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見れば見るほど人生が苦しくなる…精神科医が「長生きしたければテレビを見るな」と繰り返すワケ

プレジデントオンライン / 2023年8月7日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/suman bhaumik

長生きするためにはどんなことに気をつけたらいいか。医師の和田秀樹さんは「テレビは観すぎないほうがいい。ワイドショーなどは極端な事例ばかりを報じるため、無用な不安を抱いてしまうおそれがある」という――。(第2回)

※本稿は、和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■「孤独死」は本当に不幸なのか

人生を楽しむうえで、高年者の思考を邪魔するのが、「孤独」への恐れです。高年になると、「一人ぼっちにはなりたくない」「孤独死したらどうしよう」という発想が強くなります。これも予期不安が起こす恐れです。

現在、一人暮らしの65歳以上の高年者は、日本では670万人を超えています。単身の高年者が大きな事件・事故などを起こすと、高年者の孤立や孤独の問題がメディアで大きく取り上げられます。しかし、実際には、独居の高年者全員が孤独感にさいなまれているわけではありません。一人暮らしで誰にも看取られず、何日も経ってから発見される、という「孤独死」を恐れる人も多いでしょう。

しかし、よくよく考えてみれば、数日経ってから発見されるということは、死ぬ直前まで元気だった可能性が高いわけです。今は、要介護認定を受けた高年者であれば、ほぼ例外なく、なんらかの福祉サービスとつながっています。

日常的な支援が行われているので、体調が悪ければすぐに病院に連れて行かれて、孤独死はなかなかできないのです。孤独死したということは、自殺などのケースを除き、理想の死に方とされる「ピンピンコロリ」が実現できたということ。直前まで寝たきりにもならず、元気に生き、眠るように最期を迎えるという、なかなかできない死に方ができたわけです。

皆さんは「認知症になりたくない」とおっしゃいますが、一人暮らしは認知症予防の最高の方法です。私は、一人暮らしを続けている認知症の患者さんもおおぜい診ていますが、独居の人ほど、認知症の症状は進みにくいと思っています。

■一人暮らしは脳によい刺激を与えてくれる

一人暮らしをしていれば、日々の生活で頭をフル回転させながら過ごすことになります。必要に迫られて買い物に行って、毎日、料理を作り、食事をして、皿を洗う。ゴミを出しに行き、洗濯をし、掃除をする。このように、家の中にはやることがたくさんあります。そのすべてが、心身、そして脳によい刺激を与えてくれます。

台所
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

「認知症になると一人で生活できなくなるのでは」と思う人も多いのですが、不思議なことに、認知症になると、生きるための防御反応が高まります。そのため、「自分で買い物に行って、食事を作らなければ死ぬ」と脳がよく認識しているのか、意欲がなくても買い物には行くし、おなかが空(す)いたら料理を作ります。

「計算ができなくなるから、買い物もできなくなるだろう」と不安になる人もいますが、これもいらぬ心配です。認知症になると、自分の身を守るために、より安全に振る舞おうとする傾向が強くなるからです。

計算が間違っていたら恥ずかしいし、店員からとがめられるのも怖いため、お店ではとりあえず、お札を出すようになります。なんでもお札で買い物するようになるので、財布が小銭だらけになります。それでも、上手に買い物をしている証です。

■テレビで紹介される事例はレアケースばかり

私は、一人暮らしを無理にお勧めしているわけではありません。家族と一緒にいることが幸せな人もいれば、一人が好きな人もいます。配偶者と死別して一人になる人もいます。「みんな違って、みんないい」のです。

ただし、老人ホームなどへの入居を決めない限り、高年になれば、子どもは巣立ち、親や配偶者と死別し、独居になる可能性は高まります。孤独への不安感が強い人は、孤独の楽しみ方を少しずつ覚えておくとよいのではないでしょうか。予期不安にかられてビクビクするくらいなら、予行演習しておきましょう。

