1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

ドアノブをゴールドに変えて約100万円…プロが密かに実践、マイホームを「1円でも高く売る」テクニック

プレジデントオンライン / 2023年7月14日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

長年住んだマイホーム。老後資金を増やすために、売却を検討する人も多いだろう。「立地が悪い」「築年数が古い」などを理由に、高く売れないと思い込んではいないか? やり方次第で高額で売却できる。プロのテクニックを紹介する。「プレジデント」(2023年8月4日号)の特集「金持ち老後の株・投資戦略」より、記事の一部をお届けします――。

■相見積もりを取るのが高額売却のカギ

不動産を高く売るコツは、物件の条件によって変わりますが、マンションの場合に共通するのは、管理のよさです。管理組合や管理会社がしっかりしている物件はほぼ確実に高く売れます。たとえば、三菱地所、三井不動産、住友不動産など、大手デベロッパー系列の管理会社に管理を委託していれば、維持・管理がしっかりしていますので、購入者も安心します。大手は管理料が多少高くなりますが、売却する際には、それを上回る価格メリットがあります。管理組合の同意があれば、管理会社を変えることもできます。

知らないと損!1円でも高く売るための3つの心得

売却する時期も重要です。3月、6月、9月、12月が不動産業界の繁忙期です。この時期は住み替えをする人が増えますので、価格が高くても売れやすくなりますし、売却までの期間も短くできます。

実際に売却する場合には、不動産仲介者に依頼することになりますが、売却価格は担当者によっても大きく左右されます。同じ物件であっても、担当者によって査定額が5000万円になる場合もあれば、4000万円になる場合もあります。難しいのは、高く評価してくれる担当者が優秀だとは言えないことです。むしろ仕事のできない担当者ほど高くする傾向があります。高値をつけたところで、売れ残っては意味がありませんから。

よって、売却を検討する際には、複数の会社に相談して、見積もりを出してもらうことが必須です。その際に「なぜその価格に設定したのか」根拠を聞いてください。しっかり説明できたり、周辺物件の売却事例を提示してくれる担当者であれば信頼できます。

■【CASE.1 築古物件】「そのエリアで買ってくれそうな人」に合わせリノベーションで一新!

どんな人が住みそうか想像して改装

築年数が古い物件の場合、「どうせ高くは売れないだろう」とあきらめてしまう人が大半ですが、工夫次第で驚くような価格で売れることは珍しくありません。

特にマンションの場合は、リノベーションによって見違えるような部屋に、生まれ変わらせることができます。そのときに大事なのは、物件の立地に合ったリノベーションをすること。たとえば、渋谷区や目黒区など、高所得の単身者が多く住んでいる地域であれば、おしゃれで高級感のある内装にするといいでしょう。

実際に私が扱った目黒区の物件では、周辺相場よりも1500万円上乗せして売却できました。この物件は、1970年代に建てられたので、築年数は50年以上です。そのまま売却すれば、3000万円で売れるかどうかでした。

リノベーションのコツは「どんな人が住むだろうか」と想像を巡らせることです。この物件の間取りは1LDKとそれほど広くありませんが、目黒駅から徒歩3分ですから、ほぼ駅前の物件といっていい立地でした。

この条件から購入者を想定すると、高所得のシングル女性が浮かびました。そこで、女性が好む白系の内装にして、部屋の中に光があふれるように照明を設置しました。結果、私の想定通り、シングル女性が4500万円で購入しました。

保有しているマンションを売ろうとする場合、普通はリノベーションまでしません。手間がかかりますし、費用もそれなりに必要になるので、「このまま売ればいいだろう」と考えてしまうのです。だからこそ、きれいにリノベーションされた中古物件は希少価値があるともいえ、高く売れるのです。長年住んだマイホームをがらりと変えてしまうのは勇気がいることですが、次に住む人が住みたいと思うような形に変えてみる――。それが高く売るコツの1つです。

しかし、リノベーションやリフォームで魅力的な内装にしたとしても、時に高く売れない場合もあります。周辺に同じような条件の物件があれば、価格競争になってしまうからです。その場合、販売時期をずらすというテクニックが有効です。つまり、周辺に似たような条件の物件が売りに出されていないタイミングを見計らってマンションの販売を開始するのです。

以前、私が仲介を行った神奈川県川崎市のフルリフォーム済み2SLDKの物件は、時期を見極めて販売開始した結果、周辺相場より500万円も高く売れました。京王相模原線・若葉台駅まで徒歩8分の立地で築25年の物件です。

物件を売り出す前に事前調査したところ、周辺で売り出されている物件がなかったのが、高値がついた要因の1つです。事前に周辺物件を調べる際には、相場価格とともに「売り出し中の物件があるか」を確認することが重要です。もし、ライバル物件があった場合には、3~4カ月ほど物件を売りに出すのを遅らせるのも、高額でマイホームを売却する技の1つです。

都心駅近なら高所得のシングル女性を狙え

■【CASE.2 1階物件】「危なそう」「暗そう」「水害が起きそう」1階のネガティブイメージ払拭!

