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相続金2500万円は夫に内緒…「継続雇用は嫌」バブル世代の夫の浪費癖を叩き直し馬車馬化した妻の心憎い懐柔策

プレジデントオンライン / 2023年7月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

継続雇用などで65~70歳まで働くことがスタンダードになりつつある。だが、広告代理店に勤務する男性(59)は「60歳以降は働きたくない」と妻(57)に宣言。そうなると月の支出が60万円弱のため、妻のパート収入だけでは生活できず、貯金を切り崩すしかない。FP横山光昭さんがとった家計再生の秘策とは――。

■客観的に見ても「働かない」選択肢はあり得ない

相談日の時点で、真鍋義男さん(仮名)は59歳で、広告代理店の営業をしていました。家族構成は、保育士(パート)の妻・加奈子さん(仮名・相談時57歳)と社会人の長男(相談時24歳、同居)。相談に来た加奈子さんはこう言います。

「夫の会社は60歳が定年で、65歳まで再雇用されます。2年前に長男の教育費を払い終えたので、“再雇用の5年間が第二の貯め時”になると一安心していたところ、夫がもう働きたくないって言いだしたんです。『業務量が変わらないのに収入が減ることが耐えられない。きっぱり仕事を辞めて、趣味の料理を究めながらセカンドライフを楽しみたい』と……。

年金はできれば65歳からの受け取りにしたい。それまであと5年。この空白の5年間を、私のパート収入月10万円と、1430万円の貯蓄だけでやっていけるのでしょうか? ちなみに、退職金は不明です。夫いわく、住宅ローンの残債1000万円を一括返済できる額だろう、とのことですが……」

約40年間、ひたすら働き続けてきたであろうご主人の苦労を想像すれば、もう働きたくない、リタイアしたいという気持ちは理解できます。そう望む男性は多いですし、再雇用で働いたとしても途中で辞めてしまったという話もよく聞きます。

一方で、年金受給を始めるまで貯蓄に頼って暮らすのは、将来を考えると現実的ではないので

加奈子さんが言うように、「じゃあ年金受給までの5年間はどう食いつなぐの?」という不安もよくわかります。実際、周りを見れば、結局は現実に向き合い働き続ける人の方が多いですし、FPとして客観的に見ても、真鍋さんの家計状況では、働かない選択肢は「ありえない」と考えます。

理由は、家計簿を見れば一目瞭然。

毎月の手取り収入は夫が66万円、妻が10万円で合計76万円。対して支出が59万6000円で、収支の差額は+16万4000円です。毎月約60万円が出ていく生活では、妻のパート代10万円だけになったら、月の赤字は50万円で1430万円の貯蓄が溶けるのは簡単です。切り崩すとしても、2年半しか持たない計算になります。

■「Amazon中毒&こだわり浪費」で月の支出が60万円

では、毎月の支出を削減できないかというと、それも難しい。夫はいわゆる「こだわり派」ゆえに、各費目に「こだわり浪費」が膨らんでいたのです。バブル景気を謳歌した経験が今も尾を引いているのかもしれません。

まず通信費は、「安心感」から割高の大手キャリアのスマホを使い続けているため、Wi-Fi込みで3万7000円。日用品も便利グッズに目がなく、毎日のようにAmazonから何かしらの荷物が届くありさま。「Amazon中毒」ゆえに月3万円もの日用品支出があります。

極め付きは、趣味の料理。各国の調味料を買い集め、食材も全国の産地から取り寄せるほど。おかげで食費は外食費込みで月14万円にも。個人的な印象ですが、定年前後に男が料理に手を出すと、夫婦仲が悪くなるパターンが多いように思います。大抵の場合、食材は採算度外視、後片付けは妻任せですから。

これでは、定年後働く働かない以前の問題。年金生活を考えると、住宅ローンを完済しても月50万円も赤字が続けば、家計破綻するのは火を見るよりも明らかです。そればかりか、老後破綻の崖っぷちです。

真鍋家のメタボ家計BEFORE→AFTER

■褒めて喜び感謝して、筋金入りの「こだわり費」を削減

そこで真鍋家は、大きな改革を2つ試みました。収入を増やすことと、ご主人のこだわり費を減らすことです。

まずは、妻・加奈子さんの収入を増やしたこと。折よく、勤務先から正社員雇用の声掛けがあり、快諾することで10万円から18万円にUP。妻はまだ50代で先が長いので、労働時間が増えたとはいえ、社会保険に入りながら長く働くほうが賢明です。

次は、夫のこだわり費です。これは筋金入りですから、ただ頼むだけでは頑として動いてくれません。そこで食費は、レシート精算制だったことを武器に、加奈子さんが家計から出せないと判断した部分、つまり趣味の料理代は支払わないとし、かつ食費の予算を8万円にダウンしたのです。予算を超えた分は、娯楽費として夫の小遣い負担に。そのため小遣いは2万円増やしました。

結果、食費だけで14万円から8万円へと、6万円もの大幅ダウン。もちろん、加奈子さんも食費に含めていた外食費を減らすなどして協力しました。

同時に、夫が材料費を減らすことができたときは、大げさなほど褒め、喜び、感謝して夫の節約モチベーションを上げていきました。文句を言えば文句で返されるだけ。そこを「作ってくれてありがとう」と感謝しつつ、家計とはしっかり線引きしているところに、妻の賢さを感じます。

日用品は、Amazonで購入する際は事前の声掛けをお願いして、その都度、必要か不要かをジャッジすることに。

さらに加奈子さん自身も、気分転換と運動不足解消のためにやっていたヨガや鍼灸(しんきゅう)をやめ、月6万円削減。ヨガは通わずに、YouTubeのヨガ動画をマネすることで代用することにしたそうです。

■妻の正社員化&趣味断念に触発され、夫は…

真鍋家は削り幅が大きかったため、月15万8000円の削減に成功し、毎月の支出は、43万8000円に。住宅ローンが終われば、月の支出は35万円程度になるでしょうから、年金生活になっても貯金を切り崩しながらやっていくことは可能でしょう。

ここまでこだわり派の夫が節約に協力した一番の要素は、妻自身も支出減の貢献をしたことです。一つは60歳手前で労働時間を増やして正社員になった妻の覚悟。そして、労働時間が増えたにもかかわらず、外食を減らしたりヨガ、鍼灸をやめたこと。

夫は仕事を辞めようとしていたのに、妻は逆に働く量を増やした。さらには、自分のお金の使い方まで見直していますから、妻の抱える危機感が伝わって冷静になったのでしょう。なんと夫はあれだけ嫌がっていた再雇用を受け入れ、65歳まで意思を示しました。

定年後の夫の収入は、66万円から15万円ダウンし、51万円になりましたが、家計をスリムにしたことで、収支の差額は、+25万2000円に。収入が減っても、支出を大幅に減らしたため、以前より月の収支差額が増えています。

さて、この約25万円は、前から興味があったという投資にまわすことになりました。一般NISAに月10万円、iDeCoに月2万3000円、合わせて12万3000円です。残り約12万円は、夫のボーナスがなくなった分、臨時支出用に貯めています。

そして、夫が定年後に仕事を辞めたら食いつぶされる予定だった1430万円の貯金は、無事キープ。妻としては、老後資金として絶対に残しておきたかった。だからこそ、60歳手前で正社員となり、身を削って働くことを選んだわけです。

余談ですが、妻は親の遺産2500万円を相続していました。これは夫には内緒。話すと、安心して退職してしまいますからね。今後もうまく夫をコントロールし、老後資産を増やしていってほしいものです。

シニアカップルがドライブ
写真=iStock.com/Joy10000Lightpower
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Joy10000Lightpower

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭 構成=桜田容子)

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