1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「ワンオペでも頑張れるのが母」という"空気"を入れ替えたい…0歳と2歳がいる女性CEOの"脱根性育児術"

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 11時15分

福田恵里さん(左)、高橋祥子さん(右)(出所=『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』)

仕事も育児も両立し持続可能なものにするにはどんな工夫が必要だろうか。プライベートで親交があり、ともにベンチャー企業の経営に携わりながら2歳と0歳児を育てている2人のCEO女性が対談。戸惑いや葛藤を抱えながらも日々をどのように過ごしているかを語り合った――。(前編/全2回)

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』の一部を再編集したものです。

■対談テーマ1

2人目育児のポイントは「上の子ファースト」

【高橋祥子さん】(ジーンクエスト取締役ファウンダー、以下高橋)今、2人目が生まれたばかりで里帰り中。自宅に上の子を残してきているので、戻ったらイヤイヤ期の2歳児と新生児の育児が待っているのだけど、まだイメージが湧かなくて……。ただ、2回目の新生児育児はラクだと感じてる。

【福田恵里さん】(SHE代表取締役CEO/CCO、以下福田)わかる! 2歳のイヤイヤ期の子のギャン泣きに比べたら、0歳児の泣き声はもはやBGM。癒やしのように感じるよね。

【高橋】夜中に起きる大変さはあるけれど、おむつも替えさせてくれるし、お風呂も入れさせてくれるし(笑)。

【福田】イヤイヤ期の子はやらせてくれないもんね。この前も朝、起きてすぐに、「この服はやだ」「朝ごはん食べない」「保育園行かない」「公園、行く」……って。なんとか気分をのせようとするけれど、うまくいかずに号泣モードに入っちゃうと、予定がどんどん狂ってしまう……。

【高橋】そうそう。着替えとか食事とか、保育園の送り迎えといった「育児そのもの」が大変というよりは、時間のコントロールができないことが大変。30分かかるってわかっているなら、30分前から準備するけれど、予測不能。さらにそこに赤ちゃんが加わったらどうなるの? 未知すぎる!

【福田】うちは長男が2歳で、次男が5カ月なんだけど、赤ちゃん返りも一切なくて、お兄ちゃんは弟を「ベイビー♡」って呼んで、ハグしたりチューしたりと、オープンマインドな愛情表現をしているよ。

【高橋】すごい! コツはあるの?

【福田】第2子が生まれてから、徹底して上の子ファースト。とにかくすべてお兄ちゃん優先。何か要望してきたら、赤ちゃんが泣いていても、すぐに対応する。毎日これでもかっていうくらいハグして、愛情表現をしまくっているから、満たされているのかな。「ママをとられた」という嫉妬も芽生えず、弟の誕生を素直に喜んでくれている。

【高橋】それはいい、わが家でも実践してみるよ。

■対談テーマ2

育児の知識が広がればもっと育てやすくなる

【高橋】子育てを始めて「育児についてこんなにも無知だったのか」と感じることは多いかな。「眠れないことがこんなにもつらいなんて」とか「子どもがしょっちゅう熱を出して保育園に呼び出されることがこんなにもストレスなのか」とか。イヤイヤ期がなぜあるのかもあらかじめ知っていたらよかったなって思う。子育てについて学ぶ機会がないよね。

『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)
『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)

【福田】イヤイヤ期がある理由、気になる!

【高橋】ヒトの脳は、欲求をつかさどる部分から発達が進み、理性をつかさどる部分の発達はその後。理性的な部分がまだ育っていないから、欲求をコントロールすることができない状態なのがイヤイヤ期だよ。

【福田】なるほど! あらかじめ知っていたら、準備や覚悟ができていいかもしれないね。確かにそう考えると、知らなかったことってたくさんある。振り返ってみると、妊娠中から知らないことが多かった。

つわりだってドラマで描かれているようなイメージしかなくて、トイレに駆け込んで「もしかして妊娠?」って気づく、あの1回だけだと思っていて。私の場合は妊娠初期から毎日吐き続けて、ずっと二日酔い状態。妊娠初期こそサポートが必要だな、と痛感したよ。

会社に妊娠を報告するのは安定期に入ってからが主流だけど、つわりがひどいのは妊娠初期が多いから、妊娠がわかったタイミングで会社にも報告して、必要な配慮や支援が受けられるようになればいいのにと思う。

【高橋】初期流産を心配して言わない人が多いけれど、流産って15%くらいの確率で起こるものなのに、意外と知られていないよね。社会全体にそうした知識があれば、妊娠初期からでも報告しやすくなると思う。

【福田】私は、妊活も公言していたし、妊娠初期から社員にも報告していたよ。社員も「妊活しています」「子どもを望んでいます」ということをオープンに話してくれるので、経営者としてはありがたい。産休・育休の可能性を見越して計画を立てることもできるし、妊娠がわかったら時間をかけてチーム内での仕事の調整もできる。不安なく産休・育休を取得し、復帰できる世の中になるといいと思ってる。

【高橋】すばらしい! 妊活をオープンにできるのも、社員に妊娠・出産への知識がしっかりあるからだよね。「妊活したら全員がすぐに妊娠できる」と誤解している人が多いと、「まだできないの?」などの発言で傷つくケースもある。男女問わず、社会全体としても、妊娠・出産・育児の知識がもっと浸透していくといいよね。

■対談テーマ3

科学的に捉えて根性論を一蹴しよう

【福田】育児と仕事の両立のために意識していることってある?

