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「勉強しないとゲームさせないよ」は最悪…子供に絶対に言ってはいけない「しつけのフレーズ」

プレジデントオンライン / 2023年7月30日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thai Liang Lim

子供に「しつけ」は必要なのか。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんは「厳しく叱ったり、罰を与えたりするしつけは、将来、子供の心身に深刻な影響を及ぼす恐れがある。子供が自ら行動できるようサポートすることが重要だ」という——。

※本稿は、星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■子供を厳しく叱る「しつけ」は必要なのか

子どもが言うことをなかなか聞いてくれない。

なんでも自分勝手にやってしまう。

宿題やお手伝い、やるべきこと、やってほしいことは、嫌がってそっちのけ。

どれもよくある子育ての悩み。どのように対応するのがベストなのでしょうか? 主な解決法には大きく分けて2つの方向性があり、どっちもそれらしいので、誰もが悩まされてしまいます。

一つは「しつけ派」のアプローチです。

子どもが言うことを聞かない場合、厳しく叱ったり罰を与えたり。悪い行動は悪いとしっかりと教え、罪悪感を植え付けることで、子どもが正しいことを理解し、成熟した大人になっていく。しっかりした「しつけ」が子どもの将来のためになるーー。

うーん、ちょっと極端かもしれませんが、やはり、これはこれで、とっても理にかなっているように聞こえます。

叱りつけたり、罰を与えたりすることによる、子どもの心への影響も心配にはなるものの、実際に「しつけ派」のやり方で、子どもの行動が変わったり、親の言うことを聞いてくれるようになるのも事実。これは、かなり説得力がある子育て法です。

■「しつけ派」か「のびのび派」か…

これと対極的なのが「のびのび派」のアプローチです。

子どもが言うことを聞かないのは、子どもの自我が表れているから。それだけに、子どもの自発的な気持ちを無視したり、行動を拘束し過ぎてはいけない。叱ったり、罰を与えて力ずくで抑えつけたりするなんて、もっての外。子どもの気持ちや選択をできるだけ理解、尊重することが重要で、どうしてもいけないことは、子どもに寄り添って、根気強くダメなことを説明すべき――。

うーん、これも悩ましい! 子どもに寄り添って、子どもの気持ちや選択を尊重したい。その場その場では、叱ったり罰を与えたりする方がラクだけど、長期的な子どもの成長から見ると、辛抱強く寄り添って、子どもの自律性を助けてあげた方が理想的な気がする。やり通せる自信はないけれど……。

「しつけ派」? 「のびのび派」?

どちらが子どもの将来のためになるのでしょうか?

実は、これまでの研究で「しつけ派」か「のびのび派」か、どちらかの方法に偏ってしまうと、子どもの将来に悪影響が出てきてしまうことが明らかになってきました。

■できる子の親は自然と避けている子育て法

子どもに「ああしろ」「こうしろ」と支配的なプレッシャーをかけて、脅しや叱り、時には力ずくで子どもをコントロール。「ああできるように」「こうできるように」と子どものことを思えば思うほど、ついついがみがみと口を出してしまうのも親心です。

そうした「しつけ派」の子育ては、「コントロール型(controlling)」の子育てと呼ばれています。

この「コントロール型」の子育て。実は子どもの心や体にとって、多大なる悪影響につながることがわかっています。なぜそうなるのでしょうか。

人間の心は、根本的に「つながり」「できる感」「自分から感」を求めています。それらが満たされると人間の心が満たされて、良い精神状態でいられます。

しかし、「コントロール型」の子育てで子どもに「ああしろ」「こうしろ」と指図してしまえば、心の三大欲求の一つである「自分から感」をかき消すことになってしまいます。

そうなったときの子どもの反応には、大きく分けて2つのパターンがあります。

一つはプレッシャーに抑え込まれながら我慢して従うパターン。このパターンは、親のコントロールを嫌々ながらも心の中で我慢して受け入れているので、「内面化(internalization)」と呼ばれています。子どもが親のコントロールを内面化したときは、不安症やうつ病、摂食障害などのリスクが高まってしまうことが知られています。

