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うつは処方薬では治らない…うつ病になった精神科医が「7年間の闘病生活」から抜け出すためにやったこと

プレジデントオンライン / 2023年7月30日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlexLinch

メンタルの不調を改善するにはどうすればいいのか。7年間うつ病に苦しんだ精神科医の宮島賢也さんは「患者さんと同じように処方薬を飲み続けたが、うつは治らなかった。うつのトンネルに光が見えたのは、食生活の改善がきっかけだった」という――。

※本稿は、宮島賢也『メンタルは食事が9割』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■薬では患者のうつも、自分のうつも治らなかった

精神科医である僕も、長くうつで苦しんだひとりです。

うつ病と診断されたのは、2000年のことです。それから7年間、処方薬を飲み続けましたが、うつ状態はよくなりませんでした。その間、精神科医としてうつの患者さんに同じように薬を処方しましたが、やはり、ほとんどの患者さんを治すことができませんでした。

自分がうつになり、薬を飲み、また多くの患者さんに薬を処方する中でわかったことがあります。それは、「うつは薬では治らない」ということです。

薬を飲めば不安や落ち込みが麻痺しやすくなりますが、対症療法ですから、寛解しても多くは再発します。私の場合は薬を飲むことで不安が麻痺することもありましたが、家族と一緒にいるときの幸せも感じにくくなった気がします。

さらに、その場の気持ちを抑えてくれても、原因は解決できていないので一向に治りません。それが私の7年間でした。

■原因を取り除かなければ、完治できるはずがない

大きな原因といわれるのがストレスです。

ところが、世の中には、同じストレスがかかっても、うつになる人とならない人がいます。物事をどうとらえるか、自分をどう見つめるか、そうした心のあり方によって、うつになるかどうかが決まるというわけです。「もう自分はダメだ、未来がない」と思えば、心身の状態はうつへと向かいます。

僕の場合はどうだったかというと、医師としての自分に自信が持てないから診察するときはいつもびくびく、将来に向けては不安だらけ。そんな心の状態がうつへの引き金になりました。

それなら、物事をネガティブにとらえがちな心を変えればいいじゃないか、ということになりますが、それがとても難しいのです。

うつになりやすい人は、完璧主義だとか、断れない性格だとか、まじめなタイプだとか、人の目が気になるタイプだとかいわれますが、何年もかけてつくってきた「自分」を変えるのは簡単ではありません。それは、僕も身に染みてよくわかります。

といって、ストレスそのものを排除できるかというと、それも難しいものです。人間関係のストレスには相手がいるので自分だけで解決できませんし、リストラや身近に起きる不幸などは、自分ではどうすることもできません。結局、その場の気持ちを抑えてくれる薬を頼りますが、原因を解決できていないので一向に治りません。それが僕の7年間でもありました。

そんな僕でしたが、うつからすっかり抜け出すことができました。性格は変わりませんし、仕事も、生活環境も、人間関係も、まったく同じでしたが、変えたものが1つだけありました。食事です。

■「うつ抜けできた食事法」の3つのポイント

うつと食事。一見、関連があるように思えませんが、私たちの体は食べたものでつくられていて、食べることで生命活動を維持しています。心の動きや脳の活動も、もちろん食べることによって支えられています。考えてみると、うつと食事に関連がないわけがないのです。

きっかけを与えてくれたのは、アメリカの経営コンサルタントであるジェームス・スキナー氏の『成功の9ステップ』という成功哲学の本の中で紹介されていた「ナチュラルハイジーン」という食事法です。そしてもう一つ、故・甲田光雄先生(元大阪大学医学部非常勤講師、甲田医院院長)が考案した「西式甲田療法」という健康法です。

これらを参考に考案した食事法のポイントは3つです。

①体に負担をかけない食事を心がける
②腸内環境を整える食事を心がける
③脳に栄養を与える食事を心がける

頂きますをする家族
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

■「体に負担をかけない食事」とは…

実は食事は「体を疲れさせる」行為なのです。

私たちの体は食べ物から栄養をとり、それを活動エネルギーに換えています。食事でエネルギーを補強するのだから、一見して疲れが吹き飛ぶように思えます。しかし、栄養を行き渡らせるには消化吸収が必要です。その前には、食べ物の分解もしなければなりません。つまり、食べることは胃腸や肝臓など消化器官に負担をかける行為でもあるのです。

