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ストーリーズで就職、結婚の報告までする…大人が知らない「Z世代」の生態

プレジデントオンライン / 2023年7月6日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

これから売れる商品、サービスをつくるにはどうすればいいか。起業家の今瀧健登さんは「Z世代はこれからのビジネスにおいて消費の中心となる世代だ。ヒットを生み出すSNSを通した拡散力があり、確実に伸びていく市場であるこの世代の理解が今後のビジネスのカギになるだろう」という――。

※本稿は、今瀧健登『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■世界人口の約25%、消費の中心となるZ世代への対応

Z世代は、商品やサービスの機能的な価値や金額的な部分だけではなく、「エモ」を基準に情報をシェアします。

エモとは、ひと言で表せば「ハッピーな共感」です。

商品やサービスそのものではなく、それらを消費することで小さな幸せを得ることができる。そうしたメッセージへの共感が彼らにとっての「買う理由」になり、多くの人へとシェアする動機となります。

こうしたことから、消費は「5.0」の時代を迎えていると感じます。過去の消費のかたちに続く「エモ消費」です(※)

多くの人にとっての購入基準に「エモ」が含まれるようになる。どんなビジネスでも、取り組みは必須です。

エモ消費のカギとなるのは、いわゆる「Z世代」です。Z世代の定義には諸説ありますが、本書では「1990年代後半から2010年頃に生まれた世代」と考えます。2023年現在では、13~27歳くらいです。

よくある勘違いとして、「Z世代」という言葉を「ゆとり世代」や「団塊ジュニア」と同じように扱う人がいます。しかし「Z世代」はこれらのように、日本国内だけで使われている言葉ではありません。

Z世代はアメリカが発祥の用語です。アメリカでは1960年代から1970年代に生まれた世代が「ジェネレーションX」、1980年から1995年前後に生まれた世代が「ジェネレーションY」と呼ばれており、その次の世代だからということで「Z」とされています。

2022年の時点でZ世代は世界の人口の約25%を占め、これからのビジネスにおいて消費の中心層となる世代だといわれています。後に改めてお話ししますが、上の世代とは価値観や意識、消費行動の基準が大きく異なることから、マーケティングや商品開発の手法そのものを変えることが求められている。そうした点から、近年注目されています。

ただ、Z世代が人口の多い層だというのは世界的な話であり、日本ではボリュームのある世代ではありません。

少子高齢化が進むなかで、「なぜZ世代に着目する必要があるのか?」と思われる方もいるでしょう。母数の少ない世代にアプローチするより、もっとボリュームのある世代に意識を向けるべきだろうということです。

しかし、これからの日本のビジネスにおいても、Z世代に向けた取り組みは必須です。その理由について見ていきます。

■商品やサービスをバズらせるSNSの主役はZ世代

Z世代は、「SNSネイティブ」だといわれます。TwitterやInstagramといったSNSが生まれたときから普及していて、コミュニケーションや情報収集のために使うことが当たり前の環境で育っています。

こうした感覚の違いは、上の世代の方も感じることが多いと思います。「欠勤の連絡をLINEでするのはどうなのか」「いつもSNSばかり見ていて世の中の情報をキャッチできているのか」。

本書でどちらが正しいかは考えませんが、少なくともZ世代にとっては当然の意識です。大多数が上司への連絡にLINEを使わないのは、それが上の世代のルールだと知っているからです。

マーケティングにおいて、SNSの持つ意味はその「拡散力」です。

SNSの普及により、誰でも手の平の上から世界中に向けて情報発信をすることができるようになりました。そうして、一般人の投稿でも大きく拡散されるようになっています。

いわゆる「バズ」です。消費行動としても、「SNSでバズったものを見て買う」ということが一般的になっています。

自社の商品やサービスをバズらせることができれば、何万人、何十万人、何百万人に知ってもらうことができる。これほど効果的なマーケティングはありません。こうした理由から、SNS上での拡散が非常に重要視されています。