もう一つが親のコントロールを拒否するパターン。これは、親のコントロールを受け入れないので、「内面化」に対して、「外面化(externalization)」と呼ばれています。そして、親のコントロールを子どもが外面化すると、子どもの感情のコントロールが難しくなったり、反社会的な行動につながります。

つまり、どちらのパターンでも、子どもの将来には悪影響になるのです。このように、「しつけ派」の子育てをやり過ぎると、子どもの心や体、社会的リスクにつながってしまうことが最新の研究で明らかになってきています。

児童虐待
写真=iStock.com/solidcolours
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/solidcolours

■良かれと思ってやりがちな最悪の子育て習慣3つ

「しつけ派」の子育てをやり過ぎてはいけないことがわかりました。

では、具体的にはどういうところに、気を付けていったらいいのでしょうか?

まずは、コントロール型子育てには3つの典型的なパターンがあることを押さえておきましょう。

【パターン1】罰で脅す

「勉強しないと、ゲームさせないよ」
「ケンカしたら、おやつ抜きだからね」

忙しい日々の子育ての中で、こんな言葉がついつい出てしまうときもあるかもしれません。子どもに何かをやらせようと罰として楽しみを取り上げたり、嫌がることで脅す。道徳的にも脅しがよくないのは当然ですが、科学的にも子どもの心やパフォーマンスに悪影響が出るので、注意して避けるのが得策です。

【パターン2】過度な期待でプレッシャーをかける

「●●ちゃん○○が得意だから、クラスで1番になれるよ!」

子どもの成績や結果を純粋に褒めてあげたいけれど、ついつい期待混じりになってしまうことがあるかもしれません。褒め言葉に結果や比較を持ち出すのはダメだということは、本書(第2章)で解説した通りです。さらに能力や比較で褒めなかったとしても、子どもに親の期待を押し付けるのは厳禁です。

「○○ちゃんならできるから、やらないと!」

親からの高いパフォーマンスの期待を表現することで、子どもにプレッシャーがかかってしまいます。その結果、自分から進んで取り組もうとする「自分から感」ではなく、親の期待からのプレッシャーにコントロールされてしまうようになるのです。

このように、過度の期待でプレッシャーをかけるのは「コントロール型」の子育ての典型例の一つです。

子どもに期待すればするほど、プレッシャーによるコントロールにつながってしまいがちです。良かれと思って声をかけても、科学的には全く逆効果になるので要注意です。

窓ガラスに触れる女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■大事なのは、コントロールではなくサポート

【パターン3】罪悪感を植え付ける

「何やってるの。ダメでしょ。なんでわからないの?」

子どもが繰り返し言うことを聞かずにいけないことをして、ついカッとなり感情的に叱りつけてしまう。

よくある子育ての風景のようですが、このやり方が逆効果だということが、これまでの心理学の蓄積から明らかになりました。そうした声かけで、子どもが、罪悪感や羞恥心にコントロールされるようになってしまい、前述のようなコントロール型の子育てによる心や体のリスクにさらされてしまうのです。

ダメなことをしっかり伝えることと、強い罪悪感や羞恥心を植え付けてしまうように感情的に叱りつけることは違います。

罪悪感や羞恥心のコントロールではなく、子どもが自分から自発的に考えて、やらない選択ができるようにサポートをすることが必要なのです。

■脅しや罰、お小遣いによるコントロールは逆効果

言っていることはわかるが、単なる理想論ではないか、と思われる方もいるかもしれません。確かに、日頃から気を付けてコントロール型の子育ての3つのパターンを避けようとしていても、ついつい罰やプレッシャー、罪悪感で脅してしまうこともあるでしょう。

たとえば、食事中のスマホ。

いくら説明しても、毎日食事をしながらスマホを触る子ども。優しく説明しても、やめてくれない。らちが明かないので、強く叱っていく。そうしているうちに、食事中は諦めてくれた――。

強く叱ったり、脅したりすると、子どもが実際に言うことを聞いてくれるようになるので、子どもの良い習慣のために、とついついコントロール型の子育てをやってしまうこともあるでしょう。

