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幼少期の勉強はこれだけやっておけば間違いない…我が子の「脳の力」を最大限に伸ばす「2つの学習習慣」

プレジデントオンライン / 2023年6月23日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

先の見えない時代だからこそ、我が子には持てる能力を最大限に発揮させたい。そのために親はまず何をすべきなのか。人間の脳活動の仕組みを研究する「脳機能イメージング」の第一人者で、セブンーイレブン限定書籍『子どもの脳によいこと大全』を上梓した川島隆太さんは「最新の脳研究の結果からも、幼少・学童期は『音読』『ひとケタの数字の計算』がきわめて重要です」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■簡単な記号を処理するときに脳は最も活性化する

我が子を「頭のいい子」に育てたいと願う親御さんは多いと思います。

そのカギを握る、脳の重要な領域である「前頭前野」。その処理速度を高め、作業領域を大きくするには、いったい何をすればよいのでしょうか。前頭前野を最も活発にさせる刺激を与える――つまり、「学習」をすることです。

私は、脳活動を調べるfMRI(※1)という方法や、脳の血流を調べる光トポグラフィー(※2)といった装置を用いて、「何をしているときに前頭前野を中心に脳がよく使われているのか」について研究を重ねました。

※1 磁気共鳴機能画像法。MRI装置で脳のどこが働いているのかを調べることができる。
※2 微弱な近赤外光を用いて脳の血流を測定する検査。

すると、数字や文字といった簡単な「記号」を素早く処理しているときに(たとえば、「ひとケタの足し算をする」など)、前頭前野が最も活性化することが確認されました。

面白いのは、難しい数学の問題を解いたり、難解で複雑な文字を書いたりしても、前頭前野はさほど活性化しなかった点です。

■脳が活性化するとき、脳内の血流が高まる

俗に「脳が活性化する」という言い方をしますが、その状態になったとき、脳内では具体的に何が起こっているのでしょうか。それは「血流の高まり」です。

例えば、「4+2」といったひとケタの足し算をするためには、前頭前野の細胞を働かせることが必要です。そのため、脳を動かすガソリンとなる酸素とブドウ糖を供給するべく、前頭前野の血流が速くなる現象が起こるのです。

ただし、「頭をよくする」には、前頭前野の活性化だけでは不十分です。活性化はあくまで下準備に過ぎず、そのうえで「鍛える」ことが必要不可欠です。

筋トレを行って筋繊維を太く、大きくしていくのと同じように、脳を鍛えることで「脳の体積を増やす」。これではじめて脳の機能が高まります。すなわち、「頭がよくなる」といえるのです。

■認知症患者の脳機能まで高める「学習療法」

「単純なひとケタの計算や音読を素早く行うことが脳機能を高める」という発見をもとに、私は認知症患者のための非薬物療法「学習療法」を開発してきました。

効果は目覚ましいものがありました。とくに学習療法は、認知症の進行を遅らせるだけでなく、認知機能を向上させることも判明したのです。薬を上回る効果がある方法として注目され、現在では世界中で広がりを見せるまでになっています。

認知症患者の脳の機能さえも向上させる「学習」の威力を、健康な子どもの脳発達に応用したらどんな効果があるのかは想像に難くありません。

■幼少・学童期は「読み書き計算」中心で間違いない

そのため、私は脳科学の専門家として、幼少・学童期の子どもたちが「読み書き計算」を中心とした学習習慣を身につけることを推奨しています。

何らかの作業を素早く行うことは情報処理速度を向上させ、効果的に脳を活性化させます。そのため、子どもたちにとっては「読み書き計算を素早く行う」といった学習習慣は、脳を鍛えるツールとして使いやすいうえ、同時に学力アップにもつながる、まさに一石二鳥のコンテンツといえるからです。

実際に、家庭学習の習慣がある子どもと、ない子どもの脳画像を比べると、家庭で学習している子どものほうが、脳の体積が優位に増加することが確認できます。学習習慣のあるなしによって、脳の構造自体に違いが生じるということです。

■前頭前野をバランスよく発達させるには

とはいえ、昨今では、「詰め込み教育はよくない」といった風潮が強くなってきました。

私も、「詰め込み教育“だけ”やるのはよくない」と考えています。前頭前野をバランスよく発達させるには、学習だけでは不十分だからです。

食事で必要な栄養を摂取したり、体を十分に動かしたり、友達とドキドキするような体験をすることで、複合的に脳が刺激され、はじめて健全な脳の発達が促されます(詳細は拙著『子どもの脳によいこと大全』参照)。

