1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「誕生日会はクルーザーの上で」有名私立に入った娘の交際費にお金を注ぐ"見栄っ張り母"が招いた赤字家計

プレジデントオンライン / 2023年7月29日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/janiecbros

無駄遣いをやめるにはどうすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「老若男女問わず、周りの目を気にして“見栄っ張り貧乏”になる人が非常に多い。“今が良ければいい”という消費の仕方をしてしまっている」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

村高さん(仮名/51歳)のケース

本人 専業主婦
夫 会社員(年収800万円)
子供 高校生(私立)
住まい マンション(住宅ローン月15万円 ※修繕積立金などを含む

■「裕福なご家庭が多い学校」に入学

思春期は特に「見た目」が気になる時期です。ファッション、メイク、交友関係など、すべてにおいて「人からどう見えるか」というアンテナがビンビンに働き、私もいろんな失敗がありました。今回は、そんな高校生の娘さんを持つ親までもが見栄を気にするあまり、貯金ができない“見栄っ張り貧乏沼”に陥ったケースをご紹介します。

村高さん一家の一人娘・優愛さん(仮名)が都内の私立中堅女子校に合格したのは1年前のこと。彼女の第一志望だったその女子校は歴史ある学校かつ、派手な子が多い校風で知られています。私が高校生だった時代にもたしかにそこの学生はおしゃれな子が多い印象があったので優愛さんの母・貴子さん(仮名/51歳)に聞いてみると、「自営業で、裕福なご家庭が多いんですよ」とのことでした。特に開業医の親御さんが多く、皆さん現金が常に一定ある金回りのいい環境ということもあり、セレブな雰囲気の方が多いのだそうです。

そんな環境に入学した優愛さん自身の家庭は、ごくごく普通の会社員一家。インターネット関連会社に勤める父・康之さん(仮名/49歳)の年収は800万円で、お母さんは専業主婦でした。親の職業の違いはあれ、社交的でおしゃれな優愛さんはすぐ学校に馴染み、友だちにも恵まれます。

■クルーザーでお誕生日会、旅行は軽井沢集合

楽しそうに学校に行く彼女を見て一安心していたある日、康之さんは、優愛さんのお友だちの誕生日会に違和感を覚えたといいます。なぜかといえば、会場が「クルーザー」だったから。高校生の誕生日会を船上で開くなど、田舎の零細農家に生まれた康之さんには信じられない話だったそうですが、娘にも付き合いがあろうと、特にとがめることはなかったそうです。

しかしその後、船上パーティーで渡すプレゼントやドレス代に3万円も使っていたことを知った康之さんが貴子さんを問い詰めると、「娘に不憫な思いをさせたくなくて」との返事。その思いは同じなので、グッと飲み込んで静観を決めたものの……その後も毎月のようになにかしらパーティーが催され、その度に手土産代が発生。夏になれば軽井沢集合でクラスメイトと旅行へ。優愛さん自身の洋服もファストファッションブランドでは飽き足らず、やたらと高いブランド品を要求するようになっていました。

康之さんは貯金に手を出すようになってから不安を覚え、貴子さんに娘の交友費やファッションへの浪費を抑えるようにお願いしましたが、いつも最後には「優愛が仲間はずれにされたらどうするの!」と怒られ、取り付く島がないといいます。この時点で200万円以上あった貯金は150万円まで減ってしまっていました。康之さんが私のもとに来てくれたのが、この時でした。

■「世帯年収800万円」なのにまったく余裕がない

世帯年収800万円というと、ボーナスを考慮しないと手取りは50万~55万円ほどです。村高さん一家の支出は、13年前に買ったマンションのローンと修繕積立金などを合わせて住居にかかる費用が毎月15万円。そして優愛さんの私立高校の教育費や修学旅行の積立金などが月々10万円かかっていましたが、ファッションや遊びにかけるお金が月5万円にもなっていました。すると、年収800万円世帯でもまったく余裕がありません。本来であればもっと貯金できてもいい収入にもかかわらず、娘の「見栄」を保つためだけに、家計はピンチに陥っていました。

貴子さんからも話を聞いてみたのですが、彼女自身、実家があまり裕福ではなく、若い時の服はいつもおさがりで、流行りのゲームなどに自分だけついていけないことで疎外感を感じていたのだそうです。そんな「娘にだけは同じ思いをさせたくない」という強い思いと、自分自身も周りの親との格差を気にし、保護者会で着る服を毎回新調したり、ホテルでの高級ランチ会にも顔を出すなどして、「見栄」を保っていたようでした。

複数のショッパーを手に歩く女性
写真=iStock.com/nicoletaionescu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nicoletaionescu

■「見栄っ張り」が貧乏を呼ぶ

インスタ映えを狙って借金地獄に陥ってしまった20代女性や、妻を亡くしたショックを悟られまいと豪遊に走った初老男性――私のお客様でもこんな「見栄っ張り貧乏」さんが老若男女問わず、非常に多いです。彼らに共通するのは、行動の動機が「他律的」になっていること。「“いいね!”がほしくて」「付き合いが悪いと思われたくない」「お揃いでないとメンバーになれない」といった相談者から聞く声には、日本ならではの同調圧力や、素のままでは生きづらい状況も見えるような気がします。だから「ありのままに生きろ」みたいな曲や本が売れるのかもしれませんね……。

と、話が少しそれてしまいましたが、このような「見栄っ張り」さんには、キャッシュフロー表をお見せするようにしています。だいたいが「今が良ければいい」という消費の仕方をしてしまっているので、今のお金の使い方を続けた場合将来どうなるのか、長期にわたるお金の流れを数字で見ていただくのです。村高さん一家のケースでは、このままの生活を続けると1年後には貯蓄が100万円を切ってしまうという結果が出ていました。そこではじめてハッとした貴子さんから、「どうすればいいでしょうか」という言葉が出てきました。

私からご提案したのは、まず貴子さんが働きに出て世帯収入を上げることです。一度ついてしまった消費の癖をなおすのは難しいので、まずは、収入を上げることで貯金ができるようにする。それと同時に、やはり今のような散財は改める必要があるので、娘さんに使える金額のラインを示してもらうようにしました。そうして徐々に支出をスリム化し、貴子さんの収入も安定すれば、老後の貯蓄もできるようになるはずです。

■自分を認めてくれる環境に出会える大切さ

また話が脱線してしまうかもしれませんが、今回のご相談でもう一つ感じたのが、「環境」の大切さです。以前、小学校時代は友だちが一人もいなかったあるお子さんが、自分に合った中学校に入れたことで、才能をメキメキと伸ばしていったことがありました。はっきりとしたこだわりや趣味があった彼女は、小学校時代はなかなか周りに理解されなかったのですが、中学では違いを互いに認めあって、疎外されることなく好きを極められる環境を手に入れたそうです。彼女の動機は全部、自分の内側から出るものであり、決して、「いいね!」が欲しくてやっているわけではないんですよね。加えて、そんな自分を認めてくれる環境があることがとてもいいな、と感じました。

手をつないで駆け出す二人の女性生徒
写真=iStock.com/paylessimages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/paylessimages

私も小学生の子供を持つ親なので、これから思春期に入っていくなかで、同じような悩みにぶち当たる可能性は大いにあります。その時、子供の「好き!」や不安に寄り添いながら、親として提供してあげられる環境、ラインを考えていきたいと思ったご相談でした。

----------

高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

----------

(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください