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スマホは「1日1時間」を超えるとどんどん成績が落ちる…テストで平均15点も差がついた恐るべき調査結果

プレジデントオンライン / 2023年7月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

子どものスマホ使用に不安を抱く親は多い。特に中高生ともなると勉強の成績に悪影響はないかが気になるところ。「脳機能イメージング」の第一人者である川島隆太さんは「調査の結果、家庭で2時間勉強していても、スマホを長時間使用すると、まったく勉強していない子どもより悪い成績になってしまうことがあるとわかりました」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■スマホの長時間使用で成績は下がる

「子どもがスマホを使い過ぎているのではないか」「インターネットで動画ばかり見ているけど大丈夫なのか」そんな不安を持つ親御さんは多いことでしょう。

その懸念は、当たっています。インターネット機器、特にスマホを長時間使っている子どもは、認知機能が低下して学力も下がることがわかっています。

私は長期間にわたり、仙台市の小学生から高校生の脳の発達について、幅広く調査、研究を行ってきました。その過程で、インターネット機器が子どもたちの脳にいかに深刻な影響を及ぼしているかを知りました。

中でも特に恐ろしいのが、「スマホを長時間使うと、学校で勉強したことが頭の中から消えてしまう」という事実でした。

■スマホの利用時間で中学生の成績に「15点の差」が

私たちがスマホに関する本格的な調査をはじめたのは、2013年(平成25年)のことでした。

仙台市の中学生を対象に、平均的な家庭での勉強時間とスマホの使用時間、国語と数学のテストの正答率を調査、分析したところ、やはりスマホを長時間利用している子どもほど、正答率が低いことがわかったのです。

勉強時間が30分未満、つまり、自宅学習をほぼしていない子どもの数学の正答率の違いは、次の通りでした。

・スマホ未所持、もしくは1時間以内しか使っていない子どもの正答率=63%
・スマホを4時間以上使っている子どもの正答率=47%

100点満点のテストでいえば、スマホを使っている子どもは、使っていない子どもより平均点が15点も低かったのです。

そこまでは何となく予想はついていました。ところが、次の分析結果に、私は驚愕しました。

「家庭で2時間勉強していても、スマホを長時間使っていると、まったく勉強していない子どもより悪い成績になってしまう」。これは予想外でした。

■スマホ利用は「1時間未満」にすべき

私たちはその後も調査を続け、次のようなことも判明しました。

・スマホを1日1時間以上使い続けた子どもは、どんどん成績が下がった
・もともと成績がよかった子どもも、スマホを1日1時間以上使うと成績が大きく下がった
・スマホを1日1時間未満に抑えた、もしくは使用をやめた子どもは成績が向上した

現代の中学生にとって、スマホを持たない、あるいは触らないようにするのは現実的な話ではないかもしれません。その場合、ターニングポイントとなる「1時間以上の使用」を超えないようにすることが重要です。

脳への悪影響について子どもによくよく話して聞かせたうえで、ご家族でスマホ使用に関するルールを決めることを強くおすすめします。

■勉強中にスマホは使わない

昨今、厚生労働省が教育分野におけるICT環境の整備、活用を推進しています。そのため学校では、生徒1人に1台ずつ端末が渡され、いわゆるタブレット学習が推進されています。

