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2歳と0歳児がいる女性ゲノム解析のプロが「子ガモ5羽を連れて泳ぐ親ガモ」を見て感じた人間社会の厚い壁

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 11時16分

福田恵里さん(左)、高橋祥子さん(右)(出所=『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』)

仕事も育児も両立し持続可能なものにするにはどんな工夫が必要だろうか。プライベートで親交があり、ともにベンチャー企業の経営に携わりながら2歳と0歳児を育てている2人の女性CEOが対談。育児を夫婦で乗り切るための課題や育児と経営の共通点などについて語り合った――。(後編/全2回)

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』の一部を再編集したものです。

■対談テーマ4

対談テーマ1~3から続く

パートナーは共同経営者! 子育ては会社経営と似ている

【福田恵里さん】(SHE代表取締役CEO/CCO、以下福田)よく男性は体の変化がない分、親の自覚が芽生えるのが遅いといわれるよね。わが家の場合は、妊娠してからパートナーにタスクを渡すようにしていたよ。「書類を書いて役所に提出する」「ミルクを作る」など、具体的なタスクをこなしていくうちにだんだん子育てに対する解像度が上がっていった感じかな。今では完全に育児の役割分担は半々。

【高橋祥子さん】(ジーンクエスト取締役ファウンダー、以下高橋)タスクをこなせば、スキルが上がるよね。

■夫と週2、3回はそれぞれ夜に予定を入れワンオペ交代

【福田】最近では、夜の会食の予定を入れ始めたよ。お互いの予定をGoogleカレンダーで共有して、週に2、3回はそれぞれ夜に予定を入れられる枠を持つことに。ワンオペ交代しながら、やりくりしています。祥子ちゃんのところは?

【高橋】夫は最初から育児に積極的で、苦労はなかったけど、唯一気をつけていたのは、「考えていることを伝える」ことかな。子育てに限らず夫婦間のすれ違いって、「本当はもっとこうしてほしい」を口に出さないことから始まると思う。「察してほしい」って言う人がいるけど、それはこちらの怠慢。だって仕事だったら、必ずメンバーにやってほしいことを伝えるわけでしょ。

【福田】やってほしいことを伝えずに、「ここまでやってほしかったのに」とあとから言うのはマネジメント側の落ち度だよね。

【高橋】そう思う。やってほしいこととやったことにギャップが生じたら、「ここまでやってほしかったんだよね」「次はこうしてほしいな」ということを、感情的にならずに伝える。不満は小さなうちに全部伝えるというのは、結婚したときの約束でもあるんだよね。「最近、つらいなと思っていることはない?」「しいていうなら、ここを改善してほしいというところはある?」など、夫から引き出すことも意識してるかな。

【福田】すてき! 小さなうちに刈り取れば、変な水かけ論で疲弊することもないね。

【高橋】なぜかイライラする……! みたいな瞬間もないわけではないので、率直に伝えているよ。たとえば子どもが泣いているとき、「なんで泣いているの?」って夫に聞かれたら「私に聞かれてもわからないから、一緒に考えてほしいんだよね」とか素直に伝えてる(笑)。

【福田】なるほど! 感情をぶつけるというより、自分がどう感じたかを伝えるといいのか。うちもパートナーと喧嘩になるのは、お互いに揚げ足取りになってしまうとき。「今の言葉は悲しかった」みたいな言い方をすると、相手も素直に謝りやすいし、「なぜ悲しくなったのか」という建設的な議論に向かいやすいね。

『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)
『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)

【高橋】不満をためこまないコミュニケーションは会社でも同じで、メンバーとの1on1でも不満を定期的に教えてもらっているよ。

【福田】めっちゃわかる! 子どもを産んで、家族って会社経営みたいだなって思ったの。パートナーは共同経営者。そして、子どもは新入社員。新人のモチベーションを上げて、成長をひとつずつ喜びながら、成果が上がるまでの期間をどうマネジメントしていくか。そういう考えの営みだなと思うと、チームメンバー、上司、部下への接し方にも似ているところはあると思う。

【高橋】そういう意味では、仕事の経験が育児に生きるし、育児の経験が仕事にも生きているよね。

■対談テーマ5

子育てを通して見えてきた課題とは?