一人旅をする、ウィークリーマンションで1週間暮らしてみるなど、不安に思っていることが、実際にどの程度のものかを体験してみると、「一人でもけっこう楽しめるし、大したことはないな」とわかるはずです。実践こそが予期不安を解消し、心の余裕を増やす最良の方法といえます。

皆さんが、孤独死や認知症を必要以上に怖がるのは、テレビの影響が強いから、と私は考えています。ニュース番組やワイドショーは、人が不安になったり感情的になったりする出来事を取り扱います。なぜなら、視聴率が取れるからです。視聴率が高ければ、スポンサーがつきます。スポンサーの意向を忖度するメディアが、テレビです。テレビを見るならば、ここを十分に理解しておきましょう。

「ニュースになるのはレアケースだけ」――。これが事実です。

■認知症患者のほとんどが攻撃的にはならない

「犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛むとニュースになる」といわれますが、まさにその通りです。テレビで取り上げられるような事件は、めったに起こりません。だからこそ、ニュースになるのです。

たとえば、中学生がいじめを苦に自殺をすれば、センセーショナルに取り上げられます。しかし、1日に55人近く起きている大人の自殺は、著名人でない限りニュースにはなりません。子どもの自殺はレアケースで社会的な関心が高まりますが、大人の自殺は珍しくないため、視聴率が取れないのです。

死後数カ月も発見されなかった高年者が、悲惨な死としてセンセーショナルに取り上げられることがありますが、これもめったにある事件ではありません。このように、テレビとは、極めて公平性に欠いたメディアといえます。

認知症を発症して攻撃的になって、ときに他人を傷つけてしまう人もたしかにいます。しかし、9割の人は、症状が進行するにつれて穏やかに多幸感を増していきます。つまり、認知症になって暴走老人となるのは、珍しい例なのです。

■「問題行動」を起こすのにはそれだけの理由がある

ちなみに、認知症の人が暴れると「問題行動」といわれてしまいますが、多くの場合、本人には暴れるだけの理由があります。

普段は幸せそうな認知症の患者さんでも、暴言を吐かれたり、子ども扱いされたりすると、腹も立てるし、抵抗したくもなります。認知症が進行しても、自分が正当に扱われていないとわかるのです。オムツを交換される際に、激しく抵抗したり、介護者を蹴り飛ばしたりすることがあるのは、恥ずかしいからです。

年配の女性が自宅のソファに座っています。 家のリビングルームで、ラップ毛布でソファに座っている静かなシーン。 高齢化社会。
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

とくに女性にとっては、無理やり下着を脱がされているようなものですから、身の危険も感じることでしょう。こうした問題行動を起こす理由をメディアは取り上げず、問題行動だけを切り取って報道する。不安をあおり、ときに高年者を叩きまくる。それゆえに「年を取るのは怖い。認知症はもっと怖い」と、恐怖におびえる人が増えてしまうのです。

■テレビを観るならいちゃもんをつけたほうがいい

はっきりと申し上げて、「テレビを見続けるとバカになる」というのが私の持論です。そこで、テレビを必要以上に見ないこと――これが、予期不安を抱えないための最良の方法です。すべての番組がダメとはいいませんが、見るならば選んで見るようにしましょう。

和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)
和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)

一日中、テレビをつけっぱなしにしてなんとなく見続けていると、思考力が低下し、前頭葉の劣化を早め、確実に心身の老化を進行させていきます。これほど残念なことはありません。

『資本論』を著(あらわ)したカール・マルクスは、「すべてを疑え」が好きな言葉だったといいます。彼のいう「疑え」とは、「常に自分の頭で考えろ」ということです。昔は、ニュースキャスターやコメンテーターがいうことに、「バカいっちゃいけない」「ホンマかいな」とあれこれいちゃもんをつけ、はなから疑ってかかる高年者がよくいました。あれこそ、テレビを正しく見る作法だと私は思います。

一方、「そうなのか」とうなずきながら見てしまう人は、テレビの電源を切っておくに越したことはありません。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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