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歩くのが遅い人は突然死のリスクが高い…循環器内科医が警告する血管の悲鳴を見抜く"5つのサイン"

プレジデントオンライン / 2023年6月28日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

健康で長生きするには、どうすればいいのか。循環器内科医の池谷敏郎さんは「注意してほしいのは血管の老化だ。血管は『物言わぬ臓器』と呼ばれており、自覚症状が出る頃には心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まっていることが多い」という――。(第1回)

※本稿は、池谷敏郎『血管の老化は「足」で止められた』(青春新書PLAY BOOKS)の一部を再編集したものです。

■健康維持のために重要な「足の血管」

人は血管とともに老化する――。もう100年も前からいわれ続けていることです。特に理由はないのに、なぜだか疲れが続く。手足が冷える。肌が乾燥する。シミが増えた。ちょっと階段を上っただけで息切れする。こうした「年のせい」と片付けられてしまいそうな、ちょっとした不調や悩みも、実は「血管のせい」であることが多いのです。

血管は、全身をくまなく巡り、酸素と栄養を送り、いらないものを回収してくれているので、その働き者の血管が老いると、全身が影響を受けます。ただ、逆にいうと、血管を若々しく保つことができれば、全身を若く保つことができます。ですから、「血管を若く保つことが大事ですよ!」と、患者さんたちにも、これまでに書いた本でも伝えてきました。そのことは、もちろん変わりません。

ただ最近、血管のなかでも「足の血管」に注目することが大切ではないか、と考えるようになりました。「なぜ足?」と思うでしょうか。理由は大きく2つあります。1つは、血管の老化のサインは足に出やすいから。もう1つは、「足の血管力」を高めることが、全身の血管力を高める手っ取り早い方法だからです。

足の血管力を意識することで、血管の老化をいち早くキャッチし、同時に、全身の血管を若返らせ、全身の血管の老化を防ぐこともできます。「人は血管とともに老化する」という言葉は、「人は足の血管とともに老化する」と言い換えられるのです。

■歩くスピードが遅い人は要注意

血管は、「物言わぬ臓器」といわれます。老化が進んでも、初期の頃には、何の症状も出ないからです。何らかの自覚症状が出たときには、すでに動脈硬化がすっかり進行して、大事な血管が狭くなったり詰まったりしていた、ということが多いのです。そのため、心筋梗塞や脳卒中といった血管病は「突然死が怖い」といわれるのですね。

自覚症状のないまま動脈硬化が進行して、あるとき、大変な血管事故を起こす――。血管が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる所以(ゆえん)です。しかし、脳卒中や狭心症・心筋梗塞を発症するよりも早い段階で、下肢の動脈硬化がわかりやすい症状で出ることも少なくありません。足で全身の動脈硬化の進行に気づくことができれば、心臓や脳での大事故に至る前に、対処することができます。

以下の5項目で該当するものはありますか? 当てはまるものがあっても、「まぁ、よくあること」と、あまり気にとめていなかったかもしれません。でも、これらは実は、足の血管力が衰えてきたサインなのです。

サイン① 歩くスピードが遅い

歩く速度が遅い、特に同年代の人と比べても遅いときには何らかの原因があります。筋肉や骨の衰えを疑いがちですが、足の血管力の低下も原因の1つなのです。速く歩くには、筋肉をたくさん動かすために、たくさんの酸素が必要になります。つまり、血流が大事です。足の血管力が低下して、血行が悪くなっていると、ちょっと速く歩こうとすると血流が足りなくなってしんどくなります。だから、自(おの)ずと歩くスピードが遅くなるのです。

■しびれの原因は神経だけではない

サイン② 冷え、しびれ

冷えは、それこそ「よくあること」と思う人が多いかもしれません。実際、若い人も含めて手足の冷えを感じている人は多いですが、これも血管力が低下しているサインです。末端の血管が開きにくくなって血行が悪くなると、末端まで十分な血液が行き渡らなくなります。そうすると、足先が冷たくなるのです。同様にしびれも、血行が悪くなっているサインの1つです。

