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「ケンタ→家系ラーメン→パンケーキ」乱れた食生活で快楽を…スーパー銭湯にすら行けない"防大生の休日"

プレジデントオンライン / 2023年8月1日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DrGrounds

防衛大学校の学生はどんな休日を過ごしているのか。卒業生で元自衛官のぱやぱやくんさんは「防大生が外出できるのは週末の土日だけ。その休日も潰れることが多く、数週間にわたってまったく休みがないことも珍しくない」という――。

※本稿は、ぱやぱやくん『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■帰省してテレビを見ると浦島太郎状態

防大生はテレビを見る機会がほとんどなく、情報源は新聞か雑誌、ネットになります。夏季休暇などに帰省して久しぶりにテレビを見ると、「このアイドルグループはなんだ?」「このお笑い芸人は誰?」と浦島太郎状態になります。

また、最近のメディアは「流行り廃り」のピッチが速いため、「ようやく覚えたと思ったらテレビからいなくなっていた」というケースさえあります。

このように、若者の間で流行っているドラマなどの話題にまったくついていけないため、一般大学に通う同級生の価値観にもついていけません。

例を挙げると……

・若者に人気の髪型が分からない
・流行している音楽が分からない
・イケている服装が分からない
・人気の食べ物が分からない
・バイトの大変さが分からない
・若者に人気のホットスポットが分からない

……といった感じです。

■若者にはモテないが年配の方にはモテる

一般大生に流行りのギャグをやられても、「何それ?」と頭に「?」が浮かび、「それのどこが面白いの?」とツッコミを入れたくなります。一方で、一般大の同級生に防大での生活を語ると、「何それ?」とまったく理解してもらえず、自衛隊のことを話しても「ふ〜ん」となるため、一般社会とどんどんギャップが広がっていくことに気がつきます。防大生のメンタリティは「大学生」というよりも「自衛官」に近く、ここでも娑婆(しゃば)の世界との断絶を感じるようになります。

ただ、防大の話は同年代にはまったく受けませんが、年配の方には大いに受けます。日頃の訓練や生活を話すだけで、「立派な人間だ!」「素晴らしい!」「国家の宝だ!」とベタ褒めされるため、悪い気はしません。

若者にはモテないが年配の方にはモテるのが防大生であり、若者としては少し寂しい気がします。しかし、大学生が好きなポップカルチャーは、数年もすれば忘れ去られてしまうような内容ですので、今にして思えばそんなに悩む必要もなかったなと思います。

■ネットカフェやスーパー銭湯も基本的にはNG

防大生は、原則として平日に外出できず、外出できるのは週末の土日だけです。

規則が多くストレスフルな生活をしている防大生は、「外出」と聞くと「さんぽ」と言われた犬のように飛び跳ね、しっぽをちぎれんばかりに振って喜びを表現します。しかし、その休日も訓練や校友会の練習や試合で潰れることが多く、数週間にわたってまったく休みがないことも珍しくありません。

基本的に防大生活は「休みがあればラッキー」という感覚であり、卒業後のほうがしっかり休めるという意見さえあります。

さらに、1学年のときは外出時の制服着用が義務であり、外泊も許可されません。制服着用のときは、「電車の椅子に座らない」などのルールがあり、外出時も常に周りの視線があるので、気が休まることが正直ありません(防大の制服で駅を歩くと駅員と間違えられることが多いです)。また、1学年は成人していても「酒・タバコ」は厳禁です。ネットカフェやスーパー銭湯なども、制服や身分証を紛失する可能性があるため、基本的にはNGとされています。

こうなると、1学年は「食べること」に全力を尽くすようになります。ケンタッキーを食べた後に家系ラーメンを食べ、その後にパンケーキを食べて、お土産に焼き鳥を買って食べる、といった乱れた食生活で快楽を得るぐらいしかできません。

フライドチキン
写真=iStock.com/EasyBuy4u
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/EasyBuy4u

