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オタクは「オタク趣味」から卒業する必要はない…和田秀樹が「むりに俳句や盆栽に手を出すな」と訴えるワケ

プレジデントオンライン / 2023年7月7日 9時15分

「高齢者らしい趣味」でなくてもいい(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/vkbhat

加齢にあわせて、趣味は変えたほうがいいのだろうか。医師の和田秀樹さんは「興味がないのに、俳句や盆栽といった高齢者らしい趣味に手を出す必要はない。ラーメン好きであれば、そのままラーメンを食べ続けたほうが、若々しくいられる」という――。

※本稿は、和田秀樹『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。

■「高齢者らしい趣味」でなくてもいい

高齢者になってから趣味を見つけるのは、それほど簡単なことではないようです。

自分の趣味が何かすぐ言える人、好きなことをすぐ思い浮かべられる人は、高齢者になってからも、自分が「楽しいこと」を優先すればいいと思います。

「高齢者になれば、大好きな温泉巡りを思う存分楽しめるんだな」と思えば、年を重ねることにワクワクしてきます。

一方で、「好きなことをしましょう」「趣味をもちましょう」と言われても、何をすればいいのか思いつかない人もいます。

高齢者の趣味というと、俳句とか盆栽をイメージしたり、美術館や博物館巡りといった高尚なものを思い浮かべたりするかもしれません。

■好きなものは「三つ子の魂百まで」でいい

高齢者らしい趣味でないと、恰好がつかないと思われているフシもあります。

しかし「自分にとって好きなもの」「面白いもの」「興味の湧くもの」であれば、何でも趣味の対象にしていいのです。

「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、好きなものは、いくつになっても好きなままでいいのです。

■SNSで同好の士とつながる

子どものころ好きだったことを思い出してみてください。

「ミニカーを集めるのが好きだった」
「魚釣りが大好きで、釣り道具が宝物だった」
「なんと言っても鉄道。蒸気機関車の写真を撮りに北海道へひとり旅をした」

このようにかつて夢中になっていた趣味を、高齢者になってから再開するのもいいと思います。

趣味についてSNSなどを活用してレポートすることで、同好の士との新しい人間関係も生まれるはずです。

■「自分にとって面白いもの」に没頭する生き方

イラストレーターのみうらじゅんさんは、「マイブーム」という言葉の産みの親で、文筆業やミュージシャンなど、さまざまな分野で活躍されています。

彼は小学生のころに仏像にはまって以降、フォークやロックなどの音楽、さまざまなスクラップ帳づくりや、世間的にはあまり評価されていなかったもののコレクションなど、「自分にとって面白いもの」「興味の湧いたもの」に没頭してきました。

「自分にとって面白いもの」に没頭する生き方(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/vanbeets
「自分にとって面白いもの」に没頭する生き方(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/vanbeets

「エッチな写真のスクラップ」とか、もらってもうれしくないような観光地の土産物とか、興味の赴(おもむ)くまま、没頭して面白がっている様子が、テレビや雑誌でよく紹介されています。

年齢的には高齢者の仲間入りをしているみうらさんですが、容貌も発想力も、若いころから変わっていません。

■「好奇心をもつ」こと自体が大切

みうらさんに限らず、作家、ミュージシャン、映画監督といった文化人の中には、良識派から見ればくだらないことや、眉をひそめたくなることを趣味にする人も少なくありません。

こうした人は年齢の割に若く見える場合が多いのですが、それは、さまざまなものに興味をもつという思考習慣があるからだと考えられます。

「何かに興味をもつ」「好奇心をもつ」こと自体が脳にとっては大切なのです。

■「思考の老化」を防ぐ

私はさまざまな個所で、脳の部位の中で前頭葉がいち早く老化することについて繰り返し述べてきました。

早い人の場合、40代から前頭葉の萎縮が目立ち始めます。前頭葉を使わないと機能の低下に拍車がかかる点についても繰り返し触れてきました。

早い人の場合、40代から前頭葉の萎縮が目立ち始める(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Artur Plawgo
早い人の場合、40代から前頭葉の萎縮が目立ち始める(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Artur Plawgo

