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ChatGPT時代は洗脳から解き放たれる大チャンス「1日8時間働く必要はないのに働いてしまう」根本原因

プレジデントオンライン / 2023年7月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SvetaZi

AI時代に人間はどれだけ働くべきなのだろうか。経営コンサルタントの矢内東紀さんは「日本の大企業であれば『1日8時間、週40時間働く』といった価値観が根強いが、本来これは自由である。ChatGPTという技術の登場によって2時間かかる作業が1分で済むようになったら、後の時間をどう使うかは個人の選択に委ねられている」という――。

※本稿は、矢内東紀『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■クイズ作りはChatGPTで1問100円→10円に

とにかく早くその中に飛び込まなければいけない。

これは産業革命に並ぶ技術革新の到達点であり、まさに破壊的なイノベーションです。

私は当時経営していたクイズバーの経営から身を引き、新たにAI、ChatGPTに関連する会社を2社起ち上げました(しかし現在は再任)。

きっかけとなったのは、まさにそのクイズバーでした。

端的にいえば、クイズの制作はもうChatGPTに任せられると思えたことが大きい。

それまでもクイズ作りの作業をAIで試してみたことはありましたが、間違った問題を作ってしまうなど、その精度は実際の仕事で生かせるレベルではありませんでした。

それがGPT-3.5になって劇的に改善され、GPT-4で「クイズ作りはAIでOK」という確信に変わりました。

簡単にいうと、私が経営していたクイズバーの場合、1問100円で人間が作っていたクイズ作りが、ChatGPTなら1問10円で済んでしまうといったことが起きたのです。

これと同じ話があらゆるところで起こることは間違いなく、いわゆるまとめライター的な仕事はChatGPTで十分でしょうし、中レベルくらいのエンジニアの仕事もなくなることは想像に難くないでしょう。

この手の話はずいぶん前から「AIに奪われる仕事」とか「10年後になくなる仕事」といったテーマで散々語られてきましたが、今回のGPT-3.5、そしてGPT-4の登場によって、より現実的なテーマとして目の前に現れました。

私は、これらの劇的な変化が現在どのように起こっているのか、またそれをどう乗りこなしていけばよいかをお伝えしたいと思い本書(『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』)を執筆しました(なお、本書の大半の部分をGPT-4を使って書いています)。

■AIの奴隷になるか、AIを奴隷にするか

さて、この事実を目の前にしてあなたはどう考えればいいでしょうか。

「自分の仕事はAIに奪われるから、置き換えられない技術を習得しよう」
「人間にしかできない仕事をしよう」

多くの人がこう考えるかもしれません。

しかしもっとシンプルに、

「今の仕事にAIをどう使おうか」

と考えてみてはどうでしょうか。

誤解を恐れずにいえば、この考え方一つで「AIの奴隷になるか、AIを奴隷にするか」くらいの大きな違いが出てくると私は思います。

例えば、少し前から某ファミリーレストランでは配膳をロボットがしていますが、以前までこれは人間の仕事でした。

このレストランにおいて配膳業務における人間の仕事は、配膳ロボットのメンテナンスをすることに置き換わっていると言っていいでしょう。

あなたがこのロボットを目の前にしたときに、

「これは私の仕事がなくなってしまうかもしれない。より工夫を凝らして私にしかできない配膳を追求しよう」

と考えるのか、

「よし、猫型ロボットを取り入れたほうが作業効率がいいから取り入れよう」

と考えるのか。

言うまでもなく、これからは後者の判断ができるかどうかが非常に重要になってくるのです。

人間対ロボット
写真=iStock.com/imaginima
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

■企画を考えるクリエイティブ職に脅威

私はChatGPT関連の会社を急いで創業し、本書を出版するくらいなので、周囲のChatGPT未経験者にもその凄さや使い方を布教してきていますが、最初の反応で圧倒的に多いのは「絶句」です。

例えば「第2章 ChatGPTのできること」の「企画書作成」の部分でも例に出していますが、とあるテレビ局のディレクターにChatGPTを紹介したときの彼の最初の反応は「え、私の仕事なんだったの? もうこれでいいじゃん」でした。

