「家賃1万8000円の事故物件暮らし」から月収100万円に…高卒の僕が「YouTube副業」を推す理由
プレジデントオンライン / 2023年8月2日 17時15分
■水商売を反対され、高卒でブラック企業に
僕は現在チャンネル登録者数20万人のYouTuberとして活動していますが、ほんの少し前までは事故物件に住み、極貧生活を送っていました。
生まれは北海道の旭川市、戦前には女郎宿があったような地域で小学校に通い、中学の時は「こち亀」を愛読して漫画家を目指し、高校時代にはバイトとバンド活動に明け暮れる、そんな少年でした。
ただ、高校の卒業が近づき、就職活動を始めたものの、うまくいきません。
面接に行ってもすべて不採用。
ある人が水商売にスカウトしてくれましたが、家族・親戚から猛反対されて断念。就職情報誌を買って自分で就活し、なんとかある会社に入社したのですが、その会社がブラック企業だったのです。
■浴びるほど飲まされ、ゲロまみれで帰宅
まず、新入社員歓迎会で、浴びるほど酒を飲まされました。その日はゲロまみれで帰ってきたことを今でも鮮明に覚えています。せっかくのスーツがたった1日で台無しになりました。
その会社は完全実力主義の営業会社でした。成績の悪い部署は給料が上がらず、その上ボーナスまでカットされるという恐ろしい会社でした。
在籍当時、定年まで勤めた人は一人もなく、退職金の存在がまるで幻のように語られていました。
■新入社員全員が白装束を着る「地獄の新人研修」
入社1年目には地獄の新人研修がありました。新入社員全員が白装束を着て、3泊4日で山ごもりするのです。表現は悪いですがまさにカルト宗教の修行のようでした。
心身ともに極限まで追い詰め、会社の理念を叩き込み、新入社員を洗脳するための研修だったからです。
研修中、泣き崩れてひきつけを起こす者、裸足のまま脱走する者もいました。
でも会社はまったく気にしません。その程度のメンタルでは、会社の仕事をこなせないので、早いうちにふるいにかけるのが研修の真の目的だったのでしょう。
バブル崩壊後、1990年代の話です。今ならきっと社会問題化しているでしょう。
■最高55日連続で勤務し、心身はボロボロに
地獄の新人研修が終わると、上司に怒鳴られる毎日が始まります。
営業の仕事でしたが、移動距離が半端なく、往復500キロもある旭川~稚内間を日帰りで移動するのはザラでした。
また、休みという概念がないため、最高55日連続で勤務したこともあります。
そんなハードワークの中、心身ボロボロになった状態で、しかも毎日怒鳴られていると、考え方や精神状態が変わり、少しくらい怒鳴られてもへこまなくなってきます。そういう処世術がないとやっていけないのです。
僕の場合、上司の説教の間、頭の中で歌を歌い、説教を聞かないようにしていました。どんなにひどい暴言を吐かれても、耳に入ってきませんし、メンタルに響きません。気づいた頃には説教は終わっています。
ブラック企業2年目の頃には、上司が怒鳴り散らしても、環境音としか思えなくなりました。こうなったら罵詈(ばり)雑言を浴びてもスルーできるのです。
■ボーナスの次の日から欠勤、メガネを踏んづけたから欠勤…
どうしてもミュージシャンになりたくてブラック企業を辞め、地元のパチンコ店に就職しました。ブラック企業勤務のストレスから150万円もの借金を作ってしまい、返済のためにできるだけ給料のいい仕事を探したのです。
パチンコ店の給料は初任給で手取り15万円。ブラック企業は3年目で手取り11万5000円だったので、かなりいい給料でした。
しかし、労働環境は最悪でした。社員の無断欠勤は日常茶飯事。酔っ払って車で電柱に激突する、ボーナスの次の日から欠勤する、メガネを踏んづけたからという謎の理由で退職する、ホールで殴り合いをする、等々、不祥事ばかりでした。
僕がいた2年間で入れ替わった従業員はのべ100人以上だったと思います。新台入替と同じペースで従業員も入れ替わっていました。
そんな職場だったので、まともに働いているとすぐ管理職を任されます。僕もお金の管理から玉場のメンテナンスまでなんでもやらされ、2年間で月7万円昇給しました。
■1日に3~4時間メーターを見てまわるだけで月30万円
別の仕事を挟んだのち、知り合いに誘われて電気メーターの検針作業員になりました。
1日に3~4時間メーターを見てまわるだけで月30万円貰えるという破格の待遇でした。車やガソリン代は自腹でしたがそれでも25万は手元に残りました。
ただ、世の中そんなに甘くはありません。
旭川は豪雪地帯です。僕が担当する地域は郊外の山間部ばかりで、夏は車でまわれますが、冬になると車は通れません。人が住んでいるところは除雪されていますが、残念なことに人の住んでいない山小屋にもメーターは付いています。なので、メーターを見るためにかんじきを履き、雪の中を何百メートルも歩くことになります。
まさにドラマ『北の国から』の世界です。冬は夏場の1.5倍は時間がかかり、体重が一気に減りました。
■暴力団員や半グレに電気料金を督促
その後、電気料金を滞納する家に行き、電気を止める仕事に移りました。留守ならいいのですが、在宅の場合は支払いの交渉をし、拒否された場合は在宅でも電気を止めることさえありました。
電気を止めたとたん、家の中で大暴れしたり、怒鳴り散らしたり、石を投げてくる人もいました。
厄介なのが暴力団員とか半グレの連中でした。電気を止めると、会社の上の人まで巻き込んで大さわぎになるのです。
■カードショップは開店休業状態、妻は子供を連れて出て行く
そこで5年間働いて、辞める時には転身支援金として400万円もらいました。これを元手に何か商売を始めようと思い、トレーディングカードのお店を開きました。YouTubeチャンネルの名前「トレトレ」はカードショップの店名から来ています。
最初の1週間はお客さんがほとんど来ませんでした。しかし、高校生のグループが来店して以降、口コミでお客さんが増えていきました。
そんなこんなで2号店を開き、その経営も5年目に入った頃、カードのルール改定があり、来客数が激減します。カードゲーム業界ではよくあることで、カードのパワーバランスがマンネリになると、メーカー側が新しいルールに改定します。その結果、以前のカードがほぼ使えなくなるのです。
なんとか、この状況を乗り切ろうと新しいゲームを仕入れたりしましたが、スマホゲームの登場もあって、お店は開店休業状態。こうなると借金で食いつなぐしかありません。
稼ぐ力を失った僕に愛想をつかしたのか、妻は子供を連れて出て行きました。
■妻と離婚、無一文の生活に転落
妻と子供が出て行った家には、家財道具はおろか、石鹸すら残っていませんでした。
とりあえず生活に必要なものをドラッグストアで買いそろえ、洗濯機はリサイクルショップで1万2000円のものを購入しました。
店舗つきの家屋だったので、1人で暮らすとものすごく虚しく感じました。
借金はどんどん膨らみ、銀行から借りた事業資金はもちろん、カードローンも限度額に近づいてきていました。
僕は不動産会社を通じて家を売り、残債と借金を完済し、近所のアパートに引っ越すことにしました。入居費用にお金を使ったため、無一文になっていました。
整骨院の送迎運転手の仕事を見つけ、働きました。勤務時間は8時から15時まで。しかし、働き始めてすぐ、先輩運転手から、金をやるから従業員同士のプライベートを探ってくれと院長に言われた、という相談がありました。
■ほとんどの従業員が無資格で施術
僕は断れと言いましたが、その後も別の従業員が金庫泥棒の濡れ衣を着せられたり、気に入らない従業員を地方の分院に飛ばしたりと、かなりめちゃくちゃなワンマン経営でした。
しかも、この整骨院はほとんどの従業員が無資格で施術していました。20歳前後で、ちゃんと挨拶もできるし素直な若い子ばかりでしたが。
ここではとても働けないと思い、半年間でその整骨院を辞めることにしました。
今度は弁当の配達の委託の仕事を始めました。初日から配達に出ましたが、量が多く、捌ききれません。配達に慣れると食器洗いや弁当の盛り付け、便所掃除まで手伝わされ、休む暇もありません。
当初は1日2~3時間の仕事のはずでしたが、やってみるととことんこき使われて、クタクタです。体調を悪くし、3カ月で辞めることになりました。人に使われて仕事するのは大変だとつくづく思いました。
■約2年にわたるベニヤ板生活のはじまり
その後、再びカードショップを開きました。ほぼ無一文だったので、機材や商品は借金をしてそろえました。
3月に開店し、9月くらいまでは売上も順調でした。しかし、北海道では早い年なら10月には初雪が降ります。そうなると自転車が使えないので、学生の足が遠のき、これが売上の足かせになりました。その上に借金返済と養育費の支払いが重くのしかかってきます。
支払いが追いつかず、自宅アパートを引き払い、店にベニヤ板で壁を作り、そこで寝泊りすることにしました。約2年にわたるベニヤ板生活のはじまりです。
■「セイコーマートの300円のワイン」しか買えない
光のまったく入らない真っ暗な約4畳半くらいのスペースでした。最初はまともに眠ることもできませんでした。
風呂もなければ湯沸し器もなく、窓も換気扇もないその部屋で、ポータブルストーブとカセットコンロ1台を頼りに暮らしていました。冬はストーブを消すと室温が0度まで下がってしまいます。
このころ、財布にお札が入っていたことはほとんどありませんでした。
近所のスーパーに買い物に行くと、1円単位まで計算してカゴに入れていました。お酒はワンカップの日本酒とかセイコーマートの300円のワインだけ。こんな生活だと安酒で手っ取り早く酔っ払うのが一番なのです。
この時のことは今でも夢で見ることがあります。きっとトラウマになっているのでしょう。
■VTuberのキズナアイがきっかけでアニメーション動画を学ぶ
悲惨な生活の中、あるお客さんが自分で作ったYouTube動画を見せてくれました。ちゃんとエンドロールまで作ってあって、とても良い仕上がりでした。
ボクはその子にどういう編集ソフトを使っているか聞き、早速自分でも動画を作ってみました。
それからというもの、すっかりハマってしまい、四六時中、動画制作で頭がいっぱいになりました。店にいる時も風呂に行く時も酒を飲んでいる時も、どういう動画を作ろうか常に考える生活でした。
他のYouTuberの動画も観ていろいろ研究してみました。VTuberのキズナアイを発見して、ボクもこういう動くアニメーションを作ってみたいと思い、アニメーション動画を作る方法をいろいろ調べました。
■敷金5万円を握りしめ、家賃1万8000円のアパートに引っ越し
一方、経営が悪化の一途をたどっていました。人気カードの大幅なルール改定で、全国のカードショップが次々に潰れる「大恐慌」が起き、次の商品を仕入れる余力すらなくなってしまいました。
2017年の10月、とうとう力尽き、2年半営業した3号店を閉店することになりました。
僕は返ってきた敷金5万円を握りしめ、家賃1万8000円のアパートに引っ越しました。家賃が安いのは事故物件だからです。
金も仕事も無く、とりあえず年末の宅配バイトの面接に行きました。定期的に仕事をもらえないか聞いてみると、ちょうど翌月から人員が1人抜けるのでやってみないかと言われ、1日3~4時間の配達の仕事を請け負うことになりました。また高齢者向け配食サービスの配達も始めました。
■財布の中に500円しか残っていなかった
このころからYouTube動画の内容を、お金や政治、時事ネタへとシフトします。
午前中は宅配の請負、午後からは配食の配達、夜は家でYouTubeの動画制作と、1年間のあいだ休みなしで仕事をしていました。おかげで借金の返済も順調に進み、新たな借り入れをすることもなくなりました。
しかし、貧乏には変わりありませんでした。お正月に子供たちにお年玉をあげたら、財布の中に500円しか残っていなかった、ということもありました。
■最初の月に稼いだ広告収入はわずか3600円
転機が訪れたのは2019年の6月でした。YouTubeで念願の収益化を果たしたのです。
最初の月に稼いだ広告収入はわずか3600円でしたが、それでも自分の作った動画でお金を稼げたのは嬉しかったです。
