コロナワクチンを「打てば確実に死ぬ」と発言…県民に接種を推奨する裏で「反ワク」を貫く川勝知事の無責任
プレジデントオンライン / 2023年7月31日 7時15分
■「今度人さまに迷惑をかけたら辞職」と発言した川勝知事
静岡県の川勝平太知事のいわゆる「御殿場コシヒカリ発言」に端を発した給料、ボーナス(約440万円)未返上問題で、2023年7月13日未明、静岡県議会の最大会派自民党県議団は川勝知事に不信任決議案を突き付けたが、わずか1票差で否決された。
7月24日の定例会見では、この不信任決議案提出に絡んで、川勝知事のこれまでの度重なる失言について記者から質問が飛んだ。
中日新聞記者は「ヤクザ、ゴロツキ発言(注1)であるとか、菅義偉総理に対する『教養レベルが露見した』(注2)とか、知事選の女性蔑視発言(注3)であるとか、女性蔑視、学歴差別、地域差別などいろんな分野からの批判が出ている。なぜ、こういう問題が何度も起きてしまうのか」と追及した。
(注1)2019年12月、静岡県議らとの会合の中で、自民党県議団に対し「ヤクザの集団がいる」「ゴロツキがいる」などと発言。
(注2)2020年10月の定例会見で、日本学術会議の候補6人を政府が任命拒否した問題に絡み、菅義偉首相(当時)に対し「教養のレベルが図らずも露見した」などと発言。後に撤回し謝罪した。
(注3)2021年6月の知事選の集会で、「顔のきれいな子は賢いことを言わないときれいに見えない。ところが全部きれいに見える」などと女性の容姿と知性を結びつける発言をした。
川勝知事は「(選挙応援などの)政務の時とか、さまざまな状況下でそういう発言が出ている。もうそれ(政務)はしない。常時公人でいく以外にない。常に公人である。公人としての知事の立場を取ると誓った」と述べた。
この回答に、記者は「ヤクザ、ゴロツキ発言とかは公人の立場(での発言)だった。また同じことが起きてしまう気がする」と突っ込んだ。
これに対して、川勝知事は「今度間違うようなことをして、人さまに迷惑をかければ辞職する」と宣言した。
■ワクチン後遺症患者からの怒りの声
翌25日の読売新聞、日経新聞、朝日新聞などは一斉に「今度迷惑をかければ辞める」と川勝知事の“辞職宣言”を大きく取り上げた。各紙が大きな見出しをつけたのは、「公人」の知事が辞職を示唆する発言自体、あまりにも安直で無責任だからだ。
つまり、川勝知事は、自身の発言が周囲にどのような影響を及ぼすのか全く気がついていないのだ。
川勝知事が、安直な“辞職宣言”をした24日の知事会見とほぼ同じ時刻に、東京・霞が関の厚労省記者クラブで、新型コロナワクチンの後遺症に苦しむ患者たちの団体が健康被害とともに現状の改善を求める会見を行っていた。この患者の中には、静岡県民15人も名前を連ねている。
新型コロナワクチン接種がスタートした2021年春ごろから、川勝知事は「公人の立場」で、65歳以上の高齢者らへ接種を強く働きかけた。
コロナ感染防止のための緊急事態宣言が発令される中、有名人の相次ぐコロナ感染死が伝えられ、政府は1日100万回のワクチン接種を目標にした。川勝知事を含めて各都道府県知事は大規模摂取会場を設置、より多くの人たちに積極的な接種を奨励した。
■実は川勝知事はワクチンを1回も接種していない
新聞、テレビでは一切報道されていないが、コロナワクチン接種を奨励する同じ定例会見で、川勝知事はコロナワクチン接種を拒否していることを何度も述べていた。
つまり、川勝知事は一度もコロナワクチンを打っていない。だから、後遺症などに苦しんだことはない。
コロナワクチンの後遺症に苦しむ患者の1人、静岡市内の医療従事者の女性Aさん(38)は、右手の指先から肩までがまひする後遺症に悩まされ、障害第3級(神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができない)に認定されている。
Aさんは「わたしも川勝知事のようにコロナワクチンを打たなければよかった。川勝知事はワクチンの危険性を承知して打っていないのに、県民には接種を強く奨励した。ワクチン接種の後遺症被害者に対して責任を取ってほしい」などと怒りの声を上げた。
「公人」の立場であれば率先して接種をすべきなのに、なぜ、川勝知事はコロナワクチンを接種しなかったのか?
本稿では、コロナワクチン接種拒否に関わる川勝知事の不適切発言に対して、後遺症に苦しむ患者たちが「責任を取れ」と憤る理由を紹介するとともに、「人さまに迷惑をかけたら辞職」と宣言した川勝知事のあまりにも傲慢(ごうまん)な姿勢を追及する。
■ワクチン拒否の理由は「アナフィラキシーショック」
川勝知事は2021年9月7日の定例会見で、コロナワクチンを打たない理由を次のように述べた。
「アナフィラキシーショックってのはもうすさまじいものです。あるいは血栓症よりも、なかなかきついということでございます。特にアナフィラキシーの場合はですね、これは私ももう一度それが出ると確実に死ぬと、それがわかっていて、いろいろな先生に聞いても、これは打っていけないってことなわけですね」
この発言は非常にわかりにくいが、整理すれば、川勝知事は複数の医師から「コロナワクチンを服用するとアナフィラキシーショックを起こして確実に死ぬ」と言われているというのだ。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の1つで、手足のしびれ、冷や汗などの症状から始まり、意識障害、呼吸困難が短時間で起こり、時には生命にかかわる場合もある。そばなどの食物とともに、あらゆる薬剤で発症の可能性がある。
今回の新型コロナワクチンは新たに開発された薬剤であり、被接種者にアナフィラキシーショックが起きるのかどうかは、実際に接種してみなければわからない。
それなのに、「アナフィラキシーショックが起きて確実に死ぬ」(川勝知事)と断言する医師が本当にいるのだろうか。
■「確実に死ぬ」は言い過ぎ
川勝知事の話からは、過去に何らかの薬剤で非常に強いアレルギー反応が出たことはうかがえる。
厚生労働省の特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」には、「Q.過去にアレルギー反応やアナフィラキシーを起こしたことがあり、今回も起こすのではないかと心配なのですが、接種を受けても大丈夫でしょうか」という項目があり、こう解説されている。
A.食物アレルギーや、アレルギー体質などがあるといった理由だけで、接種を受けられないわけではありません。
食物アレルギー、気管支喘息(ぜんそく)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や花粉症、じんま疹、アレルギー体質などがあるといった理由だけで、接種を受けられないわけではありません。また、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能です。ただし、これまでに、薬や食品など何らかの物質で、アナフィラキシーなどを含む、重いアレルギー反応を起こしたことがある方は、接種直後に調子が悪くなったときに速やかに対応ができるよう、接種後、通常より長く(30分間)、接種会場で待機していただきます。
過去にアレルギー反応やアナフィラキシーを起こしたことがある方は、予診票にご記入いただくとともに、原因の医薬品等やその時の状況をできるだけ詳しく医師にお伝えください。重いアレルギーで医療機関にかかっている場合には、接種の可否について事前に相談することをお勧めします。
川勝知事はコロナワクチンを打つのが心配なのだろう。それは理解できるが、「確実に死ぬ」という理由を挙げるのは、どう考えても行き過ぎだろう。ワクチン接種を奨励する「公人の立場」ではない。
■「常時公人」を宣言する川勝知事の矛盾
「いろいろな先生に聞いても、これ(コロナワクチン)は打っていけない」とも川勝知事は言っている。だが、静岡県で新型コロナ感染症対策に取り組む医師の後藤幹生・県感染症管理センター長は「わたしには知事から相談がなかった」と説明している。
後藤医師は「コロナワクチンは感染予防のためであり、病気の際の薬剤のように必ず服用するものと違い、アナフィラキシーショックを経験したならば無理やりに打つものではない」と川勝知事のワクチン拒否に理解を示す。
後藤医師の言う通り、川勝知事が「公人」ではなく「私人」であるならば、過去のトラウマから副反応を恐れてコロナワクチンを受けないことも理解できる。ワクチンを打つ、打たないは、「私人」であれば、自由である。
