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熱さを我慢しては逆効果…自律神経の名医が教える「絶対にやってはいけないサウナの入り方」

プレジデントオンライン / 2023年6月29日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Finmiki Images

サウナの温度はどのくらいがベストなのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「体にとって我慢とは心身を苦しめるストレスに過ぎない。サウナの上段で熱すぎるのを我慢する、『ととのい』のために冷た過ぎると感じる水風呂に我慢して入る、サウナ後のビールのために水分補給をせずにのどの渇きを我慢するなどは、いずれもNGである」という――。

※本稿は、小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■「サウナ→水風呂→外気浴」のセットはマストではない

本稿では、自律神経の専門家として私が健康によいと考える、もちろん医学的にも正しいサウナの入り方について解説します。

健康によいサウナの入り方とは、すなわち「血管の筋トレ」になるサウナの入り方ということになります。血管を鍛える方法として、サウナは有酸素運動と同様の効果が期待できるので、ぜひサウナ習慣を始めてみてください。

多くのサウナ本では、「サウナ→水風呂→外気浴」をセットにして複数回おこなうことで、初めて「ととのう」ことができる……と解説されているようです。

しかし、私は必ずしもこのセットメニューがマストではないと考えています。

人間の体には、個人差があります。個人差がある以上、それぞれの体にとってよいこともまた、千差万別です。

つまり、ほかの人がすすめる「サウナの流儀」を盲目的におこなうことは、ときに危険ですらあると思ってください。くり返しになりますが、健康的にサウナを楽しむためには、みなさんの体から発せられる「気持ちいい」という感覚に素直に従うことがとても重要です。

あくまで各々が感じる感覚を道しるべにして、個々人の体に合ったサウナの入り方を見つけることが健康への近道となるのです。

■サウナや水風呂後、すぐに運動や食事はNG

先の記事で紹介したとおり、私自身が「気持ちいい」と感じて、実践しているルーティンは、1回7分間サウナに入り、そのあとに水シャワーを浴び、休憩する……これを毎日(できれば朝に)2~3回くり返すというものです。その合間に水分補給もします。

現在通っているサウナの水風呂は、少々低温過ぎて私の体には合わないため、水シャワーにしていますが、「気持ちいい」と感じる温度の水風呂に出会ったときには、水シャワーではなく、1回1分程度水風呂に入るようにしています。

同じサウナに通っている大学教授の知人は、1回5分間のサウナ→水風呂をくり返してから休憩するのがルーティンです。ほかの人を観察してみると、1回10分以上サウナに入る人も少なくありません。

つまり、時間や回数はあくまで目安でしかないのです。その日の体調によっても、サウナに入る時間は変えるべきでしょう。くれぐれも無理することなく、自分が「気持ちいい」と感じる範囲で、サウナに入る時間を決めるようにしてください。

サウナの木の厚板からベンチに横たわるバスハットと白いタオル
写真=iStock.com/Andrii Borodai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Borodai

サウナのあとに外気浴をおこなうことは、必ずしも必要ではありませんが、サウナを出てから徐々に体を平常時へと戻してあげることは重要です。

たとえば、サウナや水風呂を出てすぐに帰る、あるいはすぐに運動や食事をするというのは、健康的なサウナの入り方としてはNGです。

サウナや水風呂に入った直後は交感神経が強く働いていて、いわば興奮状態にあるため、徐々に体を慣らす意味で必ず休憩をとりましょう。また、水分補給も十分にしてください。

外気浴できるスペースのあるサウナは限られますので、そのスペースがない場合には、脱衣場やパウダールーム、休憩室などでもOKです。

また、サウナや風呂で温まった直後の体は体温も高く、心拍数も上がっているので、そのまま服を着ると熱過ぎて汗をかいてしまいます。汗による不快感もストレスになるので、少なくとも汗をかかなくなるまでは、休憩するようにしてください。

■サウナで「がまん」はストレスに過ぎない

サウナのルーティンは人それぞれ。実際に試しながら「気持ちいい」という感覚をなるべく長くキープできるようなメニュー作りをすることが大切です。そうすれば、おのずと健康効果はついてくるはずです。

しかし、その「気持ちいい」という感覚を間違えてしまうケースも結構あります。最も注意したいのは、「がまん」することで「自己満足」に陥ってしまうことです。

断言しますが、健康によいがまんなど絶対にありません。

たとえ、本人が望んでおこなっていても、体にとってがまんとは、心身を苦しめるストレスに過ぎないのです。

具体的にいえば、水風呂のためにサウナの上段で熱いのをがまんする、「ととのい」のために冷た過ぎると感じる水風呂にがまんして入る、サウナ後のビールのために水分補給をせずにのどの渇きをがまんする……などは、すべてNGなのです。

サウナだけではありません。ウォーキングも然り、ダイエットも然りです。

日常生活の中でおこなう習慣に、苦しみや忍耐がともなってはいけないのです。がまんしなければできないことは、体にとっては単なるストレスに過ぎません。

■日に日に体調がよくなっていく実感を得る方法

わかりやすく解説するために「運動」を例に挙げましょう。

同じ運動であっても、「健康のためにおこなう運動」と「アスリートが強くなるためにおこなう運動」とは、まったく別物です。

アスリートがおこなう運動は、体への負荷が大きく、医学的にも理にかなったケアをしないとダメージを負う可能性があります。肉体的なダメージだけでなく、つらいトレーニングによって、精神的ストレスを受けることも少なくないはずです。

つまり、特定のスポーツをおこなう能力が高くなっても、健康的にはマイナスになる可能性が高いと推測されます。がまんを強いられるサウナ利用もこれと同じで、健康面から考えればマイナスになるといえるでしょう。

私自身、サウナの習慣を始めた頃は、1回につき3分間入るのが限界でした。かつての私は、サウナに入って3分を過ぎると「気持ちいい」が「熱くて苦しい」に変わってしまう体質だったのです。

しかし、無理なく毎日続けているうちに、サウナの中で「気持ちいい」時間が長くなっていき、現在の1回7分間のルーティンにたどり着いたわけです。

「血管の筋トレ」となるサウナを習慣にするためには、体調がよいときにサウナや水風呂に入ることによって、自律神経に適度な刺激を与え、血液の流れを促進してから、休憩によって興奮状態の体を通常モードに戻し、安定させることが重要です。

そのようなサウナ利用をなるべく毎日おこなえば、生活の中にリズムが生まれて、心の平穏も得ることができると思います。

自分にとってのサウナが、がまんすることのない「お手軽な修行」のようなものになれば、日に日に体調がよくなっていく実感を得られるはずです。

■サウナの種類ごとに得られる健康効果

ひと口にサウナといっても、さまざまな種類があります。

最も一般的なサウナは、「ドライサウナ」だと思います。ドライサウナは、その名のとおり湿度が低く、室温は70~100度と高温です。私が毎日利用しているのも、このドライサウナです。

比較して「ウエットサウナ」は湿度が高く、ドライサウナよりも室温が低めのサウナで、「スチームサウナ(ミストサウナ)」や「フィンランド式サウナ」などがあります。

皮膚に塩を塗ることで、浸透圧による発汗を促す「塩サウナ」も、低温のウエットサウナであることがほとんどだと思います。

では、サウナの種類によって、健康効果はどのように変わるのでしょうか?

私は、どのサウナを利用しても受けられる健康効果には大差がないと考えています。

もちろん、湿度や温度が異なれば、体が温まるスピードは変わりますが、その差を気にするよりも、利用者が「気持ちいい」と感じることが何より大切です。

体が早く温まるからといって、高温のサウナが苦手な人がドライサウナにがまんして入っても、少なからずストレスを受けてしまい、健康によいとはいえません。高温が苦手な人は、温度の低いスチームサウナを楽しめばよいのです。

また、同じ施設であっても、男女で設備が異なるサウナもあります。私が通っているジムも同様で、男性はドライサウナ、女性はスチームサウナとなっています。そのため、私の妻は日々スチームサウナを利用しています。

実は、私たち夫婦で先にサウナにハマったのは、妻のほうです。医師の目で妻の状態を見る限り、スチームサウナであっても、その健康効果は大きいと感じられます。

つまり、生活環境の上で利用しやすく、また自分の体に合ったサウナを見つけて、なるべく毎日楽しんで利用すればよいでしょう。

■サウナと入浴では健康効果はどう変わる?

サウナと入浴では、健康効果に違いはあるのでしょうか?

私自身、5年前にサウナにハマるまでは健康を意識して入浴する習慣を続けていました。それは『医者が教える 小林式お風呂健康法』(ダイヤモンド社)という本まで書き上げるほどで、自律神経を整える入浴法を日々研究していました。

もちろん、自律神経を整えるために、入浴は有効な手段のひとつです。

しかし、入浴の場合は、体が温まったあとに水風呂や水シャワーを浴びる習慣があまりなく、自律神経に適度な刺激を与える「温度差」が生まれにくいという欠点があります。

つまり、入浴する習慣だけでは「血管の筋トレ」にはならないというわけです。

また、サウナは全身がまんべんなく、均一に温まりやすいのですが、入浴の場合は湯につかっている部分だけが先に温まり、湯につかっていない部分はなかなか温まりません。

湯につかっていない部分が温まるまで長時間入浴すると、のぼせてしまう危険もあり、かといって高温の湯で入浴すると湯に入った瞬間に体が危険を感じて、急激に交感神経が強く働くため、体はストレスを受けてしまいます。

さらに温泉の場合は、その成分により湯あたりする可能性も否定できません。

この点においても、短時間で全身がまんべんなくジワジワと温まるサウナは、入浴よりも優れているといえそうです。

「血管の筋トレ」を目的とするならば、入浴よりもサウナ習慣のほうがおすすめです。

■サウナに入るのは朝・夕のタイミングがベスト

自律神経には「日内変動」と呼ばれるリズムがあり、朝と夕方の1日2回、交感神経と副交感神経のバランスが大きく切り替わります。

朝は副交感神経から交感神経へと優位が切り替わることで活動しやすくなり、夕方は交感神経から副交感神経へと優位が切り替わることで、夜ぐっすり眠る準備をします。

自律神経の日内変動のリズムは、「サーカディアン・リズム」と呼ばれる太陽の周期に同調する生命活動のリズムと連動しています。サーカディアン・リズムは、人間だけでなく、地球上の生物に共通して働く、1日24時間の体内時計のようなものです。

サーカディアン・リズムとは?
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

つまり、人間の体には日の出とともに起きて昼間に活動し、日没して暗くなったら眠るというリズムが刻み込まれているわけです。

小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)
小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)

朝と夕方の1日2回、自律神経の優位が切り替わるタイミングは、自律神経のバランスが崩れやすいだけでなく、血液の流れも滞りやすくなります。また、朝は筋肉が硬直しやすく、夕方は足のむくみが発生しやすくもなります。

この時間帯にサウナに入ると、自律神経に適度な刺激を与えることができ、滞りがちな血液の流れもよくすることができるため、最も理にかなったタイミングといえます。

また、夕方にサウナに入ることで、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズになり、眠りの質が向上する効果も期待できます。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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