■子どもの脳は「学習」が大好き

こうした多様かつポジティブな刺激の中でも、前頭前野が明らかに大喜びしてその働きを活性化させるのが、「読み書き計算を素早く行うこと」だったのです。

川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)
川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)

これは、脳が未発達な赤ちゃんでも、おそらく同じです。

実験では、母親が赤ちゃんに絵本の読み聞かせをすると、音を判別する側頭葉だけでなく、思考や感情を司る前頭前野も活性化することがわかっています。

まだ言葉がわからないうちから、人間の脳は「学習」に対して強く反応する。その事実を知れば、子どもたちにどんな刺激を与えればよいのかが、おのずとイメージできますね。

ことほどさように、子どもの脳は「学習」が大好き! なのです。

■鍛えれば鍛えるほど、脳は複雑に進化する

学習で脳の体積を増やすといっても、脳そのものを大きくするわけではありません。「より複雑な脳に成長する」ということです。

脳の血流を高めて活性化させ、そのうえで脳をたくさん働かせることで、脳の細胞には“ある変化”が生じます。脳の神経細胞と神経細胞の間をつなぐ神経線維が長くなったり、どんどん枝分かれしていくようになるのです。

私たちが頭を働かせているとき、脳の神経細胞の間では、「解決=処理」のために、どの細胞と手をつないで情報をやりとりすれば最適な答えが得られるか、何度もトライアル・アンド・エラーが行われています。

■脳の中に大容量の高速ネットワークをつくろう

このとき、細胞間の神経線維がより多かったり、より太かったりするほうが、情報のやりとりは大量かつスムーズになります。片側一車線の道路より、片側三車線の広い高速道路を通るほうが、ずっと交通量が多くなるのと同じ理屈です。

つまり、脳の中に情報をやりとりする、たくさんの高速ネットワークを持っている人が、「頭のいい人」だということ。この頭の中の高速ネットワークは鍛えれば鍛えるほど、増えていきます。

その結果、前頭前野の神経回路はさらに複雑になり、より処理速度が速くなって、作業領域も大きく進化する……というわけです。

■脳の「トランスファーエフェクト」がカギを握る

処理速度が速くなったり、作業領域が大きくなったりすると、「計算や記憶が得意な脳」になります。つまり、学校の勉強が得意な子になれるわけです。

いまのような「先の見えない時代」は、計算の速さや記憶力だけでは戦えません。どんな世の中になっても生き抜いていくためには、単に勉強ができるだけでは不十分であり、問題解決能力や高いコミュニケーション能力、創造力なども必須です。

でも安心してください。実は、情報処理能力をより速くするようなトレーニングをすると、驚いたことに、計算や記憶とは直接関係のない様々な能力も高まることが、最新の脳研究で確認されているのです。

これを、「転移の効果(トランスファーエフェクト)」といいます。

具体的には、例えばひとケタの数字を用いた計算を全力で早く解いたり、音読をしたり、単純な記号を暗記するといったことを続けると、計算力や暗記力が向上するだけでなく、創造力や理論的思考力、注意力や感情抑制能力までもが高まる……という不思議な現象が起こるのです。

散乱した数字でガラスを拡大
写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/patpitchaya

■数字や文字にたくさん触れさせよう

情報処理や記憶力は、脳の前頭前野が担っています。そして、人間らしい高次のそのほかの能力についても、その働きは前頭前野が司っているのです。ということはつまり、前頭前野自体の性能を高めると、前頭前野が持つすべての能力が底上げされる可能性が高い――ということです。

昨今では、「パソコンやスマホがあるのだから、計算能力や記憶力なんて必要ない」といった声もよく耳にするようになりました。

しかし、脳の特性を知れば、情報処理や記憶力を高める「学習」こそ、人間らしい能力を開花させるスイッチになると、おわかりいただけると思います。

子どもの頭をよくするためには、数字や文字にたくさん触れること。これが、とにかく「基本」なのです。

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川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授
1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。

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(東北大学加齢医学研究所教授 川島 隆太)

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