最終面接で「何か質問はありますか?」と聞かれたら、どう答えるか…キャリア支援のプロが説く「仮説」の立て方
プレジデントオンライン / 2023年7月7日 10時15分
※本稿は、徳谷智史『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)の一部を再編集したものです。
■面接は「お互いが必要とし合う相手か」を見極める場
あまりテクニカルな対策論をする気はないのだが、とはいえ、自分の描いたキャリアジャーニーを実現するために、選考が人生の重要な局面となることもある。自分自身のことがきちんと相手にも伝わるよう、選考プロセスと注意点も伝えておきたい。
最近では、リファラルだと書類選考がなかったり、1次面接から役員層や社長が出てきたりするケースもあり、必ずしも昔ながらの下から上がっていくタイプの選考だけではなくなってきているが、大枠では次のような流れになる場合が多い。
初期選考:担当者や人事による面接
中間選考:配属部署の上長や責任者による面接
最終選考:役員や代表などによる面接
具体の対策に入る前に、最初に全プロセスに共通して重要なポイントを押さえておこう。
まず、大前提として、面接は求職者・企業ともに「お互いが必要とし合う相手かを見極める場」だということだ。どちらも、「採用」をゴールにすべきではない。ともに働くために、相手を理解し合うためのプロセスだ。そう考えたとき、何が大事になるのだろうか。
■面接はこちらが企業を見極める場でもある
自分を知ってもらうには、まず、表面的な経歴のみではなく自身のバックグラウンドを伝えること。自身の「ありたい姿」はどんなものか、その背景にはどんな経験があるのか。今の自分にどんな課題を感じているのか。これから何をなしたいのか、どんな力をつけたいのか。そのあたりをしっかり聴いてくれるかも、こちらが企業を見極めるポイントになる。
特に「これまでの人生の中でのターニングポイント」や、「具体的な意思決定の背景やエピソード」を、自分の言葉でしっかりと伝えられるようにしておくことが大切だ。
そして、市場価値の観点から、自身が今後深めていきたい強みや能力が身につく環境かを探ること。どのくらいの機会や裁量があるのか、どんな方が働いていて、実際にどんな力をつけているのか。どんなキャリアパスがあるのか。
■候補者は「お客様」ではない
入社はあくまでスタート地点だ。特に入社初期の立ち上がりは人間関係が築かれていない状態からの出発になるため、慎重でありたい。入社後すぐどんなステップを踏むのかも含めて、一緒に働く人のタイプや業務の種類まで把握してイメージを描いておこう。また、入社時点での職種や業務内容はある程度すり合わせができているだろうが、その後どんなプロセスを歩んでいけるとよいかまで、先を見据えて対話しておけるとよい。
面接に臨むにあたって、具体的な考えや仮説を持っておくことも重要だ。
第三者のお客様気分ではなく、「自身がこの会社で働く当事者や経営陣だったらどう考えるのか?」「もしこの前提ならば、自分はこうすれば会社がよりよくなると思うがどうか?」のように、情報がないなかでも仮説と質問を用意しておく。
面接は、人生を左右しかねない場であるにもかかわらず、驚くほど受け身で臨む方も多い(意外にもシニアな方のほうが多い)。調べてわかることを聞いてくるケースは志望度が低いとみられざるをえないし、少し考えれば当たり前に想像できることをヒアリングされるのも面接する側からすれば悲しいものだ。「どうすれば、ともにこの会社をよくできるか」という当事者意識を持って臨むほうが、選考上有利なのはもちろん、入社後も活躍につながりやすい。
■嘘で自分を「盛って」も良いことは何もない
企業から選ばれたい、少しでもよく見せたい、内定がほしい、と偽りの自分で面接に臨むと、結果的に不幸になるケースが多い。本音で話そう。
偽りとまでいかずとも、本音ではそこまで共感していないビジョンに、あたかもずっと共感してきたかのように伝えたり、あるいは自身の価値を少しでも高く見せようと、エピソードを度を越して「盛って」しまったり、失敗を隠してよい事例や成功ばかり話してしまったりすると、入社後、面接時の自分と本来の自分とのギャップに苦しむことになる。
自分を飾らず、対話をしよう。
どんなに受かりたい気持ちがあっても、お互いを見極めることのほうがはるかに大切だ。
