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「Bluesky始めましたツイート」が急増中…Twitterの「閲覧制限」で始まったSNSマウント合戦の行き着く先

プレジデントオンライン / 2023年7月5日 17時15分

米実業家イーロン・マスク氏(左)とツイッターのロゴ - 写真=AFP/時事通信フォト

「Twitterの閲覧制限」が話題を集めている。ツイートを十分に読み込めなくなったことで、一部のヘビーユーザーはほかのサービスに移りつつある。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「過去最大の“改悪”でユーザーは混乱に陥っている。近くSNS業界の勢力図が変わるかもしれない」という――。

■ツイートのきつい閲覧数制限に大混乱

きっかけは、7月2日に投稿されたイーロン・マスク氏の「極度のデータスクレイピングとシステム操作に対処するため、一時的な制限をする」というツイートだった。認証済みアカウントは1日あたり6000件まで、未認証アカウントが600件まで、作成されたばかりの未認証アカウントが300件まで、ツイートを閲覧可能とするというものだ。

実際、ツイッター上では1日から、突然タイムラインやトレンドが閲覧できなくなる不具合が発生していた。その後二度に渡って制限は緩和され、認証済みアカウントは1日あたり1万件まで、未認証アカウントは1日1000件まで、作成されたばかりの未認証アカウントは1日500件までとなった。制限は24時間でリセットされる仕組みのようだが、執筆時点でまだ解除される様子はない。

ツイートが十分に読めないTwitterに意味はないし、利用頻度や依存度が高い「ツイッター廃人」、いわゆる「ツイ廃」ならばあっという間に制限される数字だ。しかも、有料の認証済みアカウントでも制限されてしまうのだ。

この影響はかなり大きく、いつまでなのかも明言されない突然の制限に、「Twitter終了」「API規制」などがトレンド入りする事態となった。

■せっかくの最終回キャンペーンに水を差した

制限が発表された7月2日は、話題のテレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の最終回放送日。最終回に合わせて、番組公式アカウントはTwitterハッシュタグに主人公スレッタの絵文字が期間限定で表示されるキャンペーンを行っていた。

Twitterハッシュタグキャンペーンは2500万円かかると言われており、最終回の日に制限がかかったことを残念がる声も多かった。このようにTwitter上でキャンペーンを行っていた企業がいたにも関わらず、無断でこのような制限を強行することは非常識だし、クライアント離れを呼ぶ可能性もある。

■災害時の情報インフラとして機能しない恐れ

Twitterの意義といえば、ユーザーの生の声をリアルタイムに拾えること。ラジオやテレビでは番組に寄せられたツイートをリスナー・視聴者の声として紹介しているが、閲覧制限の影響でそれもできなくなり、「メールを送ってください!」と呼びかけている番組も見られた。

一番の懸念は、Twitterが地震や台風などの災害時の情報インフラとして利用されている点だ。多くの省庁・自治体は公式アカウントで注意喚起や避難情報などを発信しており、閲覧制限があると、緊急時に情報を得たり発信したりできなくなってしまう恐れがあるのだ。

また、以前はブラウザ版ならログインせずともツイートを見られたが、ログインしないとツイートが見られない「ログインウォール」が設置された。執筆現在、さきほどマスク氏の投稿を紹介したように、ツイートを埋め込むことは可能だが、ログインしなければ見られなくなった。今回のようにツイートを埋め込んだウェブ記事はよく見られるが、Twitterアカウントのない読者には表示されなくなり、記事が成り立たなくなる可能性もある。

■なぜマスク氏は閲覧制限に踏み切ったのか

イーロン・マスク氏は、制限理由について「スクレイピング」と説明している。

スクレイピングとは、ウェブサイトから大量のデータを収集、加工することを指す。API(Application Programming Interface:あるアプリケーションの機能やデータを外部のアプリケーションが利用できるようにする仕組み)で情報を取得するよりもサーバに負荷がかかり、Twitterでも禁じられた行為だ。

TwitterはAPIを無料で公開していたが、マスク氏買収後の変更で無料では書き込みしかできず、読み込みなど他の機能が必要な場合は最低でも月額100ドルと高額になっている。

マスク氏は、大量のbot(一定のタスクや処理を自動化するためのアプリケーション)によるスクレイピングを制限するため、改悪を決断したようなのだ。

■広告収入のため、いずれ閲覧制限は解除されるはず

しかし、フリーランスのウェブ開発者シェルドン・チャン氏は「Twitterアプリのバグにより、無限ループ状態でTwitterにリクエストが送信されている」と指摘しており、スクレイピングではなく、自己DDoS攻撃(複数のコンピューターから標的となるサーバに対して過剰なアクセスや大量のデータ送信を行う攻撃)だった可能性もある。