私は、この動きについては「もっと慎重であるべき」と考えています。

理由の1つ目は、インターネット端末の使用による、子どもたちの認知機能への悪影響です。

私は、子どもたちが言葉の意味を調べるときに、辞書を使った場合とスマホでウィキペディアを使った場合の脳血流の違いについて、調べたことがあります。

その結果、辞書を使った場合、被験者の脳の前頭前野は血流が増加したのに対し、スマホの場合は血流が減少し、脳の働きに抑制がかかることが確認されました。

つまり、本来、脳の大好物である学習をしたとしても、スマホを用いると脳はやる気を失って、その働きを低下させてしまうのです。

■メッセージアプリの通知が悪影響

理由の2つ目は、心理的な弊害です。

学生にスマホを背後に置いて情報処理の作業を行ってもらい、その間にあるメッセージアプリの着信音と、通常のアラーム音を鳴らすという実験を行ったことがあります。

結果、アラーム音には反応がありませんでしたが、アプリの通知音が鳴ったとたんに学生たちの情報処理能力や注意力が低下することが確認されました。

つまり人間は、「自分に対して意味のあるメッセージが届いた」という通知音に対して、強く注意を引かれてしまう傾向があり、それが学習効果を大きく減退させてしまうのです。

ソーシャルメディアアプリでのチャット、SMSの送信
写真=iStock.com/gorodenkoff
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gorodenkoff

■脳はマルチタスクが苦手

3つ目は、「脳はマルチタスクが苦手」ということです。

学生時代に、ラジオや音楽を聴きながら勉強した経験がある人は多いことでしょう。実は、脳にとって、こうした「ながら勉強」はたいへん効率の悪いことなのです。

勉強に集中しているつもりでも、そこにラジオの音声が流れてくると、脳は聞こえてくる言葉の情報処理を自動的にはじめてしまいます。そしてまた学習中の情報処理に戻り……と、目まぐるしく処理をする対象の切り替えを行うため、学習効率は格段に落ちてしまいます。

つまり、私たちはマルチタスクをしているつもりでも、脳としてはシングルタスクを目まぐるしく切り替えているにすぎないのです。そして、切り替えが多くなればなるほど、学習の効果は低下し、ただ脳が疲労していくのみとなってしまいます。

■勉強中に使用するアプリ数が多いほど成績が下がる

脳はひとつの作業に集中したときに、そのパフォーマンスを最大限に発揮するようにできています。

川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)
川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)

ところが、私たちがスマホを勉強中に使っている子どもに対してアンケート調査をしたところ、次のような恐るべき結果が出てきました。

前述の仙台市の中学生を対象の調査から、約8割の生徒が「ながら勉強」をしていることがわかったのですが、中には勉強中に4つのアプリを使っている猛者もいました。

勉強中に音楽アプリを使っている生徒は65%、メッセージアプリや動画がそれぞれ約40%、ゲームが40%弱という内訳でした。

私たちは成績も含めて調査を行いましたが、結果はやはり、勉強中に使用するアプリの数が多いほど成績は低下していました。

■2時間の「ながら勉強」より1時間の「スマホなし勉強」を

そして、驚くべきことに、彼らの成績は勉強時間とは関係がありませんでした。つまり、短時間勉強しようが、長時間勉強しようが、どちらにしても勉強中にアプリを使っていれば成績は下がっていたのです。

どんなに勉強に時間を費やしても、勉強中にスマホを一度でも使ったら水の泡……。ですからスマホは、勉強中は物理的に遠ざけることが必須です。2時間、スマホに触りながら「ながら勉強」をするより、1時間スマホなしで勉強に集中したほうが、はるかに学習効果は高くなります

勉強する部屋にはスマホやタブレットは持ち込み禁止にして、集中しやすい環境づくりを心がけるようにしてください。

■幼児期のスマホ使用も要注意

本稿で見たような中学生世代のみならず、もっと年齢の低い幼児期の子どもにおいても、もちろんスマホの使用には注意が必要です。

さすがに幼少期の子どもに専用スマホを買い与える親御さんはそう多くないと思います。それでも、親御さんのスマホを渡して動画を見せるという話はよく聞きます。

公共の乗り物に乗っているときなど、「大人しくしてほしいから、その間だけでも……」などと小さな子どもにスマホを渡すことは実際ありうるでしょう。

しかし、その間、子どもの前頭前野の脳血流が低下し、その働きが抑制され続けるということはぜひ頭に入れておいてください。

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川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所教授
1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。

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(東北大学加齢医学研究所教授 川島 隆太)

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