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次の世代に財産を残すと全員が不幸になる…和田秀樹が「お金は生きてるうちに使い切れ」と力説する理由

プレジデントオンライン / 2023年7月2日 13時15分

後の世代に資産を残す必要はない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Marcin Tryc

子どもにはどのように財産を残せばいいのか。医師の和田秀樹さんは「子どもにお金を残してもトラブルの種になるだけだ。買い物には前頭葉を刺激し、脳が活性化する効果もある。我慢せず自分のために使ったほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。

■子どもにお金を残すのは「トラブルの種」

「自分自身のためにも、そして子どものためにも、後の世代に資産を残す必要はない」

というのが私の考えです。

デフレの時代が長く続いてきましたが、あと10年、20年も物価や給料が上がらないとは考えにくい状況です。インフレの時代にお金が目減りするリスクも考えると、今、周囲や自分のために使ったほうがいいと思います。

私は長年、高齢者の医療に携わってきましたが、子どもにお金を残すと、むしろトラブルの種になることが少なくないのです。

子どもがひとりならともかく、複数の場合や、遺産が多い場合、相続に注意が必要なのはもちろんです。

しかし、遺産が少なく、相続税がかからないくらいのお金でも、相続をめぐって泥沼のトラブルが発生し、こじれていくことがあります。

その様子を、私は幾度となく見てきました。

■少しでも多くの財産を手に入れようとする

親が80代や90代で亡くなった場合、子どもは60代というケースが多いのではないでしょうか。

60代ともなれば、すでに退職している場合もあり、老後の不安から少しでも多くの財産を手に入れたい、という気持ちになりやすいのです。

結果、財産をめぐって兄弟の意見がかみ合わないことが増えてきます。

■「ここで妥協してはいけない」と周囲がたきつける

均等に残すと遺言しても、どうしても異論が出てきます。

「兄さんはマンションを買ったとき援助してもらったじゃないの。息子の学費だって出してもらっている。その分を除いて均等に割るのはおかしいでしょ」
「オレが近くに住んで、よく様子を見に行っていたことは知ってるだろう。母さんはその分を考えてくれたんだ。お前のところは子どももいないし、むしろ均等ならいいじゃないか」
「様子を見に行ったのも、お金を借りに行っただけでしょ」

もともと感情的にならずに相続の話をするのは大変です。そこにそれぞれの配偶者も加わると、「ここで妥協してはいけない」などとたきつけるので、余計厄介なことになります。

こんな調子で相続争いがこじれていくさまを何度も見たせいで、私は子どもに財産など残すものではないと強く思うようになりました。

■親の財産を自分の財産のように思っている

高齢のため認知症になった場合は、本人にかわって、子どもが財産の管理を代行する制度があります。

そもそも、今の法体系では、たとえ親から嫌われていようとも、基本的に遺産は子どもが相続することになっています。

親の財産を自分の財産のように思っている子どもも少なくありません。

自分の取り分が増えるように、親の介護費や医療費を節約しようとする場合もあるのです。

「家を売り、自分は3億円の老人ホームに入ろう」と親が考えていても、「財産が減ってしまう」と考え、子どもが反対することもあります。

「3億円の老人ホームに入ろう」と考えていても子どもが反対する(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/byryo
「3億円の老人ホームに入ろう」と考えていても子どもが反対する(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/byryo

結果、ランクの低いホームに入ることになったり、節約のため子どもとの同居を強いられることも珍しくありません。

不本意ながら子どもと同居することになり、住み慣れた地域を離れ、子どもに遠慮しながら寂しく晩年を過ごした、という話もよく聞きます。

■「子どもに事業をやらせる」方法もある

トラブルが起きてしまうのは、子どもに財産を残そうとするからです。

家族が争う悲しい状況を引き起こしたり、不本意な晩年を過ごすくらいなら、自分のためにお金を使うほうがよほど健全でしょう。

あるいは、子どもに事業をやらせて、その事業にお金を投資してみてはどうでしょうか。

「子どもに事業をやらせる」方法もある(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Jirapong Manustrong
「子どもに事業をやらせる」方法もある(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Jirapong Manustrong

この場合、子どもが事業に失敗し、1円も残らないこともあり得ます。ただ、仮にそうなったとしても、子どもには事業の経験と、社会を生き抜く力が残るはずなので、ただ漫然とお金を残すよりいいのではないかと思います。

また、遺産という動かないお金を残すより、子どもの事業に投資したほうが、社会の活性化にも役立つのではないでしょうか。

お金は子どもには残さず、自分の楽しみのために使う。これが賢いやり方として、現代の新常識になればいい、そう私は願っています。

■お金を使うのは「脳を活性化するチャンス」

「お金を使う」という行為には、その人の個性が如実にあらわれるものです。

経済的な余裕がないのに、気に入った服をポンポン買う人もいれば、お金があるのに、安いTシャツをさんざん吟味して買う人もいます。

趣味の道具を買う場合は即決するのに、スーパーで食料品を買う場合は迷ってしまうという人もいます。

「お金をどう使うか」を考えているとき、その人の前頭葉は活発に働いています。

「何にどのくらい使うと予算内に収まるのか」「何を買えば満足できるのか」を考えるのは、実はかなり奥が深い問題なのです。

「買う」という行為は、創造力や企画力、計画力など、さまざまな能力が問われる、きわめてクリエイティブな行為です。

お金を使うたび、脳を活性化させるチャンスが訪れている、と考えるといいでしょう。

■買うのを諦めるのは「新たな体験」を諦めること

ある商品を欲しいと思ったとき、みなさんはどのように行動するでしょうか。

基本的に、「すぐに買う人」「買うかどうか迷ってから買う人」「迷った挙げ句買わない人」の3つのタイプに大別できそうです。

趣味の品物か、それとも日常品なのか。また商品の価格によっても、買うときの行動は異なってきます。

偶然立ち寄ったセレクトショップで、素敵なジャケットを見つけ、直感で「欲しい」と思い値札を見たら、意外に高かった、という経験は誰しもあると思います。

そんな時、「買っても着る機会がないかもしれない」とか、「かなり細身だから、体形に合わなくなるかもしれない」などと逡巡してしまうと、どんどん心にブレーキをかけてしまいます。

ジャケットを諦めた場合、「ジャケットを買えば得られたはずの新たな体験」も、同時に諦めているのです。

そのジャケットがあれば、今まで気後れしていた場所にだって行けたかもしれません。

思い切って買っていれば、新しい体験が得られ、それが前頭葉への恰好の刺激になったはずなのです。

■我慢からは何も得られない

買い物による前頭葉への刺激は、買った瞬間だけ得られるわけではありません。ジャケットを着るたびに「喜び」や「感動」があれば、そのつど前頭葉が刺激されているはずです。

洋服でもカメラでも自動車でも同じです。その品物を気に入っていればいるほど、使用することで大きな喜びが得られるはずです。

脳を老化させないためには、「喜び」や「感動」が欠かせません。こうした感情が前頭葉を強く刺激するのです。

和田秀樹『シン・老人力』(小学館)
和田秀樹『シン・老人力』(小学館)

しかし、値段が高いとか、体型にあわないと言って、欲求にブレーキをかけ、欲しいものを買わずにいると、好奇心にもブレーキがかかってしまいます。

我慢からは何も得られません。単に、「喜び」や「感動」のない、代わり映えのしない日常が続くことになります。

脳は欲求不満のままです。前頭葉が刺激されることもありません。むしろ、老化に向けて、さらにアクセルを踏むことになります。

現役の消費者であり続ける意味は、こうしたところにあります。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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