そして、SNSの主役はZ世代です。もちろん、上の世代の方もSNSを使いますが、情報発信という意味ではZ世代が中心です。

SNSユーザーの割合として若年層が多いということもありますが、次にお話しするように、Z世代は上の世代に比べてSNSを通してやり取りする相手とその回数が圧倒的に多いといえます。

Z世代を中心として発信される情報が、知人やフォロワーに伝わっていく。もちろん、Z世代や彼らがシェアした相手の繋がりは同年代だけではなく、世代を超えて広がっていきます。

つまり、Z世代に訴求することで、全世代に向けてSNSを通した拡散が起きる。これがZ世代を狙うべき最大の理由になります。

【図表】拡散はZ世代から始まる
出典=『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)

■短期的に見れば狭くても、今後確実に伸びていく市場

Z世代に注目すべき2つ目の理由は、市場成長の可能性です。

この点で勘違いされやすいのが、「Z世代」=「若者」という考え方です。もちろん現時点で間違っていませんが、Z世代は「年齢」ではなく、「世代」を指す用語です。いまは若くても、当然、30年後には30歳年を取っています。

現時点で日本のZ世代の市場規模が小さいのは事実ですが、いまは学生や若い社会人であっても、いずれお金を持つようになります。短期的に見れば狭くても、今後確実に伸びていくことがわかっている市場です。

それに、若いということは、今後消費者である期間がそれだけ長いということでもあります。いわゆる「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」が高いわけです。企業やブランド側としては、若いときからアプローチすることで、生涯を通してお客さんになってもらうことができます。

どんなビジネスでも、伸びている市場に資本投下することが最も確実な成長戦略です。今後消費の中心となる世代に対して早期にアプローチすることで、将来の結果に直結します。こうした市場はほかにはありません。

将来性という視点では、Z世代のさらに下の世代である、「α世代」も同様です。マーケティングの世界では、もちろんα世代も重要視されています。

ただ、2023年の時点で、この世代は小学生までです。消費行動を分析できるほどの情報はありません。20年後には同じように「これからはZ世代じゃなくてα世代だ」といわれているでしょう。

【図表】いまは若いZ世代もお金を持つようになる
出典=『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)

■Z世代に刺さるコミュニケーション

Z世代は将来の市場成長の可能性が高く、拡散力も高い。本書で紹介する「エモマーケティング」のターゲットとしては、Z世代を入り口に考えます。

それでは、Z世代に刺さる発信とはどんなものなのか。それを考えるために、ほかの世代と比較したZ世代の特徴と併せて、押さえておくべきポイントを見ていきます。

まずは、SNSを通したコミュニケーションです。

上の世代の方でも連絡の手段としてSNSを使うことは日常的ですが、雑談やおしゃべりのためにSNSを使うことは少ないと思います。誰かに聞いてほしいことがあれば、会社で同僚に話したり、友達とご飯を食べながら話したり、リアルの場が多いのではないでしょうか。

もちろんZ世代もリアルでのやり取りはありますが、物心が付いたときから、SNS上でも常にコミュニケーションを取っています。

日常的なコミュニケーションは、LINEが主流です。連絡が必要なときはもちろん、「今日は早起きできた」「電車が混んでる」「雨降ってきたね」といった、特に目的のない友人との雑談もLINEでしています。

1対1のやり取りだけではなく、LINEグループもたくさんあります。学生であればクラスのグループ、部活のグループ、仲のいい友達同士のグループ。社会人になれば、それに加えて同僚や趣味のグループなどもあります。

こうしたコミュニケーションを、日常生活を通してずっと行っています。用件を伝えて終わりではなく、LINEの中で常に途切れずおしゃべりしているような感覚です。

■久しぶりに会っても「久しぶり」と思わない

Z世代が友人とのやり取りのために使うツールとしては、ほかにもInstagramのストーリーズがあります。

上の世代の方は、Instagramをコミュニケーションツールと捉えることは少ないと思います。誰かの投稿を見たり、自分で投稿したりするものという感覚が強いのではないでしょうか。Z世代にとってInstagramは、友達全員に向けて自分の情報を発信する場のようになっています。

