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コーヒーで眠気を覚まそうとしてはいけない…午後の眠気の根本原因を解消する"計画仮眠"4つのポイント

プレジデントオンライン / 2023年7月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Karisssa

日中の眠気を解消するにはどうすればいいか。作業療法士の菅原洋平さんは「コーヒーなどのカフェインは眠気覚ましの作用ではなく、脳が眠いまま眠れなくなる作用があるだけ。むしろ翌日の眠気の原因になる。眠気の根本原因を解消するには、座ったまま目を閉じ1分だけでも仮眠するといった、『計画仮眠』が必要だ」という――。

※本稿は、菅原洋平『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』(自由国民社)の一部を再編集したものです。

■午後の会議の眠気は「昼食後だから」は大間違い

14時から始まった会議で報告を聞いていたら、ふっと意識が飛んでいた、なんていうことはありませんか? 13時から15時に講義や会議があると、その時間の眠気を我慢するのが大変ですよね。なぜ、この時間は眠くなるのでしょうか。

昼食をとって満腹になったからでしょうか。

午前中の仕事を終えて気が緩んだからでしょうか。

いえいえ、午後の眠気は個人の問題ではありません。

実は、午後の眠気は、私たちにもともと備わっている睡眠――覚醒リズムの働きによるものです。

睡眠――覚醒リズムでは、脳の働きを保つために、1日に2回、大脳を積極的に眠らせるシステムが働きます。

起床から8時間後と22時間後に眠気が起こるので、朝6時起床の場合、1回目は昼14時辺り、2回目は明け方4時辺りです。

午後は昼食の有無に関係なく眠くなり、たとえ徹夜をしていたとしても、明け方4時ごろになると急に眠くなります。

図表1は、イタリアで1993年から1997年の5年間に発生した高速道路の事故件数と発生時刻のグラフです。このグラフを見てみると、昼の14時と明け方の4時に事故件数が増えていることがわかります。

私自身も、様々な現場で研修をしてきた中で、産業事故、交通事故、医療事故、スポーツのけががこの時間帯に多いことを教えていただきました。1日に2回眠気が起こることは、防ぎようがないことなのです。

【図表1】高速道路の事故件数と発生時間
出典=『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』

では、眠気とは作業を邪魔するネガティブな現象なのでしょうか?

そうではなく、眠気とは、覚醒し続けて疲弊した神経を修復し、さらに高いパフォーマンスを発揮させるための、脳による脳のための戦略的なシステムです。

より正確に作業するためのポジティブな現象なのです。

眠気が脳の修復に使えるとわかれば、やみくもにこらえるだけではなく、上手に使いこなそうと発想できます。

本稿では、脳の働きを客観的に管理するために「眠気」のメカニズムを使いこなす方法をお伝えしていきます。

■1日に2回眠くなる

生体リズムの最高中枢は脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)です。

これは、視交叉上核を取り去る手術をされると、生体リズムがなくなったという実験が基になっているのですが、のちに、視交叉上核が取り除かれても、規則的に眠ったり起きたりする睡眠――覚醒リズムが出現することが明らかになっています。

このことから、マスタークロックである視交叉上核の役割は、生体リズムの発信源なのではなく、環境と私たちの行動、それにともなう体内の生理的な変化を統合することだと考えられています。

睡眠――覚醒リズムは、1日に2回の眠気をもたらしますが、そのタイミングは、深部体温のリズムや食事などのエネルギー代謝によっても変化します。新しい事実が次々に明らかになってきていますが、1日に2回眠くなることは確かです。

ではなぜ、1日に2回、眠気が発生するのかということは、これはいまだに明らかになっていないのですが、昼の仮眠を経ると課題成績が向上したり、仮眠中に不要な神経が消去されていることなどから、脳が安全に機能するための仕組みだと考えられています。

■タクシー会社の事故件数を減らした休憩時間の設定法

私は以前、都内のタクシー会社にご協力いただき、12時から14時の間に仮眠をとるように全車に無線で連絡をしてもらうという取り組みをしました。

タクシードライバーの方々は、この取り組みの前までは、経験則や乗車率を高めることを基準に休憩時間を決めていました。そして、昼の時間帯のニアミスや単独事故が一定数ありました。

それに対して、睡眠――覚醒リズムを基に休憩時間を設定した取り組み後は、事故件数が半数に減り、その後数カ月間経っても、その件数は増加しませんでした。

睡眠――覚醒リズムによる眠気は、安全で確実な仕事の妨げになりますが、その仕組みを理解して仕事のスケジュールを少し変えるだけで、より安全に仕事をするために利用することもできるのです。

■カフェインの摂取は、睡眠中の歯ぎしりを招く

眠気覚ましにコーヒーなどのカフェイン飲料を飲むことがありますか?