手首がしびれている人
写真=iStock.com/Doucefleur
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Doucefleur

しびれと聞くと「神経が悪いのかな」とも思うかもしれません。でも、神経に酸素と栄養を渡しているのも血管なので、血行が悪くて神経に十分な血液が行き渡らなくなると、しびれが生じます。足の動脈硬化の初期症状が、冷えとしびれです。「たかが冷え」「たかがしびれ」と思わず、足の血管力が低下しているサインの1つであることを覚えておいてください。

■歩行後のしびれや痛みは血管力低下のサイン

サイン③ 間欠性跛行(かんけつせいはこう)

少し歩くと、足がしびれたり痛くなったりして、少し休憩するとまた歩けるようになる。これは「間欠性跛行」といわれ、足の血管力が低下したときに見られる、いちばん特徴的なサインです。歩くときには、足の筋肉はたくさんの酸素を必要とします。足の血管力が落ちていると、十分な酸素を送り届けることができないので、歩くとしびれや痛みが出て、休むと症状が治まるのです。

ちなみに、間欠性跛行のもう1つの原因が、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」です。これは、背骨が変形することで、脊髄(せきずい)の神経の通り道である脊柱管が狭くなってしまう病気のこと。脊柱管狭窄症の人も、歩くとしびれや痛みが出て、しばらく休むとまた歩けるようになる間欠性跛行が見られます。ただ、脊柱管狭窄症の場合、前かがみになると症状がやわらぐのが特徴です。

サイン④ 足がつりやすい

運動中や寝ているときに突然足がつる。このことを、「こむら返り」といいます。「こむら」は、ふくらはぎのこと。足の裏や太ももなど、ふくらはぎ以外でもこむら返りは起きますが、ふくらはぎが多いので「こむら(ふくらはぎ)返り」と呼ばれています。

ふくらはぎを痛めた人
写真=iStock.com/amenic181
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/amenic181

こむら返りは冷えや脱水、筋肉の疲労、ミネラル不足などが原因といわれますが、血行不良も原因の1つです。動脈硬化や下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの血行障害があると、こむら返りが起こりやすいのです。たまに足がつるくらいなら、そう心配することはありませんが、足が頻繁(ひんぱん)につる場合は、足の血管力の低下が疑われます。

■水虫がすぐ治らないのは血管に原因がある

サイン⑤ 水虫、足の傷の治りが遅い

足に水虫や傷ができたときに「なかなか治らないな」と感じることはありませんか?

治らないからずっと薬を塗り続けている人がいますが、実は原因は皮膚ではなく、血流にあることも多いのです。血流が悪くなると、水虫も傷も治りが遅くなります。そのほか、血流が悪くなると、末端まで十分な血液が届かなくなり、足の爪が変形・変色したり、足の指の毛が抜けたりすることも。もし左右の足を比べて、片方が指毛が濃く、片方が薄いなど、左右差がある場合には要注意です。血流の低下が疑われます。

5つの項目のうち、1つでも該当すれば、すでに足の血管力が低下している可能性があります。そして、当てはまる項目が増えれば増えるほど、疑いは濃厚になります。当てはまる項目がある人は、今がチャンスです。足の血管力を高めて、全身の血管の状態を改善し、全身の若返りを図りましょう。当てはまる項目がなかった人は、そのままよい状態を保ち、老化を防ぎましょう!

