社は、人が「するといっていること」と「実際にすること」の違いをすでに理解していたのだ。
有用性を証明するのは行動であって、調査ではない。ほかの人にとって価値があるものを自分がもっているかどうかを知るには、それを相手の前にぶらさげて、相手が食べる(あるいは飲む)かどうかを見なければならない。
問題は「私たちには、これをやる能力があるだろうか?」ではなく、「もし私たちがそれをしたら、喜ぶ人がいるだろうか?」だ。「それをつくることが可能か?」ではなく「つくるべきなのか?」なのだ。チャールズ・イームズがかつていったように、「デザインに関する第1の問題は、どう見えるべきかではなく、そもそも存在すべきかどうかなのだ」。
■無料でワインとビールを提供しても顧客を呼びこめない
本部長とそのチームは、調査結果を手に、手早く安価な実験を考案した。印刷したテーブルテントをフードコートに置き、ソーシャルメディア上のモールのチャンネルに投稿して、4階で開催する厳選されたワインとビールの試飲会へと顧客を誘導したのだ。
洒落た座席もバーもなく、あるのは折り畳み式のテーブルと、ボトルに入ったワインとビールだけだ。それと、IDチェックと給仕をする要員が1名だ。この会社が1カ月にわたり、毎週土曜日にこの驚くほど安価なテストを実施したところ、毎回10名程度のお客が4階を訪れた。
「無料でワインとビールを提供しても顧客を4階に呼びこめないのだから、ビアガーデンの計画は一から考え直す必要があることがわかった」と、本部長は私たちに語った。それでも、会社にとっては収穫があった。かなり有望に思えるアイデアに数十万ドルをつぎこむ代わりに、総額でも数百ドルの出費でその有用性が間違いであることを立証したのだ。
■アイデアを「実験」するための条件
アイデアをテストするには、アイデアを現実的なものにしなくてはならない。だが、求められている行動が何らかの手段だろうが、メールへの返信や社内規定の遵守といった完全に非取引的なものだろうが、その行動を証明できる程度に現実的であれば十分だ。実験の目的は、「もし私がXをしたら、Yという人物が、それに対してZをする」といった仮説を立証することだ。どんな科学者でもそういうだろうが、彼らの仕事は「仮説が間違っているのを証明すること」なのだ。
実験は、あなたの考えていることを確認するためではなく、それを疑うために考案すべきだ。あなたがその状況に関して本当だと思っていることと、その状況の本当の姿との差という、最も価値のある創造的な情報が、まさにそこに潜んでいるからだ。これから見ていくように、ショッピングモールでやったような試作品や、マン・クレイツのようにまだまったくできていないものを提供するのでもかまわない。それに伴うリスクを軽減し、顧客を満足させる方法があるからだ。
成功を確実なものにするには、できるだけ多く打席に立たなければならない。それは、実験効率を最大化することを意味している。ここでは、あなたの最大のアイデアをテストする方法を紹介する。
■会社の抵抗勢力をうまく説得する方法
「そんなことをいわれても、うちの会社ではうまくいきっこない」――あなたはそう考えているかもしれない。もしあなたが、会社で率先して実験を行う立場にあるのなら、さまざまな反対に遭うことが予想される。創造的な文化がまだ確立されていないと、人はさまざまな理由でテストをすることに抵抗を示す。うまく説得したいと思うのなら、そうした理由の1つ1つに、戦略的に対処する必要がある。
私たちの知る一流音響技術ブランドのソフトウェア技術者が、数台のスマートフォンを使ってハイファイのライブパフォーマンスを1テイクで記録する画期的な方法を思いついた。それぞれのスマートフォンが、グループのなかの1人のパフォーマーの音声と映像を記録するというものだ。演奏のあいだは、誰のパフォーマンスが最もすぐれているかをソフトウェアが勝手に判断して、ビデオ画像を次々と切り替えていく。
ボーカルが歌うときは、自動的にクローズアップに移行する。リードギターが独奏するときも同様だ。ふたたび全員が一緒に演奏を始めると、広角撮影に戻る。できあがったビデオは、プロのクルーによって撮影されたものに見えるが、ティーンエイジャーのガレージバンドでも、自分たちだけでそれをつくれるのだ。