これはいわば脳のハードウェアについての説明ですが、もうひとつ大切なことは、脳のソフトウェアの老化予防、つまり「思考の老化」を防ぐことです。

その方法のひとつが「さまざまなことに興味をもつ」という習慣であり、その実践が「趣味」というわけです。

「思考の老化」を防ぐには、「面白がること」が大切になってきます。

そのためには「役に立つ、立たない」とか「実現できる、実現できない」といった思考から離れることが必要になります。

■「オタク」は思考の老化予防になる

あらゆるジャンルに、自分の好きなことを狭く、深く掘りさげているマニアがいます。

いわゆる「オタク」と呼ばれる人たちです。

こうした人たちは「好奇心の幅が狭い」という点では、やや老化的な思考とも言えますが、その圧倒的な深さは好奇心あってのたまものです。

「鉄ちゃん(女性なら鉄子)」と呼ばれる鉄道ファンは、思考の老化予防という点では有利ではないかと思います。

鉄道ファンは、思考の老化予防という点では有利(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/MASAHIKO NARAGAKI
鉄道ファンは、思考の老化予防という点では有利(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/MASAHIKO NARAGAKI

とくに「乗り鉄」(鉄道に乗ることが好きな人)や「撮り鉄」(鉄道写真の撮影を趣味とする人)、「音鉄」(発車メロディや走行音の好きな人)の人たちは実際に行動してその場に行くので、脳にいい刺激を受けていると思います。

最近、駅のホームや線路沿いなどで、スマホで列車の写真を撮っている中高年もよく見かけます。古典的な「鉄ちゃん」とは違い、普通のおじさん、おばさんが日常的な雰囲気で、鉄道にスマホを向けています。

鉄道が走る風景を見て、「撮影したい」という衝動を抱いたのでしょう。これはとてもいいことだと思います。

■町を散策する60代、70代が増えている

鉄道ファンに限らず、世の中にはさまざまな「オタク」がいて、世間から見れば理解しにくいことに情熱を傾けています。

たとえば最近、地形をたどりながら町を散策する60代、70代が増えているようです。

東京なら四谷、渋谷、赤坂、上野あたりは、江戸時代に地形を活かした町割がつくられ、それを踏襲する形で現代の町並みができあがっているそうです。

その痕跡(こんせき)を発見しつつ、嬉々(きき)として歩いているのです。

用水や水路に蓋をした暗渠(あんきょ)や、市区町村の境界もポイントらしく、知らない路地であってもつい入ってみたくなるようです。

■「止むに止まれぬ好奇心」で思考の老化を食い止める

ラーメン好きには何百軒もの店を食べ歩いた猛者も多く、歴史やお店の系譜、味、作り方などを研究し、一家言ある人がたくさんいます。

老舗の名店から今のトレンドに沿ったニューウェーブ店まで食べ歩き、美味しい店を発見することが無上の楽しみという人が全国にいます。

そんな人たちは新作ラーメンの情報を聞くと「食べずにはいられない」という衝動が湧くのです。

「へえ、そんな人たちがいるのか。面白そう」と思えたでしょうか。

こうした「止むに止まれぬ好奇心」は、定年によって長く在籍した会社などの組織を離れた後はとくに重要です。よくも悪くも周囲の刺激が少なくなって、思考の老化が進むからです。

■「ちょっと変わった人」でいるほうが脳にいい

思考が老化してくると「くだらない」「面倒くさい」「何が面白いの?」と、ものごとを突き放して捉えるようになり、自分から遠ざけるようになってしまいます。

和田秀樹『シン・老人力』(小学館)
和田秀樹『シン・老人力』(小学館)

当然ながら、「一度、体験してみようか」と思うこともなくなります。

自分のポリシーなり価値観なりを頑固にもち続けている人が「くだらない」とひと言で片付けると、なんとなく立派に見えたりもします。

反対に、還暦を過ぎて、鉄道だ、地形散策だ、ラーメンだ、と熱中している人は、ちょっと変わった人に見られがちです。

しかし、頑固に自分のポリシーや価値観にこだわって多少立派に見えるよりも、好奇心あふれるちょっと変わった人のほうが、脳にとっては好ましいのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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