しかし、川勝知事は、県民にコロナワクチン接種を奨励する「公人」であり、何よりも「常時公人」であるとも宣言しているから、「私人」の立場で物事を言うのはおかしくなる。
■「ワクチンには副反応がある」と言うべきだったのでは
もし、「私人」の立場を尊重するならば、川勝知事は会見で、「コロナワクチン接種にはアナフィラキシーショックのような危険な副反応がある。コロナワクチン接種は自由であるからそれぞれ慎重に考えたほうがいい」などと述べるべきではないだろうか。しかし、そんな発言は一度もなかった。
知事会見のあった翌8日の静岡新聞の記事は、川勝知事がコロナウイルスの緊急事態宣言を「解除できる状況にない」認識を示し、別の記事では、コロナウイルスワクチンの大規模摂取会場を新たに2カ所増やし、接種率が全国平均を下回る県内の状況を踏まえ、「県全体の接種の加速化を図る」と川勝知事が強調したと伝えた。
川勝知事の会見の趣旨は、県民に向けてコロナワクチンの接種を積極的に奨励したのであり、各社ともその部分のみを記事にした。
つまり、川勝知事の会見は「公人」として、コロナワクチン接種を積極的に奨励したに過ぎない。「公人」の立場で、コロナワクチン接種拒否を表明したわけではないのだ。
川勝知事がはっきりと「公人」の立場で、コロナワクチン接種拒否を公言すれば、静岡県民の中には、コロナワクチン接種を見送った人も出ただろう。
もし危険性があることを踏まえて県民に慎重な対応を求めたならば、
■新聞、テレビは川勝知事の「ワクチン拒否」を報じない
2021年10月6日、同年12月22日の会見でも、川勝知事はコロナワクチン接種拒否を明らかにしているが、新聞、テレビはどこも報道していない。いずれの会見も、趣旨はコロナワクチン接種の積極的な奨励だったからだ。
また9月7日、10月6日の会見で、川勝知事はコロナワクチン接種の代わりにサプリメントを飲んでいることも明らかにした。
「サプリメントの5-ALA(アミノレブリン酸=日本酒や赤ワイン、タコ、イカなどに含まれるアミノ酸の一種)は薬ではないから、安全性が高い」という理由まで挙げた。
「(副反応が怖くて)ワクチンを打てない人たちのためにどういう措置が可能か、政府でも考えてください」などとも会見で述べた。
コロナワクチンを打たない代わりに、サプリメントを飲んでコロナ感染症から身を守る川勝知事は「公人」ではなく「私人」であり、コロナワクチン接種を県民に奨励する資格さえなかったのだ。
■公私混同も甚だしい川勝知事は即刻辞職すべき
Aさんによると、静岡県では、コロナワクチンの後遺症と訴えてもほとんどが医療機関で門前払いの状態であり、コロナワクチン後遺症に理解のない医療機関ではねられてしまうから、患者たちは救済制度の網に掛かっていないのだという。
いまも副反応による後遺症で苦しんでいるのに、何も言えない多くの県民がいるはずだが、コロナワクチンを打たなかった川勝知事にはその苦しみや痛みを理解できないだろう。
常に「公人」である川勝知事は「人さまに迷惑をかければ辞職する」と宣言した。「公人」と「私人」の違いさえ理解できない川勝知事は即刻、辞職したほうがいい。
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ジャーナリスト
ウェブ静岡経済新聞、雑誌静岡人編集長。リニアなど主に静岡県の問題を追っている。著書に『食考 浜名湖の恵み』『静岡県で大往生しよう』『ふじの国の修行僧』(いずれも静岡新聞社)、『世界でいちばん良い医者で出会う「患者学」』(河出書房新社)、『家康、真骨頂 狸おやじのすすめ』(平凡社)、『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)などがある。
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(ジャーナリスト 小林 一哉)
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