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キレキレな頭を取り戻せる…認知症予防医が実践する「頭が良くなる食事プログラム」の最重要食材とは

プレジデントオンライン / 2023年8月8日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anilakkus

食生活は脳にどんな影響をもたらすのか。認知症予防医の広川慶裕さんは「私は『頭が良くなる食事』として半熟卵を毎日3個食べることをおすすめしている。逆に、糖質の取りすぎは脳の機能を低下させるため、1日に必要な糖質量である30グラム、つまり茶碗半分のご飯くらいに抑えてほしい」という――。

※本稿は、広川慶裕『脳のスペックを最大化する食事』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。

■炭水化物を食べ過ぎるとどうなるか

食生活の方針として、糖質(炭水化物)を取る量を抑える糖質制限を行い、糖質を多く含むパンやご飯の量を減らしましょう。糖質過多な食生活は、脳とカラダの老化を促進してしまうからです。

必要以上の糖質を摂取すると、血液中の糖質はエネルギーとして消費しきれなくなり、中性脂肪や「AGEs」に変化します。AGEsとは終末糖化産物とも言われ、タンパク質と糖質が結びついて「糖化」したもの。糖化やAGEsの蓄積は、カラダの「コゲ」にもたとえられ、老化の原因になります。

「糖化」は、「酸化」と「炎症」と合わせて、ヒトの老化の三大要因と呼ばれます。血管の中でAGEsができると、動脈硬化を引き起こし、血流を悪化させます。その結果、脳やカラダの機能を低下させます。

■麺類やパンは「グルコーススパイク」を起こす

よく「ヒトは血管とともに老いる」と言われますが、血管がボロボロになることは老化の大きな原因です。食べすぎで余った糖質から作られる中性脂肪は、もちろん肥満の原因に。中性脂肪が数々の生活習慣病を引き起こすのは言うまでもありません。

糖質のなかでも、とくに小麦は脳やカラダに対して悪影響の多い食材です。麺類やパンなど、精製された小麦から作られた食品は、米よりも急激に血糖値を高くします。すると高くなりすぎた血糖値を下げるために血液中にインスリンが分泌されて、今度は急に血糖値を下げようとします。こうした食後の短時間に血糖値が乱高下することを「グルコーススパイク」と呼びます。血管を傷つけたり動脈硬化の原因となったりする危険な現象です。

■さまざまな疾患の原因につながる「グルテン」

さらに小麦には、タンパク質からできた「グルテン」と呼ばれる成分が含まれています。じつはこのグルテンもカラダに悪影響があることがわかっています。グルテンはうどんやラーメンのコシになったり、パンの弾力のもとになる成分。いい食感を食品に与えてくれるのですが、その粘り気ゆえに消化しにくく、腸粘膜を炎症させやすいのです。

これが「リーキーガット症候群」(腸もれ)を引き起こす原因となり、腸の粘膜に損傷ができて、腸内にあるべき物質が腸から漏れ出してしまうのです。リーキーガット症候群はさまざまな疾患の原因ではないかと考えられています。

私自身も、低糖質食を実践しています。主に小麦と白米の食べる量や回数を控えているのですが、とくに小麦を食べると、その直後にお腹が張ったり、頭が鈍くなったりすることを実感します。お腹が張るのは、腸内環境が悪化しているあらわれです。そしておそらく、腸内環境が悪化することでセロトニンなど脳に必要なホルモンの産生も減ってしまうのではないかと考えています。その結果、頭の回転が鈍ってしまうのです。

私のクリニックに通院している患者さんでも、糖質制限をしている人は、制限していない人よりも心理テストの結果が改善しやすい傾向があります。これも糖質の摂取を減らすことで、脳内物質の産生にいい影響を与えた例だと言えるでしょう。

■日本人の多くが糖質依存に陥っている?

糖質制限をすると、カラダにとってはいいことずくめなのですが、なかなかすぐには実践できない人が多いのも事実です。現在「健康の常識」と思われていることとは逆の食事法であることも理由の1つでしょうが、それだけでなく、糖質には非常に強い精神的依存性があるからでしょう。麺類やパン、ご飯、甘いものは、無性に食べたくなるものなのです。

糖質
写真=iStock.com/a_namenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/a_namenko

私は、現代の日本人の多くが糖質依存だと考えています。今まで見てきた患者さんのなかで、とくに糖質依存だった人の例をご紹介しましょう。

その人は糖尿病の患者さんで、かなり厳格な糖質制限を行っていました。当初はインスリン注射をしていましたが、治療のかいあって服薬だけになり、長期的な血糖値の指標となる「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の値も改善。10.5%あった値が7.0%になり、認知機能も顕著に改善していました。そのまま治療を続けていたなら、正常値(4.6~6.2%)まで戻っただろうと思います。

■「死んでもいいからご飯や甘いものが食べたい」

しかし糖質制限を始めて3年経った頃、「どうしてもアイスクリームが食べたい」と言い出しました。そしてさらに2年後、本人から「もう糖質制限はやめたい。死んでもいいからご飯や甘いものが食べたい」と治療の打ち切りの申し出がありました。

こうなると、残念ですがやむを得ません。

治療をやめる直前は、甘いものを食べる、食べないで毎日夫婦で大喧嘩していたそうです。何年も続いていた糖質制限の間も糖質を取りたいという欲求を消すことができず、健康のための食事制限をやめたくなるほど糖質の依存は根強いのだと思い知らされました。