明るく安全な部屋を演出

マンションの1階は、防犯上の理由から敬遠されがちです。とはいえ、高く売る方法がないわけではありません。大事なのは防犯面の不安を少しでも取り除くことです。

おすすめなのは、庭やバルコニーにつながる窓を防犯複層ガラスに変えること。外部からの侵入者が衝撃を与えても割れにくいうえに、万が一ヒビが入ってもガラスが飛び散らず、安全性も高いので、買い手からの印象が非常にいいです。だいたい一カ所あたり約10万円で交換が可能ですし、自分たちの防犯のためにも早めに交換をしておくのがいいでしょう。

塀やバルコニーの縁に棘のある防犯金具を置いて侵入者を寄せ付けないような対策をするのも1つの手です。さらに防犯カメラを設置するなどして、防犯対策をアピールすることが、高値で1階物件を売却するのには効果的です。全部対応したとして、だいたい30万円ほどの費用になりますが、やるかやらないかでマンションの売却額が100万円ほど変わります。

買い手に少しでも安全性を印象付けるには、内見の際の演出も大切になります。「光」と「匂い」をうまく使って“買い手を魅了する”裏技テクニックをご紹介しましょう。

多くの人はマイホームを売る際にあまり意識していないようですが、「光」の演出は物件の印象を左右する重要な要素。とにかく明るくすることが安全性のアピールにつながります。間接照明などを用意できれば、廊下や部屋に置き、安心感のある家を演出したり、内見時間を昼間にしたほうがいいです。その部屋に最も光の入る時間を選んで内見をしてもらえれば、1階物件に抱きがちな「暗そう」「危なそう」といった不安要素を減らせます。細かなことに思えるかもしれませんが、この積み重ねが売値アップにつながります。

「匂い」で言えば、柑橘系の香りを玄関から漂わせる小技があります。柑橘系の香りは不動産に限らず、購入意欲を増すことが知られています。商業施設を訪れたときに、柑橘系の香りが漂っている店舗に入った経験はありませんか。「香りマーケティング」による手法で、お客様を前向きな気持ちに促すと言われています。

マンション購入を検討しているお客様に川沿いにあるマンションの1階物件を案内していると、水害を心配する声が多く聞かれます。このようなケースでは、弱みをしっかりと仲介業者からお客様に伝えてもらうようにすることが重要です。そのうえでよい面をアピールすれば、お客様のなかでメリットとデメリットが明確になり、納得したうえで高値で買ってもらえます。

川沿いであれば、河川敷に公園や遊歩道が整備されていることも多く、周辺環境は良好です。たとえば、「川沿いには公園や遊歩道が整備されていて、周辺環境は良好です。200年に一度レベルの大雨があったときには浸水のリスクがありますが、想定浸水深は5メートル未満ですので、部屋まで濡れることはありません」などと説明すれば、高値で売ることも不可能ではありません。

防犯対策が万全であることを徹底的にアピール

■【CASE.3 狭小物件】広さより「雰囲気」「特別感」に価値を感じる人を狙え!

細かな設備の刷新で売りやすさもアップ

専有面積の狭い物件が、売りにくいのは事実です。一方で、広さより「部屋の雰囲気」や「過ごしやすさ」を重視している人も年々増えてきています。そういった買い手に向けて、部屋の設備を新しくするのも、物件を高く売るのには効果的です。

最も手軽にできるのは、ドアノブ交換です。私はお客様に中古物件を紹介する前に、すべてのドアノブをゴールドに交換します。それだけでも部屋の中の見栄えが華やかになり、買い手のリアクションが大きく変わります。ドアノブの価格は1個当たり1万円程度。室内のドアノブをすべて変えるだけで数十万円は売値が上げられます。特に郊外の物件の場合は、ゴールドのドアノブが喜ばれる傾向にありますので、マイホームの売却を考えているのであれば、やってみるといいでしょう。