また、コントロールは脅しによるものだけではありません。たとえば、子どもが宿題をやってくれない。自分から机に向かって、やるべき宿題や勉強をしたときに、大げさに褒めたり、お小遣いをあげる。ご褒美作戦で、うまく子どもの習慣を変えられた親も多くいます。

それもそのはずで、脅しや罰、お小遣いによるコントロールは、実際に、かなり効果的に、子どもの行動を変えてくれます。それは、前述した「外発的やる気」が一時的には非常に強く働くからに他なりません。

■子供をやる気を引き出すにはどうすればいいのか

どうしても子どもがやるべき行動をしてくれないとき、コントロール型の子育てをしてしまうこともあるでしょう。それ以外に方法がない場合もあるかもしれません。

しかし、外発的やる気は長期的には、子どもに悪影響を及ぼします。コントロール型の子育てが短期的に効果的だったとしても、頻繁に長期的にやってしまうのは好ましくありません。自分がコントロール型の子育てを「やってしまった」「やってしまっていた」などと気づいたら、すぐに意識して、その頻度を減らしていく努力をしなくてはいけません。

さて、コントロール型子育てが、極力避けるべきダメ子育てであるならば、「のびのび派」の子育てはどうでしょうか?

これが、まさに対照的! 「のびのび派」の子育てで、子どもの自律性、つまり、「自分からやろうとする気持ち」をサポートしていくと、たくさんのいい効果があることがわかっています。

勉強している子供の手
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

・幸福感や自己肯定感が上がる。
・社会貢献の気持ちが増す。
・好奇心とやる気が強くなる。
・自信がアップする。
・成績が上がる。
・学校が好きになり、より頑張る。

このように、「のびのび派」の自律サポート型子育ては、子どもの心の安定と健全な社会性を育むだけでなく、成績や学校でのパフォーマンスまでアップさせるのです。

■「自分から感」を持てるようにサポートする

ではなぜ、自律サポートが、子どもに良い影響を与えるのでしょうか? それはズバリ、「自律性」が私たちの「心の三大欲求」の一つだからです。

「自分から感」を持てるようにサポートすることで、子どもの心が安定し、やる気や自信につながり、その結果、パフォーマンスも良くなり、「できる感」にもつながります。さらに、親が子どもに自律サポートを心がける上で、子どもの意思を尊重する姿勢を示すことができ、良い親子の「つながり」を育むことができるのです。

つまり「自律サポート型」子育ては、人間の「心の三大欲求」を全て満たして、子どもの心にポジティブな流れを作ってくれるのです。

うーん、なんだか腑に落ちない。たとえば、子どもに自分勝手にやらせては、協調性がなくなってしまうのではないか?

ここで注意すべきは、「自律心」は、「自分勝手」や「全く制限のない自由」を意味するわけではないということです。

■「のびのび」と「自分勝手」は全くの別物

実際に、自分の意思で好んで周りと協調性を持ちながら他の人たちとコラボしたり、自分から納得した上で、進んで積極的にルールに従うことだってあるでしょう。

星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)
星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)

たとえば、赤信号で止まるのはルールだからという以上に、止まらないのは危険だと納得しての自分のチョイスなのです。ゆえに、「自律性」「自分から」と、「自由」「自分勝手」は全く別の概念です。

では逆に、子どもの自律を促したら、かわいそうだという見方はどうでしょうか? まだまだ周りの助けが必要な子どもが、誰にも頼らず自分自身でやるなんて、無理なのではないか。そんなふうに感じることもあるかもしれません。

こちらも、よくある疑問ですが、先ほど同様、「自律性」と「周りを必要としない」「独立している」などの考え方は区別して考える必要があります。

たとえば、自ら望んで人からの助けを得たり、自分で積極的に周りと協力して、やりたいことを成し遂げたりすることはよくあることです。そういった行動も自分からの意思に基づいた、自律的な行動といえるのです。

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星 友啓(ほし・ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
哲学博士、EdTechコンサルタント。1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士を修了。同大学哲学部の講師として教鞭をとりながらオンラインハイスクールのスタートアップに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。全米や世界各地で教育に関する講演を多数行う。著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)がある。

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(スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長 星 友啓)

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