普段、飲まれているカフェインは、眠気覚ましになっていますか? そのカフェインが、翌日の眠気の原因になっていたらどうでしょうか。

眠気覚ましにカフェインを摂取するという認識を持っている人は多いですが、実は、カフェインに眠気を覚ます作用はありません。眠気を吹き飛ばすような作用があるのではなく、脳が眠いまま眠れなくなるのがカフェインの作用です。

私たちが朝目覚めると、脳脊髄液の中に、睡眠物質プロスタグランディンD2が溜まっていきます。目覚めた状態で時間が経過するほど溜まっていき、脳の外側を覆っている、くも膜のアデノシンの濃度を上昇させます。

アデノシンという名前は、アデノシン三リン酸(ATP)という名前で聞いたことがある人もいるかもしれません。ATPは、私たち生体のエネルギー源です。

これが日中の活動でエネルギーが燃やされて形を変え、最終的にアデノシンになって睡眠物質として働きます。エネルギーが代謝された産物が睡眠物質として働くという、とても合理的な仕組みになっています。

アデノシンは、脳の中に多く存在し神経を抑制する役割をもつGABAの働きを促進します。GABAは、脳を目覚めさせているヒスタミン神経を抑制します。この働きによって、脳は眠るのです。

このうち、カフェインが作用するのが、アデノシンがGABAの働きを促進する部分です。カフェインはこれをブロックするので、GABAによる神経の抑制が働きにくくなり、ヒスタミン神経が抑制されません。

その結果、脳に睡眠物質は溜まっているにも関わらず、眠くなくなるのです。

【図表2】コーヒーの作用
出典=『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』

ここで注意しなければならないのが、カフェインによる弊害です。カフェインは、眠気を阻害しますが、同様に夜間睡眠の質も低下させてしまいます。

カフェインの摂取により、睡眠中に歯ぎしりや食いしばりが増加することが明らかになっています。睡眠中に歯ぎしりが出現すると、マイクロアローザルと呼ばれる、自覚しない短時間の覚醒が生じて、睡眠がプツプツと途切れます。

これによって熟眠感がなくなり、昼間に眠気を催して、その対策としてカフェインを摂取する、という悪循環にはまってしまうことがあります。

脳が眠くなるまでの段階がわかると、より有効な眠気対策、快眠方法がわかります。カフェイン摂取で無理やり眠気をブロックするよりも、眠気の根本の原因である睡眠物質を減らす方法、それが「計画仮眠」です。

■起床から8時間後は眠くなる

計画仮眠を有効に活用するには、次の4つのポイントがあります。

①眠くなる前に目を閉じる

会議中に襲ってきた睡魔と闘いながら、どうにかして眠らないようにしようと頑張った挙句に、スッと意識を失う。ビクッと体が動いて目覚めたとき、ほんの少しでも眠れたにも関わらず、またこっくりこっくり船をこいでしまうことがありませんか?

眠気は、我慢すればするほど、結果的に眠かった時間が伸びてしまう、という性質があります。眠気をうまく管理するには、眠気には抗わないことが大切です。

睡眠――覚醒リズムでは、起床8時間後に眠くなりますが、その眠気のピークを過ぎると、生体リズムは徐々に覚醒に向かい、眠気は通り過ぎていきます。この波の眠気のピークのところで眠ってしまうと、睡眠の脳波が出現し、その脳波はしばらく続きます。

一度出現した睡眠の脳波は、簡単に消失することができないので、次に覚醒に向かう波をつぶしてしまい、その結果、眠い時間帯が伸びてしまうのです。

一度睡眠が始まると目覚めた後もボーっと眠気が残る現象は、スピードを上げて走っている車がブレーキを踏んでも急に止まれない慣性の法則になぞらえて、睡眠慣性と呼ばれています。睡眠も始まってしまったら急には止まれないのです。

