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運動しなくても血管を鍛えられる…自律神経の名医「サウナは本当に健康にいいのか」の最終結論

プレジデントオンライン / 2023年6月27日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rabizo

サウナで「ととのう」とはどのような状態なのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「血流がよいことは、健康に直結する。サウナはこの血流をよくするための『血管の筋トレ』である。体が温められて拡張していた血管が一気に収縮し、外気浴や室温での休憩で再び緩やかに拡張し、血液がスムーズに流れ出すと『ととのった』という状態になる」という――。

※本稿は、小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■健康とは「血流がよいこと」である

「サウナがなぜ体によいのか?」をご説明する前に、そもそも「体によい」とはどういうことかについて考えてみましょう。

「何をどのように食べるのか?」という食生活、日中の活動のしかたや睡眠などの生活習慣、運動の習慣やストレス対策などについて、今日さまざまな健康法が提唱されています。

本書が陳列されている書店の健康本コーナーでも、あまたの本のタイトルが百家争鳴(ひゃっかそうめい)の状態となり、読者のみなさんはどの本を手にとるか、きっと迷ってしまったことでしょう。

もちろん、さまざまな健康法があってよいのですが、実は私が考える健康の概念とは、とてもシンプルなものです。

究極的にいえば、健康とは「血流がよいこと」です。

血液の流れがスムーズになれば、全身のすべてが健康になりますし、その逆に血流が滞ってしまえば、どんな健康法を実践しても意味がありません。

つまり、実践した健康法が効果的であったとすれば、それはその人の血流が改善されたということです。

「血流をよくする」効果とは、たとえば「胃腸にいい」とか「腰痛に効く」などという部分的なものではなく、それは全身のすべての臓器や組織に好影響を与えるトータルケアにほかなりません。

■免疫細胞の活躍はスムーズな血流があってこそ

では、なぜ血流をよくすると全身のすべてが健康になるのでしょうか?

その答えは、血液が果たしている役割を理解すれば、おのずとわかります。

血液が果たしている最大の役割とは、全身の細胞組織に酸素や栄養を送り届けて、代わりに二酸化炭素や老廃物を回収することといえるでしょう。

血液の流れがスムーズであればこそ、全身の細胞組織は十分な酸素と栄養を得ることができますし、さらには老廃物が蓄積することなく、活発に生命維持活動をおこなうことができるのです。

仮に血流が滞ってしまえば、全身の細胞組織において酸素と栄養が欠乏し、細胞内に老廃物がたまってしまうため、体にさまざまな不調が現れます。

体を守る免疫系に関しても、血液は重要な働きをしています。

血液の成分のひとつである白血球には、さまざまな種類の免疫細胞がありますが、この免疫細胞は血液の流れにのって全身をめぐり、さまざまな不調や病気につながる病原体を探してパトロールしています。

病原体を見つけると、不調や病気を未然に防ぐべくすぐさま攻撃して、また病原体に細胞が侵されてしまった場合には、その細胞を排除して体調を改善しようとします。

つまり、免疫細胞の活躍もスムーズな血流があってこそ……なのです。

仮に血液の流れが滞ってしまえば、全身のパトロールも十分にできませんし、病原体に打ち勝つための免疫力も低下してしまいます。

また、免疫細胞だけでなく、あらゆる細胞組織の働きを調節して、生命活動を支えているさまざまなホルモンを全身に運んでいるのも血液です。

私たちの体を構成する37兆個といわれる細胞のすべてが健康であるためには、「血流がよいこと」が絶対条件となるわけです。

血液の最大の役割とは?
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

■サウナとは「血管の筋トレ」である

では「血流をよくする」ためには、どうすればよいのでしょうか?

