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外国人富裕層は1泊100万円でも日本に泊まりたい…超高級「ブルガリホテル東京」に予約が殺到しているワケ

プレジデントオンライン / 2023年7月6日 13時15分

開業した「ブルガリホテル東京」(=2023年4月4日、東京都中央区) - 写真=時事通信フォト

インバウンドが復調している。どんなサービスであれば需要を取り込めるのか。日本ガストロノミー協会会長の柏原光太郎さんは「富裕層のニーズに答える必要がある。例えば、4月に東京・八重洲に開業した『ブルガリホテル東京』はツインルームの最低価格が1泊1室30万円台だが、より高額なスイートルームから予約が埋まっている」という――。

※本稿は、柏原光太郎『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論――時代はガストロノミーツーリズム――』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■コロナ禍の富裕層は、贅沢な国内旅行で消費

コロナ禍で世界経済全体の成長が止まったかといえばそういうわけではなく、勝ち組・負け組の格差が広がり、勝ち組は株価上昇などの恩恵から資産を倍増させ、遊興費が増えていったといわれています。

コロナによる空港封鎖という事情があるため、インバウンドが入国できないのは致し方ないところですが、2019年に2000万人を突破したアウトバウンド(日本人の海外旅行者)はコロナ禍でも実は国内でひっそりと活動していました。

日本全国で高級旅館を何軒も経営するオーナーはあるとき、私にこういいました。

「表立ってはいえないのですが、2021年度の売上はすでにコロナ前を超えているんです。それはコロナの協力金とか補助金とかのおかげではありません。富裕層は国内でこっそりとお金を使いはじめています」

この状況は世界でも同じで、コロナ禍において資産を増やした富裕層は海外旅行で消費することができないため、コロナ禍の規制をくぐって贅沢な国内旅行で消費したり、奢侈品の購入を増やしていったといいます。

事実、この数年間のあいだに沖縄にできたラグジュアリーホテルはコロナ禍でも満室だったと聞きますし、ある離島に10年以上前に建てられたホテルにいたっては、当時は1億円もしなかった土地を数十億で買いたいというアジア人からのオファーが、毎日のようにあるそうです。

■高級宿泊施設経営「7・30・100」の壁

前述の経営者にいわせると、高級宿泊施設経営には「7・30・100」の壁があるといいます。

1泊2食付きの高級旅館を考えたとき、どんなに設備や食事に凝ったとしても、1泊7万円以上取ることは、心理的なハードルが高いというのです。たしかに通常の日本人の感覚からいって、ふたりで15万円の宿は、よほど特別なご褒美でない限り、選びにくいと思います。

しかし、実際に日本の富裕層の行動を見ていると、いまや1泊30万円は充分とれるようになってきた、と彼はいいます。のちほど詳しく説明しますが、瀬戸内海の高級遊覧船「ガンツウ」や九州のクルーズトレイン「ななつ星」の価格を見ると、1泊30万円以上もするうえに、コロナ禍でインバウンドが来日していないにもかかわらず、予約がまったく取れない状況になっています。

■「ブルガリホテル東京」のツイン最低価格は1泊1室30万円台

さらに上を行くのがインバウンドです。彼によれば、きちんとした設備、ホスピタリティ、食事環境を整備すれば、1泊100万円でも問題なく支払ってくれるというのです。

同じように高級ホテルを運営してきた友人にこの話をぶつけたところ、

「私の感覚では、5・20・60かもしれないけれど、彼の言っている話はよくわかる」

と言っていましたから、現場にいる人の感覚として、この3つのハードルはかなり意識されているようです。

実際、2023年4月に東京・八重洲に開業した、世界で8番目のブルガリの名前を冠する高級ホテル「ブルガリホテル東京」はダイナミックプライシング(需要と供給の状況に応じて宿泊価格を変動させる制度)を採用していますが、ツインルームの最低価格は1泊1室30万円台、しかもスイートルームから予約が埋まっているといわれています。ほんの10年前には、東京だけでなく世界の先進都市にある外資系ホテルのツインルームの標準は500ドルといわれていましたから、あっという間に5倍になったわけです。

■東京ではラグジュアリーホテルが次々開業予定

ブルガリホテル東京は、新しくできた超高層ビル「東京ミッドタウン八重洲」の40~45階を占め、イタリアの高級家具ブランドの家具を備えた客室や、ミシュラン3つ星を獲得した「鮨 行天」監修の寿司カウンター、1000m2の広さで究極のウェルビーイング体験を楽しめる「ブルガリ スパ」などの設備を誇ります。ご祝儀価格と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、2017年に開業した「アマン京都」は、いまでもハイシーズンは1室50万円以上です。

東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー。丸ビルより
東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー。丸ビルより(写真=Sakura Torch/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

さらに2023年には東京・港区の麻布台にできる「麻布台ヒルズ」の中にホテル「ジャヌ東京」ができる予定です。ジャヌは、ラグジュアリーホテルのパイオニア、アマンの姉妹ブランドで世界各地で進行中のプロジェクトの中でトップを切っての開業。

客室数は122室。55m2のデラックスルームから284m2のザ・ジャヌスイートまであり、食においては、イタリアン、和食、中華など7つのレストラン&バーがオープン。25mの温水プールやスパなどから成るウェルネス施設の面積は約4000m2で、東京のラグジュアリーホテルで最大級を誇る予定ですから、さらに上位の価格帯になるかもしれません。また、その先には、東京駅前にできる日本一の高さのトーチタワー上階にウルトララグジュアリーホテル「Dorchester Collection」が2028年に開業することが決まっています。