【高橋】「チーム育児」かな。夫だけでなく、双方の家族、ベビーシッターさんも含めて、子育てをするチームを整えることを意識してる。そもそも人間の赤ちゃんって、夫婦二人だけで育てる仕組みにはなっていない。実際、赤ちゃんが生まれたときに私も本当にびっくりしたんだよね。赤ちゃんって、なんという脆弱(ぜいじゃく)性を持っているんだって。

【福田】赤ちゃんに対して「脆弱性」っていうワードが出てくるの、斬新!

【高橋】だって、哺乳類の赤ちゃんなのに自力で食料にもアクセスできず、危機回避能力もないって、すごく珍しいんだよ。よく人類の数が増えたな、って思う。ただ、そう考えてみると、進化の過程で残ってきたのは、生存戦略として有利だったか、あるいはその性質を許容できたか、どちらかなんだよね。人間は集団で子育てすることで、赤ちゃんの脆弱性を許容できるようにしてきた。そのおかげで生まれてから成人するまで約20年という時間をかけて、脳を発達させるという戦略をとれたわけ。

【福田】人間はもともとは集団で育児をする生き物なんだね。

【高橋】その通り。ところが、現代では子育てのメンバーが減っていて、都心だと9割くらいが核家族。生物学的なヒトの子育て環境と現代社会の子育て環境とに大きなギャップがあるんだと思う。

【福田】確かに! 子ども1人に対して大人1人では絶対的に人手が足りない。大人2人でも大変。わが家でも、子どもを私たち夫婦二人だけのものにせず、シッターさんとか祖父母とか、たくさんの人に関わってもらうように意識しているよ。

【高橋】うん。「育児は母親の仕事」とか、「ワンオペでも頑張れるのが母」とか、そういう考えは一切持たないほうがいい。とにかく他人に頼って、子育てはみんなでやる。全部自分で背負いこまないって大事だと思う。

家族
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

【福田】でも母親に自己犠牲を求める社会の雰囲気って、根強いよね。母乳神話だったり、手作り離乳食が礼賛されたり。母たるもの、手間や疲労や睡眠不足をいとわず、身を粉にして頑張るべきだ、という圧力……。でもそれって全然サステナブル(持続可能)じゃないよね。

【高橋】めっちゃ同感……! よくわからない根性論みたいなものがはびこっていて、それに苦しめられている人って多いと思う。私も1人目のとき、母乳があまり出なくて母乳外来に行ったら「お母さん、もっと頑張ってください」って。そう言われたら、自分の努力不足なのかと思ってしまう。でも、調べたら、母乳の出方は個人差が大きいし、出ない人も一定割合いるんだよね。努力の問題ではない。それを知ってからは、私は完全ミルク育児です。母からは「母乳じゃなくていいの?」って言われるけれど。

【福田】それね! 私も2人目からは完全ミルクなんだけど、実母からは「不良母」とか冗談を言われる。全部スルーだけど(笑)。

【高橋】うちの母も、「イヤイヤ期なんていうけれど、甘やかしすぎが原因じゃないの? 子どもがわがままを言うのは、育て方のせい」と言ってくる。こういった言葉をストレートに受け止めてしまうとつらい。逃げ場がなくなるよね。ちゃんと科学的に捉えるということは必要だと思う。

【福田】でも、子育ての先輩から言われると、「そうなんだ……!」って思ってしまうことも多いかもね。

【高橋】だから、外の世界と接点を持つことが大切だよね。いろんな人と接することで、さまざまな意見があって、祖父母の意見が正しいとは限らない、ということがわかると思う。とくに産後すぐって、なかなか外出もできないし、世界が閉じてしまいやすい。今は、自治体による産後ケア事業も増えているから、いろんなサービスを積極的に活用して、いろんな人の意見を聞くのがいいと思う。

【福田】親がご機嫌でいること、自分らしく生きることが、子どもにもいい影響を与えると私は思ってるよ。だからあまり我慢もしないようにしているし、優先順位をつけて手放すことも意識しているかな。私の場合、家事は真っ先に手放した。夕食はミールキットとか宅食サービスをフル活用だし、アウトソーシングできるところはどんどんしている。

【高橋】育児ってやろうと思えば、無限にやることはある。何をやらないかを決めるほうが圧倒的に大事だよね。

【福田】そう、手放さないと新しいものが入る余地もないわけで、自分で何もかもをやることに固執すると、新しい機会や大切なものを見失ってしまうこともあると思う。気づかないうちに子どもに依存してしまうこともこわい。「私はすべてを子どもに捧げているんだから!」と。母乳育児にしろ、手作り離乳食にしろ、それが自分がやりたいことならすばらしいけれど、「やりたくないけれど、やらないといけない」っていう義務感でやっているのであれば、手放す勇気を持っていいと思う。(以下、後編へ続く)

(プロフィール)

福田恵里さん SHE代表取締役CEO/CCO
1990年生まれ。大阪大学在学中、サンフランシスコと韓国に留学。帰国後、女性限定のウェブデザインスクール「Design Girls」を立ち上げる。2015年にリクルートホールディングスに新卒入社し、ゼクシィやリクナビのアプリのUXデザインを担当。17年にSHEを設立し、ミレニアル世代の女性向けのキャリアスクール「SHElikes」などを運営。20年に長男を出産。産休・育休と同時に代表取締役CEOに就任。22年9月に次男を出産。


高橋祥子さん ジーンクエスト取締役ファウンダー
1988年生まれ。2010年京都大学農学部卒業。13年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に遺伝子解析サービスを提供するジーンクエストを起業。15年3月に博士課程を修了、18年に親会社のユーグレナ執行役員に就任。著書に『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』がある。20年に第1子を、23年2月に第2子を出産。

(プレジデントFamily編集部 構成=浦上藍子 撮影=干川修)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください