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収支マイナスでも資産が残るから問題ない…ワンルーム投資の甘い言葉を信じた人の絶望的な末路

プレジデントオンライン / 2023年8月5日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/erhui1979

サラリーマンに「ワンルーム投資」を売り込む不動産会社は後を絶たない。「不動産Gメン」として活動する滝島一統さんは「頭金ゼロで始められるのでハードルは低いが、収益に対して修繕費が高すぎるため、根本的に儲からない。手を出した人の多くは、毎月赤字なのに不動産価格はどんどん下がる、という罠に苦しんでいる」という――。(第2回)

※本稿は、滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「ローンを完済すれば資産が残る」は本当か

(第1回から続く)

私のもとには、ワンルーム投資で不労所得が得られるどころか、赤字を出し続けることになり、絶望の淵に立たされている人から、多くの相談が寄せられます。

そのような結果になってしまう主な原因は、家賃から考えて物件価格が高いこと、頭金ゼロで借入額が多いこと、さらにサブリース手数料がかかること、の3つです。

家賃収入を得たり、ローン返済や税金の支払い等のお金の流れを「キャッシュフロー」と言います。

家賃収入だけではローンや経費が払いきれず持ち出しがあることを「キャッシュフローがマイナス」「キャッシュフローが赤字」などと言い、不動産投資としては「失敗」です。

しかし不動産会社の担当者は、「毎月2万円程度の持ち出しはあるけれど、ローンを完済すればマンションという資産が残る」と言います。本当でしょうか。

■35年後、2500万円の物件が同額で売れる?

第1回で取り上げた、2500万円の物件を頭金ゼロで購入する例で見ていきましょう。家賃収入が108万円あっても、サブリース手数料が引かれるうえ、税金やローン返済、修繕積立金・管理費などの支出があり、結果、年間28万6000円の赤字となります。

年間28万6000円の持ち出しを35年続けると、合計1001万円の持ち出しです。

もしも、その時にマンションの価格が500万円上がっていれば、1999万円得したことになります。1000万円上がれば、2499万円の得です。

しかし、高度成長などとっくに過ぎた日本において、35年後、ワンルームマンションの価格が新築時より上がっていることなどあるでしょうか。

「1001万円持ち出したとしても、2500万円で売れれば1499万円の得です。だから、ワンルームは収支がマイナスでも問題ありません」、というのがワンルーム業者の常套句で、頭の中がファンタジーとしか言いようがありません。

■よくて半額の1250万円、悲観的観測だと500万円

なぜなら、35年間の間に家賃は下落し、修繕積立金と管理費は値上がりしますから、1000万円程度の持ち出しでは済みません。加えて、300~400万円の水回りを中心とした大規模修繕をする必要もあるからです。

それらを加味すると、ほとんどの場合、2500万円のワンルームなら2500万円程度支払うことになり、賃貸に出しても一円も得しません。

「でも大丈夫! 2500万円払って2500万円のマンションが手に入ったなら、ツーペイですよ、お客様!」

果たしてそうでしょうか? 考えてください。

新築時に利回り4%前後のワンルームが、家賃が値下がりし、修繕積立金と管理費が値上がった状態で、新築当時と同じ価格を維持できるでしょうか?

未来のことは分かりませんが、今の不動産市況を考えると。その可能性はバラバラのプラモデルの部品を箱に入れて振ったらたまたま完成していた確率くらい低いと思います。

個人的な予測ですが、よくて1250万円くらい。悲観的観測だと500万円です。

■今後、ワンルーム需要が伸びることはほぼない

まとめると、頑張って節約して借金を抱えながら35年間かけて2500万円払っても、1250万円しか戻ってこないということです。

投資と呼べますかね、これ?

立地にかなりの希少性がある、嘘のような安い価格で買った、日本の経済成長が目覚ましく、不動産価格が高騰してワンルーム需要も爆発的な伸び、といった状況が起きれば売却によって大きなリターンが得られるということもありますが、それを期待するのはもはやギャンブルを通り越して奇跡を祈るようなものでしかありません。

日本において、希少立地でもない限り、長期的には価格は下がるとみるのが自然です。毎月、持ち出しがあり、なおかつ価格も下がっていくのなら、価値が目減りしていく資産のために毎月お金をつぎ込んでいるようなものです。

不動産価格の暴落
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi

毎月赤字。価格はどんどん下がる。ということは……? 少し考えれば分かるはずなのに、ワンルーム投資の罠にかかってしまう人が少なくないのです。

シンプルなロジックに気付かないのか、目をつぶっているのかは分かりませんが、儲かる確率が低いギャンブルをやっているようなものです。

■オーナーなのに家賃が適正かどうかも分からない

賃貸住宅を選ぶ時、物件の魅力からみて家賃が高すぎる物件は見送るのが普通です。

そうした物件はなかなか入居者が決まらず、空室になることもあるでしょう。

ということは、不動産投資をするなら家賃が適正かどうかは大事なポイントになります。しかし恐ろしいことに、サブリースの契約をしている大家さんは、自分の物件が誰に、いくらの家賃で貸されているか、ほとんど知らされていません。自分がオーナーなのに、自分が投資リスクを負うのに、家賃が適正かどうかも分からないのです。

また支払われる保証賃料もずっと同額ではありません。値下がりする可能性もあります。賃貸住宅では、前の入居者が退去して次の入居者を募集する際には、周辺の相場などを考慮して家賃を見直すことがあります。築年数が経っていれば新築時と同じ家賃というわけにもいきませんし、相場からみて家賃が高ければ入居者が見つからず、空室になってしまうリスクがあるからです。

■保証賃料も下がり、サブリース解約という末路

家賃が下がれば、保証賃料も下がるのが普通です。

サブリースの契約書には、近隣の相場や税負担などに応じて家賃を見直す、などと記載されており、ずっと一定の家賃を保証するとは書いてありません。

当然といえば当然ですが、サブリースは、家賃を下げざるを得ないなどの賃貸経営のピンチを救ってくれるものではない、ということです。

サブリース業者としては、空室状態で保証賃料を払えば逆ザヤになってしまいますから、空室にならないようにどんどん家賃を下げます。したがって保証賃料もどんどん下がる、というわけです。先ほどの計算例でもキャッシュフローはマイナスでしたが、保証賃料が下がればさらに状況は悪化します。普通は新築時の家賃が最も高いので、一番いい時でキャッシュフローがマイナスなら、その後は推して知るべし、です。

さらに、どうやっても空室になってしまう状態になると、サブリースを外されることもありえます。サブリースを付けても手数料を取られてキャッシュフローがマイナス。そもそも元家賃が分からないから、何割取られているかも分からない。年数を経るごとに赤字は拡大。最悪、サブリースを解約される……というのがお決まりのストーリーなのです。

■ワンルーム投資はまず儲からないシステム

家賃の下落だけではありません。

ワンルームマンションは根本的に儲からないシステムになっています。なぜなら物件価格と収益に対して、修繕費の割合が高すぎるからです。

たとえば家賃10万円の物件があったとします。修繕積立金と管理費は家賃の15%程度(約1万5000円)で、不動産会社への管理委託料を加えると20%程度の費用が出ていきます。

さらに設備が壊れると修理しなければならず、15年後、20年後には物件価格の10%くらいの修繕費がかかります。3000万円の物件なら300万円です(最近は部材と人件費が高騰しているので400~500万円をみておくのが無難です)。これは物件に対して割高であり、仮に2億円のビルを買っても、10%(2000万円)もの修繕費はそうそうかかりませんし、ある程度、保険でカバーできる場合もあります。ワンルームマンションは、得られる家賃と修繕費が見合わないのです。

修理工事中のアパートの硬化シートと足場。硬化シート、足場
写真=iStock.com/jyapa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jyapa

また変動金利型でローンを組んだ場合、金利が上昇すれば返済額が増えます。価格も下がるのが普通で、10年後は3分の2、立地や経済動向によっては半分くらいになる可能性もあります。

このように、収益が得られる可能性は限りなく低いのです。

■「サブリースをやめたい」はかなり難しい

「サブリースなんて契約しなければいい」「サブリースなんて解約すればいい」と思うかもしれません。しかし、たとえばスキームワンルーム投資の場合、サブリースは物件とセットになっており、フルローンを組むための条件として契約しなければならない場合が多いのが現状です。またサブリースは事実上、途中解約ができず、解約できても違約金がかかるケースがほとんどです。

相談に来る方の契約書を拝見すると、サブリースの契約期間は4~10年程度の例が多いようです。基本的には自動更新で、双方から申し立てがない限りは更新、かつ解約は半年前に申し立てること、などと記載されています。これだけ読むと、申し立てれば解約できるとも読めますが、解約条件として、建て替え等のやむを得ぬ理由がない限りは解約できないといった内容が付記されています。解約できるように見えなくもないが、実際には解約できない、ということです。

ある大手不動産会社では、物件のパンフレットをはじめとしてさまざまな資料で、手を替え品を替え、何回も繰り返し、サブリース契約が解約できないことを表記しています。購入者に分かりにくくしつつ、何度も記載することで、「お知らせしてあるはずです」と予防線を張っているのです。

■サブリース業者が解約に応じない3つの理由

サブリース契約を解約してくれないのはなぜでしょうか。

1つ目の理由は、サブリースを解除し、売却されると、まずいことになるからです。

たとえば2500万円で販売した物件が、築2年で2000万円以下に値下がりしていたら、自分たちが販売した価格がとても高いということが世間に分かってしまいます。市場にデジタルタトゥーも残ります。

2つ目は、売上を維持したいためです。

管理委託契約の場合は、集金代行など委託する業務の内容により、料金は家賃の3~5%程度が普通です。家賃10万円の部屋なら3000~5000円です。これが不動産会社(管理会社)の売上であり、利益です。対してサブリース契約では、家賃10万円がそのまま業者の売上になります。そのうち9万円は保証賃料として大家さんに渡すため、売上10万円、仕入れ9万円、利益は1万円ですが、帳簿上の売上は10万円と、管理委託の20倍になります。

売上の多寡は資金調達などにも影響するため、不動産会社にとってメリットが大きいのです。また、業者によっては、「サブリース契約は解除できないので、どうしてもという場合は当社で物件を買い取ります」と言ってくることがあります。

特別に買い取ってあげるということで安く買い叩く。そして安く仕入れたものをまた別の人に高く販売する。二重においしいわけです。これが3つ目の理由です。

サブリースを組んだお客さんは、業者にとって、生簀(いけす)に入った魚のような存在であり、簡単には出したくない、というわけです。

■サブリースが必要な物件は買ってはいけない

卵が先か、鶏が先か、という話になってしまいますが、サブリースしなくても家賃が入る物件なら、わざわざサブリース契約を結んで手数料を払う必要はありません。

人気がない物件ではサブリース契約があると安心と考えがちですが、人気が出ない物件は、そもそも買ってはいけません。

そして、空室リスクがあるような物件にはサブリース契約をしてくれません。いらない場面では付いてきて、必要な場面では付かない、ということです。

サブリース契約付きのワンルーム投資に誘い込まれてしまう理由は、サブリースの問題点を知らないのと、ローンが借りられるからです。

ちなみに、銀行もコンプライアンス的に問題があるということに気付き、多くの銀行はワンルーム投資への融資を手控えています。ワンルーム投資への融資をしているのは、ごく一部の銀行に限られます。

サブリースはよほどのことがない限り組んではいけない。サブリースを組まないと不安な物件は、買ってはいけません。

■赤字なら「損切り」以外に道はない

キャッシュフローがマイナスで毎月持ち出しになるようでは、貯蓄は減る一方、傷は深まるばかりです。そういうケースでは物件を売る、つまり「損切り」するしかありません。

損失が累積していくような物件を背負ったままでは、資金は枯渇し、次に進めません。思い切って清算し、次に向けて資金を貯めるなどした方が建設的です。

買ってはいけない物件を買い、損切りもできないのなら、投資には向いていないと言わざるを得ないでしょう。

とはいえ、損切りも簡単ではありません。

たとえば2500万円の物件を頭金ゼロ、ローン2500万円(金利1.5%・35年返済)で購入し、3年後に売却するとしましょう。

ローンの残り(残債)は約2330万円で、売却価格が2330万円以下まで下がっていると、ローンを返済しきれません。新築から間がなくても2割程度下がる場合が多いので、売却価格を2000万円と仮定すると、ローンの残債と売却価格から手数料などを引いた330万円を、別途、用意しなければなりません。さらに仲介手数料、抵当権抹消費用、印紙代などの合計80万円前後も必要です。

■「負債になっても保有し続ける」のリスク

自身の金融資産から支払えない場合は、親や兄弟に助けてもらうか、知人に貸してもらう、あるいはフリーローンなどを利用するしかありません。以前、地銀では、売却時に払いきれないローンを系列の金融会社が貸してくれるケースがありました。最近はあまり例がありませんが、親兄弟から借りることができない場合は借入先、または別の金融機関に相談するのもありでしょう。もともとのローンよりは金利は高くなりますが、借りられれば損切りができます。

滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)
滝島一統『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール』(KADOKAWA)

そこまでして損切りしなければならないのか? それは物件にもよりますが、先に例にあげたような物件であれば、残念ながら最良の手です。

なぜなら、35年もワンルームの負債を抱えていては、自宅の購入や次の投資をするうえでの足かせになりかねないからです。また青息吐息で2500万円払っても、売却価格は1250万円などという悲しい結果に終わる可能性もあります。

それでもいつか資産化するとお考えなら、保有を続けるという選択もいいでしょう。

ただ、大切なことなのでもう一度言いますが、その選択は、そのワンルームが35年の間、家賃が下がらず、修繕積立金と管理費は上がらず、大規模リフォームの必要もなく、35年間値下がりしない、という奇跡に賭ける、そういうことだと、ゆめゆめお忘れなきよう、よろしくお願いいたします。

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滝島 一統(たきしま・かずのり)
不動産系YouTuber
1976年東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、ミサワホーム入社。25歳の時に渋谷区初台に不動産会社光文堂インターナショナルを設立。2011年より海外不動産事業にも進出。2022年6月、YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」をスタート。不動産業者に騙されないための情報、物件の見方など、ユーザー目線の情報をコワモテで語る動画が人気を集め、1年で登録者数26万人を突破した。漫画原作者として『SWEET DEAL(スウィートディール)』でデビュー。

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(不動産系YouTuber 滝島 一統)

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