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心身をメンテナンスする成長ホルモンをたっぷり分泌…「サウナ後は寝つきがいい」の医学的根拠

プレジデントオンライン / 2023年6月30日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

睡眠の質はどうすれば高められるか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「私たちの体は、深部体温が低下すると休息モードとなり眠気を覚えるようになる。この深部体温は一度上げてからの方が低下しやすいため、サウナに入ることでぐっすり眠れるようになる」という――。

※本稿は、小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)の一部を再編集したものです。

■日本人の5人に1人が陥る不眠症の正体

「夜、なかなか寝付けない……」
「夜中に何度も目が覚めてしまう……」
「朝、目覚めても体の疲れがとれない……」

日本人の5人に1人、60歳以上の高齢者では3人に1人が、何らかの不眠症を抱えているといわれています。

不眠症の問題を考えるときには、もちろん睡眠時間が十分であるかという問題も無視できませんが、何より「睡眠の質」の良し悪しについて見直してみる必要があります。

では、「睡眠の質」とは、どんなことをいうのでしょうか。

仮に睡眠時間を7時間と仮定すると、およそ入眠から3時間を前半部、その後の4時間を後半部として分けることができ、前半部と後半部はそれぞれ、体の中では睡眠中に異なる作業がおこなわれています。

睡眠時には、「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りと「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い眠りが約90分サイクルでくり返されます。

入眠からおよそ90分後に現れるノンレム睡眠が最も深い眠りのピークとなり、その後、レム睡眠とノンレム睡眠はともに、徐々に浅くなりながら朝目覚めることになります。

■「サウナ後は寝つきがいい」には医学的根拠があった

つまり、前半部の3時間では、レム睡眠とノンレム睡眠が2サイクル現れるわけですが、このタイミングで現れる2回のノンレム睡眠が、最も深く眠っているタイミングということになります。

この前半部の深い眠りのとき、私たちの体の中に「成長ホルモン」が分泌されます。

成長ホルモンはその名のとおり、赤ちゃんから大人になるまでは、人間の脳の発達や体格の成長を促すために働きますが、実は、成人したあとは、日中に受けたさまざまなストレスによって、心身が負ったダメージを睡眠中にメンテナンスする役割を果たすようになります。

レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

この成長ホルモンはほぼ睡眠中にしか分泌されないホルモンで、最も多く分泌されるのは入眠後の3時間のタイミングなのです。

つまり、この入眠後の3時間に、心身のダメージを修復してくれる成長ホルモンが分泌される深いノンレム睡眠がしっかり現れることこそが、質の高い睡眠といえます。

そしてサウナには、この質の高い睡眠に私たちを誘ってくれる効果があります。その理由は、サウナが自律神経と体温の変化に影響をおよぼすためです。

■睡眠の質を高めるためには「外気浴」が大切

自律神経の日内変動
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

血液の流れをコントロールする自律神経には、「日内変動」と呼ばれる1日の変動サイクルがあります。図表2のとおり、朝と夕方の1日2回、交感神経と副交感神経のバランスが大きく切り替わります。

朝は副交感神経から交感神経へと優位が変わることで活動しやすくなり、夕方は交感神経から副交感神経へと優位が変わることで、夜ぐっすり眠る準備をします。

実は、この夕方のタイミングにサウナに入ると、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズになり、成長ホルモンがしっかり分泌された深い眠りを得やすくなるのです。

日中は、交感神経が優位になることで毛細血管を収縮させ、血液を体の中心部である臓器や脳に多く集めます。

このとき、「深部体温」と呼ばれる体の中心部の体温が上昇して、体は活動しやすくなり、脳では思考のめぐりがよくなります。

夜間は、副交感神経が優位になることで毛細血管を拡張させ、血液を皮膚に近い末梢の血管に多く集め、外気によってその血液を冷ますことで熱を放散して体温を下げます。

このときは、「皮膚体温」と呼ばれる体の表面の体温は上昇しますが、その熱は放散され、体の中心部は血液が少なくなるため深部体温は低下します。

私たちの体は、深部体温が低下すると休息モードとなり、眠気を覚えるようになります。

つまり、副交感神経を優位にすることで毛細血管を拡張させ、深部体温を低下させれば、夕方から夜に向けて眠気が増して入眠しやすくなり、睡眠の質は高くなるわけです。

深部体温と皮膚体温の関係
出典=『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』より

■なるべく夜は静かに過ごすのがポイント

深部体温は、一度上げてからのほうが低下しやすくなるという特徴があるため、サウナによって体をジワジワ温めてから水風呂に入ることで体の中心部に血液を集め、いったん深部体温を上げると、その後は夜にかけてスムーズに体温が下がり、ぐっすりと眠れるようになるのです。

ただし、このときに大切なことは、水風呂から出たあとに外気浴や脱衣場で十分に休み、体を平常モードに戻すことです。

小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)
小林弘幸『医者が教える 心と体が本当にととのう サウナ習慣』(Gakken)

水風呂から出たばかりのタイミングでは、サウナの熱さと水風呂の冷たさによって、交感神経が強く働いています。いわば体が興奮状態にあるため、このままでは副交感神経が優位になりにくいまま夜を迎えてしまい、逆に入眠しにくくなってしまいます。

サウナと水風呂によって刺激を与えた交感神経を落ち着かせるため、必ず外気浴や脱衣場でゆったりと休憩するようにしましょう。

副交感神経が優位となってしっかり働き、深部体温が十分に下がって眠気を覚えるのは、いったん深部体温が上がってから約1時間後といわれています。

つまり、夕方にサウナと水風呂によっていったん深部体温を上げてから、休憩で自律神経を落ち着かせておけば、帰宅後に深部体温がスムーズに低下して自然と眠くなる……というわけです。

なるべく夜は静かに過ごすように心がけて、副交感神経がしっかり優位に働くように気をつけましょう。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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