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人気アイス上位20種類のうち、オススメは3種類だけ…「夏の滋養食」アイスクリームの賢い選び方

プレジデントオンライン / 2023年7月16日 11時15分

日本臨床栄養協会理事、あきはばら駅クリニック院長の大和田潔医師

■アイスを食べるなら「朝イチ」がオススメ

日本各地をうだるような暑さが襲っている。こんなときは冷たいアイスクリームが食べたくなる。「アイスばかり食べると、健康によくない」と思われるかもしれないが、暑さで食が細くなっている人には「滋養食」になる。

日本臨床栄養協会理事で、あきはばら駅クリニック院長の大和田潔医師は「アイスクリームは古代から健康食品と考えられる体に優しい食べもの」と説明する。

「牛乳や卵黄、砂糖などシンプルな材料で作られています。砂糖は素早くブドウ糖になるので、頭脳労働や運動などのエネルギー源となります。牛乳は乳糖や脂質が分解吸収されて、あとからエネルギーとして使われます。忙しくて食事をする時間がなかったり、食が細くなっていたりする人にはアイスクリームは滋養食でしょう」

管理栄養士の望月理恵子氏は「午前中の摂取」を提案する。

「朝にアイスクリームを食べると、覚醒度が高まり、情報処理速度が上がるという報告があります。朝は体内時計を整えるためにタンパク質や糖質を取ったほうがよいので、その両方が含まれるアイスを活動前に少量食べるのはお勧めできます。アイスは冷たいので覚醒をうながします。一方で体温の低い時間帯ですから、冷え性の方やおなかが弱い方が朝に摂取するのは避けたほうがいいでしょう」

■日本人に不足しがちな栄養素も取りやすくなる

アイスクリームは良質なタンパク源になるから、体を動かした後に摂取すれば、筋肉を維持したり増強したりするのに効果的だ。血中にタンパク質の濃度が高いと水分を保持できるので、脱水予防になる。さらに日本人に不足しがちな栄養素も取りやすくなる。

「カルシウムや鉄が含まれる上、それらの吸収を促進する乳糖もアイスクリームに入っています。乳糖には腸内環境を整える働きもあるんですよ」(望月氏)

自家製オーガニックバニラアイスクリームミント添え
写真=iStock.com/Olena Nesterovych
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olena Nesterovych

しかし商品の選び方には注意が必要だ。大和田医師が述べている通り、本来アイスはシンプルな原材料で作ることが可能だが、原材料費をおさえるなどの目的で糖類や油などを加えている商品がある。糖類や油は、牛乳や卵黄などより安価で、食感やのどごしも悪くないのだが、体には負担をかけることになる。商品パッケージの原材料表示を確認してほしい。

■アイスクリームには「不要な油」は入らない

今回、夏に売り上げ上位のアイス20種類の原材料を別表にまとめた(図表1)。このうち液糖や植物油脂といった「余計なもの」が入っていないアイスは3種類だけだった。残りの17種類には、油(植物油脂)や糖類(果糖ぶどう糖液糖、増粘多糖類など)、乳化剤などの添加物が含まれていた。

アイスの質を見分けるには、種別(成分規格)を見ればいい。商品パッケージには「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」のどれかが書かれている。「余計なもの」を避けたければ「アイスクリーム」を選べばいい。アイスクリームは乳脂肪以外の脂肪の添加を禁止しているため、不要な油が入ってくることはない。

【図表】アイスクリーム類の種別(成分規格)。
※アイスクリーム類の種別(成分規格)。一般社団法人Jミルクのホームページより。

■そして「価格が高い」とも限らない

売り上げランキング1位の「明治 エッセル スーパーカップ 超バニラ」は、種別が「ラクトアイス」で、原材料は「乳製品(国内製造又は外国製造)、植物油脂、砂糖、水あめ、卵黄、ぶどう糖果糖液糖、食塩/香料、アナトー色素」となっている。

これに対して、3位の「ハーゲンダッツ ミニカップ バニラ」は、種別が「アイスクリーム」で、原材料は「クリーム〔生乳(北海道)〕、脱脂濃縮乳、砂糖、卵黄/バニラ香料」である。

ハーゲンダッツは高価格の商品だが、手ごろな価格でもアイスクリームは選べる。14位の「森永乳業 MOW バニラ」は、種別が「アイスクリーム」で、原材料は「乳製品(国内製造、ニュージーランド製造)、水あめ、砂糖、加糖卵黄(卵黄、砂糖)、カラメルシロップ(砂糖、水あめ)/香料」である。

なお新商品のためランキング対象外となっている「明治 Dear Milk」は、種別が「アイスクリーム」で、原材料はなんと「乳製品」のみ。希望小売価格は216円(税込み)で、ハーゲンダッツより安いのに、よりシンプルな原材料とした意欲的な商品だ(そして、とてもおいしい)。

