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なぜ医学部の現役合格生は「中高一貫校」ばかりなのか…どんどん難化する医学部入試という異常な世界

プレジデントオンライン / 2023年6月24日 12時15分

現役で医学部に合格できるのは約30%(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/mapo

「医学部は浪人しなければ入れない」とよく言われる。受験カウンセラーの野田英夫さんは「現役合格率は30%で、浪人が当たり前という雰囲気がある。しかも医学部の定員は減少傾向にあるため、日本の医学部への進学をあきらめ、海外に進学するケースも増えている」という――。

※本稿は、野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■現役で医学部に合格できるのは約30%

よく、「医学部は浪人しなければ入れない」と言われますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

データ上、“現役”で医学部に合格できるのは、約30%とされます。残りの約70%は浪人生ということになります。

これだけ浪人生が多いと、「医学部に入るなら浪人して当たり前」という雰囲気にもなってきてしまいます。

大多数の子どもたちは、医学部を志望することを、半分真剣、半分曖昧に捉えて中学・高校時代を過ごすもの。高校3年生になってから真剣に受験勉強を始めても、現役で合格することはほぼ困難です。

■高校1年生の時点で共通テストで9割正解

1浪したとしても、医学部進学の特性上、周りには浪人生が多い環境なので「もう1回、浪人すればいいか」となり、それが2回、3回と続いてしまうことが多いようです。

こういった点を踏まえると、医学部受験はやはり困難なもので、浪人するケースが多いといっていいでしょう。

では、どのような人たちが“現役”で合格しているのかというと、高校1年生の時点で大学の共通テストで9割の正解が取れるくらいに仕上がっている人たちです。

こういった人たちは、その上で高校2、3年生の間に、受験校の過去問分析を何十年分もしていきます。

すなわち、高校3年間をかけて、受験科目に一つも不安が残らない状態にして医学部受験に臨むので、現役合格が可能になるのです。

■中学受験から始まっている

しかし、多くの生徒たちがこのことに気づくのは、高校3年生になってからです。

そのため、高校卒業後、さらに2、3年の勉強が必要だと覚悟しておかなければ、医学部への合格は難しくなるのです。

こうした医学部の現役合格生を数多く輩出しているのが、中高一貫の難関進学校です。

本気で医師を目指す子たちは、大学受験ではなく、すでに中学受験の時から医学部受験を念頭に置いた学校選びや勉強方法を始めています。

難関進学校の場合、中学校1年生から高校3年生まで6年間かけて、体系的なカリキュラムが組まれています。

中学1年生から数学は幾何と代数に分かれていて、3年間かけて行う勉強内容を2分割し、中学校2年間で終わらせます。そして中学3年生では、もう高校の勉強が入ってきます。

このように前倒しでカリキュラムを進めていくと、高校1年の終わりには高校3年までの履修単元を終えることができます。

これが中高一貫の難関進学校ならではのカリキュラムの特徴です。

このような学校に行かなければ、医学部への現役合格は難しいといって差し支えないでしょう。

■AIの台頭で医学部の募集人員は減る

医学部の募集人員は2017年頃に微増しましたが、そこから徐々に減少傾向に入っています。

医療業界はAIによる仕事が増えると考えられており、医学部の募集人員は今後も徐々に減っていくと予測されています。

現在でも、遠隔で行う手術のほか、生体内の構造や機能を画像化するMR等、医療機器の進歩は目覚ましく、内視鏡技術なども上がってきている現状があります。

人工知能の働きに触れるビジネスマン
写真=iStock.com/Shutthiphong Chandaeng
AIの台頭で医学部の募集人員は減る(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Shutthiphong Chandaeng