■足の血管の老化は、突然死のリスクを高める

物言わぬ臓器である血管が老化したときには、「足が口ほどに物を言う」のです。そして、足が動脈硬化のサインを出したときには、全身のほかの部分でも同じように血管の老化が進んでいる可能性が高いと考えてください。

実際、足の動脈硬化(下肢閉塞(へいそく)性動脈硬化症)と診断された人の6割以上が、狭心症や心筋梗塞などの「心臓病」か、脳梗塞などの「脳血管疾患」のいずれか、または両方をあわせ持っていることが大規模な研究で明らかになっています。私が診てきた患者さんのなかにも、「歩くと足が痛むんです」と、足の動脈硬化が最初に見つかって、全身を詳しく調べたら実は脳梗塞があった、狭心症があったという方が何人もいらっしゃいます。

足をきっかけに、心臓や脳の血管病が見つかることは珍しくないのです。

血管の老化が進んでいても、じーっと静かにしていて、あるとき突然、血管が詰まったり切れたりして叫び声を上げるのが、脳や心臓です。脳や心臓の血管が切れたり詰まったりすれば、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞といった命に関わる大病につながります。突然死することもあるわけです。たとえ命は救われたとしても、後遺症に悩まされることも多いです。

心臓発作
写真=iStock.com/Suze777
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Suze777

■長生きできても健康を維持できるかは別問題

例えば、脳梗塞の場合、発症しても約9割は助かります。医学の進歩とともに救命率が上がったことは喜ばしいこと。ただ、生き残った方の約半数に、重度の麻痺や認知症が残ります。そこから大変なリハビリ生活が始まります。

急性心筋梗塞の場合は、突然死のリスクがもう少し高く、3~4割が発症直後に亡くなってしまいます。そして、一命はとりとめた方も、後遺症として心臓の一部に動かない部分ができ、心不全を患うことが多いのです。

よく「ピンピンコロリがいい」といいますよね。長患いすることなく、元気なまま長生きして、最期はコロリと逝(い)きたい、と。ところが現実は、そう理想通りにはいきません。今、日本人の「平均寿命」は、男性81.47歳、女性87.57歳です(厚生労働省「令和3年簡易生命表」より)。

それに対して、心身ともに自立して健康的に生きられる期間である「健康寿命」は、2019年の数値で、男性72.68年、女性75.38年です(令和4年版「高齢社会白書」より)。平均寿命と健康寿命の差は、男性で9年、女性に至っては12年ほどあります。ピンピンとは生きられない、何かしらの支障を抱えながら生きる期間が、男女ともに10年前後あるのです。

脳や心臓の血管事故を起こすと、ピンピンコロリは遠のきます。「ピンコロリ」と突然死してしまうか、「ピンピンコロリ」と長生きするか……。だから、血管事故を起こさないように血管を守ることがとても大事なのです。

■血管力は何歳からでもアップできる

そこで、意識してほしいのが足の血管力です。

足の動脈硬化は、脳や心臓とは違って、歩くと症状が出やすいので、意識していればわかりやすいもの。また、足で動脈硬化が進んでいるということは、脳や心臓の血管にも起こっている、あるいは起こってくるということなので、足で気づくことができれば、ラッキーです。「脳や心臓の血管も大変なことになっているよ!」と教えてくれるのが、足なのです。血管には素晴らしい回復能力が備わっているので、血管力は何歳からでもアップさせることができます。

池谷敏郎『血管の老化は「足」で止められた』(青春新書PLAY BOOKS)
池谷敏郎『血管の老化は「足」で止められた』(青春新書PLAY BOOKS)

多少固くなったり、狭くなったりしても、足を使う生活を心がけたことで手術を回避できた患者さんたちのように、いい生活習慣を身につければ、切れにくい、詰まりにくい血管に変わり、新たな血管(新生血管)が発達したりします。何歳からでも遅すぎることはありません。ただ、早ければ早いほど有利であることは確かです。

血管のケアは肌のお手入れと似ています。肌も、お手入れ次第で何歳からでもきれいになる一方、より若いときからケアしたほうが、さらにきれいになりますよね。この本を手に取った今がチャンスです。先ほどのセルフチェックで血管力の衰えに気づいた人は老化をそれ以上進めず、若返るために、まだはっきりとした衰えは感じていない人は、これからの60代、70代、80代、90代を元気に若々しく過ごすために、一緒に血管力を高めていきましょう!

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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