水回りのリフォームも効果的です。長年住んでいる家の場合、キッチンや洗面所にひねるタイプの蛇口を使用していることも多いのではないでしょうか? これをレバータイプに変えるだけでも売却しやすさは一段と変わりますが、おすすめは、手を近づけるだけで自動で水が出てくる最新のセンサータイプの蛇口への交換。タッチレスで使用できるので、キッチンで洗い物や料理をしているときの使い勝手が非常にいいと人気を集めています。

「さぞかし高いのではないか」と思うかもしれませんが、交換に必要な費用はたった数万円程度です。全体的に部屋の内装が古いつくりになっていても、水回りが最新設備になっていれば、買い手からの印象は大きく変わります。トイレに最新式の温水洗浄便座を設置するのもいいでしょう。約20万〜30万円ほどの売値アップが期待できます。

部屋が狭い物件において、物件の価値を上げるために「+α」のリフォームとしておすすめしたいのは、浴室のテレビの設置です。物件購入を検討されているお客様を案内したときに、浴室に設置されたテレビを見ると、皆さん一様に驚きます。夫婦で来られた場合には、特に奥様が感動して、購入に前向きになっている様子をよく見ます。高級物件や高級ホテルの浴室に設置されているイメージがあるため、これだけでラグジュアリー感が出ますし、最近ではゆっくりとお風呂に入りながらユーチューブを見たいという人も少なくありません。設置費用は十数万円ですが、少なくとも50万円は価格に上乗せできる場合もあります。

もし、予算に余裕があるのであれば、ぜひやっていただきたいリフォーム場所が玄関です。物件購入を検討しているお客様が、最終的に「買うか」「買わないか」を判断するのが、玄関ドアを開けたときの印象です。ですから、多少値が張りますが、玄関のタイルを大理石調のものに敷き直したり、明るいライトを設置し、高級感を演出するのがポイントです。室内を内見して、「少し狭いな……」と思われたとしても、第一印象で心を摑まれた買い手は、「この物件、高いけど買いたいな」という気持ちになり、前向きに購入を検討するはずです。

高級感アップ、機能性アップ、便利さアップを満載

■【CASE.4 駅遠物件】アクセスが悪くても、専有面積が大きいなら、ファミリー層のニーズに応えられる!

大胆な間取りチェンジで需要増を狙う

「駅近物件」は価格も高く、買い手もつきやすいですが、駅から徒歩15分以上でも、部屋の間取りを変えるリノベーションを行えば、十分に高値で販売することは可能です。

購入者がファミリーの場合、気にするのはアクセスのよさよりも部屋の数です。都市部と比べて、特に郊外には子どもの数が多いファミリーがたくさんいるので、一つ一つの部屋が狭くても個室の多い物件が好まれます。

たとえば、専有面積が85平方メートルで間取りが3LDKの物件があれば、思い切ってリビングを小さくするなどして、4LDKにするのが効果的です。子どもが2人いるというご家庭の場合、3LDKでも子どもの個室を確保することはできますが、もう少し余裕がほしいと4LDKを検討されるケースが非常に多いです。4LDKであれば、2人の子どもにそれぞれ個室を与えても、さらに書斎などを確保できます。4LDKの物件は3LDKに比べると少なく、需要が多いため、約1000万円高く売れたということもあります。

ただし、都心部の2LDKの場合は、3LDKにするよりも、広めのリビングがついた1LDKにすることも検討しましょう。先述の通り、特に都心部では3LDKの物件が飽和状態で、買い手がつかない可能性があるので、子どもを持たないディンクスか、単身者に向けた物件にリフォームをするほうが売れる確率も高く、価格も相場より高くなるでしょう。

間取りを変更するリフォームにかかる費用は、「部屋を増やすか」「減らすか」で金額が変わってきます。仕切りやドアを追加して部屋を増やす場合は50万円から、逆に壁などを撤去する場合は20万円から行うことができます。部屋の形を大きく変える必要がある場合はさらに費用がかかるので、現状の構造を活かしたリフォームを行うのが鉄則です。売れるデザインにはテクニックが必要ですから、信頼できる業者を選んで相談しましょう。