いずれにしろ、マスク氏が買収以来、Twitterの多数のエンジニアを解雇した影響である可能性は高い。

Twitterの収入源として、有料化によるユーザー課金などの仕組みができつつあるが、まだまだ十分ではなく、広告収入が多くを占めている状況は変わらない。閲覧制限することで広告表示も減り、広告収入も減ってしまうため、必要な対応ができ次第、制限は解除すると考えられる。

■Twitterからの一斉乗り換えの最大の好機?

一方で、マスク氏は閲覧制限を発表した2日、「深いトランス状態から目を覚まし、スマホから離れて友達や家族に会おう」と投稿しており、「ツイ廃」たちに向けた制限を進んで行っているかのようにも思える。今後、以前のような無制限に閲覧・投稿できる状態に戻るとは断言できない。今回のような突然の制限がまた発生する可能性もある。

Twitterが危うい、終わりと言われながらも多くのユーザーがTwitterをやめないのは、現状、テキスト情報ベースのSNSとして代替先がなかったからだ。

SNSは乗り換えコストが大きい。すでにユーザー同士のつながりがあり、過去の投稿がある以上、少なくとも自分だけ移っても意味はない。交友関係ごと一斉に移るのでなければ、やり取りもできなくなり、情報も得られなくなってしまうためだ。

しかし、本当にTwitterが使えなくなるとなった場合にフォロワーごと一斉に移れるのであれば、“引っ越し”をするユーザーは少なくないのではないか。

■「Blueskyに招待してもらった」が自慢に?

実際、閲覧制限騒動が起きてから、Twitterから離れるユーザーが増えている。そのひとつがTwitter共同創業者が始めた分散型SNS「Bluesky」だ。BlueskyはTwitterに似たSNSで、2023年2月より招待制のベータ版が提供されている。参加するには既存のユーザーから招待コードをもらう必要があるため、現状ではアカウントを作れること自体がちょっとしたステータスになる。

Twitterからの避難先の一つとなりそうなBluesky(App Storeより)
Twitterからの避難先の一つとなりそうなBluesky(App Storeより)

この数日は、Twitterで「Bluesky始めました」と告知するツイートも目立った。Twitterの移行先としては格好のSNSであるし、招待してもらえる立場を自慢する意図があるのかもしれない。

分散型SNS「Mastodon(マストドン)」への乗り換えも進んでいるようだ。開発者のオイゲン・ロチコ氏は4日、週末にMastodon全体のアクティブユーザー数が29万4000人増加したと投稿した。

日本で誕生した分散型SNS「Misskey」のサービス「Misskey.io」は、今年2月時点で3万人だった登録者数が7月2日には20万人に。支援者限定投稿で招待コードを発行していたが、新規登録者が増加、招待コードの転売行為が見られたため対処するなどしている。

さらにメタ社は、テキストベース会話アプリ「Threads an Instagram app」について「7月6日公開予定」と告知している。これはTwitter危機という好機を逃すまいという意図がありそうだ。

Threadsは2019年に、「親しい友達」リストの相手と写真や動画を通じてメッセージのやり取りができるメッセージアプリとして登場。20年に大幅アップデートし、誰にでもメッセージが送れるようになっていた。この機能がInstagramでも使えるようになったことで、21年に終了している。

■「Twitterの終わり」の始まりになるか

新しくリリースするバージョンでは、Twitterの代替となるテキストベースコミュニケーションができ、知人や友人などをフォローしたり、投稿に対してコメントしたりできるという。料金は無料で、英語や日本語など約30の言語で使えるそうだ。

ただし、アプリ名に「Instagram」と入っており、InstagramやFacebookと人間関係が紐づく可能性がある。これらのSNSとは別の場としてTwitterを楽しんでいたユーザーにはその点が懸念されるところだが、アカウントを完全に分ければ問題ないかもしれない。

2020年度の総務省の調査報告書(2021年8月発表)によると、Twitterは日本人全年代の42.3%が利用しており、とくに10代は67.6%、20代は79.8%と、若い世代では過半数に浸透している。

今こそ、唯一無二の存在となっていたTwitterからの乗り換えを促進する最大の好機だ。このままほかのSNSへの乗り換えが進み、本当にTwitterが終わるのか、それともTwitter側の対処が間に合い制限解除となるのか、注目していきたい。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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