「話が行ったり来たりで、同じ話ばかり繰り返す」頭の悪い上司の怒りを買わずに話を止める方法
プレジデントオンライン / 2023年7月31日 11時15分
※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『上司、部下、同僚、家庭……あらゆる場面に対応 無神経な人に振り回されず、こっそりあやつる方法』の第1話を再編集したものです。
■無神経な人ともうまくやっていく能力とは?
昔から人が抱える悩みの大半は「人間関係」と言われます。馬が合わない人や困った人、無神経な人に煩わされることの多いのが職場。しかしビジネスパーソンは、そんな人たちともうまくやっていける人間関係能力が求められます。
職場や家庭にいる面倒くさい人や困った人、無神経な人への対処のしかたでもっとも重要なのは、衝動的な反応はしないこと。相手の性格や思考回路を観察して、それに応じた対応をすることを心掛けなければなりません。
日本人は間柄を重んじる国民ですから、たとえ相手に非があることでも、真っ向から戦ってしまえば自分の評価を落とします。
意見を通そうと思うなら、戦うより相手との間柄を良好にする。そのためには相手の心理状態を理解することが重要です。
やっかいな人物を見ると、その人固有の性格や特徴のように感じるかもしれませんが、対応次第で変わっていきます。厄介な人物はいくつかのパターンに分類することができますが、それぞれの心理メカニズムを踏まえることで関係性を壊すことなく、むしろ自分に有利な関係へと変えていくことができます。
■話の長い上司には、話が長くなる理由がある
ではさっそく今回のテーマに入りましょう。第1回の話題は話の長い人への対処法です。
3分で済みそうな指示を、言い方を変えてくどくどと説明し続ける上司。あなたの職場にもいるのではないでしょうか。
話の長い人にはいくつかのパターンがあります。
一つ目は、相手が強い不安を抱えているパターン。このパターンの人は自分の話がちゃんと理解されているかどうか気になるあまり、同じ話を繰り返してしまいます。そして前に説明したことを再び持ち出して最初から説明してしまいます。
近年、職場内のコミュニケーションギャップが拡大していると言われています。コミュニケーションギャップとは、本来伝わっていなければいけないことが伝わっていなかったり、誤解して伝わってしまうこと。
このようなギャップが生まれている背景には、急速な社会の変化があります。これまでの常識が通用しなくなり、日々新しい常識が生まれている中で、世代間の価値観の違いが際立ってきたことのあらわれでもあります。
それとともに気になるのは、スマートフォンやデジタル機器など、人間の記憶を補完するデバイスが普及したことで、脳のワーキングメモリーと言われる領域の機能が低下している人が増えていることです。単純なことでも記憶に留まらず、若い頃から忘れっぽい人が増えています。
こうしたことから部下とのコミュニケーションに不安を感じている上司が増えており、その結果、指示もくどくなってしまうのです。
この場合の対策としては、上司が同じ話をし始めたときに、「そこは先日のご説明で理解しているつもりです」と、こちらが理解していることを伝えること。それで上司は安心して別の話題に移るか、話を終えることができるようになります。
2つ目は、頭の中が整理できていない人のパターン。話が行ったり来たり、同じ話を繰り返す人がいますが、これは話すことを自分でまとめきれていないのです。
こういう相手には「ということは、○○ということですね」といった感じで、上司の話す内容をまとめてあげる形で話を聞くのが有効です。そうすると上司の頭の中身も整理されて、堂々巡りをやめさせることができます。
3つ目は、しゃべりたい衝動が強い人のパターン。たまに、しゃべる機械のような人がいませんか。ああいう人はこちらが黙っていると、延々と話し続けますので要注意です。
しかし、このタイプは、話を途中で遮られても気にしない場合が多いものです。話題を変えたり、ほかに急ぎの仕事があるなどとこちらの事情を伝えると、気分を害することなくやめてくれるでしょう。
このように、どのパターンに当てはまるかを見極め、適切な対処をすることで、上司を不快にさせることなく早めに切り上げてもらえます。
■理解の遅い部下には「5W1Hメモ」を使った指導を
では、相手が部下の場合はどうでしょうか。たとえば報連相のシーン。話が堂々巡りして何が言いたいのかわからないといったこともあるでしょう。こういう場合にすべきことは、その部下に基本的なコミュニケーションスキルが備わっているかどうかをまず見極めること。
