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東大出身者を見たら「ウケ」をとるチャンス到来…NHK大河ドラマ監督が実践するスベらないトーク術

プレジデントオンライン / 2023年7月5日 15時15分

東京大学安田講堂、内田祥三(1925年)。(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

場を盛り上げるにはどうすればいいのか。NHKエンタープライズの吉田照幸さんは「一般的にすごい人、すごいものを見たら、『ウケ』をとるチャンスだと思ったほうがいい。こうした『絶対的な価値』はみんなが同じようにもっている前提なので、共感によって話に引き込むことができる」という――。

※本稿は、吉田照幸『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■「一番」「優秀」「エリート」は笑いの種になる

優秀な人、エリートの人。世間では絶対的な価値がある人やモノも、笑いをとるチャンスになります。

僕は若いころバラエティ番組の前説をしていました。前説は、収録前に番組の説明とともに、観客を盛り上げ、場をあっためる役目を負っています。

とはいえ当時の観客はバイトで来た大学生。番組観覧をバイトにし、いろいろな番組を見ている人たちでした。芸能人が出ても慣れてしまっていて「わぁ~っ」とはなりません。そんな状況の中でも、ディレクターとつながっているインカムからは「もっと盛り上げろ!」と理不尽な指示がきます。

その中でもきつかったのが、落語家が出演する番組でした。今でこそ落語は流行っていて、若い人も見ますが、当時はおじいちゃん・おばあちゃんの愉しみ。大学生を盛り上げるのは、なかなか厳しい状況です。案の定何を言っても盛り上がらない。だけどあるきっかけから盛り上がりはじめました。

■みんなが共通にもつ共感によって話に引き込まれる

「今日は大学生の方が多いということですが、青山学院大学の方はいらっしゃいますか?」

ちらほら手が挙がる。

「僕の後輩です。さすが僕に似て美男美女がおそろいです」

軽く笑い。

そして個別に質問。何人かに出身大学を聞いた後に頭のよさそうな人に聞きます。

「どちらの大学からいらっしゃいましたか?」

学生「東京大学です」

「へえー…………嫌いです」

ここで笑いが起きます。

東京大学は誰もが認める日本で一番偏差値の高い学校です。だからいじれます。ただ単に嫌いって言っているわけではないんです。「嫌い」って言いながら、相手を立て、自分を下げています。言っている僕の僻みも垣間見えて、おもしろいわけです。

一般的にすごい人、すごいものを見たら、「ウケ」をとるチャンスだと思ってください。「絶対的な価値」はフリになります。絶対的な価値であるがゆえに、同じ前提に聞く人をのせられるため、共感が生まれます。

例えば、内輪だけで盛り上がることがあります。これは共通の体験があるからこそ、共感して盛り上がるのですよね。「絶対的な価値」はみんなが同じようにもっている前提です。みんなが共通にもつ共感によって話に引き込まれるわけです。

【ポイント】
フリなくして笑いなし。絶対価値をフル活用

■大勢の前で軽い笑いをとる4つの方法

大勢の前で話さなければならないときがあると思います。そんなときに軽い笑いがあると流れがスムーズになります。そのコツを紹介しましょう。

①特定の人をいじる

公開収録番組で、司会の芸人さんなんかを見ていると、たまにやっていますね。これは日常でも使える技です。

例えば朝早くからの会議だとすると、寝癖のある人はいないか。化粧が乱れている人はいないか、あくびをしている人はいないかと探します。上司があくびをしていたら、「飲み過ぎですか?」といじってください。

一見ハードルが高く見えますが、実は簡単に笑いがとれる方法です。

②「遠くから来た人!」と手を上げてもらう

パーティや研修など大勢の人がいろいろなところから集まる場合はこれです。

「遠くからいらした人いますか! どちらからいらしたんですか? 北海道? まあ、そんな遠いところから、ひょっとして暇ですか?」

よくあるパターンですが、たいてい笑いが出ますね。

大学のワークショップで講義
写真=iStock.com/master1305
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/master1305

■「聞いている人」「話す人」の壁を崩す

③人が「無意識で思っていること」を探す

みんなが思っていることをぼそっとつぶやくのも成功率が高いです。

例えば、朝早くの会議での最初の発言ならぼそっと……

「眠いですね」

とつぶやきましょう。みんな眠いことを共有すれば、不満もなくなります。

ここで、「朝早くて眠い方もいらっしゃるでしょうが、頑張りましょう」などと言ってはいけません。鼓舞するのはまだ早い。本当にくじけそうな空気が出てきてからのほうが効果的です。最初は、気持ちを共有すること。「あるあるネタ」だけでも十分ウケます。

④偉い人を活用する

会社でも結婚式でも交流会でも、人の集まるところには序列が生まれます。その場合は一番存在感のある人を活用しましょう。

例えば結婚式の場で、

「僕も新郎の友人として、お父様にお伝えしたいことがあります。○○は、ガサツなところもありますが、根はいい人なので、どうぞよろしくお願いします」

など、実際にはみんなに対してしゃべるんだけれども、「お父様に」と、あえて言うことで、新婦のお父さんをもち上げます。この言い方なら、お父さんの心情への気配りも感じられますよね。

