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イスから片足で立ち上がって3秒キープできるか…65歳で全身が老化する人、90歳になっても元気な人の違い

プレジデントオンライン / 2023年7月22日 9時15分

イスを使った運動に励む鎌田實さん - 写真提供=エクスナレッジ

病気や介護以前の段階で、日常生活で身体上の困難を抱える高齢者が大幅に増えつつある。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんは「90歳になっても介護いらず、杖いらず、病院いらず、元気いっぱい、自力で楽しく生きるために、今すぐ始めたほうがいいことがある」という──。(第1回/全2回)

※本稿は、鎌田實『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■筋肉が減ると歩けなくなる

「筋活」とは筋肉を増やして、90歳になってもピンピン元気で歩けるようにする活動のこと。僕は「貯筋」という言い方をすることもあります。

「サルコペニア」という言葉があります。「サルコ」は筋肉、「ペニア」は減少という意味です。加齢などによって筋肉量がひどく減少し、身体機能が低下する病態です。「フレイル(虚弱)」や要介護状態にもつながるため、サルコペニアの予防が注目されています。

加齢や座っている時間が長いなどの不活発な生活、栄養不足などが、サルコペニアの原因で、ある統計によると、65歳以上の高齢者の6〜12%がサルコペニアであるとされています。

さらに、75歳以上になると急激に増え、80歳を過ぎると60%にも上るといわれています。

■イスから片足で立ち上がれるか?

サルコペニアになると、歩くスピードが遅くなる、歩くときに杖が必要になる、といった症状が目立ってきます。

このようなロコモ(「ロコモティブ・シンドローム」の略:運動機能が衰えている状態)は、心肺機能を低下させ、全身の老化を進めて、要介護の原因になります。介護保険のお世話にならないためにも、筋活をしてサルコペニアの予防を心がけることが大事です。

イスから片足で立ち上がれるかどうかは、脚の筋力の衰えをチェックする簡単な方法の1つです。

高さ40cmくらいのイスに座り、片足で反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒キープできれば問題ありません。一方、できない人は、体のバランスを保つ筋力の低下が始まっている可能性があります。

■ペットボトルのふたが開けづらくなったら要注意

また、手指が痛いわけではないのに、ペットボトルのふたが開けづらくなった人も要注意です。握力は全身の筋肉の状態を反映しているといわれています。

ペットボトルのふたが開けられないなど握力が低下している人は、全身の筋肉も衰えている可能性があるのです。

僕自身も68歳のとき、片足での立ち上がりができないことに気づきました。

そこで毎日、スクワットなどの筋活を行うことにしました。それからは筋肉量が増え、片足での立ち上がりが楽々できるようになりました。歩くスピードも速くなり、趣味のスキーの腕前も一段上がったように思います。

筋活を始め、新しい生活習慣をスタートするには、これまでの行動を変える。つまり、行動変容をどう起こすかが大事なことです。

■80歳になっても歩いて外出できる

「80GO(ハチマルゴー)運動」をご存じですか。「80歳になっても歩いて外出しよう」という意味で、日本医学会連合が2022年4月に出した「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」(以下、宣言)で提唱されている運動です。

僕は5年ほど前から「鎌田實のがんばらない健康長寿実践塾」(以下、鎌田塾)を主催し、約1000人の塾生たちと健康づくりに取り組んできました。

その重要な柱が、フレイル(虚弱)およびロコモ対策。

そこで塾生たちに、①鎌田式速遅歩き、②スクワットやかかと落としなどの自重筋トレ、③筋肉や骨など体をつくるための「たんぱく質いっぱいの生活」を提案してきました。

①は3分間の速歩きと、3分間のゆっくり歩きを繰り返すもの。②は自分の体を重りにして行う筋トレ。特別な道具を使わないので自宅で簡単に筋トレできます。③のたんぱく質については後述します。

■健康塾のズボラ筋トレ講座も大人気

多くの人は、年齢とともにサルコペニアによる筋力低下や、関節や骨の病気などで移動することが不自由になっていきます。これがロコモです。

やがて重症化すると、抵抗力や体力が低下し、フレイルの状態になり、要介護状態へと進みます。要介護のリスクは、ロコモになると3.6倍になり、フレイルになると4.6倍に跳ね上がります。

前述の日本医学会連合の宣言では、フレイル・ロコモは気づかないうちに進行していることが多いため、早いうちから幅広い年代に対応することが大事であり、適切に対応すれば予防・改善できる、と強調しています。

【図表1】鎌田式「ズボラ筋トレ」一例
『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』より。鎌田式「ズボラ筋トレ」一例

その取り組みとして始めたのが、鎌田塾で行っている「ズボラ筋トレ講座」なのです。詳しいやり方は拙著『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』で図解とともに紹介しています。

■たんぱく質をとらないと筋肉は増えない

さらに、筋トレだけで筋肉量を増やすことはできません。そこで、私が提唱する「ズボラ筋トレ」を実践するとともに、筋肉の材料であるたんぱく質をしっかりとることをおすすめしています。

たんぱく質は、筋肉はもちろん、骨や血管の壁など、体をつくる大切な栄養素。不足すると、脳卒中を起こすこともあります。

日本では、欧米人のようなコレステロールが原因で太い血管が詰まるタイプよりも、たんぱく質不足で血管の壁がもろくなり、細い血管が破れたり詰まったりして発症するタイプが多いといわれています。

ボストン大学医療センターの研究では、1日平均100gのたんぱく質を摂取している人は、摂取量が少ない人よりも高血圧のリスクが40%低いとしています。たんぱく質不足で血管がもろくなり、高血圧を起こしていると考えられます。

■1日にとるたんぱく質は60g以上

1日のたんぱく質の推定平均必要量は、成人男性で50g、成人女性で40gとされています。さらに高齢になると、筋肉の老化が若い人よりも早く進むため、現状の筋肉を維持するだけでも1日60g必要といわれています。

鎌田實『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)
鎌田實『介護の世話にならない 鎌田式「90歳の壁」を元気に乗り越える5つの極意』(エクスナレッジ)

しかし、僕たちが普段食べている和食は、どうしても炭水化物が多くなり、たんぱく質が不足しがちです。

さらに年齢とともに肉や魚を食べる回数が減る傾向にあるので、たんぱく質不足に拍車がかかります。現在、日本の高齢者で1日60g以上のたんぱく質をとれているという人は、ごく少数ではないでしょうか。

90歳の壁を超えようと思ったら、最低でも72gはゆずれないところです。理想をいえば、体重1kgあたり1.2〜1.5gはとってもらいたいのです。体重60kgの人なら、72〜90gのたんぱく質が必要という計算になります。

たんぱく質が足りないと、運動しても筋肉はやせ細っていくので、やがてフレイルになり、それにより行動範囲や活動量が少なくなると、寝たきりや認知症のリスクも高くなっていきます。

■たんぱく質はいろんな食品からこまめにとる

たんぱく質というと、肉というイメージがあります。もちろん、牛肉や豚肉、鶏肉などの肉類は100gでおよそ20gのたんぱく質をとることができます。でも200gのステーキを食べても40gくらいしかとれないことになります。

そこで、いろいろな食品からこまめにたんぱく質をとることが重要になってきます。魚種によって差がありますが、魚は100gでおよそ20g、卵は1個で約6g、木綿豆腐半丁が約10g、納豆1パックで約8gのたんぱく質がとれます。

1人暮らしの人など食事内容が偏りがちで、たんぱく質が十分とれないという人も多いでしょう。最近はカップ麺などでもたんぱく質を多く配合した商品が登場しています。「高たんぱく」などの表示があるので、探してみるのもよいでしょう。

また、若い人がよく利用しているゼリータイプのプロテイン(たんぱく質)もおすすめです。僕は、こういう商品は高齢者こそ利用すべきだと考えています。

このほか、プロテイン入りミルクやプロテインの多いヨーグルトなどの商品もあります。食事だけでは必要な量がとれていない人は、こうした商品を利用してはいかがでしょうか。

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鎌田 實(かまた・みのる)
医師・作家
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』『だまされない』ほか多数。

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(医師・作家 鎌田 實)

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