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肥満や老化を防ぎ、血液もサラサラにする…最強の健康食品「納豆」を台無しにする「タレの使い方」とは

プレジデントオンライン / 2023年7月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yankane

■老化につながる「AGE蓄積」を防ぐ

前回(第3回)、ヨーグルトは完全食に近く、キウイヨーグルトであれば「パーフェクトな一品」と記した。同様に完全食に近いのが「納豆」で、栄養価は非常に高い。原材料の大豆は五大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)のすべてを備え、体内で生成されない9種類の必須アミノ酸も含む。さらに食物繊維が豊富で、発酵食品でもある。

今回は、納豆の日(7月10日)にあわせて、納豆の具体的なメリットを解説しつつ、納豆を完全食に高めるポイントを紹介する。さらに「意外な落とし穴」についても深掘りしていく――。

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏
健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏

この連載では、第1回の「干物」から、老化を促進する悪玉物質「AGE」の危険性についてたびたび指摘している。AGEは、タンパク質と糖がくっついて劣化する現象(糖化)が進むことで発生する。高温加熱調理によって食品中でも起きるし、体内で血糖値が急上昇して糖化が進むことでも発生して蓄積される。そうしてAGEがたまると、シミやシワなどの老け顔、動脈硬化、変形性関節症の発症など、さまざまな機能障害が起きる。

納豆にはこのAGE蓄積を防ぐ成分が含まれている。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏がこう説明する。

「大豆に含まれる大豆イソフラボン、食物繊維、ビタミンB1、大豆レシチン(タンパク質)は、いずれも糖化を防ぐ働きがあります。抗糖化作用に加えて大豆イソフラボンはポリフェノールの一種であり、高い抗酸化作用があります」

■細胞や脳を若く保つ「大豆レシチン」

大豆レシチンも、細胞や脳を若く保つ働きがある。日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)がある研究を示しつつ、教えてくれた。

日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)
日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)

「コリンという脳を若く保つ栄養素があります。2019年に発表された大規模研究ではコリンの摂取が多いほど、記憶機能のパフォーマンスが向上することが報告されています。最もコリンが多く含まれるのは卵で、次に大豆、そして鮭、納豆の順に多く含まれます。また、コリンに脂肪酸が結合するとレシチンという成分になるのです。レシチンには大豆レシチンと卵黄レシチンの2種類があり、納豆には大豆レシチンが含まれています。レシチンを十分に取ると、集中力、記憶力、思考力がよくなることがわかっています」

納豆に含まれる食物繊維も糖質の吸収を抑え、血糖値急上昇を抑える面から糖化を防ぐ。食物繊維が豊富な食品というだけなら、ごぼうや押し麦など他の食材でもいろいろあるが、納豆の場合、ここに記したようなそれ以外の栄養素が充実しているのが特徴だ。

さらに納豆は「健康的なダイエット」にも効果を発揮する。

■水溶性と不溶性の食物繊維がどちらも豊富

まず注目したいのは食物繊維の豊富さだ。ごぼうに含まれる食物繊維が100グラムあたり5.7グラムに対し、納豆(糸挽き納豆)には6.7グラムが含まれる。

大人のダイエット研究所代表理事で管理栄養士の岸村康代氏は「水溶性と不溶性の食物繊維がどちらも豊富に含まれていることが珍しい」という。

大人のダイエット研究所代表理事で管理栄養士の岸村康代氏
大人のダイエット研究所代表理事で管理栄養士の岸村康代氏

「腸の前半、中盤、後半で、発酵して腸内環境に影響を及ぼす食物繊維が違います。納豆には大豆オリゴ糖という水溶性食物繊維と、大豆の皮の部分に不溶性食物繊維が多く含まれ、水溶性食物繊維はコレステロールの排泄を助けたり、血糖値の上昇を抑えたり、腸の前半で発酵しやすいとされています。そして不溶性食物繊維は、便の水分を保つなど排便を助ける効果が期待できます」

腸内で有益菌(いわゆる善玉菌)が食物繊維を食べると、短鎖脂肪酸を生み出し、肥満を防ぐ作用がある。

「本来は腸のどの場所でも短鎖脂肪酸をつくり出せるのが理想です。不溶性・水溶性の両方の食物繊維を含む納豆であれば、腸全体に働く可能性があり、ダイエットをはじめさまざまな健康美容効果があるでしょう」(岸村氏)

■低カロリーなのに、タンパク質も十分に取れる

次に、「AGE蓄積防止」で前述した大豆レシチンも肥満防止に働く。

「大豆レシチンは脂質代謝を改善したり、小腸でのコレステロール吸収を抑えます。また大豆イソフラボンも悪玉コレステロール低下作用があり、相乗効果で肥満改善が期待できるでしょう」(望月氏)

そして低カロリーであるのに、良質なタンパク質を肉なみに取れるという点でもダイエットに向いている。

「100グラムあたりの納豆は190キロカロリーで、タンパク質は14.5グラム含まれています。同量の豚バラ肉ですとタンパク質が12.8グラムで、カロリーは366キロカロリーも。その上、納豆の脂質は3分の1以下で、タンパク質の代謝に関わるビタミンB6、脂質の代謝を助けるビタミンB2もしっかり取れます」(岸村氏)

ちなみに納豆には「若返りのビタミン」として有名なビタミンEも含まれ、肌や血管の老化を防ぐ。

■ナットウキナーゼで「血液サラサラ」に

納豆には「骨の健康維持」と「血液サラサラ」という効果もある。

管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏
管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏

管理栄養士で老舗料亭「菊乃井」常務取締役の堀知佐子氏がこう話す。

「納豆には骨を丈夫にするカルシウムだけでなく、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンKも含まれます。ビタミンKには緑色野菜に含まれるK1と、納豆に含まれるK2がありますが、骨に役立つのは圧倒的にK2。これは納豆にしかないのです」

血液サラサラのほうの正体は、ナットウキナーゼという酵素。納豆は蒸された大豆が納豆菌によって発酵することでできるが、この発酵過程で生成されるのがナットウキナーゼで、血中にできた血栓に働きかけ溶解する作用、血栓をできにくくする成分を増やす作用、降圧効果ももつ。

こういったナットウキナーゼの効果を求めるなら、夕食に取るのがお勧めだ。明け方は体内の水分が少なくなるので血栓ができやすく、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いため予防になるだろう。

「ナットウキナーゼの効果は8時間程度持続することが複数の研究からわかっていますので明け方まで効果が持続します。また納豆にはアルギニンというアミノ酸が多く含まれます。これは就寝時に多く放出される成長ホルモンの分泌を促進してくれるため、夕食に納豆を食べれば成長ホルモンの分泌によって細胞の修復がスムーズに進むなど、アンチエイジング的な働きも期待できます」(望月氏)

■薬味として「ネギ」を添えるとさらにいい

もちろん朝食に食べるのがNGなわけではない。特に冷え性の人が朝に納豆を食べると、良質なタンパク質の力によって体温上昇がスムーズに進むというメリットがある。

ここまで納豆の栄養価を挙げてきたが、不足はないのだろうか? 岸村氏は「ビタミンCとビタミンB12が含まれていない」と指摘する。

「ビタミンB12は動物性の食品にしかほとんどなく、不足すると悪性貧血になってしまいます。ですから植物性の納豆だけでなく、肉や魚介類も偏らずに食べたほうがいいですね。またリジンというアミノ酸が米に少ないのですが、これは納豆と一緒に食べることで補えます」

望月氏は薬味としてネギを添えることを勧める。

「ネギに含まれるアリシンが、納豆に豊富なビタミンB1の吸収を高め、疲労回復に働きます」

ネギには納豆にないビタミンCが含まれるため一石二鳥だ。

納豆の上にネギ
写真=iStock.com/yumehana
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yumehana

■タレよりもアマニ油やしらすを混ぜるといい

一方で避けたいのが、醤油や添付のタレを納豆にかけること。醤油をかけすぎれば塩分過多になる。タレには糖分や塩分、甘味料の果糖ぶどう糖液糖などが含まれることが多い。せっかく糖化を防止する成分が納豆に含まれ、美容健康に優れているのだから、そこで糖分や塩分をタレによって追加するのはもったいない。

タレではなく、「良質な脂質」をかけたほうが完全食に近づく。若返りビタミンといわれるビタミンEが納豆には豊富と記したが、脂溶性のため油と一緒に取ることで吸収率が良くなるのだ。

例えば「アマニ油、エゴマ油を数滴垂らす、ツナを混ぜる」などを望月氏は提案する。

「私は納豆にキムチをトッピングします。納豆に由来する納豆菌と、キムチの乳酸菌のダブルで腸内環境に有益となります」

堀氏は「しらす」を混ぜ、その塩分でおいしくいただくことが多いという。

「私は半干ちりめんを調味料がわりに使うことが多く、納豆にもかけますね。そこに生の卵白を入れ、レンジで白身がかたまるまで数十秒チンするととてもおいしい。ちりめんにはカルシウムの吸収を促すビタミンDが含まれますから、骨づくりに役立ちます」

■タレをかけるなら、納豆をよくかき混ぜてから

どうしてもタレをかけたい時には、納豆をよくかき混ぜてからにするといい。

「混ぜる前にタレや醤油を入れてしまうと粘りが弱くなるので、納豆に含まれるアミノ酸のうま味を感じにくくなるかもしれません。反対にタレを入れずにかき混ぜると、ネバネバふっくらして体積が広がり、舌がうまみ成分とふれあう部分が増え、おいしく感じやすくなります」(望月氏)

市販の納豆は1パックあたり6グラム程度のタレがついている。できればタレはかけないほうがいいが、それができないなら、タレを入れずによく混ぜることで、タレを半量に減らせるといい。

ある納豆の原材料表示。タレについては甘味料としてブドウ糖果糖液糖が添加されていることがわかる。
ある納豆の原材料表示。タレについては甘味料としてブドウ糖果糖液糖が添加されていることがわかる。

■70度以上に加熱すると失活してしまう

また血液サラサラのナットウキナーゼは、納豆中では摂氏40~50度くらいで安定しやすく、70度以上に加熱すると失活してしまう。

「ですから納豆チャーハンや納豆スパゲッテイなどの料理を使う際、火にかけた状態で納豆を入れてしまうとナットウキナーゼの良さが引き出せないので注意してください。また、白米にかける時にも、あらかじめ納豆を冷蔵庫から出しておき、常温に近づけたほうがナットウキナーゼが活性化しやすいでしょう」(望月氏)

<その食べ物、本当に身体にいいの?>という観点から、納豆について取材すると、どの専門家も「一押し食品」と断言する。食品成分表で他の食品と比べてみても、タンパク質・食物繊維・ビタミン・ミネラルの数値が高く、あらためてその栄養価に驚いた。

大豆アレルギーがある人や抗凝固薬(ワーファリンなど)を飲んでいる人を除けば、納豆は積極的にとりたい食品だ。タレの入れすぎ、加熱のしすぎ、そして食べ過ぎには気をつけて、ぜひ毎日の食卓に取り入れてほしい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『実録・家で死ぬ 在宅医療の理想と現実』(中公新書ラクレ)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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