とはいえ、いくら糖質がカラダに良くないからといっても、糖質をまったく取らないのも好ましくありません。栄養バランスは「タンパク質3:脂質6:糖質1」程度が好ましいでしょう。じつは赤血球がエネルギー源にできるものがブドウ糖だけなのです。そのためにヒトは1日あたり、180グラムの糖質が必要です。そのうち、肝臓で作られて、そのまま体内で使われる糖質もあります。

■1日に必要な糖質量は「茶碗半分のご飯」くらい

肝臓が1日に作る糖質量は150グラム。ヒトのカラダに必要な糖質量から肝臓が作っている糖質量を引くと、その差は30グラムです。つまり、この30グラムだけ、食事から糖質を補う必要があるというわけです。

糖質量の30グラムとは、ご飯に換算してお茶碗半分くらい。この程度なら食事から糖質を取っていいですが、それ以上はヒトのカラダにとって余分な糖質です。カラダの中で余った糖質は、中性脂肪になって蓄積されます。ヒトは本来、1日30グラムだけ糖質を取れば十分。それ以上はカラダにとって害悪だと考えるべきなのです。

私は「頭が良くなる食事」として、半熟卵を毎日3個食べることをおすすめしています。鶏卵は、プロテインスコアやアミノ酸スコアにおいて100点の良質なタンパク源です。

ゆで卵にレタス
写真=iStock.com/Dejan Kolar
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dejan Kolar

体内で作ることができないすべてのアミノ酸を摂取することができるので、鶏卵はタンパク源として最適なのです。さらに、鶏卵には必須脂肪酸のα-リノレン酸という脂質が豊富に含まれています。脂質だけでなくタンパク質も豊富に取れる卵ですが、とくに半熟卵の状態で、1日3個食べるのがいいでしょう。

■「1日半熟卵3個」をおすすめする理由

まず、なぜ卵は半熟がいいのかお話ししましょう。卵の白身には「アビジン」というタンパク質が含まれています。このアビジンはタンパク質の吸収を阻害してしまうのですが、熱を加えて固まると活性が失われます。逆に黄身の方は、加熱することで構造が変化して、黄身に含まれる各栄養素の機能が損なわれる可能性があります。

つまり、卵の白身だけに熱を加えてアビジンを失活させ、黄身にはできるだけ火を通さず栄養を生かしておくのがベストというわけです。3個という数にも理由があります。タンパク質の量です。卵3個には約20グラムのタンパク質が含まれます。人間が一度に吸収できるタンパク質の量は除脂肪体重×0.7グラムぐらいまで。

成人の場合、計算すると1食あたりのタンパク質の摂取量は20~30グラムが上限です。卵3個だと、ちょうどそのぐらいになるんですね。さらにタンパク質は、過剰摂取すると腸内の悪玉菌が増えて腸内環境が悪化します。1回の食事で、取りすぎない範囲で必要なタンパク質の量を摂取するには、卵3個がぴったりなのです。

■電子レンジ約90秒でいい具合の半熟に

ただ、意外に半熟卵を作るのは火の通し加減が難しく、熱を加えすぎて、どうしても黄身が完熟寄りになってしまったりするものです。そこで、簡単に半熟卵を作る方法をご紹介しておきます。

丼に卵を3個割り入れて、ラップをします。それを電子レンジに入れて、500ワットで90秒ほど加熱してください。たったこれだけで、ちょうどいい具合の半熟卵を作ることができます。出社前などの時間がない朝でも、さっと準備して食べられるので、忙しい社会人にもおすすめの方法です。

また、レンジで加熱するのではなく、どうしてもゆで卵にして食べたいという方は、次の方法を試してみてください。

広川慶裕『脳のスペックを最大化する食事』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
広川慶裕『脳のスペックを最大化する食事』(ハーパーコリンズ・ジャパン)

鍋でお湯を沸騰させて、いったん火を止めます。冷蔵庫から出したばかりの鶏卵を、おたまなどでそっとお湯に入れます。ここで火を止めなかったり、直接手で入れたりするのは、殻にひびが入りやすいため、あまりおすすめできません。

鶏卵をお湯に入れたら再び火をつけて、お湯が沸騰した状態で6分間ほど茹でます。時間になったらすぐに冷水にあげて、今度はしっかり冷やしてください。これで、ちょうどいい具合の半熟のゆで卵が作れます。

もちろん鶏卵の大きさなどで火の通り具合が多少変わるので、ご自宅でちょうどいい加熱具合が見つかるまで、いろいろと試してみてください。

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広川 慶裕(ひろかわ・よしひろ)
精神科医、認知症予防医
京都大学医学部卒業。認知症やうつ病、統合失調症などの精神疾患治療に携わる。メンタル産業医としても活躍中。認知症予防専門クリニック・ひろかわクリニック、品川駅前MCI相談室院長。著書に『もの忘れ・認知症が心配になったら読む本』『運転の認知機能を鍛える本』(池田書店)、『図解でよくわかる 今すぐできる認トレで認知症は予防できる!』(河出書房新社)『「認トレ®」で防ぐ認知症 完全4週間メソッド』(時事通信社)『脳が若返るまいにちの習慣』(サンマーク出版)など多数。

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(精神科医、認知症予防医 広川 慶裕)

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