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神ゼウスが「パンドラの箱を開けるな」と言って、底に希望だけを残したのは「人間へのイヤがらせ」だった

プレジデントオンライン / 2023年8月2日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/rabbit75_ist

ギリシャ神話には「ぶっ飛んだエピソード」がたくさん登場する。新刊『ぶっ飛びまくるゼウスたち』(実業之日本社)から、「パンドラの箱に希望だけが残されていた理由」のエピソードを紹介しよう――。

※本稿は、こざきゆう、真山知幸(著)、庄子大亮(監修)『ぶっ飛びまくるゼウスたち』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■天ではなく地上で暮らす変わった神プロメテウス

プロメテウスは、ミョーに人間の味方をする、ちょっと変わった神様だ(ふつう、神様は人間にバツをあたえたり、たまに味方したりする)。ギリシャ神話では「オリュンポス12神」と呼ばれる神々が有名だけど(ゼウスもそのひとり)、その前に世界を治めていたのが、「ティタン神族」だ。プロメテウスは、そのティタン神族の子孫にあたる。

「オリュンポス12神」が世界を治めたとき、プロメテウスがどうしていたか、と言えば、すでに天ではなく地上で暮らしていた。そこからして、すでに人間っぽい。

そして、ある重要な問題をゼウスと話しあうときにも、めちゃくちゃ人間をひいきして、伝説になっている。

その話しあいとは、「けものの肉を神と人間でどうわけるか?」というもの。「神様だったら人間に肉をくれても、いいじゃん……」と思っちゃうけど、神様もそこはしっかり食べたい。

そんなときもプロメテウスは「なんとか、人間に良い肉を食べさせたい」と考えたというから、人間からしたらプロメテウス様様って感じだ。そしてプロメテウスは、人間のためにゼウスをだまそうとまで考えた。気持ちはうれしいけど、だいじょうぶ?

■鍛冶の神のもとから火種を盗み出して人間に与えた

プロメテウスがゼウスに見せた肉は2つ。ひとつは「骨を脂肪でくるんだもの」、もうひとつは「肉を皮でくるんだもの」。中身が肉なんだから、2番めのほうがいいに決まっているけど、プロメテウスは骨をうまそうな脂肪で包みこんでいたので、こっちのほうがおいしそうに見えた。頭いいな……。ゼウスはまんまと、「骨を脂肪でくるんだもの」を選んでしまう。

そのせいで、神々のぎしきでは、骨だけがささげられるようになったんだとか。その一方で、人間たちは肉を食べられるようになったのである……ありがとう、プロメテウス!

うまくゼウスをだましたプロメテウスだが、人間のことを思って、さらにがんばってくれる。

というのも、だまされたゼウスはムカッ! その腹いせに、人間に「火」をあたえなかったのだ。

火がなければ、食材を温めることも、寒いときにあったまることもできない……。人間の味方であるプロメテウスは当然、これを気の毒に思った(いつも、ありがとう!)。

人間のためになんとか火を手に入れようと、かじの神で火をあつかうヘパイストスのところへいく、プロメテウス。そこで、火種をぬすみ出した。そこまでして、人間に火をあたえたのである(なんと、やさしい!)。

ニューヨークのプロメテウス像
写真=iStock.com/MichaelUtech
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MichaelUtech

■「永遠に肝臓をついばまれる」ゼウスが与えた罰

だが、プロメテウスはこのことで、ゼウスを完全に怒らせてしまう……。

「お前には、つらいバツをあたえなければならんようだな!」

ゼウスによって、プロメテウスは、東の果てにあるコーカサスの山の岩にしばりつけられてしまう。そして、オオワシにかんぞうを食べられるというバツが、あたえられることに……。

しかもそのかんぞうは、ゼウスの力によって毎日、元通りに治る。つまり、プロメテウスは永遠に痛みに苦しめられることになったのだ。プロメテウスよ、人間のことを思ってそこまで……。

ちなみに、ギリシャ神話には、他の神話とは、ちょっとちがうところがある。それは「人間がどうやって生まれたか」について、これが正しい! という説が決まっていないところだ。