このソフトウェア技術者には、自分が思いついたアイデアが、ティックトックをはじめ、オンライン・ビデオ・プラットフォーム用に動画を作成するミュージシャンにうってつけに思えた。それを提供することは、会社のプレミアム音響技術を新しい世代のコンテンツクリエーターに紹介する働きをするに違いない。
■大企業によくある「失敗は許されない」問題
ソフトウェアの場合、有用性を調べる最も明快なテストは、ダウンロード可能なベータ版だ。無料のダウンロードは、実際の購入をはっきりと証明するものではないが、バリュー・プロポジション(価値提案)を向上させるうえで、貴重なデータとなる。だが、技術者がこの取り組みを提案すると、会社の上層部は、そのアプリに会社のブランドを使うことを断固として許さなかった。
「うちの製品の1つを、“無償で”提供するだと?」と、けんもほろろだった。「うちは専門ブランドだぞ。問題外だ」
![議論](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/1200wm/img_a3d3246034eb674e4c21122c2815f9ad390488.jpg)
技術者の考えでは、その実験には会社のブランドがどうしても必要だった。ブランドを使用しなかったら、現実世界のシナリオにおいて、プロの製作者たちがこのソフトを信頼してくれるかどうかをどうやって判断したらいいというのだ?
重要な専門家の支持を勝ちとってソフトウェアを彼らのニーズに合わせるためには、この実験にブランドを使うことが必要だった。だがその思いも、「我が社がつくるものは、すべて大きな成功を収めるものでなければならない」という、会社にはびこる暗黙の了解の前では、なすすべもなかった。
そうした想定は大企業に多く見られ、たいていいつも間違っている。実際には、実験に失敗しても、多くの人は気にもとめないだろう(それはいいことだ)。
■周囲の抵抗に打ち勝つためのツール「遡及」
あなたが会社のなかで初めて実験を提案するときは、このソフトウェア技術者のように、多くの反対に遭うだろう。思わぬ方向から反対されることもある。反対を見込んでそれに対処するためには、私たちが「遡及(そきゅう)」と呼んでいるツールを試してみるといい。
未来にいる自分を想定し、あなたの売り込みがすでに却下されてしまったものとして振り返ってみるのだ。その視点から、最も被害妄想的になって、想像しうる反対意見をすべてリストアップする。
簡単に聞こえるが、「遡及」をしてみると、あなたの主張の欠点がすぐに明らかになる。頭のなかでみずからを未来の失敗のあとに置いてみると、それまで意識していなかった欠点や潜在的な間違いが、手に取るようにわかってくるのだ。
認知バイアスにより、1つのアイデアに夢中になることで、ほかの人にははっきり見えている欠点がますますわかりづらくなる。主要なステークホルダーに実験を提案するときに、不意に反発を食らってしまうのはそのためだ。そんな目には誰だって遭いたくないはずだ。遡及してコマ戻しをすれば、あなたの計画に潜む問題が改めて見えるようになるだろう。
この音響技術者が「遡及」の手法を使えば、実験に対する社内の反対に打ち勝てたはずだ。もし彼が、たとえ10分間でも、首脳陣がベータ版で進めることを断固として拒絶するシナリオを想像してノートに書き出していれば、商標に関する懸念がまず間違いなくリストに挙がっていたはずだ。
■まずは手頃な「実験」から始めたほうがいい
潜在的な反対意見のリストができあがったら、その1つ1つにどう対応するか戦略を練る。ほとんどの場合、実験に対する抵抗は、誤って認識されたリスクにほかならない。もし首脳陣が実験を、失敗する可能性がある、時間と資金の多大な投資と見なせば、それを推進しようとは思わないだろう。結局のところ、テストに成功しても、最終製品が顧客に売れたわけではない。さらに多くのテストを実施するきっかけにすぎないのだ。
