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「健康にいいはずがない」と決め込んでいた名医がどハマり…サウナブームが必然だったと言える2つの理由

プレジデントオンライン / 2023年6月26日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

近年のサウナブームはなぜ起こったのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「サウナには自律神経のバランスを整える効果がある。私も5年前はサウナを『健康にいいはずがない』と決め込んでいた。しかし、親友からサウナ話を聞いて試してみると、根源的なやさしさが満ちるような幸福感を得ることができた」という――。

※本稿は、小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■「こんなに熱くて苦しいものが、健康にいいわけがない」

この日本に空前のサウナブームが訪れるなんて、誰が予想できたことでしょう。

実は私自身も、5年ほど前にサウナの魅力にとりつかれるまでは、

「こんなに熱くて苦しいものが、健康にいいわけがない」

そう思い込んでいたのです。

そもそも日本人にとってのサウナとは、比較的年齢の高い男性を中心としてニーズを集めているものでした。

それも純粋にサウナを楽しむだけではなく、ときには冷たいビールをよりおいしく飲むための脱水の手段であったり、二日酔いを解消するためにアルコールを抜く荒療治だったりと、サウナは医学的見地ではとても推奨できない誤った使われ方もされてきたのです。

しかし、いまのサウナブーム下では、まったく違う様相を呈しています。

長年サウナに親しんできた中高年男性だけでなく、男女を問わず、多くの若い人たちが、いわゆる「ととのい」を求めて、サウナにやってきます。

この現象は、とてもよろこばしいことだと思います。

■空前のサウナブームが起きている2つの理由

なぜいま、サウナブームが起きているのでしょうか?

その理由のひとつは、気軽にサウナを楽しめる環境が整ってきた……ということがあるでしょう。

旧来のサウナ施設や健康ランド、カプセルホテル、銭湯などだけでなく、スーパー銭湯やホテル、スポーツジムなど、いまは身近な各所にサウナが併設されています。

また、貸し切りにできるサウナ施設やサウナメインのスパ、アウトドアでも楽しめるテントサウナなど、新たなバリエーションも増えています。

もうひとつの理由は、現代人が強く求めているから……ということにほかなりません。

それはもちろん、2019年末から流行した新型コロナウイルス感染症の存在も無縁ではないでしょう。

数年にわたりコロナ禍(か)に置かれたことによって、ストレスを感じることがより多くなり、私たちの心と体が「気持ちいい」という感覚を求めているのです。

後述しますが、私たちが「気持ちいい」と感じることには、自律神経の働きや腸から脳への指令伝達などが深く関与しているのです。

サウナには免疫力を向上させる効果も期待できるため、感染症対策のために私たちの体がサウナを求めている……というのはやや飛躍し過ぎかもしれませんが、近い将来そのようなエビデンスが発表されるという推測も、夢物語ではないかもしれません。

サンセットビーチでリラックス美しい若い女性
写真=iStock.com/joka2000
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/joka2000

■サウナがさびついた自律神経のスイッチを動かす

自律神経とは私たちの意識とは無関係に働き続ける神経のことで、主に血管に沿って全身に張りめぐらされ、脳と各臓器とをつないでいます。

この自律神経が正常に働くからこそ、私たちは生きていける……いわば「生命維持装置」となる神経です。

たとえば、私たちの意識が及ばない睡眠中であっても、心臓は止まることなく鼓動(こどう)し続けていますし、その他すべての臓器も働き続けています。

24時間365日、私たちがあれこれ意識しなくても、自律神経が黙々と働き続けてくれるおかげで生命活動は維持されるのです。

この自律神経のバランスが崩れると、当然私たちの体にさまざまな不調が現れます。

いろいろな要因によって乱れがちな自律神経ですが、そのバランスを整えるために、サウナは大変有効なのです。

高温のサウナで体を温め、すぐに水風呂や水シャワー、外気浴によって体を冷やす……この急激な温度差によって、自律神経に適度な刺激を与えることができます。

このとき、血管は一度ギュッと収縮してからすぐに拡張されるため、肉体疲労やさまざまなストレスによって滞(とどこお)りがちな血流がスーッと流れ出します。

複数回、サウナに入ることで、体を「温める→冷やす」がくり返されるため、血液の流れがスムーズになり、多くの不調が改善されて体の調子がよくなる……これが「ととのう」と呼ばれる現象の正体なのです。

私たちの体調は、血流の良し悪しによって大きく左右されます。その血液の流れをコントロールしているものこそが自律神経です。

肉体疲労や日々のストレスによって自律神経がさびついてしまった状態では、体の不調は改善されないまま蓄積し、思わぬ大病に陥おちいるリスクが増大してしまいます。

せっかくのサウナブームの到来です。

ぜひ、みなさんもお近くのサウナを上手に活用して、自律神経のさびを落とし、血流がアップするスイッチをONにしましょう。

■5年前サウナにハマったきっかけ

本書がきっかけとなってサウナにハマり、みなさんにはどんどん健康になっていただきたいと願ってやまないのですが、本編に入る前に私自身がサウナにハマったきっかけについて、簡単にお話しておきたいと思います。

私がサウナにハマったのは、親友であり実業家の本田直之さんの存在がきっかけでした。

彼はかなり前からサウナにのめり込んでおり、日本国内のみならず、世界各国のサウナをめぐっていて、その経験からビジネスパーソン向けに『人生を変えるサウナ術』(松尾大氏との共著。KADOKAWA)という本まで出版しています。

その本田さんから、私はサウナ話をしょっちゅう聞かされていたのです。

このプロローグの冒頭でも述べたとおり、当時の私はサウナについて、

「健康にいいわけがない」

と思い込み、決していい印象は持ち合わせていませんでした。

しかし、彼のサウナ話をくり返し耳にしているうちに、

「サウナって、本当にそんなにいいのかな?」

そう心が少し動いたのでした。

以前から私はあるホテルのスポーツクラブに通っているのですが、もちろんそこにもサウナや水風呂が完備されていました。

いままではサウナの前を素通りしていた私が、ついにサウナ室の分厚い扉を開くことになったのは、およそ5年前のことです。

正直、最初はサウナの熱気が耐えがたいものに感じましたし、水風呂の冷たさにも凍えそうな不安を覚えたものです。

魅力的な若い女性のサウナ リラクゼーション スパ治療グループ
写真=iStock.com/ultramarinfoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ultramarinfoto

■根源的なやさしさが満ちるような幸福感を得られる

しかし、サウナ初日であるにもかかわらず、我慢がいらない程度にサウナに入り、そのあと凍えそうな水風呂ではなく、水シャワーを浴びる……ということを2~3回くり返してみると、なにやら体の中に根源的なやさしさが満ちるような幸福感……その名状しがたい気持ちよさに気がついてしまったのです。

長年、自律神経と腸に関する研究を続けてきた私ですので、そのときすぐにこう思いました。

「サウナには、どうやら自律神経のバランスを整える効果があるようだ……」

それから私は毎日ほぼ欠かさず、サウナに入ることが習慣となったのです。

しばらくサウナを続けるうちに、朝にサウナに入ると心身ともに調子がよくなり、日中の脳のパフォーマンスが向上することを実感できるようになりました。

また、サウナには自律神経のバランスを整える効果だけではなく、体調の変化を察知して脳にさまざまな指令を出す、いわば「司令塔の臓器」として働く腸にもよい効果を与えることがわかってきました。

実は「腸を温める」ことによっても、私たちはさまざまな健康効果が得られるのです。

サウナに5年間親しんでみて、私なりのルーティンもできました。

そのルーティンとは、1回7分間サウナに入り、そのあとに水シャワーを浴び、休憩する……これを毎日(できれば朝に)2~3回くり返すというものです(水風呂ではなく、水シャワーを浴びるのは、私が通うスポーツクラブの水風呂の水温がサウナ上級者向けの低温で、私自身に合わないためです。

私と同じ医師である加藤容崇さんの著書『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)によれば、水風呂の最適な温度は16~17度とのことですが、それと同程度の水温であれば私も水風呂を利用しています)。

■たった7分で体調がグングンよくなるルーティン

また、サウナに入っている7分間も有効活用して、自律神経を整える呼吸法を実践し、腸をはじめとして全身の組織に健康効果を得られる独自のストレッチも座ったままおこなっています。

その呼吸法とストレッチについては、本書でくわしくご紹介します。

たった7分、されど7分。

1回たったの7分間、サウナに入る習慣を毎日続けていくうちに、体調がグングンよくなっていくことを実感できたのです。

ただし、このルーティンは私自身のものです。

小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)
小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)

もちろん参考にしていただくのは結構なのですが、私がみなさんにお伝えしたいのは、それぞれのサウナルーティンを見つけてほしいということなのです。

「サウナ→水風呂→外気浴」を1セットにして3回くり返すことで、初めて「ととのう」ことができるというルーティンもあるようですが、人間の体には個人差があります。

私たちの体は、体によいことをしているときに「気持ちいい」という感覚を覚えるようにできていますが、各人が気持ちよさを得られるラインは人それぞれです。

もっとサウナは自由でいいのです。

「気持ちいい」という感覚を道しるべにして日々サウナを楽しみ、あなただけの「サ道」を見つけることによって、どんどん健康になっていただきたいと願っています。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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