「送ってわずか30分後の返信メールにしびれた」大企業CEO直筆の人たらしメール349字全文掲載
プレジデントオンライン / 2023年7月23日 11時15分
※本稿は、岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■一流は「よくできたよね」「OK」とはホメない
本稿でここからは人が動く「世界最高のほめ方」のテクニックを詳しく紹介していきますしょう。
「ほめる」のが難しい原因のひとつは、「ほめる=相手に媚びて、美辞麗句的な言葉を並べ立てること」と誤解されがちなところです。
しかし、「ほめる」とは、決して相手のよさや強みを大げさに賞賛することではなく、じつはもっと幅広い範囲の言葉を総称しています。
広義の「ほめる」の基本動作は「認める」「共感する」「ほめる」「感謝する」。この4つの内容を組み合わせることで、深みのある、気持ちのこもった、真の「ほめ言葉」になるのです。
それぞれの言葉から一文字ずつとって「みかんほかんの法則」と名付けました。
一つひとつ解説していきましょう。
■「認める」が最初のステップ
まずは、努力や変化に気づくことから
最初のステップは「認める」。何より大切なのは、子どもや部下、同僚を見守り、よく観察し、その努力や変化に気づいてあげることです。
最近、なんだか目の色が違うね
一生懸命、がんばっていたもんね
プロジェクト、順調みたいだね
努力の成果が出ているみたいだね
といった具合です。さらに、もう少し具体的に指摘すると、より効果的です。
↓
おもちゃを元の場所にきれいに戻せたね
よかったね
↓
昨日のプレゼン、デザインがとっても見やすくなっていたよね
OK
↓
お客様へのあいさつが、とっても気持ちがこもっていて、よかったね
「なるべく具体的に」と「『なぜなら』を加える」を応用することで、次の行動に結びつきやすくなります。ちょっとした変化や努力に気づき、こまめに声をかける。これで、相手の気分も上がり、職場や家庭の雰囲気も格段によくなります。
■「共感」で信頼関係を貯金する
人は誰もが「認められたい」「所属したい」
2つめが「共感」です。
コミュニケーション、たとえば、人とどうしたら仲良くなれるか、理解し合えるかを研究する中で、つくづく感じるのが、人はやはり「動物」であるということです。
進化はしたけれど、根本的なところで、「群れをつくり、身を守ってきた」長い歴史があるのです。だからこそ「人に認められたい」「群れに所属したい」という強い欲求を持っています。その共同体感覚を醸成するのが「共感」です。
自分の気持ちをわかってくれて、理解してくれて、認めてくれる、そんな人に心を開きたくなりますよね。感情を共有する「共感」は、相手の信頼を獲得するのには非常に重要なステップです。
男性に「雑談や会話が不得手」という人が多い理由のひとつに、この「共感」が苦手であるということが挙げられます。自分の感情を認めたり表現したりするのに躊躇(ちゅうちょ)する人が、とても多いのです。
喫茶店やレストランに行って、女性同士の会話を聞いてみてください。「かわいいね~」「ひどい」「許せない」「かわいそう」「わかる!」「私も!」……。
共感言葉のオンパレード。そうやって、お互いに共感し合い、「自分の気持ちをわかってくれた」と気持ちよく、雑談が進んでいくのです。
と言われるより、
と声をかけてもらえるほうが、「自分のことをわかってもらえた」と思いますよね。
![男女がしっかりと手をつないでいます](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/d/1200wm/img_cddc5a1e33350b83965a9c1cceff5ff7564751.jpg)
■「共感」して、相手の気持ちに寄り添う
「共感」は「ほめる」の大切な要素です。
「親身になって、誰かが自分のことを考え、寄り添ってくれている」と感じることほど、嬉しいことはないからです。
嬉しいよね
感動したよね
わかるよ
忙しいのに、大変だったんじゃない?
難しかったんじゃない?
と相手の気持ちに寄り添う。同時に、相手のポジティブな行動によって生じた自分の気持ちを伝えてみましょう。
■ホメ名人は「素晴らしいね」「頭いいね」とは言わない
「認める」「共感する」のあとは、いよいよ、本丸の「ほめる」です。
ほめるときは、人が簡単に変えることができない「特徴」より、「行動」をほめたほうが相手のやる気を刺激しやすいと言われます。知能や運動神経など固有の能力よりも、人の努力や戦略、プロセスをほめたほうがいいということです。
ある研究によれば、こうした「プロセスほめ」は内的なモチベーションを高める一方で、「人ほめ」では、子どもたちが失敗に固執したり、恐れたり、簡単にあきらめたり、自分を責めたりする傾向が出やすいこともわかっています。
■「鉄板ほめ言葉」は要注意
すごいね
エライね
素晴らしい
いい子ね
おりこう
頭がいいね
という「鉄板ほめ言葉」も要注意。たんなる「人ほめ」になってしまっているからです。そこで終わらせず、プラスアルファで、評価の理由を指摘してあげましょう。ちょっとした言い換えで、「人ほめ」を「プロセスほめ」にすることができます。
↓
とても表情が豊かな絵を描いたね
頭がいいのね
↓
一生懸命、取り組んだのね
数学が得意なんだね
↓
この難しい問題をよく解けたね
つまり、
と決めつけるのではなく、
というように、形容詞や名詞を動詞にして、成果や実績をほめてあげるといいということですね。
![手をあわせる女性のグループ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/9/1200wm/img_a9de0f8567d8f4407b4d44d1aa815680625201.jpg)
■「結果」よりも「プロセス」をほめる
「『大きな言葉』を『小さな言葉』に、『抽象』を『具体』に」手法は、ほめたり感謝したりすることにも効果的です。
![岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/c/1200wm/img_9c81ee598107bed3e4e166a5086cf951319496.jpg)
「何か、大きな成果を出したら、ほめる」というよりは、日ごろから相手の行動をつぶさに観察し、小さな進化や努力に気づき、すぐに、具体的に、気持ちを込めて認め、ほめていくのです。
「テストで学年トップになる」「仕事で大型受注する」などゴールを高く設定しすぎるあまり、働きや成果を認めたり、ほめたりする回数が極端に少なくなってしまっているというのが、日本人の特徴です。
高すぎる基準・ハードルを下げて、ほめる頻度を増やすようにしましょう。先ほど、「『人ほめ』よりも『プロセスほめ』」の話法を紹介しましたが、「結果」よりも「プロセスほめ」もおすすめです。
大きな結果だけではなく、途中の細かいプロセスに注目し、小さな変化や進化に気づき、承認していくのです。
ゴミを出してくれて助かった!
お皿をとってもきれいに洗ってくれたね
ジェスチャーも自然で、堂々としていたね
今日は、声がよく出ていたね
といったように、ほんの小さな変化も見逃さず、承認し、感謝し、ほめる。小さな肯定の積み重ねが、相手のやる気を引き出していくのです。
■資生堂・魚谷会長の「世界最高のほめメール」
これまで多くの社長と一緒にお仕事をさせていただきましたが、そのリーダーとしての風格が強く印象に残っているひとりが、資生堂の魚谷雅彦会長CEOです。
前作『世界最高の話し方』(東洋経済新報社)の出版にあたり、私は「本を送らせていただきたい」というメールを彼に送りました。すると、メールの送信からなんと30分後に、こんな返信が来たのです。
ご連絡ありがとうございます。
お元気そうで何よりです。
もちろん覚えています。日本にはスピーチのコンサルタントはいないことはないですが、グローバル視点で、英語ベースの戦略コミュニケーションをデザインして、実務指導できる人はあまりいない中で、岡本さんと接点ができたことはとても嬉しく思ったので、よく覚えています。
この危機を乗り越えるためには、コミュニケーションの量と質が重要です。とくにリーダーのあり方、オープンなダイアログ、インスパイアする発信……日々努力の最中です。そういうときに今回のご出版は、非常に的確なタイミングではないでしょうか。
ぜひ読ませていただきますし、また当社でもお世話になることもあるかと思います。
会社の方にお送りいただけると幸いです。
ぜひ役員みんなにも買わせて読ませます。
どうですか?
「認める」「共感する」「ほめる」「感謝する」(みかんほかん)、しかも「すぐに」「具体的」で「気持ちがこもっている」。
このすべての要素が入ったほめ方のお手本ですよね。感服しました!
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コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。
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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)
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