「新郎のよさが、お父様にもご理解いただけましたでしょうか」
「ああ」

なんてやりとりが起これば、笑いが起こるのは想像できます。

【ポイント】
「聞いている人」「話す人」の壁を崩すと、意外な笑いが起こる

■スベったときほどウケるチャンス

何か言ってスベったときって、バツが悪くて嫌なものですよね。

これが嫌でおもしろいことが言えない、っていう人もいると思います。

でも、スベったときは意外とウケがとりやすいんです。

「あ、今、スベりました」って言えばいいんですから。

みんな、笑ってくれますし、その場で笑ってくれなくても、「この人はこういう人なんだ」って思ってくれますから、その後、笑ってくれる可能性は高くなります。

ここではスベったときのリカバリーフレーズを、いくつか紹介します。

◎ウケなかったら「かわいさアピール」

何か言ってウケなかったときに、

「あ、今、笑いをとろうとしてたんですけどね」
「思ったよりウケなかったことにショックを受けていますけれども」

と言うと、「笑いをとりたかったのにできなかった……」という残念な気持ちが伝わり、かえって笑いがとれたりします。少しかわいさアピールも入ります。

他に、

「あまりに笑いがないので、もう笑いをとろうとしません」
「今後は笑いはなしでいきます」

という言い方もありますが、まじめにとってしまう人もいますので、かわいさアピールのほうが無難かと思います。こちらは、何を言ってもウケないときの、バリエーションの1つとして紹介しておきます。

■「最初、ウケなかった」ということも、1つのフリ

◎「○○は笑ってくれたんですけど……」

「うちの犬は笑ってくれたんですけど」

とか、もう絶対笑ってくれなそうなもの(犬)など、笑ったように見えたのはあなたの幻想でしょうと聞いている人にツッコまれそうなものが、笑ってくれたことにします。

ほかにも、

「地元の△△さんは笑ってくれたんだけど」
「田舎のおばあちゃんは笑ってくれたんだけど」

など、自分の周りの世界に結びつけて、小粒感を出す方法もあります。

◎繰り返して、無理やり笑いに落とし込む

「繰り返す」方法もあります。「重ね」って言ったりします。とっておきのオチが伝わらなかったときに使います。

「伝わらなかったみたいなので、もう1回言います」

それでもウケなかったら、

「もう1回言います。これで最後です」

と繰り返していきます。まあ、最後にはダメ押しで笑ってくれると思います。

これでもダメなら、こういうときこそ、「もう今日は笑いをとるのはやめます」です。「もうウケないから今日はあきらめよう」という感情が伝わるように言うのがポイントです。

また、1回言って受けなかったものを、時間をおいてから、あえてもう一度言うというのもあります。

「あ、なんで言っちゃったんだろう、ウケないってわかってるのに」

聞いている人に「よっぽど、言いたいんだな」と思ってもらえたら、場が和みます。

「最初、ウケなかった」ということも、1つのフリになります。

■ウケなかったときに、使ってはいけないフレーズ

◎「今、笑うところです」と強制してはいけない

一方、使ってはいけないのは、

「今、笑うところです」

というフレーズです。

吉田照幸『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』(SB新書)
吉田照幸『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』(SB新書)

講演会などで、よく見かけませんか? 何かおもしろいことを言ってウケなかったときに、「今、笑うところです」とか「今、笑うところだったんですけど」などと言う人。

これ、二重にしらけます。だって、おもしろくないから笑ってないのに、さらに上から目線で言われると、人間、本当に笑えなくなります。たとえ笑いが出たとしても、仕方なく合わせてくれているのだと思います。やっぱり基本は、「自分は下」です。

なお、笑いがとれた後は、さっと次に進んでください。

時々、笑いがとれるとうれしいのか、「やっと笑いが出ました」とか、「こうするとみなさんウケてくれるんですね」と言う人もいますが、余計です。テンポが悪くなります。ウケたら、「。」をつけて、すぐ次に進んでください。

【ポイント】
スベっても、リカバリーの術はたくさんある

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吉田 照幸(よしだ・てるゆき)
NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー
1969年、福岡県生まれ、山口県育ち。1993年NHK入局。広島放送局を経て番組開発部異動後、2004年に『サラリーマンNEO』を企画、以後全シリーズの演出を担当。2011年には『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』の脚本・監督を務める。第35回・36回国際エミー賞コメディ部門ノミネート(日本では唯一)。2013年春からは、連続テレビ小説『あまちゃん』の演出を担当。近年は、2020年連続テレビ小説『エール』、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などの制作を手がける。2016年には東野圭吾原作『疾風ロンド』映画版の監督・脚本、2017年には映画『探偵はBARにいる 3』の監督を務める。著書に『発想をカタチにする技術』(日本実業出版社)、『折れる力』(SBクリエイティブ)、『その雑談 カチンときます』(青春出版社)などがある。

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(NHKエンタープライズ番組開発部エグゼクティブ・プロデューサー 吉田 照幸)

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