「迎合することなく選考を通過する自信がない」という不安があるのもよくわかるのだが、受け身であるよりはむしろ率直に「自身が組織でどうありたいのか」「どういった価値を発揮したいのか」など、はっきりとこちらの意志や覚悟を伝えよう。そのほうが、双方のためになる。
■職務経歴書は「相手目線に立って」書く
大前提をふまえたうえで、プロセスの細部に入ろう。
書類選考
選考に進むにあたり、最初にあるのが書類選考だ。基本的に職務経歴書で選考されるのだが、ポイントは
「相手目線で伝わる文章になっているか」
「結果だけでなくプロセスや具体性が描かれているか」
「(可能であれば)企業ごとにカスタマイズできているか」
だ。
まず、「相手目線で伝わること」。「自身の当たり前は、選考企業の当たり前ではない」という前提で書く。社内でしか伝わらない社内用語・専門用語を無意識に使ってしまっている方も意外と多い。かつ、何をやったかだけでなく「プロセスや具体性が描かれている」こと。
たとえば、「部門表彰」や「目標達成上位」と書かれても外部の人にその価値はわからない。
「300人の部署で、年間1人に与えられるMVPを3年で2回受賞」と書いたほうがわかりやすいし、「目標達成率が1年目105%、2年目は143%、チームでも前年は、88%に対して、108%」と書いたほうがより伝わる。
![履歴書と職務経歴書](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/1200wm/img_053ade0a4d8c82c3f94ec152a56cf04a170105.jpg)
■他の企業にも使いまわせる濃淡のない履歴書はNG
加えて、課題設定から具体的な成果を出すまでのストーリーも、相手がそのプロセスをイメージできるように書くこと。「Aプロジェクトで、Xの成果を出した」だけではなく、「当時、営業の業務プロセスに課題があった。従来は社員の稼働ありきの規模や体制だったが、目的に沿った設計にすべく、経営と相談。プロセスを可視化し、顧客に価値のあるところは社員、そうでないところは自動化に切り替える業務改革を行った」など、一連の流れを書くことではじめて再現性が評価される。具体的な人数や成果は可能なかぎり定量で入れ込むことだ。
また、もし志望度が高ければ、「企業ごとにカスタマイズして書くこと」。他の志望者がありきたりの履歴書を使いまわしていくなかで、○○社に関心のある背景や、「入社後、△△の業務で自身の□□の強みを活かしたい」など、選考企業の環境や募集ポジションに沿って、数ある自身の特徴から濃淡をつけて書けるとなおよい。
ウェブテスト
一部の企業や、新卒採用では、ウェブテストが課される場合がある。
単純に論理や数値の点数で足切りをしているケースもあれば、いわゆる「性格テスト」のような、自身の特性を測るテストもある。ここも嘘をつかないこと。というのも、この結果が、より活躍しやすいポジションや、上長配属などにつながるケースもあるからだ。いずれにせよ、嘘をついてもよいことはなにもない。
■逆質問は会社の解像度を上げる意識で
初期選考
企業によるが、1次や初期選考は人事部や部署担当者が面接に入ることが多い。人事は、
・募集している部署が求めるスキルを保有しているのか(スキルレベル)
を重点的に見ている。
業務経験は成果とともに、スキルセットはプロセスも含めて話そう。そしてバックグラウンドや将来の「ありたい姿」などこちら側の意向も伝えること。
また、最初の人事面接では、「逆に何か質問はありますか?」と問われることも多いので、会社全体の思想やその背景(公開情報からわかるような表面的なものはNG)、当該ポジションが募集されている背景や人員が必要な理由、大枠の業務内容などもここで聞いて、わからない点をつぶしておくほうがよいだろう。
このときも仮説を持ち、会社の思想やカルチャーへの「解像度を上げにいく」意識でいたい。また、人事担当者は、その後の選考の窓口となるケースもある。信頼関係を構築できれば、2次試験以降のサポーターになってくれるケースもあると意識しておこう。
■中間選考で意識すべきこと
中間選考
無事、初期選考を通過した場合には、配属部署の上長となる人や責任者との面接となるだろう。ここでは通常、「任せたい業務で成果を出せるスキルがあるか」を重点的に見られる。