こうしたマインドセットを避けるには、リスクが検知されもしないような、安価で迅速な実験を考案すればいい。不完全であっても、近い将来にできる実験を選ぶのだ。首脳陣の同意なしにできるものならさらに望ましい。会社で行う最初のいくつかの実験は、重要な構想に関連しないものを選ぶべきだ。主に自分自身の仕事に関連していて、主要なプロフィットセンターや時間的な制約のあるプロセスにはかかわらないような、手頃な実験から始めるほうがいい。
たとえその実験が非常に重要ではなくても最後までやり遂げて、その過程を記録に残す。そしてその成果を見せるのだ。いくつかの興味深い結果のほうが、どんな議論よりも、実験の実施に対する抵抗を克服するのに効果がある。たとえささいなテストでも、有用性を明らかにしてリスクを減らすことがわかれば、首脳陣がさらに大がかりな実験を承認する可能性が高まる。
■経験豊富で有能な人ほど「実験」に反対する
テストの実施に対する抵抗はいらだたしいものだが、覚えておいてほしいのは、それが知性やビジネス感覚からくるものではないということだ。従来のビジネス教育は、イノベーションのマインドセットとまったく相容れない。実際、経験豊富で有能な同僚やマネジャーほど、実験に対して慎重になる傾向がある。
スタンフォード大学の同僚であるマイケル・レザービーとリータ・カティラが100以上のスタートアップを対象に行った研究によって、とりわけMBA取得者が、効率的なスタートアップ論が求める実験に抵抗を示すことがわかっている。気楽に計画を策定し遂行できるようになるには、現実世界でのテストを使って仮説を検証する方向に、態度を大幅に切り替える必要がある。
トム・ウージェックは、オートキャドをはじめとするプロのクリエーター用ソフトを製造するオートデスクのフェローだ。ウージェックは長年にわたり、あらゆる年齢、あらゆる職業の人々を対象に、全国でデザイン・ワークショップを実施してきた。
彼のワークショップでは、参加者にマシュマロ・チャレンジという課題が与えられた。これは、スパゲッティの乾麺20本、テープ、ひも、1つのマシュマロを使って、18分間でできるだけ高い塔を建てるというものだ。ただし、マシュマロは塔の「てっぺん」になければならない。
![マシュマロ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200wm/img_5dd77cc80691aed57330312b51bad3b8395497.jpg)
■幼稚園児がMBA取得者に圧勝したワケ
ウージェックによると、この課題では、マシュマロそのものが重要な鍵となる。マシュマロは、スパゲッティに比べて思ったよりも重く、頑丈な土台を必要とするからだ。仕事柄ほかの参加者よりも有利な技術者を除くと、ウージェックのワークショップで最も効果的に塔を建てたのは幼稚園児たちだった。
最もできが悪かったのは? 最近MBAを取得した参加者たちだ。その差も、小さいとはいえなかった。幼稚園児たちは平均50センチ以上の塔を建てるのに成功した。ビジネススクールの卒業生たちが建てた塔の平均は25センチだった。
なぜこれほどの差がついたのだろうか? 幼稚園児たちは、自分たちがわかっていないということを知っている。そこで、いろいろと試してみるのだ。たとえば、乾燥パスタの引張強度について何の先入観ももっていないので、早い段階でマシュマロを塔のてっぺんに置いてみる。塔が倒れても、もっといいやり方を試す時間が十分にある。
それに引きかえMBA取得者たちは、正式に認可されたスパゲッティ技術者のごとくテーブルについて、間違った思い込みにもとづき、複雑な塔を慎重に建てるのだ。
■「正しい計画を立ててから実行」は愚策
「ビジネスを学ぶ学生たちは、正しい計画を1つ見つけるよう訓練されてきました」と、ウージェックはTEDトークのなかで説明している。「それを見つけてから、実行するのです。すると何が起きるかというと、彼らがマシュマロをてっぺんに置くときには、すでに時間切れとなるのです。さあ、どうなるでしょうか? 危機的な状況です」
「やりながら学ぶ」のと「考えながら学ぶ」の違いだ。