「プロメテウスが土と水から人間を作った」という人がいたり、地域によっては「人間は大地から生まれた」と考えたりするところもあったけど、基本的には「人間は最初からいたよー」というのが、ギリシャ神話のスタンス。

ギリシャ神話の神々がやたらと人間っぽいのは、「人間ありき」の世界観だからなのかもしれない。

■「パンドラの箱」は火を使った人間への罰だった

火を盗んで人間にあたえたことで、やたらと人間をひいきしてくれる神様・プロメテウスは、ゼウスからバツをあたえられてしまった。

しかし、ゼウスの怒りはそれでも、おさまらない! プロメテウスだけではなく、火を使った人間に対しても、バツが必要だと考えたのだ。

そこでゼウスは「パンドラ」という女の人を、工芸とかじの神・ヘパイストスに作らせた。これが、「人類最初の人間の女」。それまで地上には、男しかいなかったのだ。

ゼウスはパンドラとともに、ツボを人間界に送りこんだ。そして、パンドラにはこう伝えた。

「ツボをけっして開けてはならないよ」

地上に送られたパンドラは、プロメテウスの弟・エピメテウスと暮らし始める。だが、しばらくすると、パンドラはツボのことが気になって仕方がなくなってしまう。

「何が入っているのかしら。ちょっとくらいなら、開けてみてもバレないわよね……」

うーん、すごくイヤな予感がするけど……。

■「開けるな」と言えば必ず開けると見越していた

「開けるな」と言われると、開けたくなるもの。ゼウスはそこまで考えて、パンドラにあえて「開けるな」と言ったのだ。

こざきゆう、真山知幸(著)、庄子大亮(監修)『ぶっ飛びまくるゼウスたち』(実業之日本社)
こざきゆう、真山知幸(著)、庄子大亮(監修)『ぶっ飛びまくるゼウスたち』(実業之日本社)

ゼウスは一体、ツボに何を入れたのか。それは、病気や不幸など、あらゆる災いだ。トンデモないものを、ぶちこんだものだ。

そうとも知らずに、パンドラがツボを開けた瞬間、中に入れられていた病苦などが飛び出して、世界に広まってしまった! 人間が病気になったりして死ぬのは、そのせいなのだ。

つまり、パンドラがツボを開けるまでは、人間には病気も不幸もなかったということになる。あぁ、開けないでおけば……。ゼウスのたくらみによって、人間は色々な不幸に苦しめられながら、生きることとなった。

これが「パンドラのツボ」の話だが、今は「パンドラの箱」という表現で広まっている。「開けてはいけないもの、知ってはいけないこと」のたとえだ。

さて、いきなりツボからあらゆる不幸が飛び出て、あせったのはパンドラである。あわてて、ツボの口をふさいだ。すると、「希望」だけは中に残り、人間の手元に残ることになった。

ゼウスのやさしさ? と思うかもしれないが、いやいや! よく考えてみてほしい。私たちは「こんな風に、なりますように」とたくさん希望を持つけど、叶うことは本当に少ない。だから、そのたびにガッカリしてしまう。希望が見えるから、災いがより強調される、ということだ。

さすが、何でもできるゼウス……! イヤがらせの仕方もぶっ飛んでいる。私たちができることは、何度ガッカリしても希望を持ち続けること。そしたら、ゼウスを「希望を残すんじゃなかった……」と後悔させることができる、きっと。

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こざき ゆう 児童書ライター、作家
児童書ライター、作家。計14万部の『からだのなかのびっくり事典』シリーズ、4か国で翻訳の『Dr.ちゅーぐるの事件簿』など児童書中心に100冊以上執筆(共著含む)。

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真山 知幸(まやま・ともゆき)
著述家/偉人研究家
1979年兵庫県生まれ。2002年同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作50冊以上。近刊に『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』(PHP研究所)、『日本史の13人の怖いお母さん』(扶桑社)。

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庄子 大亮(しょうじ・だいすけ)
西洋神話研究者
1975年、秋田県生まれ。西洋神話研究者。現在、関西大学等で非常勤講師を務める。著書に『世界の見方が変わるギリシア・ローマ神話』(河出書房新社)。

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(児童書ライター、作家 こざき ゆう、著述家/偉人研究家 真山 知幸、西洋神話研究者 庄子 大亮)

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