■人間力が問われる入試に

募集人員の削減は、合格者の選び方にも影響を与えています。

実際、昨今の入試では生徒の学力だけをみるのではなく、人間性の側面からも「医師にふさわしい資質を有しているかどうか」をかなり厳しくみられるようになりました。

学力だけでなく、患者さんへ寄り添う心や思いやりといった、人間力の部分も問われる入試に変化しているのです。

受験生に求められる質は年々高くなり、医学部に合格することは年を追うごとに厳しくなってきています。

AI技術の台頭にともない、単に「勉強ができる」というだけでなく、人としての「生産性やホスピタリティある人材」を取りたいという、大学側の想いもあるのでしょう。

昨今の医学部受験では、小論文や面接も重視されています。

ある意味、今後の医学部受験は「就職試験」のような要素が濃くなっていくと予想しています。

将来医療がどうなっていくか、また自分はどうなりたいのか、学生のうちからしっかり考える必要があるのです。

■海外の医学部に進む日本人が増えている

実は日本の医学部受験に失敗したという場合でも、医学部を目指す方法があります。

その一つが、ハンガリーやチェコの国立大学の医学部に進学するという方法です。

日本ではまだメジャーな進路ではありませんが、この方法で海外の医学部に進む日本人は着実に増えています。

一般的な医学部受験ルートでは合格するのが難しい人たちでも、このルートで医師になれる可能性がぐんと高まるからです。

チェコ
写真=iStock.com/NiseriN
ハンガリーやチェコに留学するという方法も(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/NiseriN

■ハンガリーやチェコでは医師不足が深刻

実はこの方法は、ハンガリーやチェコにもメリットがあります。

というのも、ハンガリーやチェコでは医師不足が深刻で、「国内で医師を育成するよりも国外から優秀な人材を集め、医師を輩出したい」という想いがあるからです。

海外の医学部進学が増えているのも、こうした両者のニーズが合致して実現したものといえるでしょう。

ハンガリーには国立大学が4校あり、各校の医学部への受験資格は、日本の高校を卒業した者、もしくは卒業見込みの者となっています。

コースは予備コースと本科コースに分かれ、大学によって募集人員は異なりますが、もっとも募集定員が多い大学では、予備コースが25名、本科コースが5名となっています。

予備コースのほうが入学しやすく、書類審査の後に筆記審査があり、科目は①生物・化学・物理(2科目を選択/日本語または英語を選択)、②英語(リスニング、文法、読解)。その後、面接審査という流れになっています。

まずは予備コースで学び、本科コースに進めるように仕上げていきます。

一方本科コースはそのまま大学に進学。出題される問題はもちろん英語で、答えも英語で書くようになります。

■2021年には23名中14名が合格

予備コース、本科コースとも、年度内に10回は審査テストがありますが、一度落ちてしまっても何度でも受けることができます(一部制限あり)。とはいえ、そこに甘んじることなく、まずは予備コースでしっかり学び、大学に行っても困らないだけの英語力と各科目の知識をつける必要があります。

野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)
野田英夫『『医学部にはエスカレーターでのぼりなさい』 偏差値40から浪人せずに医者になる方法』(日刊現代)

一般入試で日本の大学の医学部を狙うのは難しいお子さんと、どうしても子どもを医師にしたいという親御さんにとって、ハンガリー国立大学の医学部に進学するというのは、ある意味ニッチなコースといえるでしょう。

なお、ハンガリーの医学部を卒業した後、日本で医師として働く場合は、日本の医師国家試験に合格する必要があります。

2019年の第113回医師国家試験では、ハンガリーの医学部を卒業した日本人学生31名中19名が合格しました。

2020年の第114回試験では、33名中20名が合格。2021年の第115回試験では、23名中14名が合格しています。

日本の過酷な医学部受験を回避したルートで医師になるという方法も、ぜひ覚えておいてほしいものです。

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野田 英夫(のだ・ひでお)
受験カウンセラー、MIRAINO教育グループ代表取締役
4月19日(ヨイジュクをつくるため)、東京・市ヶ谷に生まれる。大手進学塾の専任講師から支部長、本社経営部門を歴任。在職中はトップ講師として5000名以上の生徒たちを難関校合格に導く。その後、独立し、早慶中学に特化した完全個別指導の「早慶維新塾」を開校。2020年に大学付属校専門塾「早慶ゼロワン」を立ち上げる。2022年に医学部受験専門塾「Dr.Aiss(ドクターアイズ)」を開校。現在、直営とフランチャイズ校で計11教室を運営している。著書に『御三家はわかりませんが早慶なら必ず合格させます』(朝日新聞出版)、『中学受験 大学付属校 合格バイブル』(ダイヤモンド社)がある。

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(受験カウンセラー、MIRAINO教育グループ代表取締役 野田 英夫)

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