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たとえ政府が解散命令を出しても活動に支障はない…旧統一教会が強気の姿勢を崩さない怖すぎる理由

プレジデントオンライン / 2023年6月30日 14時15分

「法令違反に該当するかどうかハードルが高い」と及び腰だった(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/wacomme

旧統一教会はこれからどうなるのか。ジャーナリストの鈴木エイトさんは「解散請求命令はできない、という観測も流れているが、たとえ解散命令が出たとしても教団の活動は続く恐れがある。日本の政治家は、教団を守るのではなく、徹底的に戦うべきだ」という――。

■「旧統一教会への解散命令請求」いよいよ正念場

世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下同)との戦いがいよいよ正念場を迎えている。

文化庁は昨年11月以来、計6回の質問権を行使している。

これは宗教法人法に基づく措置で、質問の結果、宗教法人の法令違反などが確認され、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」と判断された場合、裁判所に宗教法人の解散命令を請求することになる。

岸田政権は当初、「法令違反に該当するかどうかハードルが高い」と及び腰だったが、昨年10月に「民法の不法行為も含む」と方針転換し、一気に解散命令請求の動きが進んだ。

■「解散命令請求はできない」説も流れる

旧統一教会が追い詰められていると見える一方、ここに来て「解散命令請求はできない」という観測も流れている。

週刊文春(文春オンライン)は4月26日付で「統一教会の解散命令請求は困難な情勢 文化庁事務方トップは『全く見通しが立っていない』」という記事を掲載。事実上、解散命令請求は困難な情勢にあるとの見解を報じた。

また毎日新聞は6月12日付で「旧統一教会の解散命令請求『手詰まり』 強制力ない調査、長期化」という記事を掲載。「解散を認めさせる証拠が積み上がらず、調査が長期化」と報じている。

しかし、さまざまな情報から、私はまったく別の印象を持っている。

文化庁は着々と準備を進めており、早ければ夏にも旧統一教会への解散命令請求がなされるはずだと考えている。

■「あの鈴木某だけは許さない」

そう考える1つ目の理由は、「政治家による圧力の弱体化」だ。

2009年、旧統一教会による霊感商法事件、いわゆる新世事件が問題となった。旧統一教会への厳しい措置が検討されたが、その際は教団側が関係の深い政治家に泣きついて、圧力をかけさせたと言われている。

安倍晋三元首相銃撃事件以降、旧統一教会への批判が沸き起こると、教団関係者はメディアへの「圧力」を模索する。

拙著『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)でも経緯を書いたが、旧統一教会はプレスリリースを出した上で特定のメディアにクレームを入れ、「教団が作成した動画をテレビ等で使うのは著作権侵害」という主張を展開した。これはメディアに対する恫喝(どうかつ)の一種と見て間違いないだろう。

また、萩生田光一衆院議員はあるメディアの取材中に「あの鈴木某だけは許さない」と発言していた、との情報もある。

圧力ゲージ
写真=iStock.com/mevans
政治家による圧力が弱体化している(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/mevans

■旧統一教会問題に対する世論は変わっていない

拙著『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)にも書いたように、旧統一教会と関係を持ってきた政治家は数多く存在する。

今回の解散命令請求への動きに、教団と関係する政治家が何らかの圧力をかけるということも考えられる。

しかし、さまざまな理由から、いまは政治家が表立って動きにくい状況だと考えている。

安倍晋三元首相銃撃事件の後、私は「やや日刊カルト新聞」総裁の藤倉善郎とともに「統一教会系団体と関わりがある国会議員112人」というリストを作成。各メディアへ提供した。

これが旧統一教会追及のきっかけとなり、岸田政権で当初経済再生担当大臣を務めていた山際大志郎氏は、教団の集会に繰り返し参加していた疑惑により大臣を辞任している。

多少時間が経過し、世論は沈静化しつつあるとも言われているが、旧統一教会問題に対する厳しい姿勢は変わっていないはずだ。

■政治家も表立って教団を助ける動きはできない

中にはいまでも教団とつながっている政治家もいるかもしれないが、このような状況では、旧統一教会と関係を持ってきた政治家たちも、表立って教団を助ける動きはできない。

政治家が解散命令請求を妨げるような動きを見せれば、たちまち厳しい批判にさらされ、次の選挙で落選することも考えられる。そのリスクを冒してまで政治家が動くとは考えにくい。

政治家の圧力がなければ、文化庁は解散命令請求へ進めていくはずだ。

実際、野党ヒアリングにおいて、文化庁側は政治家の影響はないときっぱり否定している。

■一番いいのは「解散命令請求の後の衆院解散」

2つ目の理由は、「解散・総選挙のタイミング」だ。

岸田首相はもともと「広島サミットまでは首相を続ける」と周囲に語っていたとされるが、節目となるサミットを乗り切ったことで、長期政権の可能性も見えてきた。そうなるといずれは衆議院解散に踏み切るのではないか、とみられている。

原爆ドーム
写真=iStock.com/Eloi_Omella
広島サミットまでは首相を続けると語っていたとされる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Eloi_Omella

「通常国会の会期末で解散するのでは」という観測も流れたが、今回は見送られた模様だ。

岸田首相自身は「現時点では解散の日程は考えていない」と語っているが、もし今後解散に踏み切る場合、旧統一教会への解散命令請求のタイミングが問題になる。

旧統一教会との関係を疑われている自民党にとって、一番いいのは、解散命令請求の後のタイミングで衆議院を解散することだ。

そうなれば自民党として旧統一教会との関係を清算した、という体で選挙戦を戦うことができるため、最も有利だと考えられる。

逆に、解散命令請求が出ていないうちに選挙に突入すれば、旧統一教会との関係を噂される議員は、不利な材料を抱えながら選挙を戦うことになる。

■統一地方選でも自民党候補の陣営に旧統一教会関係者がいた

また、スキャンダルの芽を摘むというメリットもある。

解散命令請求の前に衆議院を解散し、仮に自民党が勝ったとしても、新内閣に旧統一教会と関係のある議員が交じっていれば、スキャンダルとなり、辞任ドミノも予想されるからだ。

