どんな兵士でも120秒以内に96%が寝落ちする…あまりの効果に米軍も採用したコストゼロのリラックス法
プレジデントオンライン / 2023年6月27日 9時15分
※本稿は、柳川由美子『不安な自分を救う方法』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■米軍が採用した効果抜群のリラックス法
Q.眠りたいのに、なかなか眠れないときは①……
不安や緊張状態にある方は、「リラックスしましょう」と言ってもなかなか上手にできない場合があります。
そんなときは、あえて力を入れてから抜く「漸進的筋弛緩(しかん)法」を行うことで、力の抜けたリラックス状態をつくりやすくなります。
漸進的筋弛緩法は、アメリカの医師であるエドモンド・ジェイコブソンによって開発されたリラクゼーションの技法です。米軍が採用したところ、厳しいストレス状況下にある兵士の96%が120秒以内に眠りに落ちたとか。それくらい効果抜群の方法です。
私のクリニックではこれを、椅子に座った状態で、次のように行います。
① 鼻から息を吸って止める。
② 息を止めている間(3~5秒)に、両腕をガッツポーズにして腕の力を入れる。
③ 口から息を吐きながら、腕の力を抜いてダラーンと落とす。このときどんな感じがするのか、力が抜けた腕の感覚に意識を向ける。
④ ①~③を3回繰り返す。
これが基本です。
■実際に声に出して言うと、さらに効果的
この後、両脚→顔→肩→首の順に、同じように呼吸を合わせながら、力を入れて抜くことを繰り返します(各3回)。
・両脚……椅子に座った状態で膝を伸ばし、床と平行になるまで両脚を上げる。踵を直角にしてつま先をピンと伸ばしてから→ダラーンと両足を床に落とす。
・顔………目をつぶって歯を噛み締めてから→力を抜いてポカーンと口を開く。
・肩………グッと上げてから→ストーンと落とす。
・首………首の重さを感じながらゆっくり回す。
ここまでやっていただくと、相談者さんたちは「眠くなった」「とても落ち着いた」と口々におっしゃいます。実際にあくびをなさる方もとっても多いです。
これだけでも十分にリラックスして心地よいだるさを感じられるようになりますが、私の場合は、夜寝る前に漸進的筋弛緩法を行った後、布団に入って、さらにリラクゼーションの呼吸法を行っています。
① 鼻から息を吸い込みます。空気の流れを意識して、その冷たさを感じます。
② 口から息を吐きます。吐く息のあたたかさを意識しながら、吐く息とともに全身の力が抜けていくのを意識します。のどを通る空気の感覚なども意識します。
③ ①~②を3回繰り返します。呼吸の最中は「何か思考が浮かんでも、それを追わない」と決めて、何か浮かびそうになったら常に呼吸に意識を戻します。
このままスーッと眠れるので、ぜひ試してみてください。
身体がゆるむと、心もゆるみます。
ですから、気持ちが張り詰めて眠れないときは、先に身体をゆるめてあげましょう。
身体がゆるんで、気持ちがほぐれてきたら、「気持ちが落ち着いてきた」「のんびり~」などと実際に声に出して言うと、さらに効果的です。
A.漸進的弛緩法で、手足の力を入れたり抜いたり。
■重い毛布の不眠症への効果は、軽いものの10倍
Q.眠りたいのに、なかなか眠れないときは②……
もうひとつ、眠れないときにとっても効果的なのが、掛布団を重くすることです。
「え? フワフワで軽い掛布団のほうが、ストレスなく眠れていいんじゃないの?」
なんとなくそう思いますよね?
