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長生きしたいなら、もっと肉を食べよう…「小太り程度の中高年」はまったくやせる必要がない理由

プレジデントオンライン / 2023年7月16日 15時15分

長生きしたいなら、もっと肉を食べよう(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Magone

健康のためにはどのような食事がいいのか。医師の和田秀樹さんは「肉を食べるとセロトニンが増え、多幸感を感じる。また、多少コレステロール値が高いほうが、免疫力が高まると考える研究者も多い。日本人はもっと肉食したほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。

■私が肉食を勧める理由

「活動意欲を維持する」
「運動機能を維持する」

60代になって定年退職した後の生活で気をつけなくてはいけない2本柱です。

人間の体は「使わなければ衰える」ため、何ごとも現役であり続けることが大切ですが、その前提として重要になるのが「栄養」です。

意欲の低下を防ぐためにも、私は「肉」を食べることを勧めてきました。

そもそも中高年が「ダイエットをすれば健康になる」と刷り込まれたのは、「メタボリック・シンドローム」を恐れているからでしょう。

■BMIが25を超える人のほうが長生きする

ご存じのとおり、「メタボリック・シンドローム(通称・メタボ)」は、内臓脂肪の蓄積に加えて、血圧、コレステロール、血糖値に異常が見られる状態で、糖尿病や心筋梗塞などの病気を引き起こしやすくなることを意味します。

このメタボ予防のための指標としてよく知られているのが「BMI」です。

BMIは「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で導き出される数値で、WHO(世界保健機関)の基準で「普通」とされる18.5~25の間に収まるのが望ましいと言われます。

しかし、世界中のさまざまな統計データを見ると、BMIの数値が25を超える人のほうが、長生きする傾向が少なくないのです。

■いちばん長生きなのは「ちょっとぽっちゃりした小太りの人」

2009年に日本で発表された研究結果では、40歳時点の平均余命がもっとも長かったのは、男女ともにBMIが25~30の人でした。

その一方で、平均余命がもっとも短かったのは、18.5未満の人です。

両者の間の平均余命を比較すると、男女ともにBMIが高い人のほうが6~7年ほど長生きすることがわかっています。

2006年にアメリカで行われた国民健康栄養調査でも、BMI25~29.9の人がもっとも長生きであり、18.5未満の死亡率は、その2.5倍も高かったのです。

つまり、いちばん長生きなのは「ちょっとぽっちゃりした小太りの人」であることが統計データにはっきりとあらわれているのです。

■「小太り程度の中高年」はやせる必要がない

もちろんBMI30を超えるような「太りすぎ」になると心筋梗塞などのリスクが高まります。

「小太り程度の中高年」はやせる必要がない(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/kuppa_rock
「小太り程度の中高年」はやせる必要がない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/kuppa_rock

しかし、小太り程度の中高年がメタボ予防のために「やせなければ」と過剰に反応するのは問題です。

せっかくいい状態にあるのですから、やせる必要はまったくありません。

そもそも、メタボや動脈硬化など生活習慣病の予防が大切なのは50代まで。60歳からはヨボヨボしないようにすることが最優先の課題です。

■肉を食べると「幸せ物質」が増える

なぜ歳をとると意欲が低下してくるのでしょうか。

その理由のひとつが、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの減少です。

セロトニンは別名「幸せ物質」とも言われ、セロトニンがたくさんある状況では多幸感があって、なんとなく幸せそうにしていられます。

肉を食べると「幸せ物質」が増える(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Sewcream
肉を食べると「幸せ物質」が増える(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Sewcream

