区切りがいいところで一息つくのは逆効果…大量の仕事を最短ルートでこなす「休憩」のベストタイミング
プレジデントオンライン / 2023年6月21日 18時15分
※本稿は、山本大平『「すぐやる」よりはかどる! 仕事を「短くやる」習慣』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■仕事を「同時並行」で進めるのが苦手な人の共通点
たくさんのタスクを抱えている場合でも、その進め方は人によって異なります。
ひとつのタスクを最後まで終えてから、他の仕事に手を付ける人もいれば、ある程度の区切りができるまでは、他のタスクに手が付けられないという人もいます。
几帳面な人ほど、こうした進め方をしているようですが、それでは後回しにしたタスクが、すべて遅くなってしまいます。
現代のビジネスはスピードが命ですから、すべてのタスクを同時並行で進めて、短時間のうちに全部のタスクをやり終える必要があります。
これが、「マルチタスク」と呼ばれる仕事との向き合い方です。
几帳面な人が、同時並行を苦手とする一番の理由は「頭の切り替え」ができないことにあります。
上手に頭を切り替えて、すべての仕事を効率的に進めるためには、自分の「集中力」の限界点を見極めて、それを「切り替えスイッチ」として活用することです。
高校の授業は50分やって休憩、大学の授業は90分やって休憩、自動車の運転はカーナビが2時間で休憩を推奨するなど、世の中にはザックリとした切り替えの目安がありますが、集中力の限界点は人によって違いがあります。
「自分の集中力は60分が限界だな」と思うならば、その前にタスクがひと区切りしたら、すぐに別のタスクに取り掛かることが重要です。
ここで休憩タイムを挟んでしまうと、せっかくフル稼働している「脳」を再起動させるのに時間がかかります。
■「脳の限界点」と「肉体的な限界点」は異なる
人間の脳は別の刺激を与えることによって、「休憩」→「活性化」することが科学的に証明されていますから、他のタスクに取りかかることによって、集中力を持続することができます。
脳の集中力の限界点と、肉体的な疲労の限界点は異なります。
タスクとタスクの合間に無理して休憩タイムを挟む必要はなく、「目が疲れた」とか「腰が重い」と感じ始めたら、その段階で休憩を取るだけで実は十分なのです。
気持ちがノッているときは、休憩を挟まず、次の仕事に取りかかった方が早く終わる!
■突然の「ムチャ振り」に、どう対応しているか
「明日、取引先とのミーティングが決まったから、何か新しいプランの提案書を出してほしい。明日の朝イチで頼むね」
上司からこんな指示を出されたら、あなたはどう対応しますか?
他にたくさんのタスクを抱えていても、緊急度で見れば最優先ですから、何とかする必要があります。
現実的な対応策は、次のようになるかもしれません。
①徹夜を覚悟して、新しいプランを考え始める
②親しい先輩や同僚に助けを求める
③メールや電話で同業他社の知り合いに相談する
④ヒントを探してネットで検索しまくる
⑤「ムチャ振りだ!」と怒って拒否する
ここまで極端なケースは珍しいとしても、似たようなことは日常的に起こります。
私が当事者であれば、⑤は論外としても、①から④の中に選択肢はありません。
どれを選んでも、取引先や上司が満足するような提案書ができるとは思えず、その仕事と時間の両方が無駄になる可能性があるからです。
私が部下の立場であれば、「もう少し情報をください」と上司に相談します。
「ミーティングの出席者はどこの部門のどなたですか?」
「提案書は当社だけですか? 他社と競合ですか?」
「先方は新規事業に何を求めていますか? その目的は?」
最低でも、このくらいの情報は事前に確認する必要があります。
![オフィスで談笑中](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/1200wm/img_1f170d42cd8f9f7a691cd4fb00ef1de1500274.jpg)
■正式な提案書は改めて作成すればいい
もし上司が、「そんなのわからないよ。今から聞くのも無理」という反応だったら、次のような提案をすると思います。
「一発勝負の提案書ではなく、第一段階としてコミュニケーション・ペーパーを作りませんか? 先方の要望や目的、規模、予算などを聞き取って、必要な情報を集めてから、正式な提案書を改めて作らせてください。先方には、その方向で話を持っていってくれませんか?」
こちらの勝手な判断で提案書を書いても、その仕事が無駄になるだけでなく、会社の信頼度にも影響が出ます。
相手の要望に沿った提案であれば、採用される可能性も高くなるのです。
二度手間を防ぐコツは、「勝手な判断」をしないこと!
