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有望な客に見えてもあえて完全無視…"上位5%"のセールスが使う「絶対相手にしてはいけない客」の選別法

プレジデントオンライン / 2023年6月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Madiz

当たり客を的確にゲットし仕事の効率性を高めるにはどうしたらいいのか。800社超、17万人のビジネスパーソンの働き方改革支援をしてきたクロスリバー代表の越川慎司さんは「成績上位5%の社員は、完璧な商品でなくても売ることができ、『相手にしない客』を見極める力があります」という――。

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかったトップ5%セールスの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■5%セールスはコントロールできない領域は「捨てる」

売れないセールスは、売れないことを他責にして、内省をしません。自分は運が悪いとか、価格が高いとか売れない商品を扱っているとか、自分以外のことに責任を擦りつけているのです(もちろん、他者に責任があるケースも存在します)。

一方、5%セールスは同じ事実に対して、ポジティブに解釈する傾向があります。これは能天気ということではなく、事実に対してチャンスを見つけようというマインドセットを持っているからです。

たとえば製品の機能が少ないと思えば、顧客を絞ることを優先すべきだと考えます。また、価格が高いと思えば、意味づけによって価値を見出そうとします。こうして自分ではコントロールできないところにエネルギーを割くことをせずに、自分がインパクトを残せるところを見つけ出して、その中で創意工夫をするのです。

これは、5%セールスの発言です。

「完璧な商品やサービスなら、そもそもセールスは必要なく自動的に売れていきます」

また、中堅の製造業にいる5%セールスの方からはこんな発言もありました。

「製品を商品にすること、機能を価値として意味づけしていくことがセールスの本質だ」

分かりにくい製品だからこそ、分かりやすい商品として説明する。機能が不足しているからこそ、そこから生み出される価値を顧客のニーズに合わせる。このように、コントロールできる範囲の中で何ができるかを模索するのが5%セールスです。

たとえば、他社よりも機能で劣ったスマートフォンを売る場合は、「シンプルで使いやすい」「このスマートフォンは説明書不要」などと説明するのです。

不動産仲介会社の5%セールスは、日当たりが悪い部屋を紹介するときに、「夏は涼しく、クーラーの電気代を抑えることができます」と説明するそうです。日当りが良くないという事実を、夏は暑くならないとポジティブに解釈し、その価値を顧客に紹介しているのです。

機能が足りないという事実をポジティブに解釈して、相手のニーズやワクワク感にフィットさせているわけです。

成績を出すことができないセールスは、できないことに不満を持ち、「良い顧客」が向こうからやってくるのを待ちます。

5%セールスは、自分がコントロールできないことをあきらめて、自分ができることの範囲で創意工夫して、良い顧客がやってこなくても成果を出す努力をしています。自分がコントロールできるエリアの中でさまざまな行動実験を能動的に行っていくので、良い客に偶然会う可能性も高まります。

一つの事実に対して、ネガティブにもポジティブにも解釈できると、5%セールスは信じています。不平・不満を言って行動しないのではなく、自分ができることをローリスク・ローリターンで継続していけば、成功に近づいていくことを、5%セールスは経験で知っているのです。

■5%セールスはGEP客を「相手にしない」

5%セールスは、自らが編み出した再現性の高いルールをもとに初期対応します。

精密機器メーカーの5%セールスは、法人企業を顧客として多くの案件を対応しても、成約率は20%くらいだと教えてくれました。なぜ商談が成功したか、あるいは、なぜ失敗したかをしっかり振り返り、良かった点と改善点をまとめてパターン化していました。

ITベンチャー企業の5%セールスは、最初に価格を提示しないパターンを持っています。価格を提示すると足元を見られるので、はじめは同業他社の事例を紹介して、それから顧客に対するメリットとデメリットの提示をして、質疑応答の後に価格を出すというパターンを持っていました。

こうしたパターンが複数あり、相手に合わせて使い分けているのです。

たとえば、お客さんが早口で電話してきたり、短い文章のメールやチャットで問い合わせをしてきたりしたら、それは緊急性が高いときなので、10分以内に返答する。

流通業の5%セールスは、こうした迅速な対応で何度も大きな駆け込み案件を獲得したそうです。このように、過去の経験をもとに自分で編み出したパターンを複数用意して、使い分けることで初動が早くなります。うまくいかなかったら、そのパターンの対処法を修正して、その後の成約率を高めていくのです。

また、5%セールスは商談に入る前に、「手を抜く相手」を決めています。

これは、重要な商談に注力することを意味します。5%セールスにヒアリングする中で、GEPというキーワードを初めて聞きました。GEPとはGood Enough Perceptionの頭文字で、「十分満足の人」を意味します。現状で問題を感じず、将来に向けた課題もない人、つまり「何も必要とせず、購入しない人」です。

こうしたGEP客が問い合わせをしてきたり、展示会に足を運んだりします。GEP客は購入意思がないにも関わらず、何かを検討しているかのように見せて、アプローチしてくるのです。

なぜならGEP客は時間が余っているからです。時間を持て余しており、情報収集するという名目で展示会をふらふらしています。所属する会社で影響力を持っていませんので、対応しても成果にはつながりません。

GEP客は、自分の優越感を得るためにセールスにコンタクトをとってきます。専門知識を持っているという自信がある人や、過去に偉大な功績を残した人は、マウンティングするためにセールスに近づいてきます。

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写真=iStock.com/Yuuji
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji

もしそのGEP客に購買の意思決定権があったとしても、優越感を得ることを優先しているので、最終的には、取引歴が長く何でも言うことを聞いてくれる業者を選定します。このように、GEP客は客の素振りをしているだけで購入はしません。よって、手間をかけずにスルーすれば良いのです。

5%セールスは、このGEP客を見抜きます。関係のない質問をしてきたり、感想だけ述べてきたり、マウンティングしてきたりする人を疑い、「購入する意思はありますでしょうか?」とストレートに聞いていました。

成果を出し続けるためには、新規顧客は欲しい。しかし、買わない人に時間を使うのは浪費です。5%セールスは、嫌われることを覚悟で勇気をもって購買意思を聞き、GEP客から逃げているのです。

■5%セールスはアクセルとブレーキを「踏み分ける」

越川慎司『AI分析でわかったトップ5%セールスの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかったトップ5%セールスの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

重要なポイントに注力し、それ以外は手を抜くのが5%セールスです。それはサボるのではなく、100%全力でやらないタスクを決めているということです。すべての顧客に同じエネルギーで対応することはしないのです。

重要な顧客にエネルギーを使い、購買につながらなさそうな情報収集家(前項でご紹介したGEP客のような相手)はあしらいます。つまり顧客を区別しているのです。時間とエネルギー(熱量)は限りがあると見切っているわけです。努力と情熱を傾けられる先は決まっているので、その矛先をどこに持っていくかを重視しているのです。

重要なポイントでアクセルを踏むということは、つまり重要でないポイントにはブレーキを踏むということでもあります。5%セールスが他者よりも成果を出しているのは、やらないことを見極めて、それをやらないという決断をしているからなのです。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)

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