特に厳しい訓練や行事の前の休日には、「最後の晩餐(ばんさん)」が寿司屋や焼肉屋で開かれ、暗い顔をして食事をしている1学年の姿を見ることができます。

■私服着用がバレたら、同期全員が外出禁止

ちなみに、こっそり私服を着用しているところがバレると、「服務規律違反」で同期全員が外出禁止になり、上級生からも濃厚なご指導をいただきます。ここならバレないだろうと思っていても、上級生は私服の1学年を見つけるのが得意なため、渋谷や新宿のホームで御用となるのです。

そのうえ、雑用の多い1学年は休日でさえ休めないことも多いです。清掃点検の前は1日中清掃で潰れ、日曜日の夜には「理想の学生になるためには」や「来週の目標決定」などの不毛なミーティングが行われるため、19:00前には防大に帰る必要があります。

特に用事がなくても、1学年には「しつけ点呼」と呼ばれる「点呼の前の点呼(点呼の1時間前に行う)」などもあり、心を休めることがほとんどできません。

平日は厳しい生活、休日もあまり休まらないことから、1学年は「幸せレベルが底辺まで落ちる」とよく言われています。こうなると少しのことで喜び、感動するようになります(小さなチョコを1つ食べるだけで脳が痺れるようなイメージです)。

■私服で街を歩く気分はまさに「シンデレラ」

苦難の1学年の日々を乗り越え、2学年のカッター競技会が終了すると、学生は私服外出・外泊OK(回数制限あり)となり、私服に着替えて街に繰り出すことができます。カッター競技会を終了した2学年は、「人権を取り戻した」と天にも昇る心地になります。

2学年からは下宿を学生が共同で借り、そこで防大の制服を脱ぎ、私服に着替えて外出する人も多くなります。防大の最寄りである浦賀駅〜馬堀海岸駅近くのアパートは「人が住んでいる気配はないが服や物がたくさんあり、休日になると若者が出入りしている」という不審物件が多いですが、それは防大生の巣穴です。

私服に着替えて街を歩く気分は、まさに「シンデレラ」と同じです。

いつも虐げられているシンデレラが、魔法の力でおしゃれをしてお城のパーティーに行くように、防大生はヘアワックスで髪型を整え、サングラスやネックレスなどを身につけ、京急線というカボチャの馬車で夢の世界へ旅立ちます。

■日曜日の午後10時までには帰らなければならない

みなとみらいの夜景を見ながらカクテルを飲む、上野の美術館で教養を高める、渋谷のクラブで踊りまくる、中目黒でパンケーキを食べる、川崎の繁華街でムフフなお店に行くなどして、きらびやかな世界を満喫します。

街の空気に触れた防大生は、舞踏会のシンデレラのように「なんて素敵な世界なの」と目を輝かせ、見るもの全てに心を震わせます。

ぱやぱやくん『今日も小原台で叫んでいます』(KADOKAWA)
ぱやぱやくん『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)

ただ、防大では門限が定められており、日曜日の22:00までには帰校をしなくてはいけません。シンデレラが王子様と踊って夢心地になっているときに、「いけない! 帰らなくちゃ」と走って去るように、防大生も「いけない! 帰らなくちゃ! 魔法が解けちゃう!」とかわいい恋人とのデートや楽しい飲み会を中断し、凄まじい勢いで駅に走って向かいます。最寄り駅でタクシーに乗り込み、運転手さんに「点呼のラッパが鳴っちゃう」と急かしながら防大に帰っていきます。

そうして、夢の世界から1学年がドタバタと走り回る防大に帰ると、「これが俺たちの世界だったな」と現実の世界に帰っていくのでした。

つまり、防大生の外出とはひとときの夢にすぎず、彼らは魔法が解ける前に帰らなくてはいけない「シンデレラ」なのです。

※防大生がよく使う表現の一つであり、自分の幸せ度を示す。1学年のときは幸せレベルが常に底辺のため、ちょっとしたことで幸せを感じやすい。

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ぱやぱやくん 元陸上自衛官
防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。Twitter:@paya_paya_kun

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(元陸上自衛官 ぱやぱやくん)

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