睡眠慣性による脳の働きの低下を防ぐには、睡眠――覚醒リズムの波でまだ眠くないうちに未来の眠気を取り去るべく仮眠をする必要があります。目安となるタイミングが、起床から6時間後です。

ちょうどお昼休み頃の時間帯に当たる人が多いと思います。お昼休みは、まだそれほど眠気がないと思いますが、このタイミングで目を閉じてみましょう。

ちなみに、慢性的に睡眠不足になっている人ほど、睡眠慣性が起こりやすく、またボーっとする時間も長引くことが知られています。

不用意に居眠りしてしまい、午後の時間帯はほとんど作業ができなかった……なんてことがあったら、累積睡眠量を増やすことも必要です。

【図表3】仮眠のタイミング
出典=『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』

■自分に最適な仮眠時間の見つけ方

②仮眠時間は1から30分まで

2つ目のポイントは、仮眠時間の長さです。

仮眠時間は、「最短で1分、最長で30分」と覚えてください。「1分なんて、そんな短い時間では眠れない」と思うかもしれませんが、実際に眠る必要はなく、目を閉じるだけで大丈夫です。計画仮眠の目的は、眠るというより「脳波を変える」と考えてみましょう。

目を閉じると、脳波に8~13Hzのアルファ波が出現します。よく、リラックスしているときに出現する脳波として知られています。アルファ波は、目を閉じるだけで出現し、1分程度でも、主観的にスッキリしたという感覚をつくることができます。

仮眠の長さの目安は次の通りです。

1分~5分:主観的にスッキリしたという感覚をつくることができます。ただ、脳脊髄液に溜まった睡眠物質が分解されるには至りません。

6~15分:睡眠物質が分解されて、仮眠前に比べて、仮眠後には課題成績が向上することが明らかになっています。最適な仮眠の長さです。

16~30分:若年者や慢性的に睡眠不足の状態では、目を閉じて深い睡眠に入るまでのスピードが速いため、目覚めた後にボーっとする睡眠慣性が生じてしまうことがあります。

31分以上:夜間の睡眠で出現するはずの深い睡眠の脳波が出現してしまい、夜間の睡眠の質の低下を招いてしまいます。

この目安を基に、時間がないときは1分でも、時間があれば10分程度、休日などでたっぷり時間があっても30分は超えないようにして実行してみましょう。

分単位でタイマーをかけると、何分の仮眠が自分にとって最適なのかがわかるようになっていきます。

オフィスで実行してもらうと、「7分が一番スッキリ」「10分だといいけど12分だと起きたときにぼんやりする」など感想を教えていただきます。人それぞれなので、時間の長さはあくまでも目安として、自分に最適な仮眠時間を見つけてみましょう。

■電車での睡眠は、むしろ眠気がひどくなる

③座ったまま目を閉じる

脳の目覚めている度合いである覚醒度は、重力の方向に影響を受けます。

座って重力を上から受けている場合は、たとえ眠ったとしても、4段階(現在は3段階とする場合が多い)ある睡眠段階のうち、浅い睡眠である第2段階までしか到達しません。

頭を横にして重力が横からかかると、あっという間に3から4段階の深い睡眠が出現してしまいます。

電車で眠ったときを振り返ってみてください。ガタゴト揺られて居眠りをし、頭が横になったときにパッと起きると、頭がボーっとして重くだるい感じになったのではないでしょうか。

これは、深い睡眠が出た瞬間に目覚めさせられたという現象です。ひどい睡眠慣性で、むしろ仮眠をする前より眠気がひどくなってしまいます。

夜の睡眠の質を妨げず、睡眠慣性の出現も防ぐために、計画仮眠では座ったまま眠ったり、椅子をリクライニングさせて少し頭が起こされた状態で眠るようにしてみましょう。

机に頭を伏せるのはどうですか? とご質問いただくことがあります。眠っている顔を周りの人に見られるというのも、落ち着かないですよね。

頭を横にすると深い睡眠の脳波は出やすくなりますが、不用意に深い眠りに入らなければ大丈夫なので、休みやすい体勢で大丈夫です。

継続していると、そろそろ深い睡眠に入りそう、という感覚がわかるようになってきます。「このまま眠ったら気持ちがいいだろうな」というあたりで目を開けるのがちょうどいいタイミングで、その後の頭がスッキリします。

