持ち家と賃貸、損をするのはどちらか…お金のプロが出した「老後に後悔しない住まい」の最終結論
プレジデントオンライン / 2023年7月22日 10時15分
※本稿は、午堂登紀雄『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■私が今「持ち家派」である理由
私自身は長く賃貸派でした。若いころは収入も少なく転職や起業を予定していたし、起業しても拠点が変わる可能性があると想定していたからです。また、マイホームより不動産投資のほうを優先させていました。
しかし、現在は持ち家派です。大きく2つの理由があります。
ひとつは、すべてを自分の意思でコントロールできるからです。
賃貸では大家の意向の影響を受けます。家賃を値上げされたり、故障個所の修繕をすぐにやってくれないこともあります。2年ごとの更新手続きや更新料・火災保険料の支払いも面倒くさい。これが持ち家なら気兼ねも誰の影響もありません。これは自由で気楽です。
2つめは、家賃がもったいないからです。
結婚して子どももできて家族構成がほぼ固まり、夫婦ともに自営業なので転職や転勤などで転居を迫られる可能性も低い。また、保育園の待機児童や学区の問題などもありますし、銀行や証券会社など住所変更しなければならないものも多く、荷物も多い。これは時間・労力・精神的にも大変なので、よほどの理由がなければ転居は考えたくない。子どもが高校を卒業するまでなど、ある程度の長さで定住する可能性が高い。
これが賃貸で、仮に家族4人で家賃月額20万円であれば、年間で240万円。2年ごとの更新料を含めると20年間で5000万円も払うことになります。しかしこれらは垂れ流されていくだけで、何も残らない。
一方、5000万円の物件を住宅ローンで買えば、同じ月額負担が20万円でも、金利1%で24年めにローンの完済が可能です。
都市部であれば、24年後は少なくとも2000万円ぐらいの値段では売れるでしょう。売らなくてもローン返済がなくなれば、以降の住居費はぐっと安くなります。
自由と経済性という2つの理由で持ち家に舵を切りましたが、それは私の場合。周辺環境とか子どもの学校の学区とか、立地のブランドを優先する人もいると思います。
何を重視するかは人それぞれですから、自分がどのような暮らしを望むかで判断することになります。
■地方や郊外なら「一生賃貸派」も成り立つ
一生賃貸派も増えているようですが、成り立つ可能性はあると思います。それは、地方や郊外への移住です。
地方や郊外に行けば家は余っており、激安の家賃で住めます。人口減少が叫ばれていますが、死者数内訳の多くは高齢者で、彼らの家のほとんどは持ち家です。子は不便な場所の実家は継ぎませんから、親が亡くなり相続で引き取っても買い手が現れず持て余します。
なので激安の家賃で借りられる可能性が高く、これなら年金が多くなくても十分賄えるでしょう。
しかし、地方や郊外は車がないと買い物も病院へ行くのも不便で、高齢になると運転も不自由になるから困るのでは? という意見もありますが、買い物の不便さはネット通販やドローン配送で解消されます。また、あと10~15年もすれば、自動運転車によって自分で運転しなくても自動でどこにでも行けるようになると思います。
なので現役を退いたあと地方に移住することで、一生賃貸でも暮らすことが可能になる、というのが私の予想です。
■都市部で「一生賃貸」は厳しい
ただし、便利な都市部で暮らそうとすると、一生賃貸は厳しいかもしれません。
そもそもの家賃が高いので、限られた年金の中から捻出するのはかなりの負担だからです。また、孤独死などを恐れて大家さんが一人暮らしの高齢者に貸すのを渋る可能性が高くなります。すると、大家が契約の更新時に値上げしてくるとか(値上げが嫌なら退去してくれて構わないから)、そもそも貸してくれないということが起こり得ます。家賃のせいで生活がカツカツになるのは本末転倒ですし、値上げで払えなくなってほかに移りたくても貸してくれないという状況はなかなか辛いでしょう。
■「老後の備え」として持ちたいマイホーム
そこで老後も都市部に住みたいという場合は、現役のうちにマイホームを買っておくこともひとつの手です。仮に老後にお金がなくても、とりあえず住むところには困らないというのは、ひとつの安心材料だからです。
定年退職と同時にローンの返済が終わるようにしておけば、多少は修繕費がかかったとしても老後の住居費はかなり抑えられます。持ち家は負債と言われることもありますが、こう考えれば「老後の住居費の前払い」と言えるでしょう。