例えば「今日はカレーを食べた」「原宿のカフェに行った」「こんな映画を見た」といった日常的な事柄もあれば、「こんな会社に入りました」「こんな仕事をしています」「仕事でこんなことがあった」といった仕事に関する情報も発信します。

特別なお知らせとしては、結婚報告もあります。「今日、入籍しました」「披露宴をしました」といった情報をInstagramのストーリーズに上げるだけで、普段交流のない友人であっても、「ああ、あいつ結婚したんだ」とわかります。

スマホ1つでお互いの普段の暮らしや仕事、さらにライフイベントなども知ることができます。そのため、数年ぶりに友達に会っても、「久しぶり」という感じがしません。

上の世代の方では、中学校卒業以来連絡を取っていなかった人と会えば、「うわー、懐かしいね」「めっちゃ変わったね」「いま何しているの?」といった話になると思います。

一方で、Z世代の人たちは、直接会ったり話したりしていなくても、相手が昨日何を食べたのかさえ知っています。

ずっと一緒にいたかのように、お互いのことを知っている。これはSNSがあってこそのメリットだと思います。

■コミュニケーションの「回数」と「相手」が多い

Z世代は、友人知人だけではなく、リアルでは知らない人とのコミュニケーションも活発です。特にTwitterでは、会ったことのない人もたくさんフォローしています。

趣味の近い人や面白い投稿をしている人など、興味があればすぐにフォローします。そうした相手とも、友人同様に日常的な情報を交換します。

そうしてコミュニケーションを重ねた上で、実際に会ってみることもよくあります。普段のやり取りがあるので、打ち解けるのも早い。SNSを通して出来た友人はたくさんいます。

今瀧健登『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)
今瀧健登『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)

このように、Z世代にとって、人と人との繋がりは簡易的になっています。自然と、所属するコミュニティの数は多くなっていきます。

僕の場合は、会社のコミュニティがあります。「1997年生まれの会」もあります。ほかにもサッカーやフットサルの集まり、マーケターのコミュニティ、「サウナ好き」のコミュニティなどもあります。これがもしオフラインだけであれば、会社と同級生くらいしかなかったと思います。

Z世代はSNSで日常的にコミュニケーションを取り、所属するコミュニティの数も多い。上の世代に比べて、コミュニケーションの「回数」と「相手」が多いと言えます。

そうした人たちが、SNSで「このコーヒーがおいしかったよ」「この映画が面白かったよ」と投稿します。それを見た人がまた別の人に伝え、世代を超えて広がっていきます。これをZ世代の拡散力というわけです。

【図表】世代間のコミュニケーションの違い
出典=『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)

※「エモ消費」を含め、それぞれの消費の種類や定義についてはさまざまな議論があります。以下は、著者個人の見解です。

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今瀧 健登(いまたき・けんと)
僕と私と株式会社CEO
一般社団法人Z世代代表、Z世代の企画屋。1997年生まれ、大阪府出身。横浜国立大学教育人間科学部在学中に起業。花屋のコンサルティングやグラフィックデザインを担うほか、花贈りブランド『HANARIDA』をリリース。2020年、大学卒業後に教育コンサルティング会社に就職。同年に「僕と私と株式会社」を設立し、Z世代向けのマーケティング・企画UXを専門に事業を展開する。メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』などを企画。プロデュースしたマッチングアプリ「タップル」の公式TikTokアカウントでは、開設1年でフォロワー約35万人、総再生回数は2億回を突破している(2023年3月末現在)。また、「サウナ採用」などのユニークな働き方も提案。

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(僕と私と株式会社CEO 今瀧 健登)

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