これまではAIに奪われる仕事といえば肉体労働のような仕事のイメージが強かったわけですが、彼のような企画を考えるといったいわゆるクリエイティブ職、つまり頭脳労働や知識労働、さらには管理職というホワイトカラーと呼ばれる役職に就いている人たちほど、その脅威を感じているのです。

また、しばらくは人間の感性を凌駕(りょうが)できないだろうと思われていた芸術の領域にもその影響は出てくると予想されます。

ある知り合いのジャズピアニストは「これからは本物の芸術作品は残るけど、大半の商業音楽はAIに取って代わられる」と言っていました。

本物の仕事、本物の芸術しか残らない時代が来たのです。

これらの例を出すまでもなく、人間の仕事が機械に取って代わられるということはこれまでにも起こってきたし、話題にもなっていました。

しかし、今回のChatGPTの登場は、これまで「人間の仕事」だと考えられてきた領域にまでその影響が及ぶという点が衝撃的で、それが本書のタイトルにもつながっています。

それは「書くだけ・喋るだけ」という誰にでもできる自然言語でほとんどの作業が済んでしまうことが大きく、これはまさに日本人が夢にまで見た、現実のドラえもんの誕生です。

アイデアさえあれば誰にでもドラえもんを使って稼いだり、問題を解決したりするチャンスがあるのです。

■1日8時間、週40時間働く必要はあるか

イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズが1930年に「2030年に人間の労働時間は週15時間になる」と予言したという有名な話があります。

私の周囲には「これからは1割の人だけが働いて、残りの9割は社会保障で暮らす」と言う人までいます(私はとてもそこまでになるとは思いませんが)。

これはカール・マルクスの議論ですが、経営者や資本は、労働者(人間か機械かは問わないが)を最大限働かせるようにできています。

「働かないとならないんだ」とか「もっと頑張って働こう」とかいった価値観は、自己増殖する目的を持つ資本の側で作られているのです。

資本主義はそういう理屈の上に成り立っている仕組みですが、それに乗るかどうかは労働者側の自由です。

しかし、自由と言われても、私たちの価値観は自分たちが思っているよりも深く、私たちの内面に埋め込まれてしまっています。

例えば日本の大企業であれば「週40時間働きましょう」といった価値観が根強いでしょう。

1日8時間働いて、仕事が終わらなければ残業し、基本的に休みは土日の2日間、権利として有給があり、会社にそれを申請して休みを取る。

そういった価値観への抵抗勢力として労働組合などがあるわけですが、その影響力は弱く、この先も社会を変える可能性は低い。

どうしても資本主義の下では資本の力が強く、それは選挙にしてもカネをたくさん持っているほうが勝つわけで、政治によって現実が大きく変わることはない、と考えるのが普通です。

「金でどうにでもなる選挙なんてやっても意味がない」という考えで、毛沢東をはじめとした代表的な左翼の指導者は選挙をやりませんでした。

これはボリシェヴィキやソビエトの理論ですが、一党独裁を正当化する考えでもあります。

近年では、中国の若者の間で「寝そべり主義者宣言」という「金や名誉のために一生懸命働くなんてうんざりだ、寝てのんびり暮らそう」という思想が生まれてきていたりもします。

そういう様々な議論が社会の中にはあるわけですが、読者の皆様には今一度、「週40時間、1日8時間働く必要が本当にあるか?」と考えてみてほしいのです。

繰り返しになりますが、本来これは自由です。

働いてもいいし働かなくてもいい。

「やめた」と言って寝そべっていても、生活保護はあるし、本来はなんでもありなのです。

■新しく生まれた時間をどう使うか

寝そべるとか全く働かないのは極端な例だとしても、ChatGPTという技術の登場によって、例えばこれまで2時間かかっていた作業が1分で済むようになった場合、残りの1時間59分をどう使うのかは、個人の選択に委ねられています。

当然、資本の側はこの時間を使って「もっとやれ」と要求してくるでしょう。

しかしここで「これまでと同じ作業で同じ給料をもらえるからそれでいい」と思えば、残りの1時間59分はサボタージュできるし、「独立して120倍やればもっと稼げる」と考えるのであればそうしたっていい。