ところが、近年の研究で、不眠症の患者さんが重い毛布を使うことで、症状が改善することがわかりました。
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究チームが、鬱や不安障害で不眠症と診断された120名の成人に対して、次のような実験を行いました。
研究チームは、まず、被験者をランダムに2つに分けました。
①重い毛布(8kg※)を使ってもらうグループ
②軽い毛布(1.5kg)を使ってもらうグループ
※重さ8kgの毛布が重すぎると感じる人には、6kgのものを支給
そして、ともに4週間過ごしてもらったのです。
その結果、②軽い毛布のグループで、不眠に改善が見られたのは3.6%。
一方、①重い毛布のグループでは、42.2%に改善が見られました。なんと、軽い毛布を使用していた人の10倍もよい結果を得られたのです。
■1年使い続けると78%もの不眠症が改善
また、実験終了後、希望者には好きな毛布を選んでもらい(ほとんどの患者さんが重い毛布を選びました)、さらに12カ月間過ごしてもらいました。すると、最初の実験で軽い毛布を使い、その後、重い毛布に変えた人も、同じように睡眠が改善。12カ月後には、重い毛布を使った人の78%もの不眠症が改善したのです。
研究チームによると、毛布の重みによって、体中にある筋肉や関節に刺激が与えられ、指圧やマッサージと同じような効果が得られたのではないか、とのこと。
ですから、眠れないときは、掛布団の枚数を増やすなどして、調整してみてください。
ちなみに、人はずっと起き続けてはいられないため、2~3日不眠が続いても、その後は電池が切れたようにスーッと眠れます。ですから、眠気がやってこないときは、無理して眠ろうとしなくても大丈夫。眠れなくても、あまり気にしないことです。
A.掛布団を重くする。
■「ジャーナリング」は幸福感、免疫力、就職率に効果
Q.いろいろ気になって、寝付けないときは……
布団に入ったはいいけれど、気になることが次々と浮かんできて、なんだか眠れない。
そんなときは、布団から抜け出して「ジャーナリング」をやってみましょう。
「書く瞑想(めいそう)」とも呼ばれるジャーナリングでは、頭の中に浮かんだことを一気に紙に書き出していきます。気になっていることや、わけのわからないモヤモヤを、紙の上に書き出すことで、頭や心がスッキリして、気持ちが軽くなるんです。
その効果は驚くべきもので、幸福感がアップしたり、免疫力が上がったりする他に、なんと就職率が上がったというデータまであります。
テキサス大学の社会心理学者、ジェームズ・ペネベイカー教授は、次のような調査を行いました。
ひとつめは、失業者を対象にした調査です。
失業中の被験者に、毎日20分間のジャーナリングを5日間連続でやってもらいました。その後の追跡調査で8カ月後の就職率を調べたところ、同じような失業者でジャーナリングをしなかった人たちに比べて、被験者の就職率は40%も高かったのです。どうやらジャーナリングを行った失業者は、頭の中のモヤモヤを書き出してそのつどスッキリすることで、ストレスフルな就職活動を乗り切れたようです。
さらに教授は別の調査を行い、被験者を、①感情的に大きな影響を受けたできごとを書いてもらうグループと、②感情とは関係のない日常的なできごとを書いてもらうグループに分けました。
各グループに20分ずつ3日間、書くことを続けてもらった結果、①の感情的に大きな影響を受けたできごとを書いてもらったグループは、心身の健康が大幅に向上したのです。
しかも、数カ月経っても、血圧の低下、免疫機能アップ、通院回数の減少、幸福感の高まりが続いたと言います。
■最初は3分程度から始めるとストレスにならない
さて、そんなすばらしい効果を持つジャーナリング。
どうやるかというと、ノートとペンを用意して、3~15分間、頭に浮かんだことを、手を止めずにひたすら書き続けるだけです。
書くときのポイントは、ペンを動かす手をとにかく止めないこと。
書くことが思い浮かばないときも、「書くことがない、書くことがない、何も思い浮かばない、何かないかな……」と頭の中の思考をそのまま書き出します。
しばらくすると、「……なんだか、お腹が減ってきたかも」「自分と向き合ってる私、えらくない?」など、再び思考が始まるので、それらもすべて書き出していきます。
最初は3分程度から始めて、書けるようになったら、少しずつ時間を延ばしていくと、ストレスになりません。
続けて15分、書き続けられるようになるまで、ぜひ続けてみてください。
そのころには、胸にモヤモヤが溜まりにくいあなたになっているはずです。
パートナーとの関係で悩んでいたある女性の相談者さんは、長い間、不眠で苦しんでいましたが、ジャーナリングで頭の中のモヤモヤを書き出し始めて3日目には、自然に眠れるようになりました。
A.ジャーナリングでモヤモヤを書き出す。
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公認心理師
臨床心理士、産業カウンセラー、不安専門カウンセラー。鎌倉女子大学児童学部子ども心理学科卒業。東海大学大学院前期博士課程(文学研究科コミュニケーション学専攻臨床心理学系)修了。義母の末期がんの看病をきっかけにピアノ教師からカウンセラーを志し、自身の不安症の克服経験から、大学院等で「脳は心を解き明かせるか」「脳から見た生涯発達と心の統合」を学ぶ。2005年より大学やメンタルクリニック、企業研修などの活動を開始し、現在は「メディカルスパ西鎌倉」「メディカルスパみなとみらい」でカウンセリングを行う。1万回以上の個人セッション経験を通して相談者の共通パターンを発見。独自メソッドで解決に導いている。著書に『晴れないココロが軽くなる本』(フォレスト出版)、『不安な自分を救う方法』(かんき出版)。
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(公認心理師 柳川 由美子)
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