【福田】子どもには自分の価値観を押し付けたくないから、こういう子になってほしいという希望もないんだけど、ひとつだけ、どんな道でも自分で選べる子になってほしいとは思っている。「親に言われたから」「世間的に良いとされている進路だから」といった他人の価値観を尺度に人生を生きるのではなく、自分のやりたいことを自分で選択して、その道を自分で正解にしていってほしい。上の子は2歳で、今は自分の本能や欲求のままにピュアに突き進んでいるから、その熱量のままに生きていってほしい!

【高橋】うん、主体性を持って、自分で判断できる人になってほしい。自由に生きてほしいな、と思う。

【福田】でも、日本の公教育って、決められた正解にいかに早くたどり着くかに焦点をあてすぎているように感じる。物事には正解があって、みんなと同じであることが正しいことだと刷り込まれてしまう。それなのに、社会に出た途端に「あなたの強みは?」「あなたの個性は?」と問われるから戸惑うよね。1人目を産んだとき、今の日本の教育への疑問を強く感じたので、義務教育を変えていきたいなって思っているよ。

【高橋】子どもを産んだことで、新たなミッションが見えてきたんだね。

【福田】画一的な日本人像を壊していかないと、これから労働力や生産人口が減っていく日本の国力は低下するばかりだと思う。

【高橋】私は事業ミッションには変化はないけれど、育児を社会全体で考える必要性についてはよく考えるようになった。この間、近所の川で親ガモが子ガモ5羽を引き連れて泳いでいたのね。それを見て「ワンオペで5人とかめっちゃ大変。仕事なんて無理だな」って思った。でも、よく考えたら、生物にとっては、子孫を残すことが最重要事項。育児と仕事のあり方について、その光景を見てすごく考えさせられちゃって。子どもがいなければ、人類は絶滅するわけで、社会の中で育児をサステナブルな仕組みとしていくことが大事だな、と。

【福田】祥子ちゃんの育児支援の仕組みづくりについての発信、すごく共感してる!

カモの親子
写真=iStock.com/leekris
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/leekris

■親が勝手に線を引くようなことはしてはダメ

【高橋】都の育児支援について提言しに行ったり、取材を受けることも増えてきていて、もっと発信もできたらいいな、と思っているよ。

【福田】ところで祥子ちゃんはゲノム解析の専門家だけど、遺伝子で子どもの才能がわかるなんてことはあるの?

【高橋】将来的にはできるようになる可能性はあるけれど、現時点では遺伝子で音楽的センスや美的感覚、理系・文系がわかるという科学的根拠はかなり薄い。人の才能って遺伝要因だけでなく、環境要因によるところが大きいし。

【福田】やはり! 生まれたときに決まっている道なんてなくて、自分で選んだ道を自分で正解にしていくしかない。子どもには「こっちは普通だよ」「あなたにそれは向いていない」とかって、勝手に線を引くようなことはしないようにしなければ、とあらためて思ったよ!

【高橋】私は恵里ちゃんに2歳と0歳をお風呂に入れる方法とか、いろいろ聞きたい! また近いうちに連絡するね(笑)。

福田恵里さん SHE代表取締役CEO/CCO
1990年生まれ。大阪大学在学中、サンフランシスコと韓国に留学。帰国後、女性限定のウェブデザインスクール「Design Girls」を立ち上げる。2015年にリクルートホールディングスに新卒入社し、ゼクシィやリクナビのアプリのUXデザインを担当。17年にSHEを設立し、ミレニアル世代の女性向けのキャリアスクール「SHElikes」などを運営。20年に長男を出産。産休・育休と同時に代表取締役CEOに就任。22年9月に次男を出産。


高橋祥子さん ジーンクエスト取締役ファウンダー
1988年生まれ。2010年京都大学農学部卒業。13年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に遺伝子解析サービスを提供するジーンクエストを起業。15年3月に博士課程を修了、18年に親会社のユーグレナ執行役員に就任。著書に『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』がある。20年に第1子を、23年2月に第2子を出産。

(プレジデントFamily編集部 構成=浦上藍子 撮影=干川修)

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