■自分勝手な「判断」や「思いつき」は逆効果
ビジネスの世界では、タクスに取り組む前の段階で「仮説」を立てることが推奨されています。
これは「仮説思考」と呼ばれるもので、最初に「これが問題の原因では?」と展開を予想して、その予想(仮説)が正しいかどうか検証を繰り返す「問題解決型」の思考のひとつです。
会社の上層部や上司から、「このタスクについて、どんな仮説を持っているのか?」と問われて、目を白黒させた経験がある人も多いのではないでしょうか?
仮説とは、現時点で把握できている「事実」に自分が持っている「情報」や「経験値」を加えることで、問題が起きている原因を「読む」ことですが、私はそれだけでは不十分だと考えています。
なぜならば、仮説にも「精度」が必要だからです。
自分勝手な判断や単なる思い込みで立てた仮説は、精度の高い情報や知見を基にしていないため、単なる思いつきに過ぎません。
会社や上司が納得するような「もっともらしい仮説」は用意できるかもしれませんが、結果的にミスリードになったのでは逆効果です。
論拠のない仮説は、立てるだけ時間の無駄と考える必要があるのです。
■仮説を立てる際は「データドリブン」で判断する
私は仮説を立てる場合はもちろん、意思決定や企画の立案でも、すべて「データドリブン」で判断しています。
データドリブンとは、自分の経験や勘に頼らず、さまざまな状況から生まれるデータを基に物事を判断することです。
仮説とデータの関係は、医師の見立てとMRIの関係に似ています。
患者さんが、「お腹が痛いんです。たぶん胃です」と来院すると、医師は「胃が痛いのであれば、薬を出しておきますので、しばらく様子を見ましょう」と言って胃薬を処方します。
お腹が痛いという「事実」に基づいて、胃炎の可能性があるという「仮説」を立て、胃薬を処方するという「対策」を講じているのです。
それで治れば何も問題はありませんが、本当に痛い場所が胃ではなく、胃と密接に関係する膵臓(すいぞう)であったとしたら、いつまで経っても患者さんの痛みはなくなりません。
その結果、痛みが続く→治療が長引く→病気が進行する……という事態を招いてしまうのです。
■仮説を立てる際は多角的にデータや情報集めを最優先する
データドリブンで判断するというのは、何の根拠もない問診だけで診断を下すのではなく、データを集めるために患者さんにMRIを受診してもらい、ファクトを把握してから治療の方向性を決めるということです。
![山本大平『「すぐやる」よりはかどる!仕事を「短くやる」習慣』(クロスメディア・パブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/1200wm/img_b0d3cddf8809f603f0837069b85e84a1124070.jpg)
「胃が痛い」という情報だけで問題点を絞り込んだのでは、患部が膵臓であるという事実にはたどり着くことができません。
手に入れた情報に頼り切るのではなく、客観的なデータを求めてMRIを受けてもらえば、「この患者さん、膵臓に問題がありそうだな」と論拠のある仮説を立てることが可能になり、すぐに有効な治療を始めることができます。
さらに、CTやエコー、採血など多角的に検査を行うことで痛みや不調の原因を突き止めやすくなります。
現代は詳細なデータを集められる時代ですから、仮説を立てる際は多角的にデータや情報集めを最優先する必要があるのです。
根拠のない仮説は、立てるだけ無駄!
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経営コンサルタント、F6 Design代表取締役
2004年京都大学大学院修了後トヨタ自動車に入社。エンジニアとして新型車の開発業務に携わる。トヨタグループのデータサイエンスの大会で優勝経験を持つ。その後TBSへ転職。日曜劇場、SASUKEなど、注力番組のプロモーション及びマーケティング戦略に従事。アクセンチュアにて経営コンサルタントの経験を経て、マーケティング総合支援会社F6 Design創業。ChatGPTを含めたAIの利活用や経営に資するマーケティング戦略のプロ。アコーディア・ゴルフ執行役員CMO、DMM.make AKIBA戦略顧問、SCENTMATIC戦略顧問/CMOなど、大手からベンチャーまで数多くの企業の要職を歴任/兼任中。『トヨタの会議は30分』は初著書ながら10万部を突破。
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(経営コンサルタント、F6 Design代表取締役 山本 大平)
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