■日本は「次に旅行したい国」ランキング1位

2022年後半から日本政府が打ち出した「コロナとの共存」が一般的になり、空港規制が緩やかになっている現状を鑑みれば、今後のインバウンドの回復は急激であり、コロナ前の状況から加速度的に回復すると関係者はみています。

冒頭に上げた観光庁の入札案件「地域一体型ガストロノミーツーリズムの推進事業に係る調査業務」でも、その背景に「本事業は、訪日外国人旅行者の急速な回復の中で」と記されています。

実際、コロナ禍の最中の「コロナが落ち着いたら行きたい国」調査でも日本は1位になっています(日本政策投資銀行と日本交通公社が共同で行った「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 第2回 新型コロナ影響度 特別調査」2020年12月)。

これは、中国、台湾、韓国、米国、英国など12地域6000人余りに「次に海外旅行したい国・地域」について聞いたもので、アジア、欧米豪を対象としたアンケートでも、ともに日本がトップという結果でした。やはり、日本が安全で衛生的で美味しい国であることは世界中に知れわたっているのだと思います。

富士山と五重塔の眺望が人気の「新倉山浅間公園」
写真=iStock.com/Bill Chizek
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bill Chizek

■富裕層が、あらためて国内に目を向けはじめた

しかも、コロナ禍で海外旅行に行くことができず、やむを得ず国内旅行に出かけていたアウトバウンドと呼ばれる富裕層が、国内旅行を経験した結果、日本国内の素晴らしさを知りました。そうして、あらためて国内に目を向けはじめた人々を私は数多く知っています。

2022年6月に英字新聞・ジャパンタイムズが主催、先述の浜田さんや本田さんが審査員を務める「Destination Restaurants 2022」の表彰式が行われました。

デスティネーションレストランとは、地方の素晴らしいレストランのこと。東京は世界一ミシュランガイドの星付きレストランの数が多い都市といわれ、東京以外でも日本の大都市にはすぐれた店がたくさんあります。

ですが、この表彰は、〈「日本の風土の実像は都市よりも地方にある」と考えること、また、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」こと、「既存のセレクションとの差別化を図る」ことから、特に日本の地方にあるレストランに限定して選んだ〉もので、選考対象となるのは「東京23区と政令都市を除く」場所にある、あらゆるジャンルのレストランです。

■フーディーが発見した美食を核に地方を盛り上げる

2021年の第1回の表彰に選ばれた10店は以下の通りでした。そして栄えある「Destination Restaurant of the Year 2021」には富山県にあるオーベルジュ「L'évo〈レヴォ〉」が選ばれました。

L'évo〈レヴォ〉(富山県)
チミケップホテル(北海道)
日本料理 たかむら(秋田県)
とおの屋 要(岩手県)
Restaurant Uozen〈レストラン ウオゼン〉(新潟県)
片折(石川県)
すし処めくみ(石川県)
日本料理 柚木元(長野県)
Pesceco〈ペシコ〉(長崎県)
Restaurant État d'esprit〈レストラン エタデスプリ〉(沖縄県)

2022年の第2回の表彰に選ばれた10店は以下の通り。この年の「Destination Restaurant of the Year 2022」には、和歌山県のイタリア料理店「ヴィラ アイーダ」が選ばれています。

ヴィラ アイーダ(和歌山県)
余市 SAGRA〈サグラ〉(北海道)
山菜料理 出羽屋(秋田県)
ドンブラボー(東京都調布市)
北じま(神奈川県鎌倉市)
里山十帖(新潟県)
ラトリエ・ドゥ・ノト(石川県)
茶懐石 温石(静岡県)
AKAI〈アカイ〉(広島県)
ヴィッラ デル ニード(長崎県)
柏原光太郎『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論 ――時代はガストロノミーツーリズム――』(日刊現代)
柏原光太郎『「フーディー」が日本を再生する! ニッポン美食立国論――時代はガストロノミーツーリズム――』(日刊現代)

私が実際に訪れたことがあるレストランは、残念ながら半分にも満たないですが、いまや、世界のフーディーのみならず、日本の富裕層も全国の美食に関心を持っているのです。

コロナ禍以前に考えられた地方の開発計画も、当初は縮小を考えた時期もあったようですが、アフターコロナの観光事業の増加を見込んでビフォアコロナ以上の熱量を持って動き出しています。

今後は、フーディーが発見した美食を核にして地方を盛り上げることが、地方創生の一番成功する方法になるはずだと私は思っています。

※2023年のデスティネーションレストランは6月20日に発表されています。

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柏原 光太郎(かしわばら・こうたろう)
日本ガストロノミー協会 会長
1963年、東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、1986年、株式会社文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集部等を経てニュースサイト「文春オンライン」、食の通販「文春マルシェ」を立ち上げる。『東京いい店うまい店』編集長も務める。2018年、美食倶楽部「日本ガストロノミー協会」を設立したほか、「OCA TOKYO」ボードメンバー、食べロググルメ著名人、とやまふるさと大使なども務める。J.S.A認定ワインエキスパート。

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(日本ガストロノミー協会 会長 柏原 光太郎)

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