もちろん、自民党が本当に旧統一教会との関係を絶とうとしているかどうかは疑問だ。

昨年9月に自民党が公表した「点検結果」を見る限り、そうは思えない。

4月に行われた統一地方選において、自民党候補の陣営に旧統一教会関係者がいたことを確認している。

自民党としてはおそらく、問題の飛び火を恐れる大物政治家に配慮し、徹底的な対策を取れないままなのだろう。

ドミノ
写真=iStock.com/Martin Barraud
辞任ドミノも予想される(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Martin Barraud

■解散命令請求は「支持率浮上の材料」

ただ、そうした思惑とは別に、岸田首相が旧統一教会問題の「解決」を支持率上昇の材料と考える可能性は高いだろう。

そもそも解散命令請求へと一気に進んだのは、岸田首相が「民事の不法行為も該当」と方針転換したからだが、その背景には昨年10月ごろ旧統一教会問題をうけて支持率が低迷していたことがあった。

それらを総合して考えると、少なくとも岸田政権は、このまま解散命令請求の手続きを進める可能性が高いだろう。

衆議院解散を秋以降と考えるなら、解散命令請求はその前、夏くらいとみるのが妥当ではないか。

■「旧統一教会による国賠請求」の可能性は低い

3つ目は、「教団側の反撃は情報戦に過ぎない」点だ。

5月10日付の東京新聞の記事「旧統一教会への解散命令請求の動きに停滞感 与党側に『終わらせた方がいい』の声も 質問権5回の後は?」では、ある自民党関係者の話として「下手に命令請求すれば、教団側から国家賠償請求されかねない。多少批判があっても証拠が集まらず請求できなかった、で終わらせた方がいい」と報じている。

旧統一教会による国賠請求の可能性は低いとみているが、旧統一教会側は解散命令請求に対して徹底的に戦うとしており、追い詰められた教団が捨て身で政治家にとって不都合な情報を出してくる可能性もある。

ただ、それ自体も「情報戦」であることに注意が必要だ。

■「税金を払ったうえで献金させればいい」日本の教団トップが発言

解散命令請求が出されても、実際に裁判所が命令を出すまで、場合によっては数年はかかるとみられている。

命令が確定する前に旧統一教会側が完全にヤケを起こす、ということは考えにくい。

そもそも解散命令が確定した場合でも、宗教法人格を失うだけで、いきなり全活動が停止となるわけではない。宗教施設を法人として所有できなくなるので、個人の所有にうつさなければならない、などいろいろな対応は必要だが、一般的な団体と同じく、法律の範囲内で活動することは可能だ。

すでに韓国の教団本部は「解散命令請求の後どうするか」を考えはじめている。大陸会長(日本の教団組織の実質的トップ)である方相逸(パンサンイル)は、「もし日本の教団に解散命令が出されても、他の企業と同じように、税金を払ったうえで献金させればいい」と言っていたという。

故文鮮明氏と韓鶴子氏
写真=AFP/時事通信フォト
「税金を払ったうえで献金させればいい」(写真は故文鮮明氏と韓鶴子氏。2010年2月、韓国高陽市) - 写真=AFP/時事通信フォト

■「関わりを持つ政治家への牽制」に過ぎない

このコメントが事実であれば、教団が破れかぶれになって後先を考えない行動をしてくる、とは考えにくい。むしろ、解散命令請求が出た後、日本の信者からの収奪を続ける方法を模索していると思われる。

つまり旧統一教会側が「解散命令請求と徹底的に戦う」としているのは、ある種のポーズであり、情報戦の一種、つまり関わりを持つ政治家への牽制(けんせい)なのだ。

それを踏まえると、政治家がわざわざリスクを冒して解散命令請求を止める理由はないと考えられる。だとすれば、解散命令請求はいずれ出されるに違いない。

■被害者の声をつぶそうと個別に懐柔

旧統一教会はいま相当焦っている。私が把握している範囲でも、被害者の声をつぶそうと個別に懐柔したり、声をあげた2世たちへの攻撃をけしかけたりしている。

こうした旧統一教会に対して、政治家はずぶずぶの関係を続けて庇護(ひご)するのではなく、徹底的に戦うべきであるのは言うまでもない。

日本の教団の実質的トップである方相逸の発言を取り上げたが、保守を標榜(ひょうぼう)する政治家であれば、日本人を金づるとしか思っていないかのような教団の物言いに対して、激しく抗議すべきではないだろうか。

1970年代にアメリカで旧統一教会の問題が認識された際、議会は調査委員会を作って徹底的に調査し、その内容を「フレイザー報告書」にまとめた。日本の政治家も本来はこういう対応をすべきではないだろうか。

また、メディアはもっとこの問題を報じて、政治家に圧力をかけなければならない。メディアの追及に迫力が欠けていたことが、政治家に「逃げ得」を許し、旧統一教会による被害拡大の一端を担ってしまったことを、肝に銘じるべきだろう。

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鈴木 エイト(すずき・えいと)
やや日刊カルト新聞主筆
滋賀県生まれ。日本大学卒業。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め『週刊朝日』『AERA』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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(やや日刊カルト新聞主筆 鈴木 エイト)

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