理屈ではそういうことになります。

まずは資本によって操作された洗脳をどうやって解き、その上で何を自分が選択していくのか。

新しいAI時代の波をどのように乗りこなして自分の人生をドライブしていくべきなのか。

本書を元にChatGPTを使いこなし、資本の言説から解き放たれる人間が一人でも多ければ、これほどうれしいことはありません。

■ChatGPTを使いこなすカギ「プロンプト」

ここからはGhatGPTの実践編に入っていきましょう。

ChatGPTを使いこなす上で最も重要な要素の1つは、適切なプロンプトの設定です。プロンプトとは、ChatGPTに入力するテキストのことで、AIが適切な回答や情報を提供するために重要な役割を果たします。適切なプロンプトを設定することで、望む結果を出力しやすくなります。

本から輝く文字
写真=iStock.com/themacx
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/themacx

プロンプト設定の方法にはいくつかのポイントがあります。

明確で具体的な質問をする
AIが正確な回答を生成するためには、具体的で明確な質問が求められます。質問が曖昧であるほど、AIは適切な回答が難しくなります。

質問の文脈を提供する
ChatGPTに対する理解を深めるために、質問の背景や文脈を提供することが有益です。これにより、AIはより適切な回答を生成しやすくなります。

必要に応じて制約を設ける
ChatGPTに特定の制約を設けることで、回答の範囲を狭め、望む結果に近づけることができます。例えば、回答を特定の文字数に制限することなどが考えられます。

反復的な質問や確認
一度にすべての情報を得られない場合や、回答が不十分な場合には、反復的な質問や確認を行うことで、より適切な回答を引き出すことができます。

逐次的に質問をする、質問を分割する
複雑な質問や、複数の要素を含む質問は、いくつかの単純な質問に分割することで、より明確な回答が得られることがあります。
また、1つずつ逐次的に質問することで、それぞれの回答が前の質問の文脈に基づいて得られることを確認できます。

これらのポイントを踏まえてプロンプトを設定することで、ChatGPTを効果的に活用し、望む結果を得ることができるでしょう。プロンプト設定のスキルを磨くことは、AIとのコミュニケーションを円滑にし、より有益な情報を得るための重要なステップです。

■ChatGPTへの「良い質問、悪い質問」の決定的な違い

良い質問と悪​い質問

では、具体的にプロンプトの設定方法のポイントを満たした良い質問と悪い質問を比較したときに得られる回答の精度を見ていきましょう。

良い例のプロンプト
「スタートアップ企業が成功するためには、どのような戦略が重要か。成功のための3つのポイントと、それぞれに関連する具体的なアクションを説明してください」

スタートアップ企業の成功に関連する戦略について具体的な情報を求めていることと、成功のための3つのポイントおよびそれぞれに関連する具体的なアクションを要求することで質問が明確になっています。

また、スタートアップ企業の成功に焦点を当てることで質問に文脈を与えています。

ここに文字数の制約を与えたり、限定的な条件を追記したりすることで、さらに適切な回答に近づくことができるでしょう。うまく回答が得られない場合は、質問の仕方を変えながらやりとりを続けると期待の回答に近づけていくことができます。

実際にこの質問をしてChatGPTから得られた回答が以下です。

スタートアップ企業が成功するためには、以下の3つのポイントが重要です。

1.顧客ニーズの理解と製品・サービスの適合性
成功のためには、ターゲット市場の顧客ニーズを深く理解し、それに適合する製品やサービスを開発することが重要です。具体的なアクションとしては、市場調査や顧客インタビューを行い、フィードバックを得ながら製品・サービスを改善し続けることです。

2.効果的なマーケティングとブランディング
スタートアップ企業は、競合他社と差別化されたブランドイメージを確立し、ターゲット顧客にリーチすることが重要です。具体的なアクションとしては、デジタルマーケティング戦略(ソーシャルメディア、コンテンツマーケティング、SEOなど)を活用し、効果的な広報活動を行うことです。

3.強固な財務管理と資金調達
スタートアップ企業は、効率的な資源活用と資金調達が成功の鍵となります。具体的なアクションとしては、予算管理やコスト削減に注意を払いながら、適切なタイミングで資金調達(エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、クラウドファンディングなど)を行うことです。