【図表】人気アイス トップ20 成分規格&原材料

■「アイスは太りやすい」というのは幻想

消費者としては添加物や価格以外にも、乳脂肪が多く含まれるアイスクリームは「太りやすい」と心配になるかもしれない。しかし「アイスクリームは太りやすい」というのは幻想だ。参考までに、「Dear Milk」は265kcal(130ml)、「MOW」は249kcal(140ml)、「ハーゲンダッツ」は244kcal(110ml)。ラクトアイスの「エッセル スーパーカップ 超バニラ」は374kcal(200ml)と、アイスクリーム類よりカロリーは高い。 

「明治 Dear Milk」(130ml)希望小売価格:216円(税込み)
写真提供=明治
「明治 Dear Milk」(130ml)希望小売価格:216円(税込み) - 写真提供=明治

カロリーの側面だけでなく、「牛乳や乳製品に含まれる脂質は比較的太りにくい」と大和田医師は言う。

「牛乳の脂質には中鎖脂肪酸といって、ブドウ糖と同じように吸収が早く、エネルギー源としても利用できる脂肪酸が豊富に含まれます。最近ではMCTオイルとしても有名ですね。身体が利用しやすい脂肪酸のため体脂肪になりにくいですが、アイスには糖類も含まれていますから麺類やごはんに追加すれば肥満を悪化させてしまいます。中鎖脂肪酸にサポートしてもらうような意識で、軽い運動を習慣化しましょう」

また中鎖脂肪酸は認知機能の低下を防ぐという報告もある。

■寝る前に毎日「ラクトアイス」を食べると脂肪肝リスク

さらにアイスクリームには「卵黄」が含まれるが、第4回の「納豆」で述べたように、卵には「コリン」という栄養素が含まれる。2019年、世界トップレベルの米臨床栄養学会雑誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』では、コリンの摂取が多いほど認知症発症リスクが低下し、記憶機能のパフォーマンスが向上すると発表されている。

このようにアイスクリームにはエネルギー源のブドウ糖(砂糖)に、特徴的な脂肪酸、卵と健康にいいものが含まれる。

管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏
管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏

対してラクトアイスは体の負担が大きい。ただちに健康を害するものではないが、食べ続けるのであれば原材料に「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」「果糖類」「異性化液糖」などが含まれないものを選んでほしい。近年、日本ではアルコールを飲まない人の「脂肪肝」(中性脂肪が肝臓内に多く蓄積する状態)が増えているが、そのリスクを高める恐れがある。脂肪肝は、男性は30歳から、女性は閉経以降に急増するという。管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏がこう話す。

「肝臓に脂肪が沈着するだけでなく、進行すれば肝硬変や肝臓がんになることもあります。糖質の中でも脂肪肝になりやすいのが果糖で、中でも加工食品に含まれるものが危ない。例えば寝る前に毎日、果糖ブドウ糖液糖が含まれたアイスを食べ続けたら、非常にリスクが高くなるでしょう。食べる頻度には注意してほしいと思います」

■あずきバーの原材料は「砂糖、小豆、水あめ、食塩」

さて乳脂肪分を含まない「氷菓」はどうだろうか。氷菓は栄養価が低いかわりに全般的にカロリーが低く、ダイエット向きではある。大和田医師のお勧めは「井村屋 あずきバー」。原材料は<砂糖、小豆、水あめ、食塩>だ。

原材料がシンプルな「井村屋 あずきバー」。
写真提供=井村屋
原材料がシンプルな「井村屋 あずきバー」。 - 写真提供=井村屋
発売50周年となる2023年には、あずきバーの原材料が見直され、よりシンプルに変わっている。
写真提供=井村屋
発売50周年となる2023年には、あずきバーの原材料が見直され、よりシンプルに変わっている。 - 写真提供=井村屋

「添加物の液体の糖類に頼らず、水あめや砂糖を使うなど、誠実に作っているのが伝わってくる」という。

また小豆は強い抗酸化作用と豊富な食物繊維があり、健康美容効果が高い。

「小豆には赤ワインの1.5~2倍のポリフェノールが含まれ、豆類の中でも抗酸化作用が強いです。その働きは大きく3つあり、血糖値や血圧の上昇を抑え、コレステロール値や中性脂肪値を下げ、便通を促進します。食物繊維はごぼうの3倍と多く、腸内環境を整えます」(望月氏)

特に日本の小豆(エリモショウズ、しゅまり)は輸入品小豆よりも抗酸化性が高いという。

暑い日が続いてバテ気味な時、いろいろな製品を比較し、質のいいお気に入りのアイスを見つけてほしい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『実録・家で死ぬ 在宅医療の理想と現実』(中公新書ラクレ)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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