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YouTube登録者数は8900万人…K-POPアイドル「BLACKPINK」が世界的アーティストに化けた本当の理由

プレジデントオンライン / 2023年6月16日 17時15分

2023年4月15日、コーチェラ・フェスティバル2023/BLACKPINK(ブラックピンク) - 写真=AFP/時事通信フォト

韓国のガールズグループ「BLACKPINK」は、YouTubeのチャンネル登録者数が8900万人を超えるなど、アジア有数のアーティストとしてブレイクしている。なぜここまで売れたのか。ジャーナリストの金敬哲さんは「これまでのアイドルにはなかった音楽性と自立したイメージが、K-POPのグローバル戦略とかみ合ったからだろう」という――。

■北米最大の音楽フェスで「主役」に抜擢

K-POPのガールズグループ・BLACKPINKが今年、北米地域最大級の音楽イベント「コーチェラ・フェスティバル2023」で、初のアジア出身アーティストとして「ヘッドライナー」を務めた。1999年に始まった北米地域最大のこの音楽フェスは、その年に最もホットで影響力のあるアーティストが集結する。出演するためには、単に大衆的人気だけではなく、音楽的な評価の高さも重要になっており、多くのミュージシャンが熱望する夢の舞台だ。

その中でもメインとなる「ヘッドライナー」に招待されるアーティストは、いわばコーチェラの主役。これまでポール・マッカートニー、オアシス、レディオヘッド、ビヨンセなど世界的なポップスターが担ってきたポジションに、BLACKPINKは抜擢されたのだ。

■YouTubeチャンネル登録者数は8900万人

BLACKPINKは、BIGBANGなどを輩出したK-POPの大手芸能事務所YGエンターテインメントに所属している。ジス、ジェニー、ロゼ、リサの4人の女性で構成されたガールズグループだ。

グループ名には、かわいらしく女性的な色とされる「ピンク」を、クールで非女性的な「ブラック」で否定することで「美しいものがすべてではない」という意味が込められている。つまりはルックスと実力を兼ね備えたグループという意味だ。その名前が象徴するように、音楽的にもクールなヒップホップと明るくかわいいダンスポップの調和した曲がメインになっている。

K-POPのカテゴリーから脱して世界的なアーティストとして定着した存在といえばBTSが筆頭に挙げられるが、BLACKPINKは彼らに匹敵するグループとして評価されている。まずはその偉業を数字で見てみよう。

BLACKPINKのYouTubeオフィシャルチャンネルの登録者数は8900万人(2023年6月9日時点)。BTSの7510万人(同)を大きく上回り、アーティストとしては世界最多となっている。代表曲「DDU-DU DDU-DU」ミュージックビデオの再生回数が20億回を超えているのをはじめ、10億再生を超えた動画は6本に上っている。

■ライブ売り上げは2カ月間26回公演で100億円

ワールドツアーの成績も世界最高レベルだ。昨年10月にワールドツアー「BORN PINK」をスタートし、2カ月間18都市の26回公演で7848万521ドル(約100億円)の収入を上げた。

2019年のBTSのワールドツアー「LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF」の1億1660万ドル(約136億円)には及ばないものの、ガールズグループ史上最高売り上げとなった。これまでガールズグループの最高記録は英国のスパイス・ガールズが保有していた。このツアーには日本も含まれており、東京ドームと京セラドーム大阪の2カ所で計21万人を動員している。

ビルボードチャートにおいては、BTSが「Dynamite」をはじめ6曲で「HOT100」の1位に輝いたのに対し、BLACKPINKはセレーナ・ゴメスとコラボレーションした「Ice Cream」(13位)、セカンドアルバム収録曲の「Pink Venom」(22位)など、現在までに9曲をチャートインさせたものの、まだ1位はとれていない。ただ、「Spotify」のグローバル週間チャートでは「Shut Down」で1位を記録し(2022年9月3週目)、「K-POPアーティスト初」というタイトルを獲得している。

ほかにも、K-POPアーティストにおけるInstagramオフィシャルアカウントのフォロワー数はBTSが1位、BLACKPINKが2位だが、個人アカウントではBLACKPINKメンバーのリサ、ジェニー、ジス、ロゼが1〜4位を独占している。

■脱落者が毎月出る練習生時代を耐え抜いた

大衆音楽評論家のイム・ジンモは「1960年代のビートルズ以後、英国バンドが続々と米国を攻略した現象“ブリティッシュ・インベージョン(英国侵攻)”と酷似した“K-POPインベージョン”現象は、ソロアーティストのPSYとボーイズグループのBTSに続き、ガールズグループのBLACKPINKが加わったことで多様化された」と評価する。(『月刊中央』2022年11月号「BLACKPINKシンドローム、BTSを超える」より)

BLACKPINKが世界的なアーティストとして成功できた背景には、まず優れた実力を挙げることができる。メンバー4人はYGのオーディションを通過した後、ジェニーが6年、ジスとリサが5年、そしてロゼが4年とそれぞれに長い練習生期間を過ごした。K-POP大手のYGには世界から明日のスターを夢見る有望株が押し寄せてくる。そのレッスン過程は厳しいことで有名だ。

空のダンススタジオ
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

練習生たちは毎日14時間ほどの厳しいトレーニングを受け、毎月末には審査員の前でテストを受ける。そこではソロとチームの両方の部門で、自分たちで振り付けからスタイリングまで作り上げたパフォーマンスを披露しなければならない。ジェニーはインタビューで、当時の状況について次のように打ち明けている。

「私たちはひたすらサバイバル・モードにありました。毎月のように、一緒に練習していた友達が脱落して家に帰るのを見ました。ストレス? つらい生活? そういう感情は贅沢でした。重要なのはデビューするということだけでした」(『ローリングストーンコリア』2022年7月号)

長く激しい競争を通じて積み上げた完璧なライブとパフォーマンスを武器に、ジェニー、リサ、ロゼ、ジスのBLACKPINKは2016年デビューと当時に、完璧なライブを披露する実力派ガールズグループという名声を得ることになった。

■「江南スタイル」から始まっていたMVへの投資

MVの話題性も人気に一役買っている。「観る音楽」であるK-POPでは、アーティストたちの魅力を最大化するためにMVへの投資を惜しまない。

特にYGはヤン・ヒョンソク前代表がかつて各種インタビューで「MVは海外ファンに歌を届ける最初のツールなので最も神経を使っている」と繰り返し語ってきた通り、MVを最も効果的に活用する会社として知られている。2022年にリリースした前述の「Pink Venom」では、YG史上歴代最高額となる制作費が投入されたと報じられている。金額は非公表だが、おそらく5億ウォン(約5300万円)はくだらないとみられる。

YGでは、YouTubeにMVを公開する際にまずティザー動画を先行公開して関心を集め、同時に所属ミュージシャンのファンクラブを活用してSNSで話題になるよう仕掛けるなど、序盤の反応を最大化する戦略を駆使している。公開直後に再生回数が伸びればYouTubeメインページに「再生数の多い動画」として露出され、さらなる再生が見込めるからだ。彼女たちの先輩であるPSYがYGのオフィシャルチャンネルに載せた「江南スタイル」のMVを契機に世界的なスターになったように、彼女たちもYouTube上でずば抜けた存在感を示している。

■メンバー構成が「多国籍・多文化」である意義

彼女たちのMVの最も大きな特徴は、その他のガールズグループがよく見せるかわいらしい物語性ではなく、真似してみたいキャッチーな振り付けと迫力あるダンス、そして洗練されたファッションが目を引く点だ。

BLACKPINKのメンバーは、シャネル(ジェニー)、ディオール(ジス)、ブルガリ(リサ)、サンローラン(ロゼ)など、ハイブランドのグローバルアンバサダーを務めている。世界の少女たちから圧倒的な憧れを集めている背景には、「ハイクラスのファッショニスタ」というイメージを作り上げたMVも大きく作用した。

多国籍・多文化のメンバー構成もグローバルな人気を得るのに大きく役立った。ニュージーランドで生まれオーストラリアで育ったロゼ、ニュージーランドで幼い頃を過ごしたジェニー、タイ出身のリサの3人は英語が堪能で、海外での活動中も通訳なしに仕事をこなしている。今やK-POP練習生たちは歌とダンスのほかに英語をはじめとする外国語授業が必須とされる。世界進出のためには欠かすことができない要素だからだ。

■なぜ最近のK-POPグループにはタイ出身者が多いのか

韓国の週刊紙「日曜新聞」のキム・テウォン記者は、「BLACKPINKのグローバル戦略においては、リサは特に注目に値する存在だ」と評価する。

「人口が多く、K-POPの人気が格別なタイは、東アジア諸国の中でもエンターテインメント産業が特に発達した国であり、K-POPのアジア進出のハブ基地としての役割を果たしている。K-POPアイドルの海外進出はまず東アジアで確固たるファンダムを作り、これを土台に米国と欧州に進出する方式だが、この際にタイ市場が東アジア市場を主導する役割を果たすことが大半だ。

だからこそ、最近のK-POPグループでは日本と中国の次に多くのタイ出身メンバーが多い。そうした状況において、タイで“神”級として崇められているリサの存在は心強い。リサがいるだけで、特別なマーケティングをしなくてもタイを中心とした東アジア市場で強力なファンダムを構築することができた。BLACKPINKとしては東アジアを飛び越え、直ちに米国に進出できる環境を整えたわけだ」

■ヒップホップ主体の音楽性がアメリカで受け入れられた

彼女たちの音楽スタイルが、K-POPガールズグループの中では珍しく「ヒップホップ」を基盤にしている点も、アメリカで強い人気を博している理由だ。彼女たちの音楽に絶対的な影響を及ぼすプロデューサーのテディは、ロサンゼルス出身の韓国系アメリカ人。1990年代にヒップホップアイドルグループ「1TYM(ワンタイム)」のラッパーとして活動したが、プロデューサーに転職し、BIGBANGや2NE1の楽曲を手掛けてYGを代表するプロデューサーとなった。

テディはヒップホップとR&Bをベースに、ハウス、EDMなどを加えた楽曲でアメリカの音楽界でも反響を得ている。2021年にビルボードが選定した「21世紀の優れたプロデューサー50人」に名を連ねている。

このリストに載っているK-POPプロデューサーは、彼のほかにはSMエンタテインメントの代表プロデューサーであるユ・ヨンジンだけだった。BLACKPINKの音楽が特にアメリカで人気を得て、レディー・ガガをはじめとする多くのポップスターたちがコラボを要請する背景には、テディの存在が大きく作用している。

■「男性に依存しない独立した女性」を表現している

だが、世界の少女たちがBLACKPINKに熱狂する最も大きな理由は、彼女たちが「堂々とした女性」を象徴する存在であるためだろう。大衆文化評論家である大邱(てぐ)大学のキム・ホンシク教授はBLACKPINKが「主体的でありながら、同時にファンが共感できる音楽を作り出す唯一無二なガールズグループ」と評価する。

「歌やパフォーマンスだけが優れているわけではなく、楽曲のプロデュースにも積極的に参加するなど、能動的に自分たちの音楽世界を構築していく。彼女たちの音楽には『絶望や悲しみの中でも自分を失わず堂々と生きていこう』という意味の歌詞がたびたび出てくるが、このようなメッセージが世界の若者に受け入れられているのだ」

男性の「ファンタジー」ではなく、女性の目線で女性を描く現象はここ数年の韓流ドラマの重要な流れとなっている。BLACKPINKはK-POP界でこのような流れを先導しながら、「男性に依存しない独立した女性」をクールに体現し、世界中の少女たちのロールモデルとして君臨しているのだ。

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金 敬哲(きむ・きょんちょる)
フリージャーナリスト
韓国ソウル生まれ。淑明女子大学経営学部卒業後、上智大学文学部新聞学科修士課程修了。東京新聞ソウル支局記者を経て現職。著書に『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書)、『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)。

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(フリージャーナリスト 金 敬哲)

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