![ジェレミー・アトリー、ペリー・クレバーン、小金輝彦(訳)『スタンフォードの人気教授が教える 「使える」アイデアを「無限に」生み出す方法』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/c/1200wm/img_2c7b2b2f495323611518dffc735f9f6b208496.jpg)
ローンチパッド・プログラムに参加しているスタンフォード大学ビジネススクールの学生たちにも、同じことがいえる。彼らの場合は、事業を立ち上げるまでにもっと時間があるので、つねに作業の大部分を事業計画の策定に充てようとする。だが、製品が市場に適合することを示すデータを伴わない計画が何の役に立つというのか? こうした学生を、データをもとに仮説を形成するよう説得するには、私たちが努力を続ける必要がある。
普段は知的で経験豊富な経営幹部が、ことテストの実施に関しては頑なに抵抗するのは、これらがすべて原因となっている。「計画を立てないのは、失敗する計画を立てるのと同じだ」と繰り返し教わってくると、何が起きるかを知るために物事を試してみるのは冒瀆(ぼうとく)のように思えるのだ。そうではないことを、そうした人たちに教えなければならない。
■似たような領域で成功した具体例を探せばいい
あなたが会社とその事業について知っていることをもとに「遡及」を行えば、あなたの実験に対する潜在的な反対が、数多く明らかになるだろう。そこには、会社の評判を傷つけるのではという不安から、一流音響技術企業で見たような、まだ存在していない製品やサービスを顧客に宣伝するというアイデアに関する懸念まで、さまざまなものが含まれる。
いずれの場合も、そうした潜在的な反対意見を利用して、あなたのプレゼンを改善するのだ。そうするためには、似たような領域で成功した実験の具体例を探せばいい。そうした実例は、いくつかの迅速なテストでどれだけ多くを学べるかだけでなく、それらのテストが実際にもたらすリスクがいかに小さいかも、はっきりと示すからだ。
もしあの技術者が、ほかのテクノロジー企業が発表したベータ版のアプリの成功例を準備して会議に臨んでいたら、期待していた承認を得られたかもしれない。
■「顧客イノベーション・ラボ」を一夜にして築く必要はない
証拠を示して自分の主張を立証するのは、いつもそれほど難しいわけではない。ときが経てば、実験の価値は明らかになる。実験的なマインドセットをもつ組織は、実験がいかに不確実性を減らし、時間とお金と労力を節約するかをすぐに理解するようになる。そして、可能なかぎり意思決定をデータに委ねるようになる。
だが、あなたの組織が山場を越えるまでは、できるかぎり多く実験の成功例を集めたほうがいい。実験には、軽くて、速くて、簡単なものがある。ほかにも、とくに創造的な文化が深く根づいている企業では、より複雑で、それでも単にきっかけをつくる以上の意味をもつと思えるものがある。本格的な顧客イノベーション・ラボを一夜にして築く必要はない。現状から手をつけて、そこから築けばいい。
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スタンフォード大学ハッソ・プラットナー・デザイン研究所(通称dスクール)のエグゼクティブ・エデュケーション・ディレクターで、同大学工学部の非常勤教授。幅広い人気を博す講座「スタンフォード大学マスター・オブ・クリエイティビティ」の主催者でもある。
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スタンフォード大学dスクールの共同創設者の一人。現在はdスクールのエグゼクティブ・エデュケーション・ディレクター兼非常勤教授。パタゴニアのCOOおよびティンバックツーのCEOを歴任した。
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(スタンフォード大学dスクール エグゼクティブ・エデュケーション・ディレクター ジェレミー・アトリー、スタンフォード大学dスクール エグゼクティブ・エデュケーション・ディレクター ペリー・クレバーン)
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