体は、胃腸や肝臓に頑張って働いてもらうために、大量の血液を送らなければなりません。それと同時に、消化酵素など、大量の体内酵素も動員されます。酵素は栄養の消化吸収、そして分解とすべてにわたって必要な体内物質だからです。消化吸収の担い手は、この酵素といってもいいと思います。

食べることは消化器官からすれば一大イベントで、かなりの活動エネルギーを必要となります。だから、食べているときより、実は食べた後のほうが疲れます。一説によれば、三度の食事はフルマラソンに匹敵する消費カロリーともいわれます。毎日フルマラソンを走ると考えると、それは当然疲れますよね。

■「生野菜と果物中心の食生活」の意外な効果

そこで私が実践したのが、「生野菜と果物中心の食生活」でした。野菜はとにかく、生で食べました。というより、野菜は「生でかじる」感覚です。普通は加熱して調理するごぼうでも、生でガリガリ食べました。果物も、バナナ、リンゴ、オレンジ、キウイなど、なんでもよいのです。

ダイエット計画と健康的な果物を書く栄養士
写真=iStock.com/cyano66
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/cyano66

生の食べ物には酵素が含まれています。そのため、生の食べ物を食べると酵素を補うことになり、胃腸は援軍を得て重労働から解放されます。胃腸への負担が軽くなるというわけです。すると、体があまり疲れなくなります。

疲れなくなると動くのが億劫でなくなります。体が身軽な感じです。体が疲れていないので、動作を起こすことが面倒でなくなります。ですから、人に何か頼まれても「いいですよ」と気軽に応えられてしまう。

そこまでではなくとも、イライラすることが少なくなり、食後もスムーズに仕事に移れます。イライラが少なくなれば、人との衝突も減るでしょうし、人間関係にもよい影響が出てきます。それが、うつの原因となるストレスを減らすことにつながります。

■ステーキ、トンカツ、焼肉は元気が出そうだが…

体に負担をかけないためには、当たり前ですが「体を傷つけるもの」もよくありません。具体的には以下のようなものです。

・タバコ
・アルコール
・コーヒー、紅茶などのカフェイン飲料
・薬
・過剰なタンパク質、赤身の肉類
・過剰な塩分
・加工食品と砂糖

焼き肉や、鉄板の上でジュウジュウ音を立てた厚切りステーキを食べると気分が上がる気がします。ですが、肉のように高タンパク質、高脂肪の食べ物は消化に時間を要します。肉はたとえ生で食べても体に負担をかけやすいのです。

少し専門的にいえば、高タンパク質、高脂肪の食品は分子構造が複雑なために分解するのに多大な労力を必要とします。

その労力とは酵素にほかなりません。肉を、それも加熱した焼き肉やステーキを大量に食べると、胃袋にまるで鉛が入ったような重さを感じるのはそのためです。ですから、本当に気分を上げるには、熱々のステーキより、生野菜や果物を好きなだけ食べるほうが実は効果的なのです。

私は高校と大学でラグビーをやっていましたので、試合前には「よし、今日はトンカツを食べて、明日は闘おう!」と気持ちを盛り上げていました。肉食は心に興奮をもたらします。しかし、その一方でどこか心が落ち着かなくなる、確かにそんな実感もありました。

■7年間のうつ病を改善させた朝食、昼食、夕食

それでは私がどのような食事に変えたのか、具体的にご紹介しましょう。

まず、朝は果物だけを食べるようにしました。毎朝、3~4種類を用意して、ほかの食べ物は食べないようにしたのです。用意する果物の種類や量は適当で、たくさん食べることもあれば、バナナだけという日もありました。この食事法がいいのは、生野菜と果物であれば好きなだけ食べてOKということです。