これらのポイントを押さえつつ、戦略の柔軟性を持ち、市場や状況の変化に適応できるスタートアップが成功するでしょう。

■曖昧な質問だと、それなりの知識しか得ることができない

悪い例のプロンプト
「ビジネスで成功する方法教えて」

この質問は曖昧で具体性に欠け、詳細も文脈も明確ではありません。そのため、回答は一般的で広範囲な情報になり、求めている情報が得られない可能性があります。

この質問で得られた回答が以下です。

ビジネスで成功するためには、以下のポイントを考慮することが重要です。

目標設定と戦略立案
明確なビジョンや目標を設定し、それに沿った戦略を立案します。成功するビジネスは、具体的な目標を持ち、達成するためのアクションプランを策定しています。

顧客ニーズの理解
顧客のニーズを深く理解し、それに応える製品やサービスを開発することが重要です。顧客インサイトを獲得し、市場調査やフィードバックを活用して製品やサービスを改善していくことが求められます。

効果的なマーケティング
強力なブランドイメージを構築し、ターゲット顧客にリーチすることが重要です。デジタルマーケティング、ソーシャルメディア、コンテンツマーケティング、広告などの戦略を活用して、リーチを拡大しましょう。

優秀なチームの構築
成功するビジネスは、優秀なチームを持っています。チームメンバーの採用や育成に力を入れ、チームワークを強化し、効率的に業務を遂行できる環境を整えましょう。

財務管理
収益性を確保し、資金繰りを適切に管理することがビジネス成功の鍵です。予算管理やコスト削減に努め、適切なタイミングで資金調達を行いましょう。

継続的な改善と革新
市場や業界の変化に適応し、常に新しいアイデアや技術を取り入れることが重要です。競合他社や新興企業に取り残されないよう、継続的な改善と革新を目指しましょう。

良い例の質問では、明確で具体的な情報が得られ、成功のためのポイントや関連する具体的なアクションについて理解できます。一方、悪い例では、曖昧な質問により具体的な情報が得られず、ビジネス成功に関する一般的な知識しか提供されません。

■使い勝手のいい「フォーマルなトーンで」といった指定

さらに抑えておくべきプロンプト設定のコツ

プロンプトの設定において、以下のポイントも有効です。

ニュアンスやトーンの指定
質問の際に、求める回答のニュアンスやトーンを指定することが有効です。例えば、「フォーマルなトーンで」や「親しみやすい口調で」といった指定を加えることで、回答が意図に沿った形で得られます。

クリエイティブな回答を求める場合、制約を緩める
逆に、クリエイティブな回答や新しい視点を求める場合は、プロンプトに制約を設けず、オープンエンデッドな質問を投げかけることで、意外な発見があるかもしれません。

矢内東紀『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』(実業之日本社)
矢内東紀『ChatGPTの衝撃 AIが教えるAIの使い方』(実業之日本社)

専門用語やジャーゴンを使う
専門的なトピックに関して質問する場合、専門用語やジャーゴン(特定のコミュニティで通じる言葉)を使って質問することで、より専門的な回答を得ることができます。ただし、過度に専門的な言葉を使うと、回答が理解しづらくなることもあるため注意が必要です。

参照元や引用を求める
質問の際に、具体的な参照元や引用を求めることで、回答がより信頼性の高い情報に基づいていることを確認できます。ただし、ChatGPTの知識は2021年9月までのものであるため、最新の情報や出典を求める際は注意が必要です。

これらのポイントもプロンプト設定において効果的ですが、最も重要なのは、状況に応じて柔軟にプロンプトを設定し、試行錯誤を繰り返すことです。その過程で、あなたにとって最適なプロンプト設定方法が見つかるでしょう。

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矢内 東紀(やうち・はるき)
作家、経営コンサルタント
別称えらいてんちょう。1990年生まれ。慶応大学経済学部卒。現在は作家、経営コンサルタント、ユーチューバー、投資家など幅広い分野で活動中。著書『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)がベストセラーに。その他『しょぼ婚のすすめ 恋人と結婚してはいけません!』『ビジネスで勝つネットゲリラ戦術【詳説】』『静止力 地元の名士になりなさい』『「NHKから国民を守る党」の研究』(いずれもKKベストセラーズ)、内田樹との共著『しょぼい生活革命』(晶文社)がある。

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(作家、経営コンサルタント 矢内 東紀)

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