報連相の基本スキルはありながらも、今回の内容に限って整理できていないなら、「それで何が問題なの?」と、わかりやすい順に質問をしていけば把握できるでしょう。相手が上司のときとちがって、話を遮りやすいので格段にラクです。
一方、基本的なスキルがない部下の場合だと、今後のために教育する必要があります。まず結論か話の核心から伝え、その後で理由や状況を簡潔に説明する、といった基本的なスタイルを教えるのも上司の仕事です。
ただ気をつけなければいけないのは、相手の脳のワーキングメモリーが極端に少ない人です。簡単なことが何度言ってもできない部下には要注意です。こういう人は覚えられる量が少ないため、いくら教えてもなかなかうまくいきません。
そういう人には報連相の際に、5W1Hでメモを作成し、それを見ながら説明するという習慣をつけさせること。そういう特別な指導も必要です。
■状況を察せられない人の話は、きっぱり遮断する
時間がないときにかぎって世間話をしてくる同僚に困っている人も多いのではないでしょうか。まったく相手にしないのもカドが立つからと少し相手をしてしまったら最後、いつまでたっても話をやめようとしないので困ってしまう。そんなこともあるでしょう。
こういう人は、しゃべらずにはいられないタイプであることは間違いありません。なおかつ仕事へのモチベーションが低い。そんな人にいつまでも付き合えませんから、「悪いけど今は忙しくて話していられないんだ」と、こちらの状況を伝え、遮断するしかありません。
おそらくこういうタイプの人は、一度や二度、断ってもまた繰り返しやってきます。それでもその都度、「まだ、終わらないんだ」とか「今ちょっと切羽詰まっているんだ」と伝えるしかありません。少しは察してくれるようになるまで、それを続けるしかないのです。
いちいち言わなくても忙しいことくらいわかるだろうと思うかもしれませんが、相手の状況をまったく察することができない人がけっこういるものです。そういう人にはイライラしたり、腹を立てたりするだけ損。人の性格を変えるのは無理ですから、遮断するのが最良の対処なのです。
■夫婦関係は“修行”だと思って聞いてあげるのが得策
しかしそれが家庭になると事情は変わってきます。1日働いてくたくたで帰宅したと思ったら、「今日隣の奥さんにこんなことを言われたんだけど……」などと、どうでもいい出来事や愚痴を聞かされるとうんざりしますよね。しかし奥さんの話は遮断するのではなく、極力、聞いてあげるのが正解。
立場が違えば感じることも違うもの。こっちにとってどうでもいい話も、向こうにとっては一大事だったりします。耳の痛いことを言うようですが、実のところ奥さんは奥さんで、旦那の話にはうんざりしているものです。つまりお互い様なのです。
夫婦といえども、生きている世界は違っていて、関心も異なります。そのために話を遮断し合うようになると、いずれ夫婦関係はこじれます。そうなれば家庭での居心地も悪くなり、落ち着ける場ではなくなります。ひいては体調面にも支障をきたすことになりかねません。
家庭は仕事の疲れを癒やせる場にしておきたいものです。職場の人間関係とちがって夫婦はずっと続きますから、後々のことを考えれば、まだ話しかけてくれている間に、修行だと思って聞いてあげるのが得策なのです。
職場であれ家庭であれ、長い話に付き合うのは面倒ですが、くれぐれも感情的になって対決するようなことは避けましょう。そんなことをすれば、自分をますます不快な状況に追い込むだけです。話の長い人も適切に対処すれば、案外何とかなるものだし、関係を害することなく自分のペースで仕事もできるようになります。そう信じて我慢強く賢く対応しましょう。
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心理学博士
1955年東京生まれ。東京大学教育学部教育心理学科卒業。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て、現在、MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師。おもな著書に『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)、『「やりたい仕事」病』(日経プレミアシリーズ)、『「おもてなし」という残酷社会』『自己実現という罠』『教育現場は困ってる』『思考停止という病理』(以上、平凡社新書)など著書多数。
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(心理学博士 榎本 博明 構成=大島七々三 イラストレーション=髙栁浩太郎)
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