昼食も果物と生野菜が中心でした。野菜は水分の含有量が多く、体が必要としている栄養素をたくさん含んでいます。食物繊維が豊富な点もありがたいですね。果物と生野菜、物足りなさを補うために玄米ご飯を持参して、職場で食べました。果物なら、リンゴ、柿、バナナが多かったです。

野菜は、きゅうり、ピーマン、ブロッコリー、キャベツ、レタス、トマト、にんじんなどです。ピーマンでもブロッコリーでも生でかじり、風味がほしい場合は塩をちょっと振るか、オリーブオイルに塩を混ぜてドレッシングにするとおいしくいただけます。

夕食は基本、昼食と同じです。とはいえ、肉や魚を食べていけないわけではありません。体が重くならない量であれば大丈夫です。間食もOKです。果物と野菜中心の食生活では、午後3時くらいにお腹が減るのは当然です。そんなときは無理せず、バナナなどを食べるとお腹が落ち着きます。

サラダやナッツ類も間食におすすめです。ナッツを食べるときは、無塩のものを選ぶようにすると体への負担が少なく、ダイエット効果も高まります。

■うつのトンネルに光が見えた瞬間

このように食事を変えたところ、2週間であきらかな変化がありました。

まず、やせてきました。当時20代だったというのに、無駄なぜい肉が全身を覆って動くのが億劫でした。それがスッキリし始めて、体が軽くなりました。なんと2カ月で20キロも減量。ダイエットが目的だったわけではありませんが、自分でも驚きました。

その後も、日ごとに体が軽くなるのを感じました。便通がよくなったことも、その一つです。それまでの私は、毎朝便通があるタイプではなかったのですが、毎朝、気持ちのよい便が出るようになりました。

スッキリと目覚められるようになったのも、うれしい変化でした。ぐっすりと眠れずに、朝起きても疲れが抜けずに体のだるさを感じていたのが、気持ちよく起きられるようになったのです。そのため、朝に散歩をするくらい、体が活動しやすくなりました。

体調もよくなって、よく眠れるし、おかげで慢性的な疲れが消えました。すると心までらくになってきて、心配や不安を感じることが少なくなりました。

■まずは朝食をバナナに変えてみる

ついでにいうと、それまで心配や不安を紛らわせるために習慣になっていたお酒も、ほどよくコントロールできるようになりました。

宮島賢也『メンタルは食事が9割』(アスコム)
宮島賢也『メンタルは食事が9割』(アスコム)

こうなったとき、食事を生野菜や果物中心にすること自体が楽しく感じられたのです。そう、久しぶりに「楽しい」という感覚が自分の中によみがえってきました。7年間うつのトンネルに閉じこもっていた私に、忘れていた光が見えたのです。

その後も、どんどん体の調子がよくなり、エネルギーが体に満ちてくることを実感できました。そしてついに、うつを克服することができたのです。

実は、メンタルが不調のときは「あ、変わったかも」と自分の中で気づきを得たら、しめたもの。楽しいと思えるようになったこと、体が軽くなったこと、どんなことでもいいのです。

こうした気づきが得られることでメンタルの不調は一気に快方に向かうケースが多いもの。大切なのは、きっかけを得ることです。たとえば、朝食をバナナにしてみる。こんな小さな変化が大きなきっかけになります。

生き方や働き方はすぐに変えられなくても、食事なら今日から変えらそうではないですか?

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宮島 賢也(みやじま・けんや)
精神科医・産業医
1973年、神奈川県生まれ。防衛医科大学校卒業。研修中、意欲がわかず精神科を受診、うつ病の診断を受ける。自身が7年間抗うつ剤を服用した経験から、「薬でうつは治らない」と気づき、食生活と考え方、生き方を変え、うつ病を克服する。その経験を踏まえ、患者が自ら悩みに気づき、それを解決する手伝いをする方向へと転換。うつの予防と改善へ導き、人間関係を楽にする「メンタルセラピー」を考案する。著書に『メンタルは食事が9割』(アスコム)など多数。

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(精神科医・産業医 宮島 賢也)

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