その答えとは、ズバリ「血管を鍛える」ことです。

血管は大きな血管である動脈と静脈、小さな血管である毛細血管の3つに大別されます。

改めていうまでもなく、血液は血管の中を流れていますが、その流れをコントロールしているのが私の専門分野である自律神経です。

つまり、「血管を鍛える」ためには、動脈と静脈、毛細血管という血管だけでなく、自律神経も鍛える必要があるのです。

そして、サウナには血管と自律神経を鍛える絶大な効果があるのです。

この根拠に基づいて、私はサウナとは「血管の筋トレ」であると提唱しています。

「血管を鍛える」ためには、「血流をよくする」ことが重要です。

「卵が先かニワトリが先か」という話に聞こえるかもしれませんが、「血流をよくする」ために「血管を鍛える」とき、その手段もまた「血流をよくする」ということになるのです。

とはいえ難しく考える必要はなく、ただ「血流をよくする」ことさえ実践すれば、自然に血管は鍛えられ、その結果、ますます血流がよくなり、血管もさらに強くなっていく……そう理解していただければOKです。

■サウナによる大きな健康効果

血管を鍛える方法は、ソフトとハード、2つの方法があります。

ソフト面でいえば、食事です。

血管を傷つける高血圧を防ぐために塩分の摂取量を控える、あるいは血管をやわらかくしなやかにする効果のあるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれるオメガ3系のオイルを積極的に摂る……などが推奨されています。

一方、ハード面で本書がおすすめするのがサウナです。

サウナは、血管を鍛えるために大変有効な方法です。

くわしくは本書で紹介していますが、サウナで体を温めてから、水風呂や水シャワー、外気浴によって体を冷やす……これを複数回くり返すことによって、全身の血液の流れが促進され、また自律神経にも適度な刺激を与えることができます。

このことによって、大きな血管である動脈と静脈、小さな血管である毛細血管、さらに自律神経のコンディションも向上させることができるのです。

同じ効果は運動によっても得られますが、サウナであれば、運動が苦手な人であっても容易に毎日利用できるため都合がよいと思います。

サウナで血流をよくすれば、血管がしっかりと鍛えられて、その結果、血流がさらによくなって……といったように「血流をよくする」ことと「血管を鍛える」こととが相乗効果を生むため、サウナを日々の習慣にすれば大きな健康効果が期待できます。

突然死を引き起こす合併症の危険もある動脈硬化、また毛細血管のゴースト血管化など、血管におけるさまざまな健康リスクを予防・改善し、さらには自律神経のバランスも整える……サウナによる健康効果は絶大であると考えます。

ぜひみなさんにも、血管の筋トレとなるサウナを利用していただきたいと思います。

サウナとは「血管の筋トレ」である
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

■自律神経とは人間の「生命維持装置」

サウナは、自律神経に適度な刺激を与えることで、常日頃から崩れがちな自律神経のバランスを整えてくれます。

自律神経とは、自らの意志によって筋肉などを動かすことができる神経とは異なり、私たちの意志とは関係なく、無意識下で働き続けている神経のことです。

主に血管に沿うように全身へと張りめぐらされ、血管やその他の内臓組織をコントロールしながら生命活動を維持するために働いています。

この自律神経の働きのおかげで、睡眠中であっても呼吸は止まらず、心臓などの臓器も働き続けることができるわけです。また、血液の流れをコントロールしているのも自律神経です。

つまり、自律神経とは人間の「生命維持装置」のようなものなのです。

自律神経には、活動時に優位になる「交感神経」とリラックス時に優位になる「副交感神経」の2つがあり、どちらか一方が20~30%程度優位になる状態でバランスをとりながら、24時間365日休むことなく働いています。

簡単にいえば、私たちの体は交感神経が優位になると活動的になり、副交感神経が優位になると眠くなります。

自律神経がどのように血管に作用するのかといえば、交感神経が優位になると血管が収縮して血圧が高くなり、副交感神経が優位になると血管が拡張して血圧が低くなるのです。

つまり、交感神経は血圧を高くすることで俊敏に体が動かせるように備え、逆に副交感神経は血圧を下げて体を休める態勢を整えているわけです。

自律神経の働きはよく車に例えられるのですが、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのようなもの……と解説される所以はここにあります。

■自律神経が「ととのったー」と感じるメカニズム

では、サウナに入ると私たちの自律神経はどのようになるのでしょうか?

まず、高温のサウナに入ると、ジワジワと全身が温められるため、副交感神経の働きが優位になって血管が拡張され、血液は体の中心部から皮膚に近い血管に多く集まります。

血液の流れは、体温調整の役割も果たしているため、皮膚に近い血管に血液を集めることや発汗によって上昇する体温を外に放出して、冷まそうとするのです。

しかし、やがてサウナの熱さによって、逆に交感神経が優位になります。

この状態でサウナを出て、すぐに冷たい水風呂に入ったり、水シャワーを浴びると、さらに交感神経が強く働いて血管を収縮させます。血液は皮膚に近い血管から、体の中心部の血管へと移動して、今度は体温が低下し過ぎないように保温しようとするわけです。

その後、外気浴や室温で休むと、体は徐々に通常モードへと戻ります。

サウナの高温環境から、急に水風呂や水シャワーの低温環境に体をさらすことによって、自律神経は振れ幅が大きく働いて刺激を受けることになります。

このとき、体が温められて拡張していた血管は一気に収縮しますが、外気浴や室温での休憩で再び緩やかに拡張するので、血液がサーッとスムーズに流れ出します。人間は、血管が拡張して血流が促進されるときに「気持ちいい」という感覚を覚えるのです。

サウナによって、半ば強制的に自律神経の振れ幅を大きく働かせ、そのあとに休ませることで血液の流れはよくなり、自律神経のバランスが整いやすくなります。

これによって私たちは「ととのったー」と感じるわけです。

サウナで自律神経はどうなる?
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

■現代社会で自律神経のバランスを崩すのは当たり前

何かとストレスを受けることが多い現代社会では、自律神経のバランスを崩すことなく1日を過ごすのは、はっきりいって至難の業です。

また、夜更かしによる睡眠不足、ブルーライトを放射するスマートフォンへの依存など、自律神経のバランスを崩す原因は、枚挙にいとまがありません。

私たち現代人は、むしろ自律神経のバランスを崩さずに暮らすことはできない……と考えておいたほうがよいかもしれません。

いまの時代に大切なことは、自律神経のバランスは崩れるものだと自覚して、そのたびにきちんと正常に戻す努力をすることといえるでしょう。

いわば「生命維持装置」として働く自律神経ですので、そのバランスを崩したまま放置するとさまざまな不調を引き起こし、思わぬ大病に結びついてしまうこともあります。

自律神経のバランスの崩れは、万病の元なのです。

体のどこにも特段の病変は認められないのに、疲労感が消えない、頭が重い、イライラ感がある、食欲がない、頭痛、全身の筋肉、背中やおなかなどが痛い……など、なんとなく調子が悪いとき、医師から「不定愁訴(ふていしゅうそ)」という診断を受けることがあります。

私の研究では、不定愁訴を訴える患者の多くは、自律神経のバランスが崩れていると考えて、まず間違いありません。

■がん、脳卒中、心筋梗塞の原因にもなる

自律神経のバランスの崩れは、自律神経失調症の原因にもなります。

自律神経失調症による主な自覚症状は、不安感、疲労感、不眠症、食欲の減退、発熱、異常な発汗、息切れ、過呼吸、めまい、便秘や下痢、嘔吐感……など多岐にわたりますが、不定愁訴と同様に、医療機関で検査をしても原因となる病変が認められないケースがほとんどです。

小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)
小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)

自律神経失調症の診断を受けると、抗不安薬やホルモン剤などの薬が処方されますが、あくまで症状を緩和させるだけで、根本的な治療にはなりません。

特段の病変が見当たらない不定愁訴や自律神経失調症を根本的に治すためには、自律神経のバランスを整えることが重要なのです。

長年、自律神経の研究を続けてきた経験でいえば、がん、脳卒中や心筋梗塞そくなどの循環器の病気、感染症……などなど、ほとんどすべての病気に対して、自律神経のバランスの崩れが何らかの影響を与えていると考えたほうがいいでしょう。

さらに、これから血管のお話をしますが、大きな血管である動脈と静脈、小さな血管である毛細血管のコンディションは、ともに自律神経の働きによって大きく左右されます。

その理由は、血管のコンディションをよい状態に保つためには、血液の流れがスムーズであることが必要不可欠な条件であり、その血流をコントロールしているのが自律神経であるからです。

アクセルの役割である交感神経とブレーキの役割である副交感神経とがバランスよく、相互に助け合いながら働いてこそ、血液はスムーズに流れます。

まとめると、サウナによる最大の健康効果は、自律神経のバランスを整えることで血行を促進させて、血管を「筋トレ」するように強く、しなやかに鍛えることにあるといえるでしょう。

サウナで自律神経が整う!
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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