その翌月には収入が一気に24万円に増えました。
YouTubeのはじめての収益で水切りラックを買いました。ずっと100均の水切りラックを使っていました。足が折れて割り箸で補強していたので、これを期に新調しました。
その翌月には84万円も入ってきました。YouTube以外の収入もあわせると月収100万円に到達していました。こうなるとYouTubeに専念したほうがいいと思い、配食サービスの配達は翌月で辞めました。
その後も収入は順調に伸びてゆき、3カ月後には店で作った借金と、配達用の車のローンを完済し、家賃1万8000円の事故物件から、3LDKのオートロックマンションに引っ越しました。
その後も順調に登録者数が増え、念願だった初の書籍『働いたら負けだべや! 1億総ボンビー時代をサバイブする「お金と幸せのコスパ」』(KADOKAWA)も出版できました。
■収入を上げたいならYouTuberをやるべき
僕の人生は山あり谷ありでしたが、今はYouTubeのおかげで安定しています。決して金持ちではありませんが、暮らしていくには充分なくらいの収入を得ることができています。
そうできているのも、会社に頼らず、自分で稼ぐことを徹底したからだと思います。
僕は幼少期に「サラリーマンには絶対にならない」と誓っていましたが、新卒でうっかりサラリーマンになってロクな目にあいませんでした。
給料が上がらない日本では、会社に勤めていても安心できません。
収入を上げたいなら、いっそのこと、YouTuberをやってみるのも手だと思います。
YouTubeの収入は権利収入のようなものなので、大げさに言えば「寝ていてもお金が入って」きます。
時間の制約がないので、サラリーマンの副業としては比較的取り組みやすいと思います。
また、YouTube動画の編集作業を外注するケースも多いので、動画編集のスキルがあれば副業にいいと思います。
■YouTuberは税金面でも有利
次に、経費が認められる範囲が広い点もメリットです。動画制作のために買ったものは原則として何でも経費にできます。
もちろん、主として動画制作のために買ったものでなければだめです。
たとえば旅行動画の場合、「旅行が主たる目的で、ついでに動画を撮影した」場合、旅行の費用を経費にすることはできません。
化粧品のレビュー動画やコスプレ動画をやっているなら、洋服などの購入費用を経費にできますが、一般的な動画で着用していた普段着の購入費用は経費にできません。
最後に、YouTubeの収入は消費税の支払いが不要な点も有利です。
通常、売上1000万円以上の個人事業主には消費税が発生します。また、インボイス制度の導入で、売上1000万円以下でもインボイス登録事業者は消費税の支払いが必要です。
しかし、YouTubeの収入は「Googleアドセンス」といって、海外の会社との取引にあたるため、消費税は「不課税」となっています。
いわゆる「案件」など、国内から広告収入を得る場合は消費税が課税されますし、今後制度の見直しが行われる可能性もあるので、その点には注意が必要です。
ただ現状、YouTuberが税金面で有利なのは間違いないと思います。
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YouTuber
1974年北海道生まれ。ブラック企業、パチンコ店、電気検針員など、職を転々としたのち、トレーディングカードのショップ店長に。その後経営が行き詰まるも、YouTuberに転身。ビジネス・社会系の動画が人気を博し、登録者数20万人の人気YouTuberとなる。著書に『働いたら負けだべや! 1億総ボンビー時代をサバイブする「お金と幸せのコスパ」』(KADOKAWA)。
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(YouTuber トレトレ店長)
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