もう1つ、駅から遠い物件を売るときのポイントは、周辺施設をいかに買い手にアピールするかに尽きます。たとえば、同じ駅から遠い物件でも、徒歩5分の距離に大型商業施設があるかどうかで、物件の販売価格は300万円ほど変わります。スーパーやコンビニ、ドラッグストアが近くにある場合も、300万円ほど高くはありませんが、それなりに高く売ることができます。また、近隣に再開発地区やベッドタウンがある場合も、その暮らしやすさゆえに高額でも売れることがあります。

最近、駅から遠い物件で「この家、高く売るのは難しいですよね?」とよく相談されるのが、隣に墓地がある家です。たしかに以前は縁起が悪いと避けられがちでしたが、近年では「静かで過ごしやすい」とかえって人気を集め、駅近物件と同等の金額で売れています。ですので、近くに墓地があるからといって、弱気になる必要はありません。ようは、駅から遠い物件でも、買い手への「住みやすさ」のアピール次第で、購入してもらえるかどうかが決まります。

子どもが多い家庭に合わせてリフォームで個室増設

■【CASE.5 売れ残り一戸建て】マンションは「内装」、一戸建ては「外観」が命。弱点を改善すれば、ボロ家が売れる!

長年住んで見落とす劣化や汚れに注意

不動産の売買において、高値をつけるポイントの1つは管理状態の良し悪し。マンションの場合は、管理会社によって掃除や大規模修繕などが定期的に行われますが、戸建ての場合はこれらをすべて自分たちで行う必要があり、売却の際にもコツが必要です。

中古の一戸建てを購入しようと考える人が最も気にするのは外観です。屋根がボロボロだったり、壁が汚れていたりすると大きなマイナスになり、高く売れないどころか、買い手がつかないこともあります。マンションでは内装が重要視されますが、一戸建ての場合、購入してから買い手側で内装をリノベーションするケースがほとんどですから、その点を気にする購入者は多くないのです。

では、マイホームの売却を考えたときに、外観のどこをリフォームしたらよいのか──。ポイントは2つで、「外壁」と「屋根」です。雨風にも晒される外壁は汚れたり劣化しやすく、築年数が経つほどボロボロになっています。ですから、売却前に真っ白く塗り直すなどして、きれいにすることをおすすめします。費用は坪数にもよりますが、広ければ100万円を超してしまうこともあります。しかし、これだけで長年住んだ家が見違えるほど新しく見え、売値も200万~300万円ほど上げることができるでしょう。

同様に屋根も、古い家の場合は日本瓦を使用していることもありますが、安全性や浸水の観点から敬遠されることもあるので、予算に余裕があればタイルなどに一新することをおすすめします。その場合の費用も約100平方メートルで100万円超と高額ではありますが、その分売値が100万円ほど上乗せされることが期待できます。

加えて、売却する前にぜひ実行していただきたいのが玄関のドア交換です。マンションの場合は、勝手に玄関ドアを交換することはできませんが、一戸建てなら問題ありません。築年数が古い一戸建ての場合、玄関のドアが劣化しているケースが多くあります。また、第一印象が売却額を左右する一戸建てにおいては、引き戸のような古い印象のある玄関ドアは買い手にあまり好まれません。

年々、玄関ドアの素材やデザインがブラッシュアップされた商品が登場していますから、防火や防風など機能性の高いもので、かつ見た目も洗練されたものに取り換えましょう。30万円程度の費用がかかりますが、それによって100万円高く売れることは珍しくありません。

「将来的にマイホームを売りたい」と考えているのであれば、定期的なメンテナンスは欠かさずに実行しておくべきです。いざ「売りたい」と思ってから家の不具合をすべて直すとなると、予算が足りずに、結果的に売却額を下げることになりかねません。また、意外と見落としがちなのが、ちょっとした外壁のすすけや苔など、外観の汚れです。長年住んでいると気にならないかもしれませんが、初見の人からすると、魅力がないように映ります。ささいな気づきになりますが、掃除するだけでも売却額は大きく変わります。

長年住んだ家を見違えるほど新しく見せる

※売却価格は目安です。実際の物件状態や地域によって変動します。

----------

谷尾 和昭(たにお・かずあき)
くふう住まい取締役
「絶対損はさせない」をモットーに買取再販業では累計1万件以上の仕入れ販売を行うほか、「オウチーノニュース(https://o-uccino.com/front/articles)」では、「親切すぎる不動産屋」としてほかの不動産屋は教えてくれない「家を高く売るノウハウ」や「売却事例」を初心者にもわかりやすく解説。

----------

(くふう住まい取締役 谷尾 和昭 構成=向山 勇 イラスト=前田はんきち)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください