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なぜサウナに入るとイライラが消えるのか…自律神経の名医が説く「"腸"を温める」驚きの効果

プレジデントオンライン / 2023年6月28日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sewcream

サウナには、どんな効果があるのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「サウナに入ることで全身の各所にさまざまな指令を出す腸が温まり活性化して、幸せホルモンが分泌される。ビジネスエリートと呼ばれるような経営者がサウナにハマるのも、競争が激しいビジネス界で受けるストレスを上手に受け流すことができるからかもしれない」という――。

※本稿は、小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■「腸は第2の脳」ではなく「脳が第2の腸」

先の記事で述べたようにサウナは「血管の筋トレ」なのに、なぜ唐突に「腸」の話が出てくるのかと訝いぶかしむ方もいらっしゃるかもしれませんが、腸の存在なくして人体のお話はできません。

普通、人体の司令塔は「脳」だと考えがちですが、「脳腸相関」という言葉が示すとおり、脳と腸は互いに影響を与え合っています。そのため、脳がストレスを覚えるとおなかが痛くなったり、逆に腸に悪い菌が入ると脳が不安を覚えたりするのです。

また、「腸は第2の脳」という言葉もありますが、長年腸の研究をしてきた私からいえば、それは誤った言い回しで、本当は「脳が第2の腸」なのです。

私がかくいう理由は、発生学の見地からの考察であって、実は人間の体はまず腸ができたあとに脳が発生していることが判明しています。

生命活動を維持するために、脳は全身の各所に対してさまざまな指令を出していますが、その脳に対して指令を出している臓器は腸なのです。

■サウナは体を動かしながら入るほうが健康効果は高い

私はサウナの中で軽く体を動かすストレッチや、3.6呼吸法を実践することなどをおすすめしているのですが、その目的は「腸」を鍛えることにあります(ストレッチや呼吸法については本書のPart.2を参照)。

おなかの上から腸をもむ「腸もみ」はもちろんですが、体をひねる、伸ばすといった動作もまた、腸に適度な刺激を与えてくれます。

サウナ室のキャパシティの問題はありますが、健康法という観点でいえば、体を動かさずにジッとサウナに入るよりは、ほかの人の迷惑にならない範囲で体を動かしながら入るほうが健康効果は高くなるといえるでしょう。

現在のサウナブームがこのまま続いて、より健康的なサウナの入り方が考察されれば、むしろ「サウナは体を動かしながら入る」というスタイルがトレンドになっていくかもしれません。

私自身も、サウナの中では自ら考案したストレッチをおこないながら楽しんでいます。

自律神経、また動脈や毛細血管などの血管を鍛えるのと同じように、みなさんには「血管の筋トレ」の一環として、ぜひサウナで腸を鍛えていただきたいと思います。

■腸を温めると気持ちが穏やかになる

血管と同様に、腸を鍛える方法にもソフト面とハード面、2つの方法があります。

ソフト面でいえば、やはり食事です。たとえば、ぬか漬けやヨーグルトなどの発酵食品を摂ること、あるいは食物繊維の豊富な野菜やきのこ、海藻などを食べることです。

ハード面から腸を鍛える方法としては、第一に「腸を温める」ということがとても重要で、そのためにサウナは最適であるといえるでしょう。

間違いなく、腸の働きは温めることによって活性化します。実際、私は温めることによって腸が元気になる様子を何度も目の当たりにしています。

手術の経験が豊富な外科医であれば誰しも知っていることなのですが、開腹手術が終わると、切開した部分を縫合する前におなかの中を温かい湯で洗うことになります。

このことを「腹腔洗浄」というのですが、このとき温かい生理食塩水でおなかを洗うと、目視ではっきりとわかるほど腸の動きや色合いがイキイキするのです。

腹腔洗浄をおこなう目的は、術後に腸と腹壁、もしくは腸同士が癒着してイレウス(腸閉塞(へいそく))を起こすのを予防することですが、温かい湯で洗うと腸がよろこぶのは確かです。

つまり、サウナで「腸を温める」ことはとてもいいことであるといえるわけです。

■ビジネスエリートがサウナにハマる理由

これに合わせて、サウナ中に腸に適度な刺激を与えるストレッチや呼吸法をおこなえば、さらに健康効果は大きくなると考えて間違いないでしょう。

プロローグにおいて、一人ひとりが感じる「気持ちいい」という感覚を道しるべにして、サウナを楽しみつつ、健康になっていただきたいと書きました。

小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)
小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)

実は、この「気持ちいい」という感覚にも、腸が大きく関係しています。

最近、私は日々の研究において「オキシトシン」というホルモンに大変注目しています。

オキシトシンとは、脳に多幸感を与える……いわゆる「幸せホルモン」のひとつで、脳の視床下部というところから分泌されるのですが、その分泌の指令を脳に出す臓器こそが腸なのです。

サウナに入ったあとに、なぜかイライラ感がなくなるのは、このオキシトシンが分泌されているためです。

ビジネスエリートと呼ばれるような経営者がサウナにハマるのも、ストレスが多く、競争も激しいビジネス界で受けるストレスをオキシトシンで上手に受け流すことができるから……といえるかもしれません。

かくいう私自身も、当初は少なからず疑いながら試してみたサウナでしたが、なにやら体の中に根源的なやさしさが満ちるような幸福感の虜となってハマってしまったのですから、オキシトシンパワーは絶大であるというほかありません。

また、感染症対策という意味でも、ウイルスや細菌などの外敵から私たちの健康を守ってくれる免疫細胞の約70%は、腸内に集まっているため、サウナの力で腸を鍛える意味は大きいといえます。

脳腸相関とは?
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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