ところがこのセロトニンは、歳をとるとともに減少していきます。

そのため高齢になればなるほど幸福感や意欲も低下し、うつになる人が増えてしまうのです。

気分が沈むとかイライラするなど、感情が不安定だと感じるようになったら、肉を多めに食べてみましょう。

セロトニンの材料となるのはトリプトファンというアミノ酸ですが、肉にはこのトリプトファンが多く含まれています。

また肉にはセロトニンを脳へと運ぶコレステロールも含まれているため、肉を積極的に摂ることが、意欲の低下を抑えることにつながります。

■高齢者は「肉食こそ正義」

ステーキやすき焼きを食べると、なんとなく幸せな気持ちになって元気が出てくるのは、こうしたメカニズムが働いているためです。

肉を食べることで、意欲の低下を防ぐと同時に、豊富に含まれるたんぱく質によって、骨や筋肉がつくられるため、運動機能の衰えも防ぐことができます。

心身ともに充実した「シン(=心、身)・老人」であり続けるためにも、なるべく肉を食べるように意識してください。高齢者は「肉食こそ正義」です。

■「コレステロール値が高いほうが長生き」の可能性も

コレステロールが悪者として見られがちなのは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクになると喧伝(けんでん)されてきたからです。

ですが、そもそも「本当にコレステロールが体に悪いのか」は、実はよくわかっていないのです。

免疫学者には「コレステロール値が高いほうが長生きできる」と考える人が少なくありません。というのも、コレステロールは細胞膜を構成する重要な物質であり、免疫細胞にも欠かせないためです。

たくさんの免疫細胞がつくられ、しっかりと働いて免疫機能が活性化することで感染症にもかかりにくくなるし、ガン化する細胞も排除されるのです。

■日本人に必要なのは心筋梗塞よりガン予防

日本は「心筋梗塞よりもガンで死亡する国」です。毎年、心筋梗塞のおよそ1.8倍の人がガンで亡くなっているのです。

日本人に必要なのは心筋梗塞よりガン予防(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/PeopleImages
日本人に必要なのは心筋梗塞よりガン予防(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/PeopleImages

一方、心筋梗塞が国民病と言われ、死因トップになっているのがアメリカです。それゆえ、アメリカ人はメタボリック・シンドロームに注意する必要がたしかにあります。

しかし日本は違います。日本には、欧米のように極端に肥満の人はほとんどいないし、「太りすぎて歩けなくなった」「手術して胃を小さくした」といった人は極端に少ないのです。

こうした疾病構造の違いも考えると、「心筋梗塞で死ぬ国はコレステロール値を低めにしておいたほうがいい」「ガンで死ぬ国はコレステロール値をむしろ高めにしておいたほうがいい」とも言えます。

アメリカ人の1日当たりの肉の摂取量は約300g。これほど多ければ、肉を食べる量を減らし、肥満や動脈硬化を抑えて心筋梗塞を減らそうとするのは合理的です。

これに対して、日本人の1日当たりの肉の摂取量は約100g程度にすぎません。

もともと少ないのにさらに減らしてしまうと、高齢者にとって大事な栄養素であるたんぱく質は足りなくなるし、免疫細胞の材料となるコレステロールも不足する可能性が高くなります。

■たんぱく質不足で脳卒中が多かった

昭和40年代まで、日本人の死因は断然、脳卒中(脳血管疾患)でした。

そのころの日本人は、肉をほとんど食べていなかったために、たんぱく質不足だったことが大きな原因です。

厚生労働省の統計によると、昭和40年当時の日本人は、肉を1日当たり30gも食べていません。

若く健康な人の血管はゴムのように弾性があるものですが、材料となるたんぱく質が不足している人の血管はもろいのです。

■秋田県の自殺率が減少傾向にある理由

秋田県では昭和50年代まで脳卒中が死因のトップでした。塩辛い漬け物とご飯が中心で魚や納豆を少し摂る、という食生活だったことが大きな要因でしょう。

和田秀樹『シン・老人力』(小学館)
和田秀樹『シン・老人力』(小学館)

塩分が多くてたんぱく質が少ないのだから、血圧が高いのに、血管はもろくなる。これでは血管が破れるのも無理はありません。

その後、秋田県では減塩運動が進められて脳卒中が減っています。減塩のみが注目されていますが、たんぱく質の摂取量が劇的に増えていることを見落としてはいけないように感じます。

しかもたんぱく質が不足していたころの秋田県は、全国的に見て自殺が目立って多かったのですが、近年は減少傾向にあります。

肉を多く摂取するようになって、セロトニンや男性ホルモンも増え、うつに陥りにくくなった面があると考えられるのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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