業務経験を成果とともに話すことになるが、プロセス、つまりどのように思考し行動したかに言及し、「選考先の企業においても再現性があること」を示すようにしてほしい。以下の3つの観点から話せるようにしておこう。
・HOW:あなたは「どんな取り組み方」をしたのか?(プロセス)
・WHY:なぜ、その「取り組み」をしたのか? 何が他の人と違うのか?(深掘り)
逆質問ができる場合には、「配属部署が目指しているビジョンの具体イメージ」「今回の募集者に求めていること」「ともに働く仲間や、環境づくりの観点で大切にしていること」などを聞いてみよう。質問を質問で終わらせず、質問への回答で、自らがアピールできるとなおよい。
■最終選考に出てくる経営陣・役員の情報は頭に入れておく
最終選考
最終選考(何次まで面接があるかは企業による)で意識すべきことはなんだろうか。ここでは、実務能力以上に、「この人が会社に入ることによる影響・インパクト」が見られる。
そのため、自分の「ありたい姿」や培ってきたスキルと、会社が大切にするビジョンやカルチャー、募集ポジションとの重なりや、自らが貢献できるポイントをしっかり説明できるようにしておく。
![徳谷智史『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/0/1200wm/img_90e6ce62675e3eb244240863ff0f412065317.jpg)
会社のミッション・ビジョン・バリューは深く理解できていることが前提だ(理解できていなければ初期選考の段階でクリアにしておくこと)。
最終面接に出てくるのは、これまで数多くの候補者を精度高く見極めてきた人ばかりなので、これまで以上にごまかしは通用しない。
スタンスとしては、嘘偽りなく、表層的な受け答えに終わらせず、自身の意志や思想を真正面からしっかり訴えていくことが重要となる。
内容としては、「経営陣の想い、この会社の価値観のどこに、自分がどう共感しているのか」「当事者としてどう関与していきたいか」を伝えること。仮説を持ったうえでの質問も用意しておく。
また、面接にどの経営陣が出てくるかわかっている場合は、その人物に関する公開情報はすべて把握したうえで臨むことだ。
そして、たとえ相手が代表や役員クラスであっても、「自分も、見極める立場だ」という気持ちを忘れないこと。企業の戦略や方向性、カルチャーの土台は、代表や役員クラスの意思決定に左右される。「この人と働き続けたいと思えるか」を自分の目で判断してきてほしい。
■不採用は「自身の否定」ではなく「相性の不一致」
面接は相互理解を経ながらともに意思決定していく場だ。本音でぶつかるからこそ、結果として、落ちてしまう場合もあるだろう。志望度が高かった企業から不採用通知を受ければ、落ち込むこともきっとある。特に面接経験の乏しい若手の方ならなおさらだ。
ただ、自身が選べる環境はどのみち1つ。よりふさわしい環境を見つけるために必要なプロセスでもあるので、「自分が否定された」ではなく、「相性やタイミングが合わなかった」と捉えてほしい。そう思えるようにするためにも、迎合することなくこちらの意志を明確に伝えておく必要があるのだ。
ちなみに、不採用の場合、直接は難しくても、エージェント経由であれば理由を答えてくれる場合もあるので、自身を見つめ直す1つの材料として、聞いておけるととてもよい。
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エッグフォワード代表
京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ代表に就任。業界トップ企業から、先進スタートアップまで数百社の企業変革や出資によるハンズオン支援を手がけると同時に、個人の可能性を最大化するべく、2万人以上のキャリア支援に従事。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。PIVOT社長改造コーチ、東洋経済Online連載、Podcast「経営中毒 ~だれにも言えない社長の孤独~」メインMC等を担当。
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(エッグフォワード代表 徳谷 智史)
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