■眠気は地面に対して頭を垂直に、疲れは頭を水平に

眠気を取り去りたいときは座ったままの仮眠がよいですが、寝不足が続いていたり、昼の時間帯しかまとめて睡眠がとれない、という場合は、完全に体を横たえて頭も横になるようにしましょう。

以前、タクシー会社の研修をしていた際、優秀なドライバーの方が、短時間の仮眠でもスッキリするために実践していたある方法があります。

それは、坂道に車を止めて、シートをリクライニングして仮眠する、というものでした。多くの車は、運転席をリクライニングしても完全にフラットにはなりません。

そこで、坂道に車を止めて頭を完全に水平にしていたのです。同様に、徹夜の勤務や交代勤務の人たちの中では、短時間で生産性を回復させるために、中途半端に頭を高くせず、完全にフラットにして眠る方法を実施している人たちが多くいました。

眠気を取り去りたいときには地面に対して頭は垂直に、疲れを取り去りたいときは地面に対して水平に、という基準で使い分けてみましょう。

■「なんとなく眠ってしまった」は避ける

④起きる時間を3回唱える

ちょっと仮眠するつもりが、1時間も眠ってしまった! なんていう経験はありませんか? 実は、眠り過ぎてしまったのには原因があります。それは、起きる時間を決めていなかったことです。

実は脳には、自らを時間通りに目覚めさせる便利なシステムが備わっています。使い方は簡単です。「○分後に起きる」と頭の中で3回唱える、それだけです。

この方法は、自己覚醒法と呼ばれています。

「1分後に起きる」と頭の中で3回唱えてから目を閉じると、1分の少し前から心拍数が上昇して起きる準備が整うことが明らかになっているのです。自己覚醒法は、練習するほど狙った時間に起きられるようになる練習効果が認められています。

なんとしても避けたいのは、「なんとなく眠ってしまった」という仮眠です。

意図せずに眠ったり、どのくらい眠るかを決めずに眠ってしまうと、起きた後に睡眠慣性が発生してしまいます。1分でも30分でも、計画仮眠の終了を決めて実行しましょう。

タイマーで最適な仮眠時間を見つける場合も、タイマーをかけるだけではなく、頭の中でも言語化してみましょう。

これら4つのポイントをおさえて、眠いか眠くないかに関わらず、脳の働きを客観的に管理してみましょう。

計画仮眠は、実行する時間帯をそろえると、より有効に眠気を取り去ることができます。例えば、12時から13時の間の30分以内、というように1時間程度の幅の中で実行すると決めたら、平日は毎日、できれば休日も同じ時間帯で実施していると、睡眠と覚醒の振幅を強調することができ、計画仮眠前後の脳の覚醒を高めることができます。

■生理現象を操って生産性を上げる

計画仮眠の効果を検証したユニークな実験があります。

実験では、2つのグループに分かれて、画面に表示されるシグナルに素早く反応するというテストを1日4回実施しています。テストの時間は、10時、12時、14時、16時です。

脳は、目覚めている時間が長いほど、反応速度が遅くなるのですが、1つのグループでは、その通りの結果になり、10時から16時にかけて徐々に反応速度が遅くなりました。

菅原洋平『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』(自由国民社)
菅原洋平『あなたの人生を変える睡眠の法則2.0』(自由国民社)

そこで、もう1つのグループには、12時から14時の間に30分間の仮眠をとらせました。その結果、12時までは反応速度が遅くなりましたが、それ以降は遅くなることがありませんでした。つまり、仮眠によって、脳の機能低下を防ぐことができたということです。

これだけでは、面白くないので、この実験では仮眠をしないグループに、報酬を設定しました。早く反応できたらご褒美をもらえる、という設定です。こんな設定になったら、とてもやる気が出そうですよね。

その結果はどうだったかというと、報酬が設定されていなかったときと変わりなく、反応速度は時間とともに低下しました。

心理的な対策より、生理的な対策が有効。ここでは、睡眠が生理現象であるということを理解していただけると思います。

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菅原 洋平(すがわら・ようへい)
作業療法士
ユークロニア代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。2012年にユークロニアを設立。東京都千代田区のベスリクリニックで外来を担当しながら、ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『すぐやる!』(文響社)などがある。

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(作業療法士 菅原 洋平)

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