今は住宅ローンの金利は優遇されていますし、ローンを組めば通常は団信(団体信用生命保険)に加入しますから、生命保険の代替にもなり得ます。住宅ローン控除も受けられますから、節税にもなる。
さらに利便性の良い場所であれば、売ることも貸すこともできるし、リバースモーゲージ(自宅を担保にお金を借り、自分が死んだら金融機関がそのマイホームを売却して資金回収する仕組み)も使える可能性が高まりますから、老後の選択肢は増えるでしょう。
■マンションの場合は「管理費+修繕積立金」に要注意
ただしマンションの場合、修繕積立金は一般的に徐々に高くなりますから、ローンを完済しても、管理費+修繕積立金で結構な金額が毎月かかります。
また、大規模修繕のために一時金を徴収されるケースもありますし、老朽化しても建て替え問題の協議が難航しているマンションもあり、注意が必要です。
さらにマンションは多種多様な人が住んでいますから、住人で構成されている管理組合が紛糾することもあります。
また、将来転居の必要に迫られたときにマイホームが足を引っ張らないように、「貸せる」「売れる」ような場所を選ぶことです。
家を買うときは、その物件を貸したらいくらの家賃で貸せるか賃貸ポータルサイトで相場を調べ、住宅ローンの返済額+諸経費(固定資産税、管理費、修繕積立金)の額と比べてみる。その差が小さいとか、家賃のほうが高くてむしろプラスになるという物件のほうがよいでしょう。仮に何らかの理由で転居しなければならないとか、住宅ローンの返済が苦しいといった場合でも、家を売ることなく所有し続けることができます。それに、貸せる物件は売れる物件でもあります。
■郊外の家が「安い」とは限らない
家を買うときに便利な都心や駅近は値段が高いから、郊外の手が届きやすい金額の家にしようと考えるかもしれません。
その際に意識したいのは、住宅ローンの返済額だけで判断しないことです。
たとえば郊外の新興住宅地に手ごろな家を買ったけれど、子どもが都心の私立校に通うようになった。その際、通学定期がべらぼうに高く、3カ月定期で都内のワンルームマンションが借りられるほどの金額になった、ということが起こりえます。
実際、新路線と共に開発された千葉県郊外のあるニュータウンでは、東京駅までの通学定期が1カ月で2万円。これで子どもが2人なら4万円です。もちろん通常の乗車運賃も高く、往復で2000円以上。
確かに郊外に行けば行くほど家は安く買えますが、これではいったい何のためにわざわざ通勤通学にも不便な郊外に家を買ったのか、ということにもなりかねません。
会社員なら通勤定期代は会社から支給されるため気にならないとしても、定年退職後は自腹ですから、都心に出るのが億劫(おっくう)になり、行動範囲が狭まる可能性があります。
■持ち家を買うときは「生活コスト全体」を考えよう
また、子どもの医療費助成、私立保育園補助や高校の学費補助など、自治体によって補助金制度や助成金制度が異なります。
そのため、都市部であれば受けられたはずの助成金が、郊外の市区町村では実施されておらず自腹、あるいは金額が下がるということも起こります。たとえば医療費は東京23区は高校生まで無料ですが、私が住んでいる自治体は1回の受診で200円かかります。無料は6歳までという自治体もあります。
すると、もっと便利な場所でもっと値段の高い家を買っても、実は月々の実質的な支出は変わらない、ということもあり得るでしょう。
つまり持ち家を探す場合、単純に家の購入価格や住宅ローンの返済額だけで判断するのではなく、生活コスト全体を俯瞰(ふかん)しておく必要があるということです。
もちろん、住まい選びは金銭面だけではありませんので、そこが気に入ったので負担は気にならないということであれば、まったく問題はありません。
以上が、お金のプロが提案する「マイホームか賃貸か」の考え方です。賢く上手なお金の使い方を学び、豊かな老後につなげましょう。